【ときメモ】30周年ライブ、女々しい野郎の感想。憧れの「はい鏡さん!」で思い出す 『ときめきメモリアル』色の青春

byミス・ユースケ

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【ときメモ】30周年ライブ、女々しい野郎の感想。憧れの「はい鏡さん!」で思い出す 『ときめきメモリアル』色の青春
 『ときめきメモリアル』のイベントを初めて観覧し、いろいろな感情がない交ぜになって、開始早々に泣いてしまった。この記事ではそういう心の柔らかい部分を書いていく。

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 完全に僕の主観なので、ライブ全般のリポートを読みたい人は以下の記事をどうぞ。
 “ときメモ”の愛称で知られる『ときめきメモリアル』は、大げさに言えば時代を作った。“恋愛ゲーム”が一般に認知される前に颯爽と登場し、主要ジャンルへと押し上げてしまった。

 PCエンジンSUPER CD-ROM2版が発売した1994年5月27日は時代の転換期。『
ときメモ』以前/以後を人類史に置き換えると、BC/ADくらいの違いがある。

 たとえば、日本において“RPG”の地位を確固たるものにした『
ドラゴンクエスト』。たとえば、“歴史シミュレーション”というジャンルを確立した『信長の野望』。それらと同列に語られていいゲームだと思う。

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 プレイステーション版の『
ときめきメモリアル ~forever with you~』が発売された当時、僕は高校1年生だった。きらめき高校で3年間をすごすゲームなので、ちょうど年齢とリンクしている。

 当時15歳のユースケ少年は精神面の成長が遅く、恋愛と言われてもピンと来なかったものの、「すごいゲームが出るぞ」と先輩から熱く解説されたことを覚えている。女の子キャラはふつうに好きだったと思うが、キャラとのやり取りでどきどきすることに想像が追いつかない。“恋愛をするゲーム”って何なんだ。

 基本的には素直なので、そんなにすごいのかと疑うことなく購入。一気にのめり込んだというより、なだらかなカーブを描くように
『ときメモ』を好きになっていった。

 いま思い返すと、最初に如月(未緒)さんを攻略するあたり、すでに眼鏡好きの片鱗を見せていたのだなあと感心するばかりだ。

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 思春期の僕に多大な影響を与えた
『ときメモ』は2024年5月27日でまるまる30周年。記念ライブが開催されると知ったときは「あー!」と声を上げた。しかもメインキャストが全員集合。そわそわする。動機が収まらない。

 これはもはや事件だ。歴史の1シーンだ。目に、耳に、心に焼き付けなければならない。

ファン(メモラー)から贈られたお花がすごい

 というわけで、とっておきのコロンはないけど、とっておきのおしゃれをして、30周年記念ライブ“ときめきメモリアル 30th ANNIVERSARY LIVE エモーショナル presented by TOKYO MX”の会場にやってきたのだった。2024年5月18日と19日の2日間開催で、僕が行ったのは2日目。

 会場入りしてまず目に留まったのが、

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 きらめき高校の制服だから最高である。たしか25年くらい前にコスチュームブランドのコスパから発売されており、これは2024年12月に発売予定のリニューアル版。

 コスプレイヤーの中には“コスプレ衣装は自作じゃないとだめ”的な人がいるのだが、コスパのきらめき高校制服はできがよく、コスプレイベント会場でよく見かけたものだ(僕は元コスプレイヤー)。これと『
女神異聞録ペルソナ』の聖エルミン学園制服は既製品のよさを知らしめた傑作だと思っている。

 ライブとは別のところでうれしくなってしまった。懐かしさが死角から押し寄せてくる。

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カメラマンにお願いして記念写真を撮ってもらった。

 周囲を見渡すと、僕と同世代か少し上くらいの人たちがにこにこしている。居心地のいい空間だ。

 みんなきらめき高校で思春期をすごした同窓生。昔の仲間が集まったら恋愛トークは鉄板だろうし、知らない人に「誰が好きだった?」と話しかけてもよかったんじゃないかと、いまになって思っている。

 ファンの気持ちはとても大きい。人体に留めておくことはできず、何らかの形や衝動となって身体の外にあふれ出す。お花(フラワースタンド)もその一種だ。

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 ロビーにはファン(メモラー)から贈られたお花が並ぶ。みんなこのライブの報せを受けて張り切ったのだろう。ファン層の中心はそこそこの年齢。祝い方も心得ており、社会での立場がお花の立派さに表れているのがリアルである。30年の月日は僕らを大人にした。

 好きな娘をイメージしたお花は、どれもとてもかわいい。これなんて、虹野(沙希)さんの衣装を飾ってあるのかなと思ったら、花びらをドレス型に組み合わせているのだ。

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スマホで寄りの写真を撮ったら色味がおかしくなってしまった(右)。申し訳ない。

 「すげー。すごすぎて笑える!」と写真を撮っていたら、隣りの人も「ですよね!」と興奮しているようだった。

 ほくほくした気分でほかのお花も眺める。

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お花の中に置鮎龍太郎さんの名前を見かけたときは思わず二度見した。

30年越しにメモラーの輪に加わる

 詩織を始め、『ときメモ』に登場する女の子はかわいい。そのかわいさは現実感を伴い、キャラクターソングに形を変えて多数リリースされた。たぶんファンイベントも開催されていたのだと思う。

 書き方が曖昧なのは、当時はそこまで広く
『ときメモ』を追えなかったからだ。お金がないので気軽にはCDや関連アイテムを買えない。ネットはいまほど気軽に使えるものではないから情報が少ない。仮に県内でファンイベントが開催されても、“参加する”という発想がなかったかもしれない(※)。
※交通手段が少ないので会場まで行くのがたいへん。また、田舎の子どもは世界が狭いので、遠く離れた場所に行くという考えに思い至らないことも多い。
 新潟県の片田舎で過ごす少年にとって、『ときメモ』ブームは遠い世界の話だった。

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キャラクターソングやライブで個性を出す手法はいまでは珍しくない。1995年頃という時代を考えると、ゲームでは『ときメモ』が元祖ではなかろうか。

 そういった理由もあって、僕は
『ときメモ』のキャラクターソングをあまり知らない。ほかのお客さんとは盛り上がるポイントが違ったらどうしよう。

 不安は冒頭の演出で吹き飛ばされた。ゲームのオープニングで流れるナレーションを声優陣が読み上げていく。僕はいま、15歳の頃に夢見た空間にいる。憧れは30年という時間をかけて昇華された。

 『もっと!モット!ときめき』が聴こえた瞬間、感極まって涙がこぼれる。それが冒頭の写真だ。

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 ソロ歌唱の1曲目は詩織(金月真美さん)の
『だからっ!』。なのだが、とあるハプニングでスタートが遅れ、紐緒さん(中友子さん)と舘林さん(菊池志穂さん)が場をつなぐことに。コール&ジャンプ練習の掛け声は紐緒さんの「ロボ、飛びなさい!」。うれしい。

 ちなみに、“とあるハプニング”とは、金月真美さんが曲順を勘違いして別の衣装に着替えてしまったこと。いつも完璧な詩織がこんなミスをするなんて、ちょっと微笑ましい。

 白いドレスでステージに上がった詩織はアイドルだった。芸能人としてのアイドルというより、本来の意味でのアイドル。彼女はやっぱりみんなの憧れ。
『ときメモ』の象徴なのである。

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 キャストの皆さんがステージに立つと、記憶の中の人物像が呼び起こされる。そこにいるのは鏡さんであり、紐緒さんであり、伊集院だった。

 えこひいきするようで恐縮だが、この3人が好きなのだから仕方ない。“ツンデレ”なんて言葉がない時代に目の前に現れた彼女たちは、ギャップに弱い男の心を持ち去ってしまった。

 “二面性”的な意味で使われがちなツンデレだが、元来は“時間経過による心境の変化”を示す言葉だ。出会った当初はそっけなかったり高圧的だったりしても、3年という時間の中で打ち解けていく。思春期の乙女心を描いた演出に、僕は“恋愛”というものを感じ取ったのだと思う。

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 ステージで歌う彼女たちはとてもすてきだ。ドレス姿の鏡さん(五十嵐麗さん)を見ていると、親衛隊たちの気持ちもわかる。

 きらめき高校内には鏡さんのファンクラブがある。こういったイベントになると親衛隊(来場者)との

「○○○○ね、みんな」
「はい、鏡さん!」

 という掛け合いが定番であることは何となく知っていた。ゲーム本編ではなく、CDドラマに出てくるらしい。いまかいまかと待ち構え、待望の「○○○○ね、みんな」。「はい、鏡さん!」と返せたとき、僕もメモラーの輪に加われたような気がした。

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 同じ親衛隊として、ほかのメモラーの皆さんとの友情も感じる。ところで、ゲーム内に出てくる親衛隊の面々はけっこう仲がいいんじゃないかと思う。同じ人が好きだという謎の連帯感。大人になった彼らが飲み屋で「あの頃は楽しかったよな」なんて笑っている様子を想像してしまった。なんかいいな、そういうの。

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 きれいな曲、かっこいい曲、かわいい曲と続き、メモラーたちはペンライトの色を変えて声援を送る。あるタイミングでは毛色の異なる歓声が響いた。好雄(うえだゆうじさん)の
『女々しい野郎どもの詩』である。これだ。僕はこれが聴きたかった。

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 バッドエンドのテーマ曲でありながらゲーム史上屈指の名曲(だと思う)。うえだゆうじさんの歌唱力に引っ張られるように客席からも歌声が広がる。自然と会場中を巻き込んだ合唱になったときは、あまりにうれしくてまた涙がこぼれた。

 歌詞で表現されているのは、言わば“ばかな男の後悔”。大人になったいま、改めてその意味を噛み締める。男なんてそんなものだよな、と。

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感無量。

メモラーのことをしっかり考えた演出

 ステージの作りは極めてシンプルだった。大型スクリーンがひとつあるくらいで、凝ったセットはなし。バックダンサーもキャスト陣が自分たちで務めている。

 スクリーンに流れるゲーム画面風の映像によると、このライブはきらめき高校の音楽祭という設定らしい。だからステージに上がるのはきらめき高校の生徒だけ。なるほど、筋が通っている。

 これは僕の想像だが、華々しいアイドルライブに寄せることはあえてしなかったのだと思う。それはきっとメモラーが求めているものとは違うから。僕らはただ、きらめき高校の空気に浸りたい。

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 時間はあっという間に過ぎていく。楽しい時間が止まってほしいと願うのもまた青春だ。いまも同じ気持ちで、詩織たちは「またライブをやりたいね」と口にする。別れを惜しむように流れた本編ラストの曲は
『♡のスタートライン~with you~』だった。

 このライブはきらめき高校の同窓会だ。昔を懐かしみ、30周年という区切りの意味を持つイベントが、これからを予感させる“スタートライン”で終わる。粋な演出である。

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 アンコールは10周年記念ソング
『10th SMILE(=じゅうねんスマイル)』、そしてゲームのエンディングテーマ『二人の時~forever~』。涙が頬を伝うのは何度目か、途中からもう数えていない。

 最後の1曲はもちろんオープニングテーマ
『もっと!モット!ときめき』。ずっと『ときメモ』を愛し続けるメモラーの31年目はここから始まるのである。パッと目の前が開けた気分だった。

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これからの『ときめきメモリアル』

 『ときメモ』ブームを遠巻きに眺めることしかできなかった田舎の少年は、30年の時を経てメモラーの仲間入りを果たした。「はい鏡さん!」と『女々しい野郎どもの詩』の合唱で、当時のもやもやが霧散していく。これはもはや禊である。

 ライブ開催が発表されたのは2024年2月のこと。キャラクターデザイナーのこくら雅史さんが新デザインのドレス姿を描き下ろし、しかも主要キャストが全員集合。その本気ぶりに震えた。

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音楽祭の終了後は伊集院家で打ち上げパーティーがあるらしい。このドレスはパーティー用の衣装なのかも。

 こうなるとおかしな熱意を発揮するのがファンというもの。歌詞や手拍子をまとめたコール本を作って無料配布する人たちがいたのである。歌詞をそのまま載せるので、著作権にも配慮してJASRACに申請する手の込みよう。

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開演前にこれで予習してました。

 会場となった立川ガーデンステージのキャパシティはおよそ2500席で2日間開催。両日参加の人がそれなりにいたとして、少なく見積もって来場者は3000~4000人ほどか。それほどの人数にフルカラー24ページの本を配ろうなんて、そんな豪傑は三国志にも出てこないぞ。

 オフィシャルグッズではないのに、配布場所は会場ロビーの一角。なぜ許可したのかと運営側に聞いたところ「ここまでやっていただきましたので」と、その愛情に感服していた。粋なことをなさる。

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ほんとにありがとうございます。

 本気は声優陣からも伝わってきた。和気あいあいとした雰囲気がとても好ましく、これはまさにきらめき高校の音楽祭だ。幕間のトークやX(Twitter)のポストで人柄が見えてきて、とても楽しい。

  • 金月真美さん(藤崎詩織役)はトークが奔放。
  • ダンスのインストラクターとしても活動する笹木綾子さん(清川望役)が振り付けを担当。
  • 栗原みきこさん(美樹原愛役)の衣装はお手製。

 などなど。美樹原愛役の栗原さんはお酒が好きらしいですよ。

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こんなにかわいいのに「ビール飲みたい」だそうです。

 そういえば僕は出演者の皆さんのことをあまり知らない。ライブ終了後、出演者のX(Twitter)で感想を読んでいたところ、栗原みきこさんのこんなひと言を見つけた。



 うちの記事を気にかけてくださったことがうれしい。差し出がましいかなとは思いつつ、KONAMIを通して栗原さんが写った写真を何枚か提供させていただきました。

 その際、何となく栗原さんの経歴をWikipediaで調べたら、出身地が僕の実家から車ですぐの場所と判明。とんだミラクルである。

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何はともあれ最高の1日でした。

 さて。
『女々しい野郎どもの詩』に「ときを戻せるならば」という一節がある。どうだろう。いまの僕らはあの頃に戻りたいだろうか。新曲にイベントに派生ゲームに、つぎからつぎへと新展開があった当時はたしかに楽しいかもしれない。

 でも、やっぱり前を向いた方がいいのではないかと思う。せっかく公式が「これからも
『ときめきメモリアル』の新情報にご期待ください」とメッセージを出してくれたのだから。
 新情報とは何だろう。新曲か、もしくは新たなイベントか。僕らはもう大人だ。驚くような大きな展開が難しいことくらいよくわかっている。ただ、エンディングトークで鏡さんはこう言ってくれた。「また会いましょう。絶対に、約束よ」と。そして僕らは大きな声でこう答えるのだ。

 はい、鏡さん!
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集計期間: 2025年05月01日11時〜2025年05月01日12時