ドリコムと言えば、ゲームの開発やパブリッシングなどを手掛け、出版やアニメなど幅広いIPビジネスを展開するエンターテインメント企業だ。近年では『Wizardry Variants Daphne』(ウィザードリィ ヴァリアンツ ダフネ)などのグローバル展開にも力を入れている。 そんなドリコムが2026年5月にインディーゲームスタジオ・DRECOM CREATORS STUDIO(ドリコム クリエイターズスタジオ)を設立。“ゲームクリエイターの支援および、作品の発掘・育成し、世界へ届けることを使命”(プレスリリースより)に、インディーゲームに積極的に取り組んでいくという。

ファミ通.comでは、DRECOM CREATORS STUDIOの中核を担う3名にインタビューを行い、同社のインディーゲームに対する取り組みなどを聞いた。

人見楽氏(ひとみがく・写真中央)
ドリコム DRECOM CREATORS STUDIO責任者兼ゲーム開発部部長。ゲーム開発に長く携わり、家庭用ゲーム機向けゲームからPC向けMMO、フィーチャーフォンやスマートフォン向けタイトルも手掛ける。ドリコムには8年勤めており、『はらぺこミーム』ではディレクターを務めた。文中は人見。
菅家立海氏(かんけたつみ・写真右)
マーケティング部部長。2012年にドリコムに新卒入社し、約10年にわたり複数タイトルのマーケティング責任者や新規事業の立ち上げを経験。メタバース系スタートアップを経て、2025年末にドリコムへ再加入。『Wizardry Variants Daphne』など複数プロジェクトのマーケティングを統括。文中は菅家。
土方耕平氏(ひじかたこうへい・写真左)
IPマネジメント部部長。IPのライセンス事業やIP戦略の決定に携わる。新卒で出版社に入社し、アニメ情報誌などの編集を担当。その後転職してライセンス事業のキャリアを始め、2024年ドリコムに入社。文中は土方。
※この記事はドリコムの提供でお届けします。インディーゲームスタジオ設立は才能あるクリエイターをサポートするため
――まずは、ドリコムがどのような会社なのか、会社のポリシーや方針などを教えてください。
人見
弊社はここ10年くらいモバイルゲーム事業を中心に、他社さんのIPをお借りしてゲームを作り育てることを軸にしてきました。
近年はIPをお借りしてゲームを作る事業をより発展させつつ、IPそのものを創出することにも挑戦を開始しております。また、そのあいだを補間する事業として『Wizardry Variants Daphne』のように既存のIPを取得し、育てていく取り組みも始めており、一定の成果を感じている段階です。
5年ほど前からは出版事業にも着手しておりますし、昨年(2025年)にリリースさせていただいた『はらぺこミーム』や、ただいま開発中の『Tokyo Stories』のように、いわゆる売り切り型作品の開発・販売もスタートしています。全体を通して、IPを創出し、それを育てていくことを目指している会社ですね。
――菅家さんはかつてドリコムさんに勤め、一度外の会社に出られたのちに再び戻ってこられたわけですが、そういった立場からいまの会社を見られていかがですか?
菅家
変化は感じます。まさに、私がドリコムから離れていたこの4年間でそういった変遷がありました。ドリコムは、もともとはゲーム事業が中心だったのですが、出版やアニメの組織が大きくなっていて、会社の本棚にドリコム原作の作品がたくさん並ぶようになりました。この変化は大きかったですね。
グッズ販売の事業部も立ち上がっていて、以前のようにゲームの開発・運営を中心にしているのではなく、さまざまなメディアミックスを含めて、IPを多角的に展開していく会社にシフトしていることは肌感覚としても感じられています。
――お三方の中では比較的最近ドリコムさんに入られた土方さんとしては、どのような会社だと感じていますか?
土方
スピード感がありますね。後でまた話に出ると思うのですが、このDRECOM CREATORS STUDIOにしても、出版・アニメ事業にしても、すごいスピード感で進んでいるんですよ。
先ほど人見からもあったように、出版事業などは動き始めてまだ5年ほどです。手前味噌で恐縮ですが、この短期間で出版からメディアミックスまでをひと通りできているというのは、事業部としても誇りに思っているところです。

おなじみ『ウィザードリィ』シリーズの最新作『Wizardry Variants Daphne』。ドリコムパブリッシングによりスマートフォン版は2024年10月に、Steam版は2025年3月にリリースされた。

2025年6月に発売された『はらぺこミーム』。原案を西健一氏、世界観アートを森川幸人氏がそれぞれ手掛けている。ドリコムは開発とSteam版のパブリッシングを担当。Nintendo Switch版のパブリッシャーはクラウディッドレパードエンタテインメント。
――では、今回DRECOM CREATORS STUDIOを立ち上げた経緯を教えてください。
人見
弊社の場合、家庭用ゲーム機におけるIPの創出はいまに始めたものではなくて、先ほど挙げた『Tokyo Stories』のころ、5年ほど前から取り組んでいたことでした。
ただ、社内だけで動こうとすると、どうしてもチャレンジの回数は非常に限られてしまいます。『はらぺこミーム』についても、開発に数年かかっており自社内の開発だけではIPを創出し続ける、また成功させるというプロセスに対してチャレンジ回数が非常に限られてしまいます。そうなると、チャレンジできるのは数年で数回程度になってしまいますよね。
――開発の長期化はゲーム業界全体で問題になっている部分ですね。
人見
加えて、我々の中でもそれぞれ個性はあるのですが、社内には絶対にない個性というのも、インディーゲームにはありますよね。たとえば、大手ゲームメーカーではディレクターとしてのチャンスを得られなかった人が、個人として才能を発揮する機会を得て、それがヒットするケースもあります。
そういった状況の中で、外部の方のタイトルをパブリッシングする機能を持つことで、才能を持つ多くの人をサポートできて、かつ我々としても挑戦回数を多く得られる、というのがスタジオ設立の狙いとしてあります。
菅家
社内起案の企画を進めていくと、多くの人の目を通るぶん、リスクヘッジの検討を重ねた末に、尖った部分が丸くなってしまうケースも時折あるように感じます。
人見
そういった側面もありますし、弊社も含めゲーム開発会社は、それぞれに得意なジャンルがありますが、複数のジャンルに強い会社さんはあまりありません。ジャンルを限定せずに挑戦していきたいので、そういった意味でも外部のクリエイターさんと、さまざまな取り組みを行っていくことには価値があると思っています。
ゲーム開発やパブリッシングの環境が大きく変化し、参入の障壁が下がり、民主化してきています。ゲーム業界自体が新しい形を見つけなければいけない、そういう段階に入ってきていると思います。そのあたりも含めて、いいタイミングで動き出せたかなと思っています。

ドリコム開発による『Tokyo Stories』。主人公のスズが、いなくなってしまった親友を探して、“誰もいなくなった東京”をさまよう3Dアドベンチャー。ピクセルアートと3Dを融合させたビジュアル表現が特徴。Steam向けに配信予定。
個性豊かな作品が発売されているインディーゲームは魅力的
――皆さんから見ても、いまのインディーゲーム市場は魅力的に映りますか?
菅家
おもしろいと思います。個性豊かなタイトルが、たくさん世に放たれている場ですから。
人見
ゲーム会社だと企画を通すのが難しかったり販売するのが難しい作品が出てきて、しかも成功を収めているケースもありますからね。個人的にもプレイするタイトルが増えていますし、最近見なくなったと思ったジャンルが復活するのも、インディーゲームだったりするので、非常におもしろいです。
菅家
モバイルゲームに長く関わってきた実感として、いまは開発費もグラフィックに求められる水準も、年々上がってきているように感じます。その一方でSteamでは、規模の大小にかかわらず、アイデアや切り口の鋭さで多くの人に届いている作品を目にします。そういうところは魅力的ですね。
人見
コンシューマーゲームの会社だと、優秀な人材はどうしてもいちばん売れる作品やナンバリングタイトルなどに投入せざるを得ないという状況があります。でも、そういう優秀な人たちこそが新しいものを作れる人材なんですよね。新規タイトルが出づらくなっているのには、業界構造的な問題でもあると思っています。
そこに対してインディーゲームでは、こんなジャンルもじつは需要があるんだとか、需要に対してクリエイターさんが直接インプットやアウトプットができるので、新しいものが生まれやすいんですよね。
――土方さんから見たインディーゲーム市場はいかがですか?
土方
私は出版業界からゲーム業界に入ってきた身なのですが、横から拝見していると、出版のシステムに似ていると思っています。出版業界は、ライトノベルやコミックスからIPを作って、そこでヒットしたものをメディアミックスで大きくしていきますよね。いま、インディーゲームでもそういった動きが出てきていると思います。
小規模な作品が数多く作られ、生まれては消えていくものもあるなかで、光るところがある作品は一気に何百万本も売れて、メディアミックス化されていく。そういう仕組みがここ5年か、もしかすると10年くらいで生まれているように感じます。まさに民主化が進んでいるというか、おもしろければ何でも流行る、みたいなところがありますよね。
――ゲーム業界の民主化、というところをもう少しお聞きしてもよろしいでしょうか。
人見
ソフトハウスが多かったころのPCゲーム市場や、コンシューマでも開発費自体がそれほど高くなかった時代は、製作者が自由に作れる裁量が多く、新しいものが生まれやすかった。いまはその時代に戻ってきた部分があって、いろいろなクリエイターさんが生まれる土壌ができてきたと思っています。
日本で続編やナンバリングタイトルが大きくなっているのも、市場が成熟したことの証ではあるのですが、やはり新しいスター、クリエイターさんが生まれにくくなっていた側面はあると思います。
そこでインディーゲームが台頭して、個人からでもクリエイターさんが生まれてきやすくなってきたので、新しいスタークリエイターを生み出すべく、我々もパブリッシャーとして機能していければと考えています。

さまざまなクリエイターにチャンスが行き届くようにしたい
――DRECOM CREATORS STUDIOの方針について教えてください。
人見
方針としては、さまざまなクリエイターの方にチャンスが行き届くようにしたいというのと、IPをいっしょに育てていきたいというところですね。ここがいちばん大きなところで、本スタジオの特徴になると思っています。
おもしろい作品であるのは前提として、そのうえでIPの創出と育成という弊社の方針に適したタイトルをパブリッシングさせていただき、育てていきたいと考えています。
この育てるというのもいくつか軸があって、ゲーム自体の売上もそうですし、コミック化やアニメ化、あるいは『8番出口』のような実写化、グッズ展開なども含めて、ゲームだけで終わらない作品世界を目指していきます。その成功例を作ることがいまの目標です。
菅家
ごいっしょいただけるクリエイターの方、開発会社の方々に我々が提供できる価値としては、まずひとつは開発支援です。こちらはWebサイトのほうにも記載しているのですが、作品を販売するにあたって、あらゆる観点で必要なサポートをさせていただきます。
複数のプラットフォームに展開していく際の技術支援や、海外にお届けするうえで必要になる言語対応についても、しっかりと支援させていただきます。加えて、マーケティングもサポートいたします。先日開催された“BitSummit PUNCH”や“東京ゲームショウ2026”にも出展させていただきました。
国内に限らず海外のイベントにも出展していく予定はありますし、それ以外にもユーザーとのコミュニケーションやデジタルマーケティングの面でも支援を行って、世に届けるお手伝いをさせていただきます。
そのうえで、ゲームに留まらないIP展開をメディアミックスで行っていく。そういった長いスパンでごいっしょできれば、と考えています。
土方
メディアミックスに関しては、もしかしたらクリエイターの方々がいちばん気になさっているところではないかと思っています。弊社の強みとしては、やはり出版部門を社内に持っていて、メディアミックスを一気通貫で行っている実績があることかなと思っております。
インディーゲーム事業としては最後発にはなるのですが、弊社はライトノベルの出版からコミカライズ、ヒットした作品を自社でプロデュースしてアニメ化するといった動きを実際に行っています。ひとつ例を挙げるなら、『ブレイド&バスタード』がそれですね。
すでにアニメ化を発表させていただいているものも続々と出てきていて、その出版・映像事業にインディーゲーム事業が合流したような形になっています。我々としても、原作としてのインディーゲームにすごく熱い視線を注いでいます。
基本的には人見のチームが選ぶタイトルをクリエイターファーストで開発していくことになると思うのですが、「この作品はアニメ化しやすいのでは」など、現段階でも我々からフィードバックは出させていただいています。

名作RPG『Wizardry』の世界観でくり広げられる、著・蝸牛くも(代表作『ゴブリンスレイヤー』)、イラスト・so-bin(代表作『オーバーロード』)によるダークファンタジーシリーズ。全世界10言語以上で展開され、2027年のアニメ化も発表された、いまいちばん注目されるダンジョン冒険譚。
――開発支援について、もう少し具体的なお話を伺ってもよろしいでしょうか。
人見
ゲームを開発してからパブリッシングするまでには、見えない作業が多いですよね。単にゲームを企画して作るだけではなくて、ストアを用意して、海外向けに翻訳して、いまインディーゲーム業界でも話題になっているように、作品を知ってもらう作業も必要になります。
小規模開発だとそういったところにすごく時間を取られてしまって、クリエイティブに時間を割けなくなってしまうことが多いです。クリエイターの方がもっとクリエイティブに集中できるように、たとえばこういうデザイナーさんがいれば何とかなるのに、といったときに人材を探すお手伝いをする、といったことはできると思います。
そういった部分も含めて、パッケージとしてサポートしていけるという点で、我々がゲーム会社としてインディーゲームのパブリッシングをすることの意義は大きいと考えています。
菅家
タイトルの中身に細かく干渉していくのではなくて、クリエイターの方々が持つ方針を尊重しつつ、その支援をしていく、というのはスタジオの方針でもあります。
――クリエイティブに口出しはしないのですね。
人見
ゲームデザインや世界観含め、基本的にはクリエイターの意思を尊重する方針です。ただ、タイトルによっては弊社の開発力の部分で手伝ってほしいというご相談もあるので、個別にいっしょに作らせていただいているタイトルもあります。
菅家
我々からアドバイスをさせていただくとすれば、作品の方向性は尊重したうえで、その魅力がより伝わりやすい見せかたをご提案する、といったケースはあるかもしれません。そこはタイトルごとに、クリエイターの方々のご意向も踏まえながら関わりかたを調整していきます。
人見
そこも含めて、クオリティーを上げるために必要な情報を取ってくる、そのお手伝いですね。必要に応じてプレイヤーテストも行いますし、イベントに出展した際の、試遊してくださった方のリポートなども行います。
我々がプロデュースする、というよりはお客さんの感想などをダイレクトに取得しやすい環境を用意することで、クリエイティブがよりよいものになるお手伝いをしていくイメージです。
土方
そこについてはメディアミックスも同じです。メディアミックスは、クリエイター様の負担も非常に大きくなります。うれしい悲鳴ではあると思うのですが、企画から宣伝、プランにデザインなど、とにかく監修することが多いんです。
そこで我々ライセンス部門があいだに入りまして、うまく交通整理をさせていただきます。最終的なご判断、必要な部分に関してはもちろんクリエイターさんにご確認いただきつつ、本来の作品作りに集中できるような環境を整えていきたいと考えています。
人見
ドリコムという会社はそもそも内部でゲームを作っている会社なので、作る側から見て、こういうサポートが必要だなというのもわかっています。
土方
出版事業では作家さんと編集とが1対1で付き合ってメディアミックスへの対応をしているので、そういった部分のノウハウは我々から人見のほうにもシェアしています。
菅家
このように、互いの知見を持ち寄って動けるのも我々の強みかなと思います。

3月にプロジェクトを立ち上げてギリギリのタイミングでBitSummit PUNCHに出展
――先ほどお話にも出ていましたが、5月にはBitSummit PUNCHにも出展されていましたよね。手応えなどをお聞かせください。
菅家
出展させていただいて本当によかったと思っています。ちょっとした裏話をさせていただくと、じつは、私と人見でこのレーベルを立ち上げようと話したのが、今年の3月下旬ごろだったんです。
――それはまたずいぶんと近いですね。そのタイミングだと、BitSummit PUNCHの準備まであまり時間がなかったのでは?
菅家
時間に余裕はなかったですね。ドリコム自体、毎年BitSummitには出展していたのですが、今回のようなインディーレーベルとしての出展は初めてでした。
3月以前からぼんやりと、インディーゲームのパブリッシングや、クリエイターさんとごいっしょできるようなプロジェクトを、といった構想はあったんです。それがいよいよ実際に動き出して、そうなるとBitSummitはインディーゲームの方にはすごく重要なポイントなので、ここで出展することが大事なのではないか、となったんです。
それまではレーベルを作るという構想自体がなかったのですが、3月末に立ち上げの話をして、5月にはDRECOM CREATORS STUDIOという名前やロゴを作って、サイトも立ち上げました。
その一方で、人見はBitSummitの出展にごいっしょしていただけるクリエイターの方を探していました。準備期間は限られていたのですが、奇跡的に4タイトルにご賛同いただけて実現できたんです。
人見
最悪、ゼロタイトルになる可能性もありましたからね。
菅家
ブースの出展だけは先に決めてしまっていたので、正直かなり切羽詰まっていました。そんな急なお声がけにもかかわらず、ごいっしょしてくださったクリエイターのみなさまには本当に感謝しています。
――先ほどスピード感がすごいとのお話がありましたが、予想以上ですね。
菅家
ここは本当にそうですね。そこでごいっしょさせていただいた4タイトルのうち3タイトルは、現在パブリッシングタイトルとして発表させていただきました。今後ごいっしょしていくきっかけになったわけで、本当にスピード感はすごかったのですが、出展してよかったなと思います。
本当のスタートラインはここからなのですが、まずはレーベルの立ち上げ自体ができたのでよかったですね。

急遽出展を決めたBitSummit PUNCHは大盛況だったとのこと。
――お声がけしたタイトルについては、以前から注目されていたものだったのですか?
人見
ある程度お付き合いのあるタイトルではありました。「どこからパブリッシングするか決まっているんですか?」くらいのことはお聞きしていましたが、具体的なお話をしたのは本当に直前でしたね。
そもそも、レーベルを立ち上げるか、タイトルごとに個別の契約で進めるかというのも最初は決めていなかったんです。ただ、レーベルという形があったほうが、ユーザーさん的にもわかりやすいですよね。「あそこから出るゲームは自分に合うな」みたいなのはあると思うんです。
そういった意味で、「DRECOM CREATORS STUDIOの新作がほしい」と思っていただくことが目標です。
菅家
BitSummitの準備段階では、レーベルの輪郭というか、まだ名前すら固まっていなかったので、その段階で承諾いただいたクリエイターの方々には本当に感謝しています。
人見
出展していただいた方々には、本当に感謝ですね。
――ブースに来たお客さんの反応はいかがでしたか?
人見
どのゲームにもお客さんが入ってくれましたし、DRECOM CREATORS STUDIOとして認識してもらえたのが大きかったですね。単にドリコムとして、タイトル単発で出展していたころはそうでもなかったのですが、レーベル化したことでインディーゲームのレーベルとして認識していただけて、お問い合わせやご相談もいただけるようになりました。ここも非常に大きいですね。
菅家
あとは、タイトルごとにファンの方もすでにいらっしゃったので、実際の場でファンの方々と触れ合うことができたのも、経験として大きかったと思います。今後もイベントなどでのブース出展には力を入れていきたいです。

イベントなどに力を入れていきたいというDRECOM CREATORS STUDIO。9月に開催された東京ゲームショウ2026にも出展。3タイトルが試遊可能で大盛況だった。
パブリッシャーとしての実績があり、IPを広げる一貫した機能を持っているのが強み
――いま伺ったスピード感も顕著な例かと思いますが、DRECOM CREATORS STUDIOの強み、特色となるのはどのような部分でしょうか。
人見
パブリッシャーとしての実績があり、IPを広げる一貫した機能を持っている、かつスピード感を持って取り組めるところですね。
ドリコムは、もともとゲーム会社としてあったところに出版とアニメ、グッズ販売の部署が追加されたのですが、お互いの距離感がすごく近いんです。それこそ、少し歩いたら全員と話せるような近さで、そこから生まれる展開の速さは強みになると思います。
菅家
私たち3人もそれぞれで役割は違うのですが、3人でご飯を食べながら、どうしていこうかと話せるぐらいの距離感ですね。
人見が申し上げた通り、ドリコムではゲーム開発と運営をずっと展開してきましたし、データ主導でマーケティングをしてきた知見もあります。そこに加えて、出版やアニメなどのメディアミックス展開ができる機能も備えています。一気通貫でそれができる会社はそう多くはないのではないかと思います。
――BitSummitに出展されたタイトルについても、いわゆるメディアミックスに関しては想定されているのでしょうか。
人見
お声がけの際に、IP化も検討したいとはお伝えしています。
菅家
まずはウィッシュリスト登録数や販売数を拡大していくことが重要ですね。その上で、作品の強みにあわせて、適切な展開を考えていきたいです。
土方
どういった展開をしていくかは実際にゲームが動き出してからになりますが、メディアミックスができる前提でのお話や、契約の進めかたといった部分もサポートさせていただいています。
人見
契約に詳しいメンバーがサポートすることで、クリエイターさんの負担を減らせるようにしています。
土方
ライセンス側としては特別なことをしているわけではなく、出版ビジネスで培ったノウハウを、人見の部署と連携しながらシェアさせていただいている形です。クリエイターの方が不安に思われるのであれば、私が出向いて丁寧にご説明差し上げるようにしています。
――実際、そういった不安を口にする方も多いのでしょうか。
人見
私もゲーム畑の人間なのでよくわかるのですが、契約まわりのことってわかりにくいことが多いんですよね。そういうところを専門家の人にわかりやすく説明していただくと、先方も安心して判断しやすい、というのは大きいです。

タイトルは作家性を重視して選んでいる
――先ほど、特定のジャンルにこだわらずにやっていきたいとのお話もありましたが、ゲームのテイストなども限定せず、オールラウンダーなスタジオとして動いていく予定なのでしょうか。
人見
そうですね。ゲームジャンルの限定はしていないです。むしろ、なるべく多様化していく方向ですね。ただ一方で、IP化を検討できるかどうかはスタジオの意義にも関わる部分なので、キャラクター性や物語性の強さは重視しています。
このIP化のしやすさというのも国や地域によって基準が変わってくるので、どこに向けて出すかに応じて見るべきポイントも変わってきます。アメリカではすごくウケたけれど、日本ではそうでもない、みたいなケースもありますよね。そこはいろいろな視点で見させていただいています。
菅家
キャラクター性や物語性がわかりやすい形でなくても、工夫次第でメディアミックスはできると思うのですが、よりメディア展開が想像しやすい要素があるといいですね。
人見
ホラーの『8番出口』なら実写化しやすい、みたいにジャンルごとの違いもありますよね。
――たとえばパズルゲームでも、かわいいキャラクターがいれば展開しやすくなるとか?
人見
『ぷよぷよ』などはまさにそうですよね。ですので、どういうジャンルであるかはあまり関係なく、グッズ化などの余地があるかどうか、ですね。
――パブリッシングタイトルを選ぶ基準のようなものを教えていただければと思うのですが、ここはやはりIP化のしやすさ、が大きいのでしょうか。
人見
具体的な説明は難しいのですが、作家性を重視しています。そのクリエイターさんの個性がダイレクトに伝わるような作品、埋没しない作品を選んでいます。ゲームのアイコンがずらっと並ぶなかでも、個性がひと目でわかるような作品を選んでいます。
発表したタイトルでたとえば『TIMEMOON』は絵が出た瞬間に、この人の作品だなというのがわかります。そういう作家性の強い作品を選んでいます。その点で、アートを手掛けている人が中心になっている作品が多い、といった傾向は出ているかなと思います。
――作家性となると、ゲーム性よりもアート性の強さが大きいのかなとも思えますが、このあたりはいかがでしょうか。
人見
そこは少し違っていて、ゲーム性も作家性のひとつであると考えています。逆に言えば、ゲーム性とデザイン、ストーリー性は切り離せないと考えています。それらを全部合わせての作家性だと思っています。
たとえば『TIMEMOON』はSFという、日本人クリエイターの方があまり選ばない題材を扱っています。SFのドット絵のADVなのですが、クリエイターの方にすごくこだわりがあって、設定にもビジュアルのディティールにもその部分が強くでていると思います。
菅家
すごくディティールにこだわりを感じる作品ですよね。
人見
ゲームシステムと絵はまったく切り離せないものだと考えています。そのひとつひとつにこだわりがないと、ユーザーさんにも届かないと思うんです。今回パブリッシングタイトルとして発表したものは、絵のひとつ、システムのひとつに対しても、クリエイターの方はなぜそうしたかを答えられると思います。

DRECOM CREATORS STUDIOからパブリッシング予定の『TIMEMOON』。作家としてのこだわりが詰め込まれた作品とのこと。
――単にアートっぽいだけでなく、作家としてのこだわりを詰め込んだ作品をパブリッシングしていくということですね。
人見
そういうこだわりがあるゲームにはファンの方がついて、長く愛されると考えています。
BitSummitなどのイベントでも、どんな人がこの作品を好きになっているんだろう、みたいなことを見ています。あとは、どういう風に作品が愛されているか、などですね。
発表したタイトルに大きな手応え。多様性のあるおもしろいラインアップに
――DRECOM CREATORS STUDIOがパブリッシングを行うタイトルとして、『TIMEMOON』、『Beautiful Life Show』、『散るプラネット(Chill Planet)』の3作品が発表されました。それぞれについて、魅力を教えていただけますか?
人見
今回の3タイトルは全体的に印象がバラけたものになっています。すべてグローバルで展開するのですが、注力する地域、ファン属性などもあえてバラバラにしました。
たとえば『散るプラネット』は、滅んでしまう世界の中で最後の旅をするお話です。最終的には、隕石が落ちてきて世界が終わってしまうんです。
――切ないですね。
人見
そうなんですよ。そんななかで、九州の南端からひとりで旅に出て、北海道まで向かう過程で想い出を綴っていく、エモーショナルなゲームです。日本全国を舞台にしているので、共感できる場面も多いゲームだと思います。
アニメからゲーム化した作品であれば、こういう雰囲気のタイトルもあるのですが、Steamのインディーゲームとしては珍しいと思います。そこの希少性はひとつ特徴です。本当に魅力的なので、ゲームに留まらず、何とかメディア化して大きく育てていきたいと思っています。
菅家
『散るプラネット』は“チル”という言葉もキーワードになっていますね。緊張感があって集中力を求められるジャンルの作品も人気がある一方で、ゆるく楽しみたいというニーズを捉えた作品も増えてきていると感じています。そういった楽しみ方を求める方にも届く作品だと思います。
人見
ゲームシステムも個性があって、ボリュームもあるので開発がたいへんではあるのですが、ぜひいっしょに大きくしていきたいと思っているタイトルです。

『散るプラネット(Chill Planet)』はaozorite開発による、ビルド構築アドベンチャー。 隕石で滅ぶことが決まってしまった世界で日本縦断をして、北海道を目指す女の子たちの姿が描かれる。アイテムを集めてビルドを組み、カードをさばいて旅をしていく。
菅家
一方で、『Beautiful Life Show』はぜんぜん雰囲気も違う作品ですね。
人見
見た目からしてホラーっぽいですよね。ワールドワイドでわかりやすいタイトルは何かと言うと、アクションなんですよね。言葉がいらないから、単純に操作を楽しみやすいんです。
そのうえで、我々が探していたのはキャラクター性があって、ゲームとしての明確なおもしろさがあるタイトルでした。『Beautiful Life Show』では、死んだ自分を攻略に利用できるんです。死んだ自分を踏み台にしたり、ドアに挟まれた自分のおかげで、その隙間から抜けられたり、そういうパズル的なおもしろさがあります。
あとはやはり、この世界観ですね。自分が誰だかわからないなか、奇妙なショーの主役として死の試練に挑むという、映画の『SAW』に近いような世界観があるんです。これはワールドワイドで展開してみたい、というので選ばせてもらいました。
菅家
この2作品を見ても、我々がいかにジャンルを限定していないかが伝わるかと思います。

『Beautiful Life Show』はサイドビュー視点で展開されるホラーアクションアドベンチャー。プレイヤーは奇怪なショーの主役となり、命がけの舞台に挑むことになる。直前を生きた“リプレイゴースト”(もうひとりの自分)とともに、幾重にも仕掛けられた死の試練を切り拓く。開発はFukudanuki。
人見
最後は、先ほどから話にも出ている『TIMEMOON』ですね。これは、作者の方が作ったPVを見た瞬間に、「ごいっしょしたい!」と思ったタイトルでした。月の都市を舞台にしたSFアドベンチャーなのですが、画面全体から溢れるセンスがすごいんですよ。
タイムトラベルをするタクシーの運転手としてお客さんを乗せて、どの時代にお客さんを降ろすかで未来が変わっていきます。こういう作品って、制作の難度が高いので、そもそも挑戦する人が少ないんですよ。かつ、世界観やクリエイティブもすごく魅力的なので、これはきっと、多くのファンを惹きつける作品になる、そんな予感がしました。
菅家
登場キャラクターひとりひとりがとても魅力的ですよね。作品ごとに色がそれぞれ異なるので、ファンになってくださる層も違ってくると思っています。この多様性がおもしろいラインアップですね。

『TIMEMOON』月面タクシードライバーとなり大統領暗殺の謎を解き明かす、SFタイムトラベル・アドベンチャー。緻密に描き込まれたドット絵と作り込まれた世界観が、探索そのものの没入感を高める。開発はKENKOU LAND(けんこうランド)。
――ちなみに、現状ですと今回の3タイトルはPC向けダウンロード版のみが発表されていますが、家庭用ゲーム機向けだったり、パッケージ版の展開は考えていますか?
人見
そういったお話をいただければ興味はありますが、いま急いで、というものではないですね。ただ、ファンアイテムとしての訴求力も強いと思うので、お求めになるお客さんはいらっしゃるかなと思います。
目標は年間5本のリリース。社内応募なども想定
――今後の展望についても伺いたいのですが、年間何本程度のペースでリリースしていく予定ですか?
人見
年間5本程度は出していく想定です。
菅家
水面下でお話を進めている案件もあります。
――今後も『はらぺこミーム』のような内製タイトルは制作されていくのでしょうか。
人見
今後の予定についてはまだ決まっていない状態です。内製タイトルについては、いま取り組んでいる『Tokyo Stories』や、弊社が開発しアークシステムワークスさんからパブリッシングしていただく『デモンズナイトフィーバー』を作り切って、考えるのはそこからですね。
DRECOM CREATORS STUDIOは社内の人も応募できるので、そちらに応募してもらうのもいいかなと思います。まずはいま作っている上記の2本をしっかりとリリースして、DRECOM CREATORS STUDIOをちゃんと成立させることが目標です。
――最後に、本インタビューを読んでいる読者に向けてメッセージをお願いします。
菅家
ものをしっかり作っていくことと、それを世に広く届けていくことでは、違った観点やスキルが必要になることもあると思います。
私自身、会社の中でゼロからコンテンツを企画して、かつマーケティングまで実行することもありましたが、とても苦労しました。もの作りとマーケティングとでは、また違った頭の使いかたをするんですよね。
作家の方々には自分が作りたいものを作ることに集中していただき、その作品を世に広めたり、メディアミックスで展開したりといった部分を弊社でサポートすることで、お互いにいい関係性を築いていければと思っています。
土方
冒頭に人見がゲームの民主化と言いましたが、まさに、大きな会社が何百人もの規模で作っていく共同事業のようなものから、個人クリエイターが独力でインディーゲームを出していく、ある種時代の転換点にあるのかなと思っています。
もちろん、過去にもそういう時代はありましたし、私自身、大学時代には個人クリエイターさんの作った作品を遊んでいました。その時代が再び、また新しい時代としてやってくるときに、クリエイターさんとごいっしょできるというのは、すごく幸運なことですね。
ドリコムはインディーゲーム事業を展開する会社としては最後発になりますが、先ほどもお話したように、出版・アニメ事業と一気通貫で、スピーディーにメディアミックスを回していけるのは、大きな強みだと思っています。
ここに魅力を感じていただけるクリエイターの皆様がいらっしゃったら、ぜひ大切な作品を我々に預けていただいて、いっしょに、グローバルに向けて発信していけたらと思います。我々ライセンス部門としても、全力でサポートさせていただきます。
人見
だいたい言われてしまいましたね(笑)。私は作る側でもあるので、ゲームが民主化して、いろいろなクリエイターさんが自由にものを作れる、新しいものが生まれてくるという環境はすごくいいものだと思っています。
かつ、それがいかにたいへんなことかもわかっているつもりです。そこでDRECOM CREATORS STUDIOが、クリエイターの方にもファンの方にも成功例を示すことで、その苦労が自分にしっかり返ってくる、そういう環境を作っていきたいです。
そのためにも、まずはひとつひとつ成功例を積み上げていくことが大事だと考えています。ご協力いただけるクリエイターの方や、弊社のタイトルに興味を持っていただけるファンの方が増えるように、これからも尽力していきます。



ドリコムとDRECOM CREATORS STUDIOがあるのは大崎。フロアに入ると関連アイテムなどがずらり。幅広いIPビジネスを展開するエンターテインメント企業であることがうかがえる。オフィスにはアンティークのレザーソファが置いてあり、打ち合わせなどに活用されていた。