2016年初頭より『ロードス島戦記オンライン』が大きく動き出す

 2013年11月に発表され、2014年4月の“ニコニコ超会議3”にてαテストの予定が発表されたゲームオンの『ロードス島戦記オンライン』。その後、クオリティーアップのためαテストが延期となっていたが、2016年初頭からは、いよいよ動きが見えてくるとのこと。そこで、現在の状況や今後の展開を聞くべく、ブランドマネージャーの加藤仁氏と、運営プロデューサーの合田真二氏にインタビューを行った。

――おふたりは、それぞれどのような業務を担当されているのでしょうか?

加藤仁氏(以下、加藤) 僕のほうは、ゲームが原作の世界観から逸脱しないように監修することがひとつの役割です。『ロードス島戦記』は、小説だけでなく、さまざまなメディアで展開していまして、作品ごとに細かな設定が用意されています。それらをまとめて資料化したものを作成していまして、それを元に開発に「この部分をもう少しこうしてほしい」といったことを伝えて修正しています。また、本編には出ていないけれども、物語に関する設定というものもありますので、それらをゲームに組み込むことをしたりもしています。

合田真二氏(以下、合田) 僕は運営プロデューサーを担当しています。以前、他社でMMORPGの運営をしていた経験もありますので、その時に得たノウハウを『ロードス島戦記オンライン』に反映できれば、と考えています。加藤が外枠を整えることに対して、僕は運営の内側として「サービスが始まったらどうやってやっていくのか」とか、「どういったコンテンツを入れていけばいいのか」といったところを見ていって、開発元とやり取りをしています。『ロードス島戦記』の部分だけではなく、“MMORPG”という部分をおさえる感じですね。

▲ブランドマネージャー・加藤仁氏。『ロードス島戦記』の熱烈なファンで、世界設定の知識については、原作者の水野良氏からも絶大な信頼を得ている。
▲運営プロデューサー・合田真二氏。加藤氏同様に『ロードス島戦記』のファンで、『ソード・ワールド』などのテーブルトークRPGなどにも精通。大型MMORPGのプロデューサー経験も多数。

――タイトルの発表から約2年と、かなりの時間が経ちましたが、間が空いた理由や現在の開発状況をお教えください。

加藤 タイトルの発表から5ヵ月経ったときに開催された“ニコニコ超会議3”でαテストの実施について発表させていただきました。しかし再検討した結果、そのままの状態ではお客様に満足していただける内容ではないと判断しまして、現在までの期間、さらなるクオリティーアップに務めていました。足りない部分は、正直かなり多かったと思います。

――クオリティーアップ期間を経て、開発状況としてはもうローンチできる状態なのでしょうか?

加藤 完成とまではいきませんが、開発自体はたいぶ進んでおります。日本側の要望もかなり反映するなどがんばっているところですが、調整はまだまだ必要なところです。ただ、2年前の発表当時よりも、かなり質の高いものに仕上がってきているので、ご期待いただければと思います。

合田 MMORPGですので、“完成”といった言葉はなかなか出しづらくもありますね。これからサービスを開始してプレイしていただいて、さらにいろいろな意見をいただいて、そこでさらに進化していきますからね。ですので、そのベースは完成しているとも言えるのですが、まあ難しいところですね(笑)。

――もうまもなくといったところでしょうか。サービス形態や今後のロードマップをお教えください。

合田 基本プレイ無料(アイテム課金)の予定です。課金アイテムに関しては、強さにダイレクトに繋がるようなものは考えていないのですが、まだ細かいところまでは決まっていないので、続報をお待ちください。

加藤 サービス開始時期につきましては、改めて正式に発表する場を設けさせていただく予定です。2016年始めの早い段階で発表を行って、そこからトントンといろいろな展開が始まる感じになると思います。

――では、あらためて本作の魅力をお教えください。

合田 おもなお客様は30代後半から40代前半になると思うのですが、やはりそのくらいの年齢になりますと、昨今の3Dゲームは操作が複雑で、だんだんと疲れてくることもあるのかなと思っています。ですので、ゆっくりとチャットでコミュニケーションを取りながら楽しめるようなゲームにしていきたいと考えています。また、『ロードス島戦記』の原作キャラクターたちといっしょに、あの壮大な物語を追体験できるところが大きな魅力になります。また、『ロードス島戦記』をリアルタイムで読んでいない若い世代の方にも、このゲームを通じて『ロードス島戦記』の魅力を知ってもらえればと思います。電子書籍も発売されましたし。

――ゲーム内の時代設定はいつごろになっているのでしょうか?

加藤 原作の第1巻“灰色の魔女”の時代です。パーンがゴブリン退治に向かうあたりから第1巻の終わりまでの物語を、そのまま体験できるようになっています。プレイヤーのキャラクターは、パーンたちの7番目の仲間という形で、ある程度物語に深く関わるようになっています。ただ、原作の物語を大きく変化させるようなことはないのでご安心ください。

――ゲームのシステムはどのようなものでしょうか?

加藤 プレイ画面は2Dの斜め見下ろし型となります。通常はMMORPGとして、ほかのプレイヤーも存在するフィールドでの冒険となりますが、ストーリーを進める場合にはインスタンスのエリアに入る形になります。プレイヤーキャラクターは、エスカイヤ(騎士)、オラクル(神官)、マジックユーザー(魔術師)の3種類から選択となります。プレイヤーのキャラクターにも物語上の設定を設けているので、種族や性別は職業によって固定となっています。またサービス開始時は、この3つの職業を選択できますが、以降のアップデートでさらに職業を増やしていければ、と考えております。

――冒険の舞台は、ロードス島全域になるのですか?

合田 いまのところ、小説第1巻“灰色の魔女”で舞台となっている地域のみです。オープニングではいろいろな国の紹介もしているので、サービスを続けていく中で行けるようにしたいですね。

加藤 ロードスの世界で生きている、生活している、ということを実感してもらうために、さまざまなものを用意しています。原作に出てくるキャラクターだけでなく、ロードスに暮らす多くの人々からクエストの依頼を受け、それらを通して絆を深めていくようになっています。物語を追体験するメインクエストを始めとする、さまざまなクエストはひとりで楽しんでいただき、キャラクターの育成やアイテムの収集などは、ほかのプレイヤーとパーティーを組むなどして楽しむ作りになっています。

――物語を楽しむ部分がメインクエストとなるのですね。ボリュームはどのくらいですか?

合田 1日にどのくらい遊ぶかでボリューム感も変わってくるとは思うのですが……一般的なプレイスタイルであれば、1週間、2週間で終わるということはありません。前半はサクサク進むと思いますが、中盤からは強敵も出てきますので、キャラクターの育成や装備の収集なども必要になってきます。

加藤 サービス開始当初から、“灰色の魔女”の物語は最後まで実装する予定ですが、それを進めるだけでかなりのボリュームがあると思いますよ。また、予定ではありますが、その後の話も追加していきたいと考えています。

▲パーンやエト、ディードリットなどおなじみの仲間とともに物語を追っていく。ゲーム中のセリフは『ロードス島戦記』だけでなく、『ロードス島伝説』からも引用するなど、コアなロードス島ファンも納得の作りになっているとのこと。

――『ロードス島戦記オンライン』ならではの売りはどういった部分でしょうか?

合田 スキルや武器の名称などは、『ロードス島戦記』や『ソード・ワールド』を知っている方なら「おっ!」と思うようなものになっています。ほかにも、モンスターの名前など、そのあたりは加藤のこだわりが反映されています。

加藤 一般的なファンタジー物だと、オークというと豚鼻のモンスターのイメージが強いと思うのですが、『ロードス島戦記』でオークといえば、樫の木のゴーレムなんですよね。そういった細かな世界設定部分を原作ファンに楽しんでいただければと思いますし、『ロードス島戦記』を知らない方からは、「へえ、そうなんだ」と、この作品の世界観を驚きとともに知っていただけると思います。

合田 また、世界観ではないのですが、システム面として“アイテム収集”に力を入れています。これは、同じアイテムであっても、自分の納得できるものを何度も何度も手に入れたいと思わせるような作りにしてあります。まだ詳しくは話せないのですが、コレクター魂をくすぐるような充実した内容を予定していますのでご期待ください。

――バトルはどのようなものになるのでしょうか?

合田 キャラクターの攻撃は単なるオートアタックではなく、相手の攻撃に対して、またそのときの状況に合わせて、特定のリアクションを行うようなスキルをあらかじめセッティングできます。アクションがメインとなるのではなく、攻撃パターンのデッキを事前に組んで戦うような形になりますね。

▲オンラインゲームの初心者でも楽しめるように、ゲーム開始時はチュートリアル形式で進む。戦闘は事前にスキルを設定しておくオートアタック形式なので、アクションが苦手でも安心。そのほか、ショートカットキーで発動させるスキルも用意されている。

――パーティーで自由に遊ぶ際、強力なボスモンスター……率直に言えば、“シューティングスター”と戦ったりはできるのでしょうか?

加藤 原作の物語に影響するものは難しいですね……。社内でも「シューティングスターと戦いたい!」という声もあったのですが、物語の関わりも考えるとどうしても調整が必要で。お客さまから要望が多ければ、なにかしらの手段を考えるかもしれませんが、いまのところは未定となります。

――アニメから『ロードス島戦記』に入った方もいると思いますが、ゲーム内のキャラクターにボイスは付くのでしょうか?

加藤 ご要望が多いと思いますので、現在検討を進めています。アニメと言ってもTV版やOVA版がありますし、自分としてはカセットブックの印象も強いです。そうしますと、パーンだけでも4人の声優さんが当てていらっしゃいますから、どなたにお願いするかだけでも難しい問題ですね(笑)。

――原作者の水野良さんは本作の開発に関わっているのでしょうか?

加藤 光栄なことに「全面的に信頼しています」とのことですので、製作は弊社に任せていただいています。弊社が「こうしたい、ああしたい」という部分を水野先生にお伝えして、許可をいただくような形ですね。直接ゲームに関わる部分で言うと、キャラクターの職業名は水野先生の発案となっています。僕らが提示した職業名は日本語のものだったのですが、先生からは英語の職業名が上がってきました。とくに“マジックユーザー”は、D&D(※)の頃を知っている方からは、「そうだよね」と納得いただける名称ですよね。

※小説『ロードス島戦記』の原典になっているテーブルトークRPG誌上リプレイでは、TRPG『Dungeons & Dragons』のルールが採用されていた。

――『ロードス島戦記オンライン』を待つファンにとって、2016年始に行われる新情報の公開はもうすぐとはいえ、待ち遠しいですね。

加藤 原作ファンの期待に応えられるかプレッシャーを感じていましたが、ロードスが大好きだった方たちに向けて、ロードスを大好きだった人間が、その期待に応えられるように製作を進めております。気軽に楽しんでいただきたいですし、さらにゲームの中にちりばめられているマニアックな部分にも気がついて、ニヤリとしてほしいです。もうしばらくお時間をいただきますが、原作の新装版も発売されましたし、それを読みながらロードス島への思いを高めてお待ちいただければと思います。

合田 中学生の頃から憧れていたこの作品に関われるとは思っていなかったので、その機会を大事にし、力を尽くしていきたいなと思っています。加藤が長年作り上げてきたものを、僕の持っている力で皆さんによりよく伝えられるようにと考えています。本当におもしろいゲームですので、ご期待ください。

 『ロードス島戦記オンライン』は、MMORPG『RED STONE』を手掛けた“L&K Logic Korea”が開発を担当。韓国ではひと足先に正式サービスが開始され、順調にユーザー数を伸ばしているようだ。日本でのサービス開始は2016年の早い時期となりそうだが、来年早々には新たな情報が発表される。期待して待とう!