マーベラスより2027年2月4日に発売予定の『朧村正怪奇譚』。ヴァニラウェアが手掛けた和風アクションRPG『朧村正』をベースに、グラフィックの高解像度化や新システムの追加など、さまざまな進化を遂げた作品だ。 本作では、108本の刀を強化できる新要素や奥義の習得・強化、探索の自由度を高めるシステムなどを導入。さらに、オリジナル版のゲームシステムを楽しめる“クラシックモード”も収録されており、当時の魅力を残しながら新たな遊びかたを提案している。
今回、プロデューサーの塩田氏と、Wii版『朧村正』の開発当時から作品に携わってきた開発ディレクターの中西氏にインタビューを実施。現行機向けに復活させることになった経緯や新要素に込めた狙い、開発の苦労などをうかがった。
中西 渉(なかにし わたる)
ヴァニラウェア 開発ディレクター。Wii版『朧村正』の開発に企画として参加し、PS Vita版の追加コンテンツ開発にも携わる。『朧村正怪奇譚』では開発ディレクターを務める。(文中は中西)
塩田 誠(しおだ まこと)
『朧村正怪奇譚』プロデューサー。『エターナルアニマ』、『フレデリカ』のプロデュースのほか、『牧場物語』シリーズ、『ルーンファクトリー』シリーズなど、数々のマーベラス作品のプロモーションも担当してきた。(文中は塩田)
108本の刀のうち105本を命名。Wii版から携わる開発者が語る『朧村正』への思い
――まずは、今回『朧村正』を現行機向けに復活させることになった経緯を教えてください。
塩田
新しいハードが出るたびに『朧村正』を楽しめるようにしたいと思っていたのですが、ヴァニラウェアさんとお話しする中で、今回タイミングが合って実現できました。原作から十数年が経ちましたが、時代を選ばない不思議な魅力を持つタイトルなので、多くのゲームファンに楽しんでもらえると思います。


――中西さんは、Wii版やPS Vita版では企画として参加されていましたが、今回は開発ディレクターを担当されています。再び『朧村正』に携わることになったときは、どのようなお気持ちでしたか?
中西
『朧村正』は新人時代に企画として関わった作品で、初代のWii版からVita版のDLCまで携わってきましたので、思い入れは人一倍あります。今回お話をいただいたときは、真っ先に参加を希望しました。
そんな作品に再び携わることになったのは不思議な縁を感じますし、とてもうれしかったです。ただ、ディレクターという肩書きは今作が初めてでしたが、実際にやってみると……とっっってもたいへんです(苦笑)。
――当時の開発で印象に残っているエピソードはありますか?
中西
Wii版を開発していたときは右も左もわからない新人で、当時企画の上長だった出口さん(出口知彦氏)にたくさん助けていただきながら、なんとか仕事をしていました。
担当していたのはおもにステージ設計や敵配置、それから刀の名前を考えることです。108本のうち“朧村正”、“無銘玉ノ緒”、“憑き落とし”の3本は神谷さん(神谷盛治氏)によるものですが、残りの105本は自分が名付けさせていただきました。とくに、刀にまつわるいろいろな資料を読み漁りながら、作中に登場する親玉や地域になぞらえて実在刀を設定していったのは、とても楽しかった覚えがあります。
しかし、改めて自分で付けたオリジナルの刀の名前を見ると、少々小っ恥ずかしいですね……。
お気に入りの刀を使い続けられる新システム。戦闘と探索の自由度も向上
――今回の『朧村正怪奇譚』を開発するうえで、大切にしているコンセプトを教えてください。
中西
ひと言でいえば、「『朧村正』を『朧村正』のまま現代に蘇らせる」ことを大切にしています。原作特有の手触りは大事にしつつ、ゲームとしてより高められる部分には積極的に手を入れるという方針です。中でもプレイヤーの遊びの幅を広げることを目標のひとつとして、奥義の着脱や街道の往来の自由化など、戦闘と探索の自由度を高めています。


――新たに刀の強化や奥義の習得・強化といったRPG要素が追加されています。これらの要素を導入した狙いを教えてください。
中西
刀の強化については、108本の刀がただの通過点にならず、気に入った刀を使い続けられるようにしたいと考えて導入しました。ほぼすべての刀に異なる装備効果も付いていますので、従来通り強い刀に乗り換えていくだけでなく、お気に入りの1本を鍛え上げる楽しみかたもできます。
奥義についてもプレイヤーによって好みの差があると思ったので、習得や強化などでプレイヤーごとに育成に特色が出れば、遊びかたの幅が広がると思って導入しました。

――そのほかにも、さまざまな部分が遊びやすくなっています。とくにアピールしたい改善点はありますか?
中西
細かなものになりますが、イベントシーンの早送りやスキップ、バックログの表示、クリアーした親玉エリア内でのショートカット移動、戦闘を任意でやり直せるリトライ機能、どこでもセーブなど、さまざまな便利機能を追加しています。
操作面でも、納刀状態でも空中ダッシュが行えるようになったり、忍袋の道具を方向キーひとつで使えるようになったりと、より快適に遊んでいただけるよう調整しています。
失われた素材は作り直しも。高解像度化と現行機への対応で直面した苦労
――グラフィックも高解像度化され、一部の素材は描き直しや描き足しが行われているそうですね。具体的にはどのような作業が必要だったのでしょうか?
中西
基本的には、高解像度化に際して必要に応じて描き足しや描き直しを行いながら、1枚1枚丁寧にレタッチしています。
いちばんたいへんだったのは、もととなる素材集めでした。当時の原寸素材を手分けして集めたのですが、中には原寸素材が失われているものや、変換前のテクスチャ素材すら見つからないものもあり、そういったものはレタッチの域を越えて、半ば作り直しに近い作業となりました。
本編+DLC4篇分のキャラクターと背景というたいへんな物量でしたが、デザイナーさんたちがこだわりを持って作り込んでくれました。その甲斐あって、十数年前の作品とは思えないほど高精細で見応えのあるグラフィックになったと思います。

――Wii版やPS Vita版から現行機への移植となりますが、技術的な苦労も多かったのでしょうか? また、ヴァニラウェア作品として初めてとなるPC版への対応についても教えてください。
中西
エンジンはWii版当時から続く内製のものですが、Vita版からしても十数年経っていますので、まず現行機で動かすだけでもひと苦労でした。
PC版の対応も弊社では初の試みでしたので、さまざまな課題がありました。操作ひとつとっても、キーボードとマウスでも快適に遊べるようにする必要があるなど、考えることも対応する箇所も膨大で、すべてが手探りでした。その甲斐あって、なかなか遊びやすい形になったのではないかと思います。
原作をいつでも遊べるように。クラシックモードを収録した理由
――本作には、オリジナル版のゲームシステムを楽しめる“クラシックモード”も収録されていて、とても贅沢です。新要素を追加したモードと従来のシステムの両方を用意したのは、なぜでしょうか?
中西
贅沢と言っていただけてうれしいです。クラシックモードの搭載を発表した際も、想像以上に大きな反響をいただいて驚きました。
今回は、高画質化したオリジナル版を永久保存したいという目的もありました。原作を遊べる環境を用意するのが年々難しくなっていく中、現代の環境向けに本作を制作する機会に恵まれましたので、原作をそのままいつでも遊べるようにクラシックモードを搭載した形です。そのうえで、新しいモードのほうは気兼ねなくゲームを再構築しています。
――最後に、本作を楽しみに待っているファンの皆さんへメッセージをお願いします。
塩田
『朧村正怪奇譚』は、原作をベースにより遊びやすく、より快適に進化しています。当時やり込んだ人はもちろん、初めて興味を持った人にも自信を持っておすすめします。妖刀村正を巡る、怪しくも美しい物語をぜひご堪能ください。
中西
WiiやVitaのころから応援してくださっている皆さんには、本当に感謝しています。今回、戦闘の変化に加えて冒険の自由度も増していますので、ぜひ新鮮な気持ちで再び楽しんでいただけるとうれしいです。
初めて遊んでいただく方には、和の美しさや外連味が凝縮された元禄の世の旅と、爽快な剣戟を存分に味わっていただければと思います。