『FF11』23周年・藤戸洋司P/Dインタビュー。2025年はリンバスを完全リニューアルし、多人数でもソロでも遊べる場に

『FF11』23周年・藤戸洋司P/Dインタビュー。2025年はリンバスを完全リニューアルし、多人数でもソロでも遊べる場に
 2002年に家庭用ゲーム機向けとしては初のMMO(多人数同時参加型オンライン)RPGとしてスタートし、2025年5月16日に運営23周年を迎えた『ファイナルファンタジーXI』(以下、『FFXI』)。2024年はバトルコンテンツ“ビシージ”の高レベル対応をはじめ、ゲーム外では朗読劇イベントの開催、そして『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)においてクロスオーバーコンテンツ“エコーズ オブ ヴァナ・ディール”が実装されるなど、話題が豊富な1年となった。そこでファミ通.com&電撃オンラインでは、P/D兼任の新体制となってから3年目を迎えた藤戸洋司氏に、2024年の省察とともに今後の展望、運営方針などをうかがった。
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藤戸洋司ふじとようじ

『FFXI』プロデューサー兼ディレクター。初期からの開発メンバーとして、チャットやリンクシェル、ストレージ関連などのシステムまわりを担当。またチョコボ育成や生活系コンテンツとともに、モブリンズメイズモンガーやメイジャンの試練といった幅広いコンテンツに関わる。2016年にディレクターに就任。2023年3月よりプロデューサーも兼任している。

2024年でアップデートを終了する可能性もゼロではなかった!?

――まずは昨年となる2024年の振り返りからうかがいます。2024年は『FFXI』にとってどういった1年でしたか?

藤戸
 これは『FFXI』が20周年を迎える前に議論されたことですが、2024年は『FFXI』のアップデートが終了となり、システムの保守だけを行ういわゆる“メンテナンスモード”に移行する可能性も少なからずあった年でした。

 しかし20周年のタイミングでさまざまな方面から長期的な運営継続が望まれている旨をいただきましたし、何よりサービスの停止は現役の冒険者にとっては日常の破壊につながってしまいます。これまで『FFXI』を支えてくださった方々に対しても、生きたゲームとして『FFXI』を運営継続することが現メンバーの使命ととらえて、この先も安定した運営を続けていけるようにサーバーリプレイス(※)を進めた年となりました。

 また、現在の開発チームはかなり少人数の体制になっていますので、改めて“いまのスタッフでできること”の洗い出しもしました。完全新規のコンテンツを毎パッチ実装するとなると難しくはありますが、「今回は上位ミッションバトルフィールドを実装しよう」と優先順位を決め、そのぶんの作業量と期間を確保しながら、既存コンテンツやシステムにもさまざまなアップデートを重ねたり、その先のパッチへの準備をコツコツと行って、プレイヤーの皆さんに引き続き楽しんでいただけるようにしたのが、去年1年間のおもな動きと言えます。
※老朽化したサーバーを新しいものに入れ替えること
――2024年でアップデートを終了するというのは、『蝕世のエンブリオ』関連の実装が完了したら終わり、というイメージだったのでしょうか?

藤戸
 そうですね。これまでの『FFXI』の開発の歴史を簡単にふり返ると、数年ごとに拡張ディスクなどを発売して、それを全力でやり切った後に「それで、つぎはどうする? まだ続ける?」の議論が始まる……ということのくり返しでした。MMORPGというものが、どのような成長をたどるべきかを常に試行錯誤していた感じですね。サーバーやクライアントに残された余白が大きいうちはよかったのですが、20周年を迎える2022年前後は、長期的な計画に基づいて拡張ディスクなどをリリースする、というような段階はとうに過ぎていたころでした。

――思い起こせば、2015年3月19日に“ヴァナ・ディール プロジェクト”が発表され、『ヴァナ・ディールの星唄』が完結する同年11月をもって、メジャーバージョンアップを終了することが告知されていました。

藤戸
 翌2016年にはプレイステーション2版やXbox 360版のサービスも終了していましたし、「あとはできるだけサービスを継続していくものの、そこからの大きな飛躍はなしにしよう」といったことを、当時のプロデューサーである松井(聡彦氏)も方針として出していました。ですから、そこから20周年を迎える2022年までは、 “その時点で可能なことだけを、できる限り全力でやっていこう”と決めて、チーム全体で取り組んでいました。

 そのような中で、サーバーの機械的な寿命もいよいよ迫ってきていて、「サーバーリプレイスをして運営を継続するのか? それとも閉じる準備をするのか?」という議論を重ねつつ迎えたのが20周年という節目でした。

――ということは、アップデートが終了するだけでなく、サービス自体が終了するという可能性もあったのでしょうか?

藤戸
 可能性としてはありましたが、20周年を迎えた際、ありがたいことに、たいへん多くの方々から「これからもサービスを継続してほしい」という声をお寄せいただきました。なによりもプレイヤーの皆さんが、ゲームにログインして遊んでくださっていました。そこで松井ともいろいろ相談をしまして、サーバーや開発機器を更新し、スタッフのキャリアを考慮して学びのための兼任や移籍を進めることを前提として、継続させていただく決断をしました。その一環として自分が松井の代わりにプロデューサーも兼任する、という形になったのです。

 その際、
『蝕世のエンブリオ』が完結したときに、もしも『FFXI』の盛り上がりがひたすら下降線を描いていたら、そのときは本当に終わりの準備をしよう、とも考えていました。……ですが、そうはならなかった。これはもう、今後も運営を続けろという神託だと受け止めて、継続する覚悟を決めたのです。
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2024年のコンテンツ動向とビシージ調整の今後


――2024年の『FFXI』はさまざまな施策がありましたが、個々についてうかがいます。まず、全ワールドをまたいでのイベントである“ヴァナ・バウト”についてお聞かせください。第1回の開催は2023年末でしたが、昨年に第2回、第3回、今年初めに第4回と開催してきて、プレイヤーの反響はいかがでしたか?

藤戸
 毎回、たくさんの感想やフィードバックをいただけて感謝しています。ありがとうございます。ヴァナ・バウトは、全ワールドのプレイヤーの皆さんが“協力”することによって目標を達成できる喜びや楽しみ、”横のつながり”を感じていただけるようにしていきたい、と考えてスタートしています。

 従来の『FFXI』にはない要素であり、プレイヤーの皆さんの生活やプレイスタイルを考慮しながら、ボリューム感や内容を定めていくことは簡単ではなく、プレイヤーの皆さんにご迷惑をお掛けしてしまった部分もありました。しかし“全ワールドで協力してポイントを溜めていく”という根幹の部分については、やはりいままでとは違う楽しさを感じていただけたのではないかと思っています。とくに直近の第4回の開催で、基本的な調整はもう大丈夫かな、という手応えが得られましたので、今後も横のつながりを感じていただける塩梅を大切にしながら、新しい報酬やキャンペーンを追加していきます。

――経験を積んだプレイヤー向けのハードなコンテンツであるマスタートライアルにも、新たに“天帝の翼”が追加されました。こちらの意図もお聞かせください。

藤戸
 マスタートライアルについては、当初からバトルの数も決まっていましたし、報酬の装備も用意してあったのですが、2023年にスタッフの再編で開発規模がコンパクトになった際、本来予定していたものが志半ばで凍結状態になっていました。報酬もまだ使われていないものがあったため、昨年ようやく実装することができました。

――それが両手刀の“大量(おおはかり)”ですね。展示イベント“ヴァナ・ディールの秘蔵展”でしれっと公開されていたという……。

藤戸
 はい(笑)。このことからもわかるように、マスタートライアルはその都度企画しているのではなく、以前から計画にあったものです。そしてこの“天帝の翼”が最後に予定されていたものでした。ヴァナ・ディールで最強のパーティと最強の敵が戦う頂上決戦なので、もっとも難度が高いバトルとして作られています。それにふさわしくなるよう、敵もバハムートと『蝕世のエンブリオ』のラスボスが同時に登場する形となりました。

――つぎはビシージの調整についてうかがいます。今後、行軍レベルのさらなる強化が予定されていますが、改めてどのような経緯でビシージが調整されることになったのかをお聞かせください。

藤戸
 ビシージはレベルキャップ75時代のコンテンツで、難度もそのままでしたが、エミネンス・レコードやヴァナ・バウトの目標としてアイテムレベル装備のプレイヤーが参加する機会がそれなりにあり、パワー差があまりにも顕著でした。また、プレイヤーの皆さんからも「アイテムレベル装備に対応してほしい」などの要望が以前から寄せられており、開発スタッフの中からも「手を加えたい」という話が上がってきたため、なんとか上位のものを作れないかと考えていました。

――調整にあたってどのような点に苦労されましたか?

藤戸
 そもそもビシージはシステムとしてかなり巨大なコンテンツです。アルザビ内のバトルだけで完結するといったものではなく、エリアサーバーどうしで通信が必要です。魔笛の奪い合いがあり、蛮族は実際に行軍しており、捕虜となったNPCはアルザビからいなくなってしまったり……と、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。そのような理由で一朝一夕には手を加えられず、ほかに重要な案件がある場合は「いったんビシージは後回しにしよう」となり、なかなか手を付けるところまで行きませんでした。

 ですがスタッフの再編を機に、 役割を終えた既存コンテンツに対してもう一度火を入れていくという趣旨で、ビシージの調整を本格的に行うこと、長期的な計画で段階的に進めることを決めました。

――段階的な調整については、現状で予定通りのスケジュールでしょうか。

藤戸
 はい。長期的な開発スケジュールを立てており、おおむね予定通りです。ただ、それでも急に露呈した不具合や解決するべき課題が都度出てきています。たとえば行軍スピードを上げようとしたところ、行軍中の蛮族軍が道中で立ち止まってしまい、行軍速度は上がっているのに到着時間が変わらない、といったものがあります。地形由来のために完全には修正できない案件だったのですが、当時は問題がなかった仕様や過去のアップデートで積み残しとなっている不具合に近いものをなるべく修正して、直近のバージョンアップで反映し続けています。

 またプレイヤーの皆さんからのフィードバックを元に、先ほど例として挙げた蛮族軍拠点からアルザビへの行軍速度の調整のほかにも、門の外側へ降りてしまった際に内側に戻るためのワープポイントとして“Escape Route”の設置、行軍レベルの上昇速度アップなどを実施しています。

――直近5月のバージョンアップでも行軍レベル11が開放されました。こちらの詳細についてもお聞かせください。

藤戸
 行軍レベルが上がるということは、基本的には敵側が強くなるということですが、ただ敵が強くなるだけだとプレイするのがつらくなってしまいます。 ですので、ビシージをプレイしていて楽しくなる要素として、五蛇将の強さやプレイヤーへの支援に影響する新しい仕組み“モラルゲージ”を導入しています。

 なお、行軍レベルが9以上になると獣人拠点にいるボスも同時に強くなります。たとえアイテムレベル装備でも手強く感じるシーンが発生し、ミシックウェポン取得クエスト(※)の難度も上がってしまうことから、実装当時の強さのボスと戦えるバトルフィールドを先んじて昨年11月に実装しています。ミシックウェポンを作る際は、こちらを活用していただければと思います。
※ミシックウェポン取得クエスト「盗まれた皇宮の宝」では、蛮族軍の各ボスを撃破(ビシージ時を除く)し、称号を得なければならない。[IMAGE]
※画面は開発中のものです。
――大人数が参加するコンテンツとしては、カンパニエバトルもあります。こちらも高レベルに対応してほしいというプレイヤーの要望は多いと思いますが、調整の予定などはありますか?

藤戸
 もちろん検討したことはあるのですが……裏でサーバー間通信している値が信じられないほど多くて、単にレベルを上げるだけでも、かなりやっかいな状況です。

 カンパニエという大きな仕組みがあり、その中の重要な要素として用意されている仕組みであるがゆえに全体の影響する範囲が広く深いため、波及する影響を考えるとそう簡単な話でもないのです。現代のヴァナ・ディールに反映される部分もあるくらいなので、できたらおもしろいですし、魅力のあるNPCたちがいま一度活躍するのは私たちもワクワクするのですが、現実的には相当難しいですね。

“いまのプレイヤー“に合わせた調整を進めたい


――2024年のログインキャンペーンではアークエンジェルのレプリカ防具が登場しましたが、どういった経緯だったのでしょうか?

藤戸
 用途は決まっていませんでしたが『FFXI』を代表するクラスの敵であり、高い人気を誇っている敵でもあるので、いつかどこで役に立つであろうと準備を進めていました。とは言え、5種族×各部位とアイテム数が多く、装備の性能によって有用・不要で選別されてしまうのももったいなく、オシャレ装備として自由に楽しんでもらうことが好ましいだろうとタイミングを図っていました。ちょうど『FFXIV』でもクロスオーバーコンテンツ“エコーズ オブ ヴァナ・ディール”の戦利品としてアークエンジェル装備が実装されましたので、連動感も出てよかったと思います。
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――つぎに、今年1月に入ってからの実装になりますが、上位ミッションバトルフィールド“★勾玉の輝き”についてもお聞かせください。

藤戸
 これについては、当初の計画にはなかったものです。まず、2023年末に実装した新バトルフィールド“桃色輪舞曲”が新しい遊び場となり、またエクゼンプラーポイントを稼ぐためのコンテンツとしてもかなり好評でした。しかし、その後に続く“比較的挑戦しやすいバトルコンテンツ”が存在していなかったため、なんとかここを追加したいと考えていました。

 そんなとき、谷口くん(※)が『FFXI』の開発に戻ってきてくれたので、「バトルコンテンツをひとつ作ってほしい」と急遽お願いして作ってもらいました。これによって、ミッションの上位バトルフィールドはひと通り実装することができたかなと思います。
※プランナーの谷口勝氏。『アルタナの神兵』より参加し、モンスターの挙動や各コンテンツを担当。『アドゥリンの魔境』では風水士や魔導剣士の設計も担当している[IMAGE]
――システム面では、10月にGAMEPAD Configに組み合わせボタン機能などが追加されました。こちらはプレイヤーの要望が反映された形なのでしょうか?

藤戸
 追加機能実装のいちばんの理由は、パッド操作に特化した作りのタイトルのわりにはパッドでできないことがある、という点です。とくにソフトウェアキーボードをメインに利用される方ほどフォローが必要になると思うのですが、その場合に“キーボードでのみ使用できる機能がパットでは使えない”ということが問題でした。たとえば、F8キーでもっとも近いNPCをターゲットする、などですね。そこでGAMEPAD Configを調整しよう、ということになったのです。また内容も全般的に古くなっていた部分があり、段階的に新たなキーアサインなどを導入して遊びやすくしました。

――このほかに2024年から現在にいたるまでのバージョンアップでは、アンバスケードの報酬交換ポイントの引き下げや、デュナミス~ダイバージェンス~の再突入時間短縮要素の追加などがありました。これらはどういった方針で調整されたのでしょうか?

藤戸
 いま挙げていただいたもの以外に、アイテムヘルプにおけるAlt属性の追加、カザナルサファイアや大冥宮の星が売却可能になるなどがありましたが、それらはフォーラムの要望などをできるだけ反映していくという方針に基づいています。また、デュナミス~ダイバージェンス~は、従来のような3日縛りの制限ですと予定を組むのに不便で、できるだけムダな待ち時間を減らしてほしいという要望が多かったため、こちらも調整しました。

 現状のプレイヤーに合わせた調整という点では、去年実施した冒険者意識調査がかなり参考になりました。いまのヴァナ・ディールはソロプレイヤーがかなり多いこと、またパーティプレイを楽しんでいる人でも固定での活動が大半であることの判断材料が、ゲームデータ以外で増えたことの意味や意義は大きかったです。とくに大多数のプレイヤーがログインしたいときにログインし、遊びたいコンテンツをソロでプレイしてログアウトしていく、というプレイスタイルであることが可視化できたことは、開発方針を定めるうえでも重要視しています。

――たしかに、冒険者意識調査の集計結果では、いまの『FFXI』プレイヤーの傾向が浮き彫りになる結果となりました。

藤戸
 こういったプレイスタイルを前提にすると、こまごまとした部分であってもストレスを感じるのであれば、直せるものは直していきたいと考えています。開発チーム全体で確認している“やることリスト”のようなものがあって、遊びやすさの向上につながるものから、進行不能になるような不具合の修正など多岐にわたる要素に順位付けをしながら対応を進めているため、SNSやフォーラムに寄せられるフィードバックも拝見しながら、今後も継続的に取り組んでいきます。

朗読劇の開催や新番組のスタートなどゲーム外の盛り上がりも


――2024年は朗読劇イベントの開催や、情報番組“A.M.A.N.とLIVE!”の配信が始まるなど、ゲーム外でもさまざまな動きがありました。これらの感想もお聞かせください。

藤戸
 率直に言って、朗読劇や情報番組の制作を手掛けてくださっている皆さんには感謝しかないですね。“A.M.A.N.とLIVE!”に関しては、プレイヤーの皆さんに対して情報を発信することで何らかのコミュニケーションが取れればとつねづね思っていたので、すごくいい機会になっています。これまでも毎月のバージョンアップのお知らせでは自分が文章を書かせていただいていますが、さらに番組があることで「お知らせでお伝えした開発情報の詳しい意図はこうです」といったことを掘り下げてフォローできるようになりました。

――2024年2月に第1弾“異聞のウタイビト”、2025年3月に第2弾“夢幻のウタイビト”が開催された朗読劇についてはいかがでしょうか?

藤戸
 こちらのほうも、主催していただいたKADOKAWAさんには本当に「ありがとうございます」という気持ちでいっぱいです。20年以上も前にスタートした『FFXI』のリアルイベントが、2023年から2025年まで、いまのところ毎年開催できているという事実がもう本当にすごいことだなと。

 私たちがイベントを手掛けるとなると、どうしてもパネルセッションや、新情報のプレゼンテーションといった内容が主になるかと思います。対してこの朗読劇は、クローズドな形での開催ではありましたが、プレイヤーにとって“新たな物語の提供”です。『FFXI』を愛する人たちが、同じように『FFXI』に心を寄せるお客様へとプロデュースする、冒険者の心の琴線に触れるようなイベントになったのではないでしょうか。ぜひ今後も、このような特別な体験の機会をもっと広げられたらいいなと思っています。
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冒険者意識調査で見えてきた現在のプレイスタイル


――先ほども話題に挙がったように、2024年にはプレイヤーに対しての大規模なアンケートである“2024年『FFXI』冒険者意識調査”が実施されました。この集計結果を受けての方針などを、もう少しお聞かせください。

藤戸
 アンケート結果で最重要視したのは、現在のプレイヤーが『FFXI』をどうやって遊んでいるか、という点です。先ほどもお話ししましたが、いまのプレイヤーの大半がソロ、もしくは決まった仲間とのパーティで遊んでいる状況で、“やりたいこと”を“やりたいとき”に遊ぶことを求めていることへの理解を改めて深めました。

 『FFXI』はもともとグループを組むことを前提に設計されていることもあり、さまざまな場面で複数人での協力を要求しています。またサブスクリプションベースのMMORPGでは標準的な考え方、いわゆるTime to Win(※)と呼ばれる構造であることから、どうしても「ソロでは遊びにくい」、「時間がかかる」という点がこれまでずっと課題として上がり続けてきました。今回のアンケート結果は、改めてその点がお客様のニーズであるとして、取り組むべき最優先課題であることを浮き彫りにしたと思います。
※オンラインゲーム界隈では「時間をかけられる者が勝利する」という意味で用いられる言葉。T2Wとも。類義語として「Pay to Win(お金をかけられる者が勝利する)」がある。
――集計結果を見ると、国内では53.4%、海外では45%のプレイヤーが「基本的にソロ」と回答しています。

藤戸
 昨今の運営型ゲームなどは、まさにそんなソロプレイヤーが隙間時間にサクッと楽しめる作りになっているので、今後それらと共存していくためにどうしたらいいかを考えています。また『FFXI』には、ソロでも遊びやすくするためにフェイスが存在しますが、いまではそのフェイスも力不足な部分が見えてきています。ですので、今後はソロプレイでさらにフェイスが役に立つように強化していこうと思っていて、これがいまの大きな目的のひとつと言えます。

――また、コンテンツ参加人数の緩和を求める声も多く寄せられました。

藤戸
 特定のコンテンツを遊びたいときに多人数、つまり3人以上のパーティでないとプレイできないものがあるという点ですね。これまで「ソロでもプレイしたいけど歯が立たない」、「そもそもコンテンツにアクセスすることすらできない」という状況だったのに対し、どうしたらアクセスしてもらえるようになるのか、新しい遊びとして認識していただけるようになるのか、という部分を練っているところです。

 わかりやすいところでは「デュナミス~ダイバージェンス~をひとりでも遊びたい」という要望が多いのですが、現状ではソロで入っても敵が強く、よほど装備が整っていない限りは何もできないまま終わってしまいます。では単に敵の強さを調整すれば済むのかというと、当然そういうことでもない。レイヤーエリアとはいえダイバージェンスはかなり巨大なので、そんなにたくさんレイヤーを分けて作るわけにはいかないのです。そうなると、アンバスケードのように順番待ち、それも2時間以上、というようなことになってしまいかねないので、そこをどうするかが課題となっています。その解決のためにもう少々時間をいただければと思います。

――日本と海外の双方で目立った回答として、新たなストーリーやクエストの追加に対する要望がありました。この点についてはいかがでしょうか。

藤戸
 やはり“お話”の力がすごく大きいというのは理解しています。我々としてもできることなら、タブナジア本国や北のオーク帝国を訪れてみたいところですが……いろいろな面で難しいというのが正直なところです。先ほどお話しした朗読劇のように、たとえば書籍や映像作品など、ゲーム以外でも新しい物語を展開する手法はありますので、現状を考えると、そういういった方向性で新たなストーリーを展開することが現実的かな、と思っています。

――ストーリー関連の要望以外では、国内だとジョブバランスや既存コンテンツの調整など、すでに実装されているものに対しての要望が目立ちました。それに対して海外の回答では、新たなコンテンツの追加やさらなる成長要素など、新しいものの実装に対する要望が多数を占めました。これらの要望についてはいかがでしょうか。

藤戸
 個人的に日本の方と海外の方の意見は、突き詰めると同じことだと思っています。要は「新しいチャレンジをしたい」ということなのかと。ですから既存・新規に関わらず、そういった新しいことにチャレンジできる場所は毎年提供しなければならないと思っていますし、その一環として今年度は新リンバスを実装することになりました。
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新リンバスではアーティファクトやレリック装束がさらに強化可能!


――その新リンバスについて、どのような内容になるのか概要をお聞かせください。

藤戸
 新リンバスは多人数で同時参加できる、非占有型のバトルコンテンツとして実装します。まさに“ソロでも遊びたいときに遊べる”ようにしており、滞在制限時間なども今回は特に設定しない仕様で制作を進めています。また、アンバスケードのように周回して遊べるコンテンツはすでにいくつもありますが、新リンバスでは「もっとほかの人といっしょに遊びたい」、「協力して戦いたい」という要望にも応えられるよう、多数の人が参加すればするほど楽しくなるような設計にしています。

 あわせてアーティファクトやレリック装束を強化するための要求コストを下げ、いままで実装されていた強化ぶん(+3まで)は手軽に作ってもらいたいと思っています。さらにその一段階上のものを新リンバスで作っていただこうと。こうした一連の緩和は、初心者や復帰者の方が、長年プレイしている冒険者たちの装備に早く追いつけるように、という意図によるものです。

 現在は『FFXIV』でクロスオーバーコンテンツである“エコーズ オブ ヴァナ・ディール”が実装されて、『FFXI』に興味を持っていただいている方が増えてきているタイミングでもあります。「かつて冒険者だったけれど、ひさしぶりにプレイしてみた」という方もたくさん見かけるようになったので、そういった方々にも、いままで面倒だった装備強化の部分を、できるだけ早く駆け抜けていってもらいたいと思っています。

――新リンバスは非占有型のエリアになるということですが、ほかのプレイヤーとの関わりはどのようなものになるのでしょうか?

藤戸
 占有型エリアになってしまうと、どうしても固定グループを作って攻略する、といった形になってしまいがちですし、かといってドメインベージョンのように多人数で1体の敵とだけ戦っていく、というのも厳しいかなと。そこで、敵の強さをある程度自分で調整できるようにしたうえで、みんなが戦っているところに自分も参戦でき、かつ他人の邪魔にはならない、すでに戦っている人に遠慮する必要もないようなコンテンツを目指しています。もちろんパーティで参加してもいいですし、すでに現地で戦っている人とパーティを組んでも問題ありません。

要望の多かった種族変更サービスがついに実現


――直近の話題としては、種族変更サービスがついに導入となります。

藤戸
 本来は5月のバージョンアップと同時に実装したかったのですが、サーバー側のやり取りの部分で検証に時間がかかっている状況です。種族変更には料金がかかりますので、万全の形でお届けしたいと思っています。5月19日にはサービスを開始する予定です。
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※画面は開発中のものです。
――サービス開始から23年が経ったいま、なぜ種族変更を可能にしたのか、改めてその意図をお聞かせください。

藤戸
 種族変更はとくに海外からの要望が多かった案件でした。『FFXI』ではキャラクターの外見と名前がセットでプレイヤーのアイデンティティーになっていますので、そのプレイヤーのアバター(分身)としてイメージを固定化するという意図で変更を不可にしていました。しかしサービスを続けていくうちに、自分のキャラクターについて「見た目のタイプや性別などを変更したい」という方が出てきました。また、ほかのゲームでもそういった変更が可能な作品が多くなってきたということもあり、昨今のさまざまな事情も踏まえていい機会だと考え、種族変更サービスの導入に踏み切りました。

――時代の変化もありますね。

藤戸
 なお本作は、もともとキャラクター自身の外見について単一のものを維持することが前提で作られており、そこを変えるとシステム的にいろいろと不都合が生じてしまうことが多かったのですが、そこはある程度プレイヤーの皆さんにも許容いただく形で進めることにしました。たとえば、ガルカのキャラクターからタルタルへ変更した場合、所持していたガルカの専用装束などは装備できなくなります。また、踊り子の専用装束など一部の例外を除いた性別専用装備も同様です。これらは特定のショップで購入可能なものも多いので基本的に交換することもしません。

 また、外見をプレイヤーのアイデンティティーとして考えた場合、気軽に何度も種族や性別を変更してほしくはないな、という気持ちはありまして、そのための心理的ハードルとしても有料とさせていただきました。ですので、その点をご理解いただいたうえで利用いただければと思います。

25周年を見据えて今後予定されていることは?


――ここからは、今後の計画についてお聞かせください。

藤戸
 まず、新リンバスについては6月に第一弾を実装予定です。まずは基本的なパートから、順番に実装していきます。その後、“二足歩行になったり四足歩行になったりするヤツ”や、“浮いていてすごいバスター砲のようなものを撃ってくるヤツ”が実装されることになると思います(笑)。

 ビシージは今後、コンテンツレベル(CL)114、119と実装していく予定です。もしかしたら、CL114と119は同時に実装するかもしれません。これまで順当にコンテンツレベルが上がってきていますが、そろそろ蛮族軍も本気を出してくるといった感じですね。また強くなっているほうの拠点ボスからの戦利品も、このままだと見合わないものになりますので、行軍レベルが高いとき用のテーブルを新設する話もしています。

――先ほども少し言及された、フェイスの強化についてはどうでしょうか?

藤戸
 これはまだアイデアの段階なので決定した仕様ではないものの、単にフェイスのパラメーターを上げたりするだけ、ということは考えていません。たとえば盾役タイプや魔道士タイプのフェイスなど、それぞれのタイプ別にセットできる装備のようなものを考えています。オートマトンのアタッチメントに近いイメージでしょうか。盾タイプだったら物理攻撃に強くなるものや、魔法攻撃に強くなるようなものをセットできるようになる、という感じで、ある程度の方向性をカスタマイズしていくものです。ただ、あくまで構想の段階なので、煩雑になってしまいそうであれば見直しますし、実際の調整がスタートするのは来年以降になると思います。

――以前にアンバスケード防具+3の実装を検討している、とも語られていましたが、こちらについては?

藤戸
 アンバスケード装備に関しては、何かしら手を入れたほうがいいなとは思っていいます。ただ、いまはアーティファクトとレリック装束のひとつ上の段階を作っているところで、そちらのほうが容易に入手できるようになったら、そもそもアンバスケード防具をさらに強化しても、その意義自体が問われてしまうことになりかねません。ですので、今後アンバスケードの各ポイントがもっと容易に稼げるようになったとしたら、そのときはアーティファクトやレリック装束までのつなぎの装備としてアンバスケード防具を使ってもらうため、全体を見て調整を入れることになるかと思います。

――これもプレイヤーからの要望が多い、青魔法セットの保存や、からくり士のアタッチメントのセット保存についてはどうでしょうか?

藤戸
 望まれている声が多いことは認識していますが、すぐに着手することが難しい状態です。いまはエンジニアの工数としてかなり重めの進行不可案件の対応を最優先で対応してもらっていますので、うまく隙間ができたタイミングでこの案件にも取り掛かってもらう想定です。

――今後の予定としては、2024年11月に『FFXI』とのクロスオーバーコンテンツとして『FFXIV』に実装された“エコーズ オブ ヴァナ・ディール”も、もうすぐ第2弾が登場するかと思います。まず第1弾“ジュノ:ザ・ファーストウォーク”の反響はいかがでしたか?

藤戸
 たいへんありがたいことに、「楽しかった」というコンテンツそのものへの感想に留まらず、光の戦士の皆さん(※)が、「実際のヴァナ・ディールはどうなっているんだろう?」と、『FFXI』の配信をしてくださったり、それを視聴された方々が実際にプレイしてくださっている状況がしばらく続いています。

 これまでも、エオルゼアにはシャントットやイロハが出張してくれたりしていましたが、今回は定常的なコンテンツとして『FFXI』の世界やキャラクターが膨大なボリュームで登場していることもあって、いままで以上に『FFXI』に興味をもっていただけていること、『FFXI』を思い出していただけていることがありがたいですね。『FFXI』のプレイヤー数としても、この1年間くらいは横ばいから微増へと推移しています。第1弾の実装から約半年が経っていますが、『FFXI』のストーリーを追体験していただくにはちょうどいい期間だったのではないでしょうか。
※FFXIVのプレイヤーの総称[IMAGE]
――コラボに関する動画配信などは本当に多かった印象です。

藤戸
 またキャンペーンとして、『FFXIV』プレイヤーが『FFXI』をプレイする際に初回サービス基本料が半額になる“エコーズ オブ ヴァナ・ディール割引”(2025年3月11日まで)を実施したことなども手伝って、「『FFXI』はこういうゲームなんだ」と再認識してくださった方々が多数いました。“エコーズ オブ ヴァナ・ディール”の第2弾、第3弾が実施されるときには、再びこのキャンペーンを実施するつもりです。

――最後に、23周年を迎えるヴァナ・ディールの冒険者の皆さんに、ひと言メッセージをお願いします。

藤戸
 これまでいっしょに盛り上げてくださったプレイヤーの皆さんが、現在にいたるまで数多くいらっしゃるのは、『FFXI』のコミュニティがほかのゲームタイトルと一線を画す点だと思います。ですから我々としても、できるだけそんな皆さんのご要望に応えていきたいと思っています。現実的にできないことも少なくありませんが、そんな中でも「『FFXI』をこれからも続けていこう」という気持ちは強く持っています。

 まず目指すところは25周年、そしてつぎは30周年と、皆さんが楽しく遊べる場所として『FFXI』を維持していきたいと考えていますので、冒険者の皆さんにはぜひこれからもいっしょにヴァナ・ディールを作っていっていただけたら、と願っています。
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