●“すてすてゼロ”を見つけた人は本当にスゴイ(安元氏)

――全国大会はいつごろから開催されているのですか?

犬塚 ゲームボーイの『テリー』から開催していますよ。それこそ、おもちゃ屋さんの店頭で開催したりもして。

安元 いまはネット対戦になりましたからね。ネット対戦といえば、全国大会のスクウェア・エニックスメンバーズ予選って、おもしろいんですよ。オートプレイになるネット対戦用の布陣を、皆さんがよく考えられていて、そのメンツを見ているだけでいろいろと気になってしまう。メンバーズ予選を突破した方が全国大会で優勝したこともありましたよね。僕がよく覚えているのは、いぶさん選手です。

犬塚 2016年に開催した『DQM-J3』の全国大会でも優勝されました。

安元 いぶさんは、突出しているモンスターを作らないで、何が来ても返せるような運用ができる布陣を揃えるんですよ。とてもクレバーな戦略を立てるので、参考になるんです。

犬塚 だいたいは何かしらの部分に偏りができるんですが、いぶさんはそれがない。

安元 お子さんの選手がモンスターに「おとうさん」や「おかあさん」という名前を付けているのも、なんかいいんですよね(笑)。スライダーガールに「おかあさん」と名前をつけているお子さんがいて、実況で「ああ! おかあさんが落ちた!」と言いづらくて(笑)。

――驚くような編成が見られるのは、全国大会の醍醐味ですよね。

犬塚 こちらが思いもしなかった組み合わせが出ますよね。『テリー3D』のおおなめくじパーティとか。“すてみ→すてみ→ラウンドゼロ”という戦法を見たときも驚かされました。こちらの想像を皆さんが超えてきたときは、やっぱりうれしくなりますし、考える甲斐もあるというもので。

安元 “すてすてゼロ”を見つけた人は本当にスゴイと思います。観戦しながら「これはどうしたらいいんだ? “いきなりリバース”か!」とか、実況しながら考えちゃって(笑)。そういうところがおもしろいですし、いろいろな特技を見ながら「これは何に対処するためにあるのか?」と考えるのも、好きなんですよ。

犬塚 ただ、戦略が深くなっていくことが良くも悪くも“新しいプレイヤーを寄せ付けない一因になっている”とも思うんです。なので、『DQM-J3 プロフェッショナル』でいったん『ジョーカー』シリーズを終わらせて、新しくシリーズを仕切り直すのもいいのかと考えたんですよ。

行動の順番が『DQM』シリーズにおける対戦のキモ(犬塚氏)

――これは個人的な感想なのですが、『DQM-J2 プロフェッショナル』までは対戦理論重視のゲームという印象が強かったのが、『テリー3D』で『DQ』シリーズに紐づくRPGであるイメージが生まれて、新しいファンが入ってきた感があります。

犬塚 ニンテンドー3DSになったことも大きかったですね。普及台数も多かったですし、リメイクということでゲームボーイ版を遊んでいた方が戻ってきてくれたのもあります。

安元 『テリー3D』あたりからどんどんモンスターの数も増えていった印象ですね。

――『DQM-J2』で300体、『DQM-J2 プロフェショナル』で100体増えて、『テリー3D』で500体、『イルとルカの不思議なふしぎな鍵』では800体にまで。

安元 性格上、やっぱりモンスターはフルコンプしたいんですよ。確かに400体くらいでも「これだけいると楽しいなぁ」と思いましたけど、800までくるともう混乱しちゃって。「誰がどのスキルを持っているんだ!」とか(笑)。

犬塚 多ければ多いほど、ユーザーさんも好きなモンスターを見つけやすいかな、と。でも、さすがに多いと思って『DQM-J3』で少し整理したら、けっこう「あのモンスターがいない!」という声を頂戴しまして。想定以上に皆さんの思い入れが強かった。

安元 そうですよ。僕もスライダーガールがいなくなってショックだったんですから(笑)。

『DQM ジョーカー2 プロフェッショナル』

犬塚 「ムドーとかドルマゲスとか、今回は入れなくてもいいかなぁ。使っている人もいないしな」と思っていたら、けっこうなアツいご意見を……(笑)

安元 悪役ファンは多いんですよ。暗黒の魔神も、カムバックを求める声は多かったんじゃないですか?

『DQM ジョーカー3 プロフェッショナル』

犬塚 多かったですね。『DQM-J3』ではスラキャンサーやスラリンガルのような、いわゆる『DQM』シリーズっぽいモンスターは採用しなかったのですが、『DQM-J3 プロフェッショナル』には登場するようにしました。

安元 スラキャンサーは耐性もあって、一時期はえらく強かったですよね。よくパーティに入っていました。

――モンスターの流行って、ありますよね。

安元 いまはモンスターの選択肢が多くなっているのでそこまでではないけれど、『DQM-J2 プロフェショナル』のゲモンとれんごく天馬の“ゲモ天”とか、確かに流行がありました。

『DQM ジョーカー2 プロフェッショナル』

"安元" でも、それに対するカウンターを必ず誰かが編み出して、全国大会で優勝するのは違う編成のパーティだったりして。それで思い出したんですけど、オーシャンクローの“こうどう はやい”が脅威で。あれは『DQM-J』でしたよね……。ラウンドの頭で状態異常をぶつけるために、みんな使用していたイメージがあります。

犬塚 行動順という概念が加わったのは『DQM-J』ですから。言ってしまえば、行動の順番をどうするのかは『DQM』シリーズにおける対戦のキモでもあるんですよね。

安元 確かに。“こうどう はやい”のカウンターで“こうどう おそい”や“リバース”、“アンカーナックル”と、行動順を調整できる特技がどんどん増えていきましたよね。その結果、おにこんぼうの人気が『DQM-J2』で爆発した。あそこまで人気が出るとは思ってもいませんでした(笑)。

犬塚 調整したら、『DQM-J2 プロフェショナル』では“おわこん”なんて言われるようになっちゃいましたが(笑)。

『DQM テリーのワンダーランド3D』

安元 『テリー』のゴルスラ(ゴールデンスライム)も、印象がとにかく強い。「結局、みんな行き着くところはゴルスラじゃん!」と(笑)。あとは、マダンテですね。

犬塚 『テリー』は“マダンテ”一強でしたから(笑)。先にマダンテを出したほうが勝ちになるという。ゲームボーイの『イルルカ』(『ドラゴンクエストモンスターズ2 マルタのふしぎな鍵』、2001年発売)はとにかく“会心”が強くて、会心の一撃を決める確率が高いモンスターを集めるゲームになった。その記憶があって、“会心かんぜんガード”の特性を付けたりしたんですよ。ちなみに、『DQM-J3プロフェショナル』の新しい要素の“合体ライド”で合体したモンスターは、“かならず会心”と“かならず呪文会心”の特性を持つヤツもいるので、また戦略が変わると思いますよ。

“合体ライド”をうまく活用してほしい(犬塚氏)

――“合体ライド”を解説していただけますか?

犬塚 主人公がライドしているモンスターが、パートナーのノチョリンがライドするモンスターと合体するんです。大きさも、ふたつを合わせた枠になります。さらに、主人公が乗っているモンスターに紐づいて新特技や新スキルが発動する形になります。かなり強い特性を持ちますし、攻撃回数も増えるので、うまく活用すればステルスアタック3回も可能になる。ただ、やっぱり超ギガボディに対するカウンターとなる“根に持つタイプ”は有効なので、そこをどうするのか、いろいろと考えていただけるとおもしろいと思います。

『DQM ジョーカー3 プロフェッショナル』

安元 “根に持つタイプ”のおかげで、すんなり終わると思った対戦がそうはいかなくなったのは、『DQM-J3』の全国大会でもよく見ました。『DQM-J2』の大会でも“みがわり”をつけたメタルキングがいましたね。

犬塚 いまでもある程度は有効ですが、けっこう対処法もいろいろあるので。

安元 自分で遊んで、見つけるしかないですね。