『TATSUJIN』(タツジン)がリリースされた日。プレイするたびに上達を実感。文字通り達人の気分を味わえた東亜プランの代表作【今日は何の日?】

おい、そこのお前。初代『TATSUJIN』の稼働開始日を祝うのだ

 いまから37年前の1988年(昭和63年)10月13日は、アーケード向け縦スクロールシューティング『TATSUJIN』が稼動を開始した日。販売元はタイトーで、開発は1980年代後半~1990年代前半にかけて数々のシューティングゲームを世に出してきた東亜プラン。

 その東亜プランは残念ながら現存しないが、2017年に立ち上げた株式会社TATSUJINが東亜プランのIPを保持している。代表取締役は、かつて東亜プランに所属していた弓削雅稔氏だ。社名のもととなったのは、もちろんゲームの『TATSUJIN』から。
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記事内の画像はすべて『東亜プラン アーケードコレクション VOL 2』のもの。
 東亜プランは本作以前にも『スラップファイト』や『究極TIGER』などの縦スクロールシューティングを手掛けてきている(いずれも人気タイトル)。しかし、東亜プランを代表する作品を1本挙げろと聞かれたら、筆者は間違いなく『TATSUJIN』と即答する。
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 本作のシステムは方向キーのほかに使うボタンはふたつ(ショット+達人ボム)というオーソドックスなもの。ボム自体も本作が初めてではないし(※)、先に挙げた『究極TIGER』にもあった。『
グラディウス』や『R-TYPE』に見られるような、画期的なシステムを導入したわけではない。
※筆者の思いつく範囲でも、『超浮遊要塞エグゼドエグゼス』(1985年/カプコン)にクラッシュという緊急回避手段がすでに存在した。[IMAGE]

 それではなぜ『TATSUJIN』こそが東亜プランの代表格だと思えるのか。それは以下の要素が丁寧に詰め込まれているからだ。

  • 操作システムがシンプル。パワーアップも複雑ではない
  • 緊急回避に有用な達人ボム(=ボタンを押して即敵弾を消せる)
  • 自機はデカく迫力がある(大きすぎるわけではない)
  • 敵弾も見やすい大きさ、目立つ色
  • かすったくらいなら許される、そこそこやさしい当たり判定
  • 敵弾の動きがシンプル。狙い弾(偶数弾/奇数弾)がほとんど
  • 難しすぎず、簡単すぎず。コアなゲーマーでなくとも楽しめるちょうどいい難度

 ひとつひとつは目立った要素ではないが、あえて特筆するならば難度だろう。上級プレイヤーの動画なんかを見ると敵弾が早くて難しそうに見えるが、実際にプレイすると序盤は誰でもアドリブで避けられることがわかる。達人ボムを意識して使っていけば最初のボスくらいは誰でも到達できるし、そのあたりまで堪能できれば仕事帰りのサラリーマン(=ライト層)でもそこそこの満足感が得られる作りになっていた。1クレジットで中盤あたりまで進めるようになれば、自分も“達人”の仲間入りをしたと思わずにはいられない。
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 ショットのパワーアップは3段階。“Pアイテム”を5個取得すると1段階パワーアップするのだが、ミスしてもPアイテムのストック数は引き継がれる。そのため、2段階目(十分強い)の4個ストックで止めておいて、ミス時に復活しやすくする戦法が有効だった。
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 おもなアイテムの種類は以下通り。これら以外に“1UPアイテム”や“2UPアイテム”なども存在する。

  • Sアイテム:スピードアップ(4段階)
  • Pアイテム:5個取るとショットが1段階強くなる。フルパワーアップ時は出現しない
  • Bアイテム:達人ボム
  • 赤ショットチェンジアイテム:初期装備。扇状の“パワーショット”を撃つ
  • 緑ショットチェンジアイテム:前方へ威力の高い“達人ビーム”を撃つ
  • 青ショットチェンジアイテム:ボタンを押しっぱなしで敵をロックオンする“サンダーレーザー”を撃つ

 ボスをいちばん早く倒せるのはパワーショットだが、がんばって連射する必要がある。筆者は連射が苦手だったため、当時サンダーレーザーを好んで使っていた記憶(※)。
※連射装置を備えたゲームセンターはほんの一部だった。筆者はボス戦等のとき、指先に擦り傷を作りながら必死に連射していた。

 達人ビームを使う人は自分含めてほとんどいなかったが、1ヵ所だけ1UPアイテムの出現条件として必要な場面もあり、結果としてすべてのショットに出番があった。
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 当時、攻略のし甲斐があると感じた要因は、いきなり極太レーザーを撃たれてやられるといった、いわゆる“初見殺し”がほとんどないことではないかと思う(※)。敵弾のスピード自体は速いものの、不用意に敵に近づかない限り対処できないほどではないし、苦手なところは達人ボムで凌いでもいい。
※後方から敵機が出現するところは初見殺しと言えなくもないが、ランダム要素がないうえ敵の出現パターンも規則性があるので覚えやすい。

 ごく一部を除き、敵弾のタイプは自機を狙ってくる“奇数弾”と、自機の両脇を狙ってくる“偶数弾”のどちらかがほとんど。これも攻略を楽しくしている要素のひとつだ。偶数弾を撃ってくる敵しかいないシーンで安全地帯を利用し、ゲーセンでドヤ顔をしていたのを思い出す。

 くり返しプレイして敵のパターンを覚えたら達人ボムを使う頻度も減っていき、どんどん先へ進みやすくなる。プレイするたびに上達を実感できるし、ほどよい難度のおかげで挫折することもない。改めて、とてもいい塩梅だと思う。
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ボスをノーボムで楽々撃破。このように意外な安全地帯もあったりした。

 ふと、とある料理漫画にて“自分自身のすべてを表現した料理”をアピールする展開となり、主人公は珍しい食材や華やかなごちそうではなく平凡な焼きそばをとても丁寧に作って相手を感心させたシーンがあったのを思い出した。『TATSUJIN』はまさにこの漫画で言うところの焼きそば。一見当たり前の素材が最高の匙加減で組み合わさっている。
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 BGMの話も少しだけしたい。本作のBGMはリズミカルで、ゲーム内容と非常にマッチしている。いまでもサントラで堪能できるのはありがたいが、やはりゲームプレイ中にショット音や爆発音とともに聴きたい。騒がしいゲーセンでテーブル筐体を通して聴こえてくる、くぐもった音がいちばん好きだ。
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 そんな筆者の思い出が詰まった本作は、シティコネクションから2025年8月28日に発売されたNintendo Switch/プレイステーション5(PS5)/プレイステーション4(PS4)/Xbox Series X|S向けソフト『
東亜プラン アーケードコレクション VOL 2』に収録されている。
 さらに、初代『TATSUJIN』をベースにした最新作『TATSUJIN EXTREME』もTHQ Nordic JAPANからPS5とPC(Steam)で発売予定(こちらの発売時期は未定)。まずは初代をプレイしつつ、最新作に備えてみてはいかがだろうか。
これまでの今日は何の日?