『ルミネス アライズ』癒やしと興奮で脳がフワーッと。音も光もグレードアップし、水信玄餅みたいなブロックがぷるぷる消えていく気持ちよさと言ったら【SGF2025】
 2024年6月7日(現地時間)からアメリカ・ロサンゼルスで開催されたSummer Game Fest2025 Play dayに、Enhanceの新作『Lumines Arise』(ルミネス アライズ)がプレイアブル出展された。

 音と光のパズルゲームとして世界的人気の『
ルミネス』シリーズ最新作。プレイステーション5(PS5)、PC(Steam)向けに開発中のタイトルで、2025年秋に発売予定だ。
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 ここではデモ版のレビューに加え、ディレクターを務める石原孝士氏へのインタビューをお届けしよう。
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 まずは基本的なルールについて。2色で色分けされた2×2の正方形ブロックが画面上部から順次落下してくる。これを積み上げていき、同じ色のスクエア(正方形か長方形)ができあがると、そのブロックを消すことが可能。

 音楽のビートに合わせてタイムラインのバーが左から右へと流れていき、完成したスクエアをバーが通過するとスクエアが画面から消える仕組みで、バーが通過する前にスクエアをより大きくしたり、複数のスクエアを作ることで得点がアップしていく。
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 さらに、効果音やBGMが組み合わさることでひとつの音楽として構成されること、スクエアが消える際の光の表現が多彩であることが『ルミネス』の大きな特徴で、“音と光のパズルゲーム”たる所以となっている。

 実際にプレイすると、ブロックは単なる四角ではなく、ステージによってさまざまな色や形、質感で表現されているのが注目ポイントだと感じた。スクエアを作ればブロックの質感に合わせたエフェクトが現れ、バラエティーに富んだ視覚効果を楽しむことができた。
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 ブロックは機械や鉱石、泡、木の実や魚など、さまざまな質感とデザインが用意されており、中でも半透明のぷるぷるした球体のデザインのブロックは目を引いた。スライムというか何と言うか……「水信玄餅みたい」がいちばんしっくりくるかもしれない。冷涼感があり、とくに大きなスクエアを作ったときには、ぶるんぶるんと揺れ、パーンッと消えていく。これがすごく気持ちいい。

 そして本作で気持ちよさをMAXに感じられるのが、新システムの“バースト”だ。スクエアを消していくとバーストゲージが溜まっていき、100%になると任意のタイミングで発動可能。バースト中は時間が止まり、タイムリミットが来るまでスクエアをどんどん大きくできる。時間が動き出すとスクエアを一気に消せるという仕組み。

 1色のスクエアをドーンと消せる=残ったもう1色もほぼ自動的にスクエアになるわけで、画面内のブロックを一掃できるということだ。この2段階の興奮が派手な音とエフェクトとともに脳に流れ込んでくるわけだから、たまったものではない。もし全消しできたらどうにかなってしまうかもしれない。

 プレイに忙しく最初は見過ごしていたのだが、画面右下にはアバターがいて、歩いたり踊ったりとさまざまな顔を見せてくれる。マスコットのような感じで、これがとてもかわいらしく、プレイを盛り上げる要素のひとつとなっていた点も記しておこう。

 各ステージの背景デザインもじつに多彩で、ブロックの表現やBGMと一体となって、ひとつの世界を形成している。その中でプレイしていると、さまざまな感覚を刺激されることに。Enhance代表の水口哲也氏が提唱する“シナスタジア(共感覚)”のひとつの形として、本作にも色濃く反映されていることがわかる。

 今回のデモプレイでは体験できなかったが、本作はPlayStation VR2、Steam VRに対応しており、VRでこそシナスタジアの真骨頂が体験できるのでは、と思わされる作品だった。
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 試遊後にディレクターを務める石原孝士氏へインタビューを行った。本作へのこだわりや、他機種での展開など、気になる点を聞いた。

石原孝士氏(いしはらたかし)

『Lumines Arise』ディレクター。『Rez Infinite』、『テトリス エフェクト・コネクテッド』などにディレクターとして携わる。

――初代『ルミネス』の発売から約20年が経ち、これまで多くのシリーズを出されていますが、『Arise』というタイトルで新作を制作した経緯をお聞かせください。

石原
 まず『テトリス エフェクト』の開発がありまして、その後に『テトリス エフェクト・コネクテッド』をリリースしました。その中で培った表現やゲームデザイン、演出など、さまざまなものがEnhanceにストックされてきました。それをつぎに何で活かすかとなったときに、『ルミネス』はどうだろうと。『テトリス エフェクト』のメンバーがもう一度ジョインして新しいものを作ったらどうなるか。そういう期待感から、『ルミネス』をイチから見直して再構築しようとしたのが始まりです。

――水口さん(Enhance代表の水口哲也氏)はどのような形で本作に関わっているのでしょうか?

石原
 エグゼクティブプロデューサーという形で、作品全体の方向性や監修をしています。

――シングルプレイを通して旅をするとのことですが、そのコンセプトを教えてください。

石原
 光を求めてさまざまな世界を旅していくのがコンセプトになっています。『テトリス エフェクト・コネクテッド』を制作しているときはコロナ禍で、みんな働きかたも変わりましたし、我々もけっこう気持ちが落ち込んで不安もあって。そういう中で『ルミネス』を作るときに、自分自身も、プレイヤーの方々にも希望を持ってもらいたいと感じたんです。

 
『ルミネス』は光が特徴的ですよね。ゲームの冒頭で希望の光に向かって立ち上がる男性が登場し、そこから光を求める旅がスタートします。抽象的ではあるのですが、そういう旅を描きたいと思っています。
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――各ステージがストーリーに合わせて展開していくと。

石原
 はい。最初は暗いステージもあるのですが、そこを乗り越えていくと、色鮮やかになっていったり、音がよりゴージャスになっていくような流れがあって。

――どんなステージがあるのでしょうか? 

石原
 『テトリス エフェクト』にはなかったような、昆虫やヘビなどの動物をモチーフにしたものや、テクノやサイバースペースといったハイエッジなステージもあり、バラエティーに富んでいます。ステージによってBPMが異なるなど、旅の中での感情の動きも表現できたらと思います。
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――ステージの数はどれくらいありますか?

石原
 30ステージ以上あります。『テトリス エフェクト』以上のボリュームですね。

――ほかのソロモードはどんなものがありますか?

石原
 パズルのスキルをより高めていくようなモードのほか、自分好みにステージを並び替えて遊べるプレイリストがあります。また、盤面やタイムラインに通常と異なる仕掛けを加えて遊べるモードも用意しています。

――やり込み要素はありますでしょうか。

石原
 あるお題をクリアーしていくものや、くり返し遊んでいただけるような要素はあります。アバターもそのひとつで、前作では単なる着せ替え的なものでしたが、今回はキャラクターとして生き生きとした表現が可能になりました。単なるアイコンではなくて、手足がついていて、プレイ状況に合わせて歩いたり踊ったり、感情表現が豊かでおもしろい存在になっていると思います。

――マルチプレイヤーモードは基本的に1対1の対戦になるのでしょうか? 『テトリス エフェクト・コネクテッド』のような協力対戦プレイはありますか?

石原
 マルチプレイヤーのモードも用意しているのですが、いまの段階では詳細をお話できず……。

――なるほど。Enhanceの作品は、音楽と映像をインタラクティブに楽しむことを重視されています。プレイして気持ちいいと感じるように作り上げるために、苦労した点はありますか?

石原
 音楽とビジュアルをつねにマッチさせることもたいへんですし、それをゲームデザインと一体化させていくことも難しいですね。普通のゲームの場合、ゲームデザインが出来上がってから、それに合うグラフィックとサウンドを作っていくことが多いと思います。とくにサウンドはいちばん最後になるかもしれません。

 Enhanceの物作りの場合、グラフィックとサウンドを重ね合わせて「この感覚、気持ちいいね」という前段がまずあって、「じゃあ、この体験を実現するためにはこんなゲームデザインが必要だよね」という順番なんですよ。もともと
『ルミネス』のゲームデザインは音と映像をアウトプットする受け皿としてすでにできあがっていたので、もちろん生みの苦しみはあったのですが、新しい音や表現を自然とゲームに組み込んでいけたと感じています。
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――左脳でパズルをしながら、右脳で音楽と映像を感じるという気持ちよさがありますよね。
石原
 そうですね。左脳での操作感の中にも、ときどき右脳に訴えかける瞬間を作っていまして。たとえば、スクエアを消したときや、バーストが終わったときの気持ちが安心した瞬間は感覚が右脳に移るんですよ。意図的にそのタイミングに演出を入れているので、その行き来が気持ちよさにつながっているのかなと。プレイヤーの動きに沿った演出を意識して設計しています。

――収録されている楽曲について、本作ではHydelic制作のもののみですか?

石原
 はい、そうです。Hydelicはいろいろな音楽性を出せる方々なので、テクノからオーケストラ、ジャズまで、幅広いジャンルの楽曲を楽んでいただけると思います。サウンドトラックとしてはまずシングルの配信を開始しました。後日、フルアルバムも配信しますので楽しみにしていてください。

――PS5での展開ということで、初めて実現できた要素はありますか?

石原
 今回はいろいろな部分でアップデートをしていまして、とくにブロックの表現に注目してほしいです。パズルゲームはブロックの表現としてどうしてもシンプルなものが多く、たとえば『テトリス エフェクト』も背景はけっこう派手なのですが、ブロックにはあまりこだわれず……。『Lumines Arise』はステージが大きく、ブロックをつなげていくことでブロックがどんどん大きくなるので、ブロックの質感や動きにこだわることができました。消した際の挙動も特徴的で、ほかのブロックに干渉したり、バウンドしたり、見た目や物理的な挙動を楽しめる仕掛けがたくさんあります。

――PS5だとDualSenseコントローラーの振動も気持ちいいですね。

石原
 もちろん振動にもこだわりを持っていて、ブロックの質感を振動を通して伝えるといったことが最終的にできれば、と考えています。
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――対応ハードが、PS5、PC(Steam)となっています。気軽にプレイできるのも『ルミネス』のいい点で、Switch 2やSwitchでのリリースを期待している方は多いと思いますがいかがでしょうか。

石原
 いずれ実現できればうれしいですね。すべての機種で同時にリリースするのはEnhanceとしてはハードルが高いと感じていまして、現状ではPS5とSteamに注力して開発しています。ただ、オリジナルのPSP版や、Nintendo Switch版の『LUMINES REMASTERED』が好きな方たちは、ハンドヘルドで遊びたいと思っていることでしょうし、カジュアルにどこでもプレイできる『ルミネス』の体験というものは、とても重要だと感じています。
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(左)石原孝士氏(ディレクター) (右)マーク・マクドナルド氏(プロデューサー)