『都市伝説解体センター』ジャスミン先輩に学ぶインターネットの悪意への対処法。しんどいときに手を握っていてほしいと思った。

by井口エリ

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『都市伝説解体センター』ジャスミン先輩に学ぶインターネットの悪意への対処法。しんどいときに手を握っていてほしいと思った。
 墓場文庫が開発を、集英社ゲームズが販売を手掛けるNintendo Switch、プレイステーション5(PS5)、PC(Steam)向けミステリーアドベンチャーゲーム『都市伝説解体センター』。

 都市伝説が大好きな筆者が「これ絶対おもしろいやつじゃん!」と飛びついたのは、もうすでに話題になっていた頃でした。2025年2月13日に発売してから即人気に火が付き、10日間で累計販売数10万本を突破。集英社ゲームズのバックアップがあるとはいえ、インディーゲームで10万本はかなりすごいこと!
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都市伝説解体センター長・廻屋渉(めぐりやあゆむ)
 怪異や呪物などの調査・解体を行う“都市伝説解体センター”のメンバーとして真実を追求していく本作。実際にプレイしてみると、有名なものから何となく名前は聞いたことがあるような……くらいのものまで、さまざまな都市伝説が登場してワクワクしました。

 また、都市伝説解体センターのメンバーは個性的で魅力的、ポーズをマネしたくなるキャッチーな解体シーン、謎解きが苦手な自分でも問題なく進められる難易度、読み進めるとストーリーの点と点がつながっていく感覚の気持ちよさなど、たくさんの好きなポイントが見えてきました。本作の魅力は“都市伝説”だけではないのです。
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物語を進めると都市伝説の情報が集まっていきます!
 中でも筆者が強く惹かれたのは、ジャスミンさんでした。都市伝説解体センターで調査員や運転手として働くジャスミン先輩は、悪意うごめくインターネットで生き抜くために大事なことを教えてくれます。メインとなる都市伝説について語りたいのはやまやまなのですが、あえて今回は、ジャスミンさんを中心に語らせていただこうと思います。
[IMAGE]※編注:3月下旬くらいの公開を予定していたのですが、同時期に人気投票が始まったので、タイミングを見計らっていました。投票期間中だと“ジャスミン先輩応援記事”みたいになり、それもよくないと思い。いまなら大手を振って公開できます。「わかるー!」と頷きながらお読みください。

クールだけど意外と面倒見がいい“ジャスミン先輩”

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止木休美(とまりぎやすみ)。お団子ヘアの彼女が、主人公・福来あざみ(あざみー)の先輩にあたるジャスミン先輩。
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左が主人公のあざみー。世間で話題になった事件を知らなかったりするのは、箱入り娘だから……?
 ジャスミン先輩の最初の印象は気怠げでクールで、やる気がなさそうな感じ。そもそも都市伝説解体センターの職員をしているのも不思議なタイプかも……。

 そんなジャスミン先輩が教えてくれた業務が“SNS調査”です。
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SNS調査は物語の進行に必要不可欠な作業!
 SNSを使って、都市伝説の噂の輪郭を確かめる、ストーリーの進行に必要な調査です。だけど、これがちょっと厄介な作業で。

 というのも、
『都市伝説解体センター』作中のインターネットの解像度が妙に高いのです。本来、「解像度が高い」とは、画像や動画などが高精細であることを表す言葉ですが、近年は創作物などで「鮮明に細かく表現されている」という意味で使われることも多いです。
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ドット絵なのに”解像度が高い”とは……?
 開発を手掛ける墓場文庫は「比較的、低解像度のゲームを制作していますが、ネットの評価を見ていると「SNSの解像度が高すぎる」と言われており困惑しております・・・」と公式がネタにするぐらいに。

解像度が高すぎる“インターネット”に立ち向かう

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栄子★年商1億円コンサルのSNS投稿を精査します。
 「友達の家に変な男がいて、襲われそうになって警察呼んだ」という内容の投稿がバズっているのをSNS調査することになったあざみー。その投稿には複数のコメントがついていました。
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 その中には心配する声から警察を憂う声、投稿者の過去への言及など、さまざまなコメントが見受けられます。これは現実のインターネットでもよく見かける光景ですね。数あるコメントのひとつに、「これの何が面白いの?センスというか育ちが悪すぎ。」というものが。
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シンプルクソコメだ!
 投稿者だけではなく、投稿に反応したユーザーやコメントを見ているユーザーまで全方位に刺す、シンプルだけど切れ味の高いクソコメ。まるで投稿の向こうに実際に人間がいるのを想定していないよう……これはかなり芸術点の高い”クソコメ”なんじゃないでしょうか。

 気分は悪いですが、ジャスミン先輩の「こういう輩は言いたいだけだから。」が救い……。ジャスミン先輩のインターネットとの向き合い方、めちゃくちゃいいのです。

 この後、あざみーは友達がSNSで炎上しているのを見て、擁護するコメントを残しますが、「美桜(あざみーの友達)ちゃん擁護してた女はどうしたんだ?」という投稿から、自分もインターネットの悪意の標的となっていることを知ってしまいます。こういうときこそジャスミン先輩。
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あざみーもネットの悪意の標的に……!? この世界のインターネットには悪意しかないのか。
 やんわりとコメントを読むことを止めてくれるジャスミン先輩のやさしさが身に沁みます。

 「思い上がっている擁護女。言い逃げというか言い捨てだったな。」。顔が見えないからって言いすぎでしょ。これが実際に自分に向けられた悪意だったとしたら、つらくてしばらく引きずりそうです。

 ジャスミン先輩はここでレスバトルを続けるのではなく、都市伝説解体センター職員である自分たちの方法で友人を救うことを勧めてくれます。そうだね……。

 情報収集を続けていくと、インターネットの悪意は暴走して、個人を特定しようとする人が出てきます。これもインターネットではよく見られる流れだ……。
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インターネットの悪いあるある。
ジャスミン「こういう流れになると 暴く気持ちよさが優先されるから 厄介だわ。」

 頼りになるジャスミン先輩も頭を抱える流れ。こんな感じで
『都市伝説解体センター』のインターネット、作られた悪いインターネットなはずなのになんだか既視感のあるコメントばかりなんです。

 いかに日常的にインターネットで悪意を見ているかということを思い知らされましたね……。無意識とはいえ、反省です。いったんジャスミン先輩のすてきさに触れて心を清めましょう。
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好きなジャスミンさん(1)
ジャスミン「調査だからって こんなの無理に
全部追わなくてもいいよ。」←やさしい
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好きなジャスミンさん(2)
ジャスミン「あーもー落ち込むな。これは今後のための注意!
あんたを責めているわけじゃないから」←なんだかんだ面倒見がいい
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好きなジャスミンさん(3)
ジャスミン「何かとお知らせしたがる奴って 
何になりたいの?」←言葉の火力高すぎて惚れる
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好きなジャスミンさん(4)
ジャスミン「他人事だからね。なんだって言ってくるよ」←このスタンスでインターネットと向き合いたい

 私がインターネットを見るときにも、隣で手を握っていてほしいが……? ジャスミン先輩が側にいてくれたら、インターネットともっとうまく付き合える気がする!

『都市伝説解体センター』で己のインターネット観と向き合う

 『都市伝説解体センター』をクリアーしてからというもの、私のインターネット観に変化が現れました。SNSで物議を醸す投稿を目にした際、つい経緯や詳細を調べようと情報に深入りしてしまうときに、脳内でSNS調査のBGMが流れて「これ以上インターネットの悪意を浴び続けるのはよくない」という気持ちになるようになったのです。これはかなりいい傾向かも。
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ジャスミン「(コメントを)真に受けるなよー」。こうでありたい。
 いまではジャスミン先輩ぐらい達観してSNSと付き合いたいものだなと思っています。SNSやってる年月だけ長くなっていくけど、よっぽどジャスミン先輩の方が付き合い方がうまい。こうなりたい……。

 現実にはインターネットを見ているとき、私の手を握ってくれるジャスミン先輩はいませんが、都市伝説を解体していった経験が、自分を悪いインターネットから守ってくれる……。そんな気がします。
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悪いインターネットも解体だ!
 都市伝説は噂や人の思念などから生まれるもの。

 それで言うと、カスのインターネットを見ているときに手を握ってくれるジャスミン先輩という幻覚も、都市伝説になってもおかしくないのではないかと思います――。
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 まあ、手を握ってくれるというのは完全に筆者の幻覚なので、正確には「悪いインターネットを深入りしすぎそうになるとどこからともなく現れて、蹴り倒してくるお団子頭の女性の怪異」が正しいかもしれません。
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 では、今日はこの辺で。
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