
友人と絶交した、家族と疎遠になった、親しい人を亡くした、と悲しくつらいものだというイメージがあります。また、トーベ・ヤンソン氏の小説『ムーミン』に登場するムーミントロールとスナフキンのように、冬のあいだだけお別れする、という再会を約束した一時的な別れもあります。
日常系アドベンチャー『Afterlove EP』で描かれる別れは、主人公・ラーマの恋人であるチンタが、永遠の眠りについてしまうというものです。
本作は、『コーヒートーク』を手がけ、2022年に惜しまれつつ亡くなったインドネシアの人気デベロッパー、Fahmi氏の遺志を開発チームが受け継いで製作された作品。ラーマを取り巻く人間関係や、ラーマの心理描写の繊細さは、『コーヒートーク』を思い出させます。
今回、製品版のゲームコードを提供してもらいプレイをしたので、インドネシアの首都・ジャカルタを舞台に、ひとりのミュージシャンが前を向いて歩き出すまでの物語、その一端をご紹介します。
聞こえてくる声は幽霊となった恋人のもの? それともすべてがラーマの妄想?
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なぜなら、チンタが亡くなってしまったから。
彼女は体が弱かったか、持病があるような描写があったので、おそらく突発的な発作で亡くなってしまったのでしょう。
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ラーマは、“ジークムント・フュート”というスリーピースバンドのギター&ボーカルを担当していました。しかし、チンタを喪ったショックから立ち直れず、バンド仲間たちと一切の連絡を取らずに、1年以上塞ぎ込みます。バンドにとっては、メジャーデビューを目指している大事な時期だったのにも関わらずです。
チンタを忘れ、前を向いて再起しようとするラーマですが、なかなか踏み出せないのには理由がありました。チンタの声が、まるでそこに存在するかのようにラーマの頭の中にあるからです。
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というのも、我々プレイヤーは、生きているころのチンタのことをほとんど知りません。ですから、このチンタの声が“本物”なのか、“ラーマの空想上の声”なのか、判別がつかないのです。
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「この人、あなたに嫌味を言ってる」、「あなたはあんなにつらかったのに、この人たちはぜんぜんわかってない」、「あなたはこんなにがんばっているのに、この人たちは理解がない」ということを、ずっと言ってくるんです。
もちろん、チンタがもともとこういう子(ラーマ全肯定Bot)だった可能性はあります。でも、チンタを知らないからこそ思ってしまうのです。これは、チンタを忘れたくないラーマの“自己防衛”の心から生まれた妄想なんじゃないかと。
でも、ときどき、ラーマからは出てこないような思考や発言がチンタから出てくることもあり……本当のことは、誰にもわからないのかもしれません。
あっちにもこっちにも「わかる!」となりすぎて赤べこになってしまう
たとえば、主人公のラーマ。彼はチンタを亡くしたことで、もっとも傷つき、痛みを感じているのは自分だと主張しています。もっともな主張です。
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チンタにずっと離れないでほしいと思いながらも、亡くなったチンタの声が聞こえることを“異常”だと自覚しているラーマは、心理セラピーを受けることに。彼は、セラピーを通して自身の“思考”と対面することになります。
ラーマは、チンタを喪った悲しみを誰も理解してくれないと嘆きます。それに対し、セラピストの先生は「その気持ちを口に出して伝えたことは? 自身の弱みをさらけ出したことはありますか?」と問い、ラーマはこれに「僕は歌にすべての感情を込めているんだ。その歌をメンバーのみんなも聞いているはずなのに」と返します。
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これ、ラーマ本人からすれば「口に出して『僕は死ぬほどつらい』と言った」判定なんですよね。でも、バンドメンバーからすれば「慰めようにも何も言ってくれないからわからない」なんですよね。私は言った、いや聞いていない、こういうすれ違いを経験した方は多いと思います。
また、“ジークムント・フュート”のベーシストであるターシャは、情熱的で、夢のためならいくらでも努力できるタイプ。
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本人は上を目指しているだけで何も悪くないのですが、「お前、熱くなりすぎ。俺たちは楽しければそれでよかった。もうついていけねぇよ」と言われるタイプですね。
そして“ジークムント・フュート”のドラマーであるアディットは、ひと言であらわせば自我が薄いタイプ。
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対話が足りていないのに「わかってくれない」と塞ぎこむラーマ、同じ目標を掲げている仲間なのに足並みを揃えてくれないと憤るターシャ、自分だけで叶えたいことはないけれどいっしょにいたい人はいるアディット。
全員の! 気持ちが! わかる!!!
「いやー、言ったんだけどな。でも伝わってなかったら言ってないのと同じか……」、「あなたがやろうって企画したことなのに、なんで進んで取り組まない?」、「旅行先でまわりたい観光スポット? 希望はないから決めていいよ。いや行きたくないわけじゃなくて……」。←これ、全部思ったことあります。
登場するキャラクターの言動に、「あ、それわかる」とか、「いや~昔の自分、こうだったなぁ」とか、とにかく共感性がエグいのです。このゲーム。
彼らの会話を聞いていると、なぜかよくわからないけど心に響く詩を読んでいる気分になります。
ジャカルタの情緒をじっくり堪能
そして、本作の舞台はインドネシアの首都・ジャカルタの現代。これは国内が舞台の場合もそうなんですが、とある地域を舞台にした作品は、その土地独特の情緒を感じさせてくれるので好きです。
たとえば、本作ではジャカルタの街並みを擬似的に感じられます。
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マップ内に“Mol Blok W”という施設がありますが、これはジャカルタにある“Blok M Square”がモチーフになっているのではないでしょうか。
ゲーム内では、街並みや食べもの、売っているものなど、ジャカルタらしさを感じられるものがたくさんあります。ときには“日本”を感じるものもあったり……。
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ちなみに、ゲーム内で登場する“L’Alphalpha”も実在するインドネシアのインディーズバンド。本作のサウンドトラックの制作も担当しています。
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誰と交流を深めるか、ラーマのバンドはどうなるのか、決めるのはプレイヤー自身
でも、時間は待ってくれません。月末には約1年ぶりのライブが控えています。
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ですので、プレイヤーはライブまでの1ヵ月間、ラーマを導いていく役目があります。誰と会って、どんな会話をするか。チンタとの向き合い方はどうするのか。すべてはプレイヤー次第というわけです。
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ジャカルタの異国情緒を感じつつ、人間関係を修復する難しさを知る。ぜひ『Afterlove EP』をプレイして、みなさんもキャラクターに共感して頷きまくる赤べこになりましょう。
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