『ウーマンコミュニケーション』朗読劇は原作ゲームの続編だった。“あの少女”とのハッピーエンドを望んだみんなへのラブレター

by小林白菜

byミス・ユースケ

更新
『ウーマンコミュニケーション』朗読劇は原作ゲームの続編だった。“あの少女”とのハッピーエンドを望んだみんなへのラブレター
 2024年5月4日、5日の2日間にわたり“秋葉原 from Scratch”にて上演された知的ことば探しゲーム『ウーマンコミュニケーション』のシルエット朗読劇。

「あのセンシティブワード(※)だらけゲームをどうやって朗読劇に?」
「ゲームのストーリーをそのまま朗読劇にするのか? それともオリジナルストーリーか?」
「ジェントルマン小林やカリスマ田中は登場するのか!?」
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※センシティブワード:センシティブを日本語訳すると“敏感”や“神経質”。公には言いにくい言葉のこと。
 前代未聞のゲームの前代未聞の派生作品となるため、謎に包まれた部分が多かった本公演。実際に取材として観劇したいまなら言えます。

 この舞台の物語は、原作ゲーム『ウーマンコミュニケーション』に感動したファンのために作られた、
“『ウーマンコミュニケーション』の続編”だったのです。

 本公演は2024年5月19日(日)23時59分までオンライン配信でアーカイブを視聴できます。なので、本稿はまだ朗読劇の視聴を迷っている方に届けるために書いています。

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取材に同行したファミ通.com編集部のミス・ユースケさん。上演を目前にウキウキです。

 なお、作品の性質上、その魅力を伝えるために原作ゲーム『ウーマンコミュニケーション』のネタバレを含んでいますのでご了承ください。

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出演者の台詞にまぎれた“うっかりセンシティブワード”を見付け出せ!

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公演前は緊張感すら漂っていました。

 『ウーマンコミュニケーション シルエット朗読劇」には、ふつうの朗読劇とは大きく異なる、この作品ならではの特徴があります。それは“観客参加型”であるということ。参加方法はもちろん“うっかりセンシティブワードの発見”です。

 観客にはゲームでもおなじみの“センシティブワードを撃ち抜いたときの効果音”が鳴るページのURLを前もって共有。登場人物たちのセンシティブワードに気付いたとき、観客それぞれが手持ちのスマホでこれを鳴らす決まりになっています。
 効果音は作中いつでも好きに鳴らしていいわけではありません。作品に何度か設けられている“センシティブワード発見パート”の間のみ、登場人物のアナウンスに従ってスマホを取り出すという方式。発見パートが終わるたびに、いったんスマホをミュートするようにとのアナウンスもあります。

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 ゲームをプレイしている人ならご存知の通り、『ウーマンコミュニケーション』は練られたストーリーも魅力のひとつ。それはこの朗読劇も同様であるため、お話が動く局面はその展開に集中できるようにセンシティブワードの発見を取り入れない切り分け方は正解だと感じました(ゲームのほうもストーリーパートとゲームパートは分かれていたので、原作再現としても正しいですよね)。

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観劇中のお客さんがスマホをスタンバっているふしぎな光景。

 センシティブワードの発見は、ゲーム同様にやはり楽しいです。ふだんは口にすることがはばかられ、会話相手の言葉に“うっかり”まぎれていたとしても、やはり指摘するわけにはいかない類の言葉を虎視眈々と見付けようとする行為自体のおかしさ、そして目ざとく(耳ざとく)見付けられたときの達成感。

 朗読劇では観客全員でこれを行い、妙な一体感が生まれます。巧妙に隠されたセンシティブワードに対して別の観客が効果音を鳴らすと、「あっ、そこに隠れていたのか!」とすぐにフィードバックが得られるのはゲームとは異なるおもしろさ。

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字幕が出るわけではないので、センシティブワードを見つけるために集中するのもおもしろい。ミス・ユースケさんは目を閉じて聴覚を研ぎ澄ませていました。本気になる場面、ほかにあるだろ。

 鑑賞している全員でレスポンスするからこそ得られるグルーヴ感。いろいろな観劇作品に取り入れられるポテンシャルを感じます。観劇後、ミス・ユースケさんは
「これは“応援上映”の新しい形だ!」とスタッフさんをつかまえて熱弁をふるっていました。

 ちなみに、筆者たちは初日2回目の公演を取材したのですが、公演後の出演者コメントによると、この回の観客は笑い声こそ1回目よりも控え目だったものの、センシティブワードの発見数は1回目より多く、このことから“ムッツリスケベな観客が多かったのではないか?”とのことでした。鋭い分析……!

舞台は“フェラーラ女学園”……ではない!? “聖ポルチオン女学園”を襲う脅威“SDGZ”との戦い

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 『ウーマンコミュニケーション シルエット朗読劇』の物語は、言ノ葉さち、通称さっちんによるモノローグから始まります。まず驚いたのが、さっちんの背景を彼女自らが語りはじめること。そしてどうやら、さっちんには原作ゲームでの出来事の記憶があるようなのです。

 ゲームをプレイした人ならば「これはゲームのエンディング後の世界なのか?」と察したことでしょう。

 場面が変わり、今度はゲームでも見慣れた学校。御手洗流歌(みたらい るか)は幼なじみの久梨子に誘われ、風紀委員の活動を手伝うことに。風紀委員で後輩のマコと出会いますが、そこに委員長であるはずのさっちんの姿はありません。

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 また、ゲームの舞台は“フェラーラ女学園”だったはずですが、朗読劇の舞台は“聖ポルチオン女学園”(新たな学園名の元ネタはお察しください)。やはり我々の記憶の中にある『ウーマンコミュニケーション』とは、いろいろなものが変わっているのです。

 聖ポルチオン女学園に迫る新たな危機は、“SDGZ(エスディージーズ)”と呼ばれる謎の組織の暗躍によってもたらされます。その構成員は原作ゲームでも見かけた顔ばかり……。

 けれど、ゲームでの彼女たちは何気ない日常会話の中に“うっかりセンシティブワード”が紛れてしまっていただけの、いわゆる“モブキャラ”でした。一方で、朗読劇での彼女たちは、なんらかの目的のため、
明確な意思を持ってセンシティブワードを連呼してきます。

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 彼女たちの野望の内容と、それを阻止する方法……。これらが原作ゲームの後日談として見事なリンクを果たすのが、
『ウーマンコミュニケーション シルエット朗読劇』のストーリーの見どころです。

 出演者の皆さんは、インターネットを中心に声優やVTuberとして精力的に活動している方々。舞台上でのやりとりにグッと引き込まれる演技力があります。また、どのキャラクターもイメージに合ったキャスティングだったと感じました。

 顔出しをしていない出演者さんもいたことを踏まえると、客席とステージの間が薄いベールで仕切られた“シルエット朗読劇”という方式だからこそ可能だったベストキャスティングだったと言えるでしょう。

すべては“あの願い”を叶えるために――

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 終盤ではさらなる驚きのギミックも。それは『ウーマンコミュニケーション』の名を冠する作品らしい仕掛けでありつつ、ゲームではなく、この上演形態だからこそ可能な、まさに“『ウーマンコミュニケーション』シルエット朗読劇”のための演出でした。

 その演出は、ゲームのエンディングで少なくないプレイヤーが抱いたであろう“願い”を叶えるために――。この展開へと結実するストーリーは、きっと原作ゲームのエンディングを見届けた人ならばグッと来るはず……!

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モザイクの向こう側に何があるのか、ぜひその目で確かめてほしい!(※センシティブなシーンというわけではない)

 視聴者参加型作品としての楽しさ、そして『ウーマンコミュニケーション』の続編であり、“シルエット朗読劇”であることを最大限に活かしたストーリーテリング。1時間程度という上演時間もいい塩梅です。

 何より白眉なのは
観客を参加させるための仕掛け。原作ゲームのシステムと舞台の設定がリンクしていて、きちんと“参加する意味”がある。

 昨今のエンタメコンテンツは「いかにして観客にライブ感を感じてもらうか」が重要視されているように思えます。応援上映が浸透してからというもの、その傾向はより強くなったと言えるでしょう。

 ですが、ただ参加を強制されるだけでは没入できません。そこで大事なのは
参加する必要性を示すこと。お子様向けのキャラクターショーなら、「みんなで呼んでみよう!」と司会のお兄さんお姉さんがお友だちに呼びかけます。声援はヒーロー登場のスイッチなので参加する意味があり、また「自分はこの世界の一員なんだ」という自覚によって楽しさが倍増するわけですね。

 この朗読劇では、「みんなで呼んでみよう!」は「みんなでセンシティブワードを探そう!」に置き換えられます。ネタバレにつながるので詳細は伏せますが、センシティブワードを探す意味は物語中にしっかり提示。スマホを握る手にも力が入ります。

 ステージを見守る観客の中には、幼いころに抱いた「僕が(私が)ヒーローを助けなきゃ」という気持ちと同じような切実さで、懸命にセンシティブワードを探した人もいたかもしれません。

 題材が題材だけに、すべての人が楽しめるとは決して言えません。けれど、ここまで読んで気になった人にはぜひおすすめしたい、堂々たる“『ウーマンコミュニケーション』の続編”となっていました。

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