『メテオアリーナ・スターズ』ウケなかったから半年で作り直し、アクションなのに"歩く"排除、ガチャ撤廃。かわいい共闘ゲームの極端な潔さをインタビューで紐解く
 でらゲーが贈る『メテオアリーナ』が、2025年6月25日に3ヵ月もの長期メンテナンス期間を終え、『メテオアリーナ・スターズ』と名を改め復活を果たす。

 『メテオアリーナ』は指一本で気軽にプレイできるPvPゲームとして誕生。2対2で対戦し、一発逆転の必殺技“メテオ”を駆使して勝利をつかむ。
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 そんなタイトルが復活を果たすわけだが、何がすごいって、まったく別のゲームになってしまったのだ。プレイヤーと対決する“PvP”から打って変わり、プレイヤーと協力してエネミーを倒す“PvE”へと大刷新。さらには、一般的なゲームには欠かせない“歩く”という行動すらをも排除してしまった。アクションゲームでは想像し難い逸脱した改修が行われている。
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飛び交う弾幕をかわしつつ、ド派手な“友情メテオ”をぶつけて敵を倒すPvEへ
 聞けば、この大規模なアップデートはたったの半年で企画・構想から実装へといたったそうだ。長期メンテナンス決定から半年という僅かな期間に、開発陣の中ではどのようなディスカッションが行われたのだろうか。

 今回、開発に携わったプロデューサー、ディレクター、広報担当のお三方から直接お話しを伺うことができた。「いっしょにプレイしていて楽しい」というゲームの当たり前を実現するために、彼らがどれほど濃密な半年を過ごしていたかをお届けしていこう。
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移動は“歩く”がなくて“ダッシュ”のみ

 まずは『メテオアリーナ・スターズ』が長期メンテナンスを経て、どのようなゲームに生まれ変わったのか。実機プレイを通してお伝えしていきたい。

 本作最大の特徴は、やはり移動が“ダッシュのみ”という点だろう。アクションゲームとなれば高確率で存在する“回避”はもちろん、“歩く”という当たり前とも思える行動すら撤廃されているのだ。

 これは、開発過程において「操作が多くわずらわしい」というプロデューサーとディレクターの意見の合致から生まれた案だという。

 しかし、この妙案こそ、改修後の『メテオアリーナ』ならではの魅力が生まれるきっかけに。実際にプレイしてみると、驚くほどに軽快にキャラクターが動き回り、えも言えぬ爽快感が得られる。
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 操作はスティック移動とスキルボタンのみというシンプルな構成。敵の攻撃にあわせて“ただ移動するだけ”で、攻撃をかわす
“カウンターダッシュ(ジャスト回避)”が発生し、ダメージアップや必殺技の発動に繋がっていく。指1本でも手軽に遊べる一方で、高速ダッシュを駆使したテクニカルなアクション性も兼ね備えているのだ。

 歩きや通常の回避がなくなったことで、軽快なプレイ体験が得られるようになっている。無駄を削ぎ落とした新たな操作性こそが、バトルの疾走感をより一層引き立てていると言えるだろう。

ステージクリアーのカギとなる“友情メテオ”

 バトルは3人で力を合わせてステージに挑む形式。メインスキル1種と自動で攻撃するサブスキル2種の計3つのスキル、そして各キャラクターに備わった必殺技“メテオ”を使い戦っていく。

 必殺技にあたるメテオは、敵を凍らせて動きを止める“凍結メテオ”や仲間を回復する“ヒールメテオ”、周囲の敵のターゲットを一定時間自身に引きつける“タウントメテオ”など、キャラごとに異なるものを持っている。キャラそれぞれに役割があるため、ステージやボス、状況に応じた使い分けが求められる。
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 また、味方のメテオ範囲内に入ると、メテオの発動にあわせて追加効果を発生する“友情メテオ”というシステムも導入されている。仲間を巻き込むことで追加攻撃などが発生し、単独で使うよりも圧倒的に高い効果を発揮する。

 この友情メテオの導入により、協力プレイは仲間と戦場を駆け抜け、息を合わせて動くことが重要になっている。仲間とメテオを決めた瞬間は、“仲間とひとつになっている”ような感覚が強く伝わってくるだけでなく、画面いっぱいに広がるエフェクトや演出の派手さも相まってテンションが一気に高まる。巨大なビームが交差したり、ステージ全体を巻き込むような爆発が起きたりと、その演出はどれも迫力満点で発動のたびに盛り上がること間違いなしだ。

 仲間の動きを見て、互いにタイミングを合わせることで真価を発揮するこのシステムは、まさに本作における協力プレイの肝となる仕掛けと言えるだろう。
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自然と生まれるプレイヤーどうしの友情

 共闘に関するシステムは、友情メテオだけにとどまらない。誰かが力尽きた際、仲間が制限時間内に復活させなければ、チーム全員がそのままゲームオーバーになってしまう。

 復活までの猶予時間は持ち時間制。全体で“60秒”設けられており、蘇生に時間がかかればかかるほど、次回以降のストックが少なくなってしまう。猶予こそあるものの、ゲームオーバーの足音が少しずつ近づいてくるのはほどよいスリルとなって、強敵とのバトルでは緊張感を高めてくれる。
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 しかし、蘇生中だろうと敵からの攻撃は容赦なく降りかかる。そんな中であっても、ステージクリアーには仲間の生存が必要。つまり、周囲の敵の動きを冷静に見極めつつ、仲間の救助に向かう必要があるというわけだ。

 ステージが難しくなるにつれて、ひとりを助けた直後にもうひとりが力尽きてしまう、なんてことも起こり得るだろう。それでも仲間を見捨てず、リスクを冒してでも手を差し伸べることが本作の醍醐味のひとつ。友だちと遊ぶ際には「右に回るよ」「任せて、いま助ける!」と声を掛け合いながら進むうちに、自然とプレイヤーどうしの連携が深まり、やがて息の合った動きが生まれていく。

 このように、協力しなければ先へ進めない設計が仲間とのつながりを深め、ステージクリアー時にはともに乗り越えた充実感をもたらす。今後は公式Discordの開設も予定されており、オンラインを通じて“助け合い”の輪はさらに広がっていくだろう。
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ガチャは撤廃、キャラクターは購入式へ

 キャラクターはそれぞれアタッカー、ヒーラー、タンクなどの役割を持っており、自分のプレイスタイルや仲間との相性を考慮したキャラ選びが重要。

 キャラクターの入手方法については、リブート前に存在していたガチャ要素が廃止され、ストアでの直販形式に刷新された。とはいえ、課金のみでしか入手できないわけではなく、ゲーム内で素材を集めれば無課金でもすべてのキャラクターを獲得できる。スマートフォン向けタイトルとしては珍しく、ガチャに依存しない方式が採用されている点は大きな特徴だ。
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左)アルタイル、右)デネブ
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左)ベガ、右)ハレー
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左)アルケス、右)アクエリアス
 アルタイルやデネブ、ベガといった星の名前が冠されているキャラクターが多く、星の美しさに劣らぬ華やかで個性豊かなビジュアル。それに加え、キャラクターの背景にも目を惹かれる設定が多々。そんな魅力的なキャラを自分で選んで購入してプレイできるため、遊んでいるうちに自然と愛着が湧いてくる。

 また、同じキャラクターを複数入手するとドロップボーナスが付与され、効率よく素材を集められるようになるという。さらに、集めた素材でレベル上限の解放や限界突破も可能で、育成の幅を広げるやり込み要素も充実している。

 加えて、強化要素はステータスの上昇だけでなく、素材から生産できる装備によってもスキル効果が発動するため、キャラビルドの自由度も高い。

 たとえば、周囲の敵のターゲットを一定時間自身に引きつけるタウントメテオ。これを活かすために、回避性能を高めて安全にターゲットを引きつけるタンクにしたり、敵の攻撃をカウンターダッシュで避けつつ戦うアタッカーにしたりと、ビルドの方向性はプレイヤー次第。柔軟な戦略性を実現する育成システムだ。

インタビュー

 ここまでの情報で、『メテオアリーナ』の生まれ変わった姿『メテオアリーナ・スターズ』については十二分に伝わったかと思う。

 ここからは、本題であるゲームシステムの大刷新の背景や着想、そして実現にいたるまでの半年間について、プロデューサー・増田さん、ディレクター・森さん、広報担当・政岡さん、のお三方からお話しを聞いていこう。

増田恭隆 氏(まずだやすたか)

『メテオアリーナ・スターズ』プロデューサー。(文中は増田)

森七海 氏(もりななみ)

『メテオアリーナ・スターズ』ディレクター。(文中は森)

政岡まなみ 氏(まさおかまなみ)

『メテオアリーナ・スターズ』広報担当。(文中は政岡)

なぜリブートにいたったのか。PvPは失敗だったのか……?

――まず最初に伺いたいのが、ゲームの大きな方向転換についてです。以前はPvPを軸にしていましたが、今回のリブートでPvEに移行した理由について改めて教えていただけますか?

 以前までのPvP形式にはいいところもあれば、難しいところもあったんです。今回「リブートしよう」と言い出したのはプロデューサーの岡本(吉起氏)なのですが、「じゃあ、どういう方向でゲームを変えていくか」という話になって。たとえば完全にソロ向けにする案もあったんですけど、岡本からまず出てきたのは「みんなで遊べるゲームにしてほしい」という方向性への提言でした。

 開発チームとしても、テストプレイなどを通じて「いっしょに遊ぶとやっぱり楽しいな」という実感があったので、これについて改めて考えてみることにしました。

 理想は、お昼休みや放課後、部活終わりなどに「このゲームおもしろいからいっしょにやろうよ」と誘って遊べるような、そんな作品です。PvPでももちろんそういう体験はできたのですが、どうしても勝ち負けが出てしまう。この勝ち負けが生まれるという構造は、とくにライトユーザーの方にとっては、ハードルになってしまいます。それもあって、PvEに大きく舵を切ることにしました。

――PvPとPvEでは、リーチしていくターゲットもリーチする手法も異なってくると思いますが、リブート後はどのようなターゲットを想定し、どのようにアプローチしていこうと考えていますか?

政岡
 リブート後のターゲットは、学校の昼休みやバイトのバックヤードなど、顔を突き合わせて「これやろうぜ」というタイミングが生まれやすい、比較的若い層です。

 YouTube広告などを通じて、若い人の目に“自発的に見に行かなくても受動的に目に入る”形で露出し、少なくとも存在だけは頭に残るようにします。そのうえで、仲間内で話題に出たり、ふとした流れで「やってみようぜ」となるような“種まき”を意識したプロモーションを行っていきます。
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――ユーザーの中にはPvP要素を好んでいた方も多いと思いますが、PvEに切り替える発表に対してはどんな反応がありましたか? また、そうしたユーザーに向けた特典や工夫があれば教えてください。
増田
 じつは既存ユーザーからの「なぜPvEにしたのか」という不満はほとんどありませんでした。ただ、今回のアップデートで大きく仕様が変わるので、既存ユーザーにはリブート後も楽しんでもらえるようなフォローをする予定です。そのひとつとして、無償でダイヤを配布するなど、一定期間はお金をかけずに遊べる素材を提供し、継続して楽しんでもらえる環境作りに取り組んでいきます。

――PvPのときに持っていたキャラクターは、そのまま引き継がれるのでしょうか?

増田
 引き継がれはしますが、レベルはリセットされます。その際、もとのレベルに応じて素材を無償で配布する形で補填を行います。また、これまでのアイテムや素材の多くは新システムでは使用できなくなるため、それらも何らかの形で無償ダイヤや新しい素材へと変換し、既存ユーザーの方にも納得いただけるよう、できる限りの対応を行う予定です。

――開発にかける想い、既存ユーザーへのフォローを怠らない姿勢、いずれもアツいものを感じますね。これに合わせて、ビジネスモデルの面もお伺いさせてください。今回のリブートの背景には、どんなビジネス的な要因があったのでしょうか?

増田
 ビジネス面から考えると、ゲームの完成度以前に認知度の低さがネックで……。このまま苦し紛れに運営を続けるよりは、一度サービスを閉じて「数ヵ月後にまったく違うゲームになった!」という話題性を生んだほうが、費用対効果が高いのではないかと考えました。

――話題性を得るには、非常に思い切った判断のように感じます。我々でもそう感じるとなると、開発チーム内でも大きなリアクションがあったのではないでしょうか。

 前身となる『メテオアリーナ』の開発中にも、インゲームを中心にゲーム性や操作性を大きく変えたことが幾度もあったので、開発チームは「またか……」という感じで受け入れていたように思います(笑)。

――ユーザーからしてみると遊びやすく、楽しみやすくなることがリブートの成功というイメージですが、作り手側にとっての成功はどういった点を見て判断されるのでしょうか?

増田
 共闘をメインに据えたオンラインゲームなので、ユーザーの皆様に楽しんでいただき、ユーザー数が一定のラインを確保・維持できることが第一です。このラインを超えることができたら、我々としても「無事リブートに成功した!」と言えるかな、と考えています。

――『メテオアリーナ』を“100点”としたときに、リブート後となる『メテオアリーナ・スターズ』は何点、もしくは何%の完成度と言えますでしょうか?

増田
 完成度で言えば120%ほどですが、ゲームとしてのおもしろさで言えば350%くらいあるんじゃないかな……(笑)。それぐらい胸を張れるようなゲームに仕上がっています。これを機に、ぜひご友人といっしょにプレイしてみてほしいな、と思っています。

歩きを消すシステム大改造、その開発の裏側を聞く

――ダッシュオンリーにしたというのは、かなり大きな決断だったと思うのですがその理由を教えてください。

 ひと言で言うと、“学習コストの削減”ですね。“歩く”という操作があると、まず“歩き”を実行するためにスライド操作を覚えてもらう必要がありますよね。そうなると、今度は“ダッシュ”という操作を覚えてもらう必要が出てくるわけです。ゲームとしては当たり前と思われがちですが、この学習コストが不要に思えまして。だったら、最初からダッシュだけにしてしまえば、無駄な学習コストをなくせると思ったのが、最大の理由ですね。

 “ジャスト回避”という仕組みがあって、ギリギリまで攻撃を引きつけてダッシュで避けるとリターンが大きい、というのはゲームとしておもしろい要素です。でもそのアクションが“フリックでしか出せない”となると、それもユーザーの負担になりますし、それが理由でシステムが使われなくなるともったいないですよね。こうした理由から、ダッシュオンリーにしました。

 爽快感が得られるように調整はしましたが、正直に言うと、この爽快感は副産物のようなものだと思っています。

――あくまで前提として「ユーザーの学習コストを下げたい」という意図があった、ということなんですね。

増田
 気軽に友達を誘って遊んでもらえるようなゲームにしたかったので、参入障壁となる学習コストは極力削減すべきだな、と考えていたのですが……。

 そんな折、岡本が「もうダッシュだけでいいんじゃないの?」と口火を切ってくれまして。驚きで場が静まり返りましたね、いまだにあの瞬間を覚えてます(笑)。

 ただ、じつはかねてより森からも「操作ちょっと多くないですか?」という話は上がってきていて。岡本にも「操作多いと思いません?」と提言していたので、森の中では随分前から、この構想はあったのだと思います。

 しかしそれでも、岡本から「ダッシュだけでいい」と言われたときは驚きましたね。あまりにも斬新な発想で、それでどんなゲーム体験が生まれるのか、すぐに想像できませんでした。でも森からも「ダッシュだけでいいと思います」と言う意見を聞いて「じゃあ、それでやってみようか」と、歩きのないシステムを開発することになりました。

――開発の時間を考えると、この大きな決断までもかなりスピーディーに進んだのだろうなと想像できます。しかし大きな変更だけに、開発はやはり苦労したのではないでしょうか。

増田
 じつは実装自体はそんなに大変ではありませんでした。もともとそういう切り替えができるように作ってあったので、テストバージョンができるまでにかかった時間は、1日か2日くらいだったと思います。

 それで、実際にそのテストバージョンをプレイしてみたら「あれ? 前より軽快だな」と。僕はアクションゲーがはあまり得意ではないので、最初は歩きが無くなることに懐疑的だったのですが、これには本当に驚かされました(笑)。

 あまりにも大きな変更だったので、スタッフからは「ちょっと遊びにくいです」という声もありました。しかし僕としては、歩きのない軽快さがすごく気持ちよくて、「これは想像以上によくなった」という感覚があったので、「これはもうこのまま行こう」と決めました。

 ただ、この調整によりゲームをあまりやらない人がプレイすると、すぐにゲームオーバーになってしまうという欠点が生まれてしまったことも事実です。ふだんからゲームをしている人なら、少し触っただけでも経験則から「この順番で動けばいいんだな」とか「こっちの相手を先に倒さなきゃ」といった予測が働いて気持ちのいいプレイができます。

 しかし、ライトユーザーはそこまでゲームに慣れていないので、どう立ち回ればいいのかが想像できなくなってしまったようです。立ち回りが分からないままダッシュで素早く動くので、自分の移動速度と相手の動きについていけなくてすぐゲームオーバーになるというパターンが発生しています。しかし、個々は調整で解決できる部分でもあるので、現在はゲームにあまりなじみのない人でも遊べるよう、改善に向けて動いています。

――岡本さんから、ほかにもオーダーはありましたか?

 PvPのときから、岡本には「ゲームがちょっとちんまりしている」とよく言われていました。かつてのPvPでは、チーム戦であっても1対1の局所的なやりとりが多くなりがちで、ステージ全体で動いてる感じがせず、それがこじんまり見えてしまう要因です。3ヵ所にわかれて1対1をする状況だったので、画面を見ても味方がおらず、ほかのプレイヤーの存在感や存在理由が希薄になってしまっていたんですね。そのため岡本から「画面全体を使っている感じがしない」というフィードバックもありました。

 こうした問題はサービスイン後に早くから確認できていたのですが、いろいろ考えてみても、PvPで解決する策は思い付けませんでした。

――PvPのときは実現できなかったものが、どうしてPvEでは実現可能になったのでしょうか?

 PvPだとゲーム展開が早くて、連携している暇がないんですよね。もし『メテオアリーナ』がもっと展開が遅いゲームだったら、この課題は解決できたと思います。

 当時は「爽快感を出したい」とか「ちんまりしてる」と言う課題を解決するために、移動速度を上げてみたりもしたのですが、そうしたら問題が加速してしまって……。高速で動くキャラクターを制御しながら、攻撃を当てたり避けたりするためには、これまで以上に距離をとるのが最善策になってしまい、敵味方も散り散りになってしましました。

 PvEへの変更を決定づけたのは、こうした理由やトライアンドエラーの結果からですね。

 紆余曲折ありましたが、これでPvPのときからあった問題も解決できて、ホッとしています。
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――発表から今回プレイできる状態になるまでのリブート期間が凄まじく短かったように思います。実際に企画が動き出したのはいつごろだったのでしょうか?
 リブートが決まったのは、去年(2024年)の11月くらいです。そこから企画をまとめて、開発に着手しました。

 最初の企画段階では、いまの形とはまったく違っていました。当初は、いわゆるサバイバー系といいますか、ザコ敵が大量に出てきて、それをひたすら倒していくような構成を考えていました。

 2025年4月くらいまではこの構想で開発が進んでいて、現在のようなボスバトル中心の形になったのは本当に最近ですね。

――3月まで進めていたものを大きく方向転換というのは想像がつかないぐらいかなり衝撃的ですね。その決断のきっかけとなる出来事はあったのでしょうか。

増田
 4月の初頭に行った、岡本との合宿ですね。僕と森、そしてもうひとりのプロデューサーの3人で岡本のところへ行き(※)、1週間ほどひたすらディスカッションをする場を作ったんです。それぞれが「ああでもない、こうでもない」と本気で意見を交わし合う、有意義な場でした。

 実際に舵を切り直すと決まったのは、その合宿から1週間ほど経ったタイミングですが、合宿でみんなが本音をぶつけあえたことが、大きかったと思います。
※岡本のところ:岡本吉起氏はふだんはマレーシア在住。
 “歩き”を消すという決断も、メテオ効果のような新しい要素の発案もここがきっかけになっているので、あの合宿こそが大きな転機だったと思います。

ゲームサイクルの変化にあわせたマネタイズ手法の大幅変更

――PvPからPvEに切り替わると、ゲームの“サイクル”そのものも大きく変わるかと思います。本作ではどんなサイクルを想定しているのでしょうか?

 本作は基本的にボス戦が中心になっています。ボスを討伐して素材を手に入れ、それを使ってキャラクターを育成したり、装備を作ったりしていくという流れですね。

 キャラクターのレベルは、デイリークエストなどで得られる経験値や素材を使って上げていくのですが、たとえばレベル上限が80だとすると、まずは40で一度止まるようになっています。そこから先に進むには、いわゆる“限界突破”のような形で、レベル上限を解放する必要があります。そして、限界突破をするための素材をまた集めて、といったサイクルです。

――装備にはどんな効果があるのですか? 攻撃手段やメテオの内容が変化するのでしょうか?

 攻撃手段が変わるわけではありません。基本的には、かの有名な狩猟ゲームのように装備を組み合わせることで“攻撃力アップ”などの効果が発動します。装備をどう組み合わせるかで、防御に特化させたり、ジャスト回避が発動しやすくなるスキルを付けたりといった調整ができるようになっています。プレイヤーは自分のプレイスタイルやキャラクターに合った装備を選んで、付け替えていくスタイルですね。

――さきほどプレイさせていただいた際には、素材を得る報酬画面で、獲得量を倍にするボタンがありましたね。ここがマネタイズのポイントになるのでしょうか?

 マネタイズ面も含めてお話ししますと、まずリザルト画面で得られる素材の数を課金通貨を使って2倍にできる機能を実装しています。毎回使う必要はありませんが、使用するかどうかで素材収集の速度には差が出てくる設計ですね。

 さらに、キャラクターを限界突破することで、レア素材のドロップボーナスが付く仕組みもあります。ドロップボーナス付きのキャラクターを使って効率よく素材を集め、その素材で装備やキャラを育てていくという周回サイクルを想定しています。

――プレイスタイルや熟練度でドロップ数が変化するのですね。使用するキャラクターによってもボーナスがかかる、とのことですが、特定キャラクターの入手や限界突破のしやすさはどうなっているのでしょうか?

 リブートを機に、キャラクターの販売方式についても大きく変えていきます。PvP時代はガチャ+1体だけショップで販売する形でしたが、今回からはガチャを廃止し、すべて直売りに切り替える方針です。

 ただ、課金しないとキャラクターを入手できないわけではありません。素材を集めることで、無課金でもキャラクターの解放は可能です。とはいえ、すべてのキャラを手に入れるには相当な周回が必要になります。

 でも、まずは1体でも限界突破したキャラを育てれば、ドロップボーナスによって素材収集の効率が上がり、結果的にほかのキャラの育成もしやすくなっていきます。そうやって、自然と周回のサイクルが回っていくような設計を想定していますね。

――キャラクターを直接販売ということですが、1体あたりの価格はどれくらいを想定されているのでしょうか?

増田
 いまのところ、最高レアのキャラは1体あたり3000円を想定しています。

――1キャラクターを3000円での買い切りに近い形にするのは大きな挑戦だと思います。現状、スマホゲーム市場でメインとなっているマネタイズ手法からの脱却を決めた要因や、新たなマネタイズ手法を用いることによって期待される効果についてお聞かせください。

増田
 本作では“素材を集めることに集約する”という点にマネタイズのベースを設定しています。それを達成するためには、”ガチャがマネタイズのゴール”になっては困るので、あくまで“素材を集めた結果としてキャラクターが手に入る”という形に落とし込みたかったんです。

 また、アクションゲームという都合上、明確に数値的に強いキャラよりも、プレイヤーの手に馴染むか、使っていて楽しいか、が大事だと考えています。欲しいキャラクターを選んで使う。そのキャラクターを使い込んでいたら、いつの間にかほかのキャラクターも手に入っていて、やれることの幅が増えてくる。この流れのほうが気持ちよく遊べるのではないか、と思い新たなマネタイズ手法を採用しました。

 現在のスマホゲーム市場は、ガチャマネタイズの火付け役となったアプリたちが、いまだにトップに君臨し続けています。これに対し、ガチャマネタイズから脱却してスマホゲーム業界に新たな手法を開拓することが、スマホゲーム市場を衰退させないためにも必要なアクションだと考えています。

 基本3000円とはいえ、素材交換もありますし、月ごと個数限定ではありますがセールも予定していますので、実際の価格的にはさらにお求めやすくなる予定です。

今後のアップデートについて

――今後のアップデート予定について、現時点でお話しいただける情報はありますか?

増田
 大型アップデートというほどではありませんが、いくつかの施策を予定しています。ひとつは“世界樹調査”というエンドコンテンツで、敵のラッシュやボスに挑戦していくようなシステムを構想中です。こちらはリリースから1〜2ヵ月の間に実装したいと考えています。

 そのほかには、ボスやステージの追加なども予定しており、リブート後はこれらが中心になってくるかと思います。

――ということは、リリース時点のボリュームとして、メインコンテンツを遊びきるまでの目安は、1〜2ヵ月程度のボリュームを想定されているのでしょうか?

 装備の作成や育成のための周回がある程度重めになる想定なので、全キャラクターを最後まで育て切るという意味での“遊び切る”であれば、だいたい半年ほどかかる見込みです。

 ただし、リリース時点で実装されているステージについては、それよりも早い段階で攻略できるようにはなっていると思います。ですので、全体の育成や収集まで含めた“やり込み”の部分を含めると、かなり長く楽しめる設計にはなっていますね。

――アクションゲームでは、ステージ内にギミックが仕込まれていることも多いと思います。今回プレイした範囲ではそういった要素は見られませんでしたが、今後のアップデートでステージギミックの追加は予定されていますか?

 考えてはいます。今回のプレイ中にも「つぎ、どこに進めばいいんだろう?」と迷うような場面があったと思いますが、そういった部分には“敵を倒すと扉が開く”といった誘導のためのギミックを入れて対応したいと考えています。

 またバトルそのものに絡んだギミックも考えています。たとえば弾速の速い攻撃をしてくる敵がいますが、あれも一種のギミックのようなものです。ただギミックとして紹介するにはギミックらしさが弱いので、それらの要素をさらに“ギミック化”していく、という方向性も考えてはいます。

 とはいえ現時点では、そのような攻撃系のギミックはエネミー側の挙動で表現できる部分も多いので、まずは“エネミーをギミック化する”形で展開していく想定でいます。ギミックの追加は、今後必要があれば検討していくという形になりそうです。

――リブートのきっかけから開発過程、さらにはビジネスモデルとしてのお話しまで伺える貴重な機会をいただき、ありがとうございました! 最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします。

 前回のPvPバージョンを遊んでくださった方も、新たに知っていただいた方も、前作の雰囲気を少しずつ残しつつ、全然違うゲームになっていると感じていただけると思います。ひと目で感じられるスピード感がありつつ共闘ゲームとしての特徴も出ていて、みんなで集まってワイワイ楽しめるゲームに仕上がっていると思いますので、ぜひ遊んでみてください。

増田
 共闘ゲームとして制作を始めた本作ですが、岡本と森とマレーシアでディスカッションを重ねる中で、ギアやダッシュ主体のアクションといった要素が加わり、軽快さや爽快感のある従来とは一線を画す共闘ゲームに仕上がりました。岡本を象徴するようなタイトルになったと思っていますし、「同じ共闘でもちょっと違うぞ」という部分をぜひユーザーの皆さんに体感していただきたいです。
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