Kinectの今後の課題とは? マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマー氏が開発者に語る

Xbox 360
マイクロソフトのCEOスティーブ・バルマー氏が緊急来日。開発者を対象とした“Microsoft Developer Forum 2011”にて、Kinectの可能性について触れた。PC向けのテクニカルデモも披露!

●Kinectは“イノベーション”(革新)のための重要なデバイス

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 開発者を対象とした特別イベント“Microsoft Developer Forum 2011”が、2011年5月23日、品川インターシティにて開催された。こちらは、マイクロソフトの最高経営責任者(CEO)であるスティーブ・バルマー氏が来日の度に、「日本の開発者に自分の言葉で話したい」との思いのもとに実施しているもので、今回で4回目。バルマー氏は「前回日本を訪れてから1年半が経ちました。マイクロソフトで30年間働いていますが、これだけ日本を訪れるのが開いてしまったのは初めて。その間、日本はきびしい状況に直面していますが、今後もあらゆることを通して、皆さんをサポートしていきます」と口火を切るや、講演をスタートさせた。講演では、今後のマイクロソフトの方針などが語られたわけだが、ここでは、フォーラムで取り上げられたXbox 360およびKinectの話題を中心に、リポートをお届けしよう。

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 講演の冒頭でバルマー氏が口にしたのが“イノベーション(革新)”。「イノベーションの中に希望があり、新しいテクノロジーが生まれてきます」とバルマー氏は語り、イノベーションの進展の“カギ”となっているのが、日本の開発者の働きにかかっており、今後も日本の開発者をサポートしていくことを明言した。“イノベーション”のための、将来を見据えてのコアテクノロジーとして、バルマー氏が挙げた4つのポイントが、(1)ナチュラルユーザーインターフェース、(2)自然言語処理、(3)HTML/JavaScript、(4)ICチップとフォームファクターの4つ。つまり、マイクロソフトでは、この4つのコアテクノロジーを重視していくということだ。そして、“ナチュラルユーザーインターフェース”でフィーチャーされたのがKinectで、「手を振ったり音声入力などを実現するKinectによって、リビングルームのありかたがかわりました」とバルマー氏。ユーザーインターフェースがよりナチュラルになっていくのは必然の流れと言えるが、そのフロントラインをKinectに担ってもらうことを期待しているようだ。

 では、将来を見据えてのコアテクノロジーが実現するものとは何か? それは、「心踊る体験を現実できること」にあるとバルマー氏は言う。その上で、バルマー氏は開発者への今後の指針として、以下の5つのポイントを列挙する。
・自動化と運用
・学習と吸収
・分析とアクション
・創造とコラボレーション
・エンターテイメントとソーシャル
・コミュニケーション

 「これからも続けて進化を考えていかないといけない」とバルマー氏は断言する。その進化はXbox 360にも当てはまるようで、「開発用のプラットフォームはつぎの段階を迎えました。いままでXbox LIVEはソーシャル的なものを強調してきましたが、それをさらに進めることになります」(バルマー氏)という。

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 バルマー氏の講演では、日本マイクロソフト 執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長 大場章弘氏を進行役に、質疑応答の時間が設けられた。こちらは、事前に提出してもらった開発者からの質問に対して、バルマー氏が答えるというもので、そこでKinectに関する興味深いやり取りが。「Kinectは日本でも話題になっていますが、ナチュラルユーザーインターフェースの今後はどうなりますか?」との質問に対して、バルマー氏が以下のように答えたのだ。

 「ナチュラルユーザーインターフェースの分野では、まだまだやるべきことがあると思っています。Kinectでは、ジャンプをしたり卓球をしたりと、バーチャルワールドの中では皆さんの代わりになってくれます。とはいえ、まだまだ課題もある。顔の表情を認識することやユーザーの発言の意図を読み取ることなどがそれです。現状は、決まった地点に立たないといけない。まだまだやるべきことは多いです」(バルマー氏)

 バルマー氏が挙げたのは、取りも直さずKinect進化の道筋。一方で、「KinectセンサーはもともとXbox 360向けのものですが、PCにも活用するつもりです」とのことだ。今後Kinectがどのような機能を追加していくのか……その一端をうかがえるのは、6月に開催されるE3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)の場になるだろう。

 最後にバルマー氏は、来合せた開発者に向けて「たくさんの機会がビジネスの中にあります。皆さん(日本の開発者)なら、それを活かせます。地球上で日本とアメリカは最高のテクノロジー企業があるところです。日本はすばらしいエンジニアばかりだし、最後にカギを握るのは、開発者です!」(バルマー氏)講演では、バルマー氏は最後の“開発者”という言葉を3度くり返した。バルマー氏にとっていかに“開発者”が宝であることがうかがえる講演だった。

●KinectのPC用途のテクニカルデモを披露

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 バルマー氏の講演に引き続き行われたのは、日本マイクロソフトの大場章弘氏による講演“開発者が創造するイノベーション Grab the Future!”。こちらは、開発者に向けて行われた技術寄りのセッション。テクニカルデモなどもふんだんに披露され、「多くのデモが日本で初めて公開されるもので、私も緊張しています」と大場氏が冒頭で語るくらい、貴重な機会となった。

 PCの普及→クライアントサーバー→インターネットとイノベーションをリードしてきたマイクロソフトだが、つぎなるテーマとなるのは、やはり“クラウド”。ここ数年IT業界でもキーワードに挙げられていることから、耳にする機会も多いと思うが、“クラウド”とは、インターネットをベースにしたコンピューターの利用形態のことで、たとえば、ユーザーがデータを自分のパソコンや携帯電話ではなくて、おインターネットに保存するといった使いかたなどがわかりやすい例としてあげられる。パソコンやタブレット端末、携帯電話など、マルチプラットフォームに適したサービスと言えるだろう。

 当然マイクロソフトもこの“クラウド”に注力しており、「多くのパートナーのおかげで、クラウドは2011年から本格利用の段階に入ります」と大場氏。そしてクラウド時代に輝く開発者の4つの分野として、(1)ソーシャル、(2)大規模並列処理、(3)スマートデバイス、(4)ユーザーエクスペリエンスがあるとした。

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 そこで“次世代の操作性”として、大場氏により披露されたのが、「KinectをWindows PCにつなぐとどんなことができるのか?」というKinectの活用例。銀河系を眺められる『ワールドワイドテレスコープ』というアプリを、Kinectで動かすデモが日本で初めて披露された。デモプレイでは、大場氏が身振りで地球を回転させたり、地球から木星へ移動する……といった様子を確認することができた。Kinectに関しては、学術的な用途であれば、PCベースでの使用も容認されており、海外では手術に活用するケースなど、さまざまな使用例が伝えられている。Xbox 360以外でこれだけ踏み込んだ使用例をマイクロソフト自身が提示するのは、おそらく国内では初めてのこと。今後、Kinectの使用例がXbox 360以外にも急速に広がっていくであろうことをうかがわせるデモとなった。

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 最後に大場氏は、「開発者の皆さんは重要な存在です。イノベーションをもっと進めて、日本を元気にしましょう!」と力強く語り、講演を締めくくった。バルマー氏や大場氏の講演を聞くと、Kinectがいかにマイクロソフトの今後を担う重要なデバイスであるかをうかがうことができる。今後のKinectに大きな可能性を抱かせる講演だった。

 なお、今回の講演の模様は、2011年6月30日までオンデマンドで視聴可能(→こちら)。気になる方はご覧になってみてはいかが?

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▲リポートでは触れることができなかったが、いまマイクロソフトが注力している分野のひとつにWindows Phoneがある。日本では今秋にもサービス開始を予定しているWindows Phoneだが、講演翌日の2011年5月24日に大きな発表を控えているという。

▲HTML5とInternet Explorer9にも注力するマイクロソフト。講演では、IE9で表示されるアニメ『SVG女子』が公開された。海外のイベントで公開されたカヤック制作によるこちらのアニメは、そのクオリテキーが高い評価を呼んだ。

▲Silverlightの3D化のテクニカルデモ。今後Webベースでの表現力はより豊かになりそうだ。こちらのテクノロジーにはXNAが使われている模様。

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▲マイクロソフトのクラウド戦略の根幹を担うのが“Windows Azure(ウインドウズ アズール)”。その“Windows Azure”を広めるために生まれたのが『クラウド ガール』。こちら以前の開発者向けイベントで小冊子のマンガが配布されたところ大人気で、今回Webでのマンガ化と相成った。クラウディアが活躍する(http://msdn.microsoft.com/ja-jp/windowsazure/gg194745)。

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▲セッションのあとの交流会では2011年6月2日発売予定の『Dance Central(ダンス セントラル)』の試遊なども楽しめた。

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