『Terry's Other Games』は『VVVVVV』『Dicey Dungeons』開発者の“その他もろもろ”から「ひとりの人間の思想体系」を垣間見れる作品集【とっておきインディー】

『Terry's Other Games』は『VVVVVV』『Dicey Dungeons』開発者の“その他もろもろ”から「ひとりの人間の思想体系」を垣間見れる作品集【とっておきインディー】
 古今東西の魅力的なインディーゲームを紹介する“とっておきインディー”。
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 今回は、『VVVVVV』や『Dicey Dungeons』などの傑作を手掛けたゲームデザイナーの“その他もろもろ”を一挙に味わえる作品集『Terry's Other Games』。

 
本稿の執筆時点では日本語非対応だったが、その後めでたく日本語化。現在では、珠玉のゲーム群がいっそう遊びやすくなっている。
※Web転載に合わせて、本誌掲載時から一部を追記・改訂しております。

死にゲーこそが、生きた証。

ココが推し
  • 著名インディーゲームクリエイターのプライベートなゲーム集
  • シンプルかつ高難度なアクションゲームを多数収録
  • 日本語未対応( 4月1日現在)でもさほど問題なし

 利益の最大化を何よりも優先するコマーシャリズムの慣例や誘惑にとらわれず、自分(たち)が思い描く世界を自分(たち)が用意しうる最上の環境・方法で組み上げたもの……それがインディーゲームだ。結果的に企業が大々的にプロモーションしたり、結果的にテレビアニメ化が決定したとしても、クリエイティブの核の部分とは無関係。インディーゲームは広大なのだ。

 そんなインディー・オーシャンの中にあって特異なポイントに位置しているのが、この『Terry's Other Games』。端的に説明すると、2000年代から活動する個人ゲーム開発者Terry氏が、非営利目的で制作・発表してきたミニゲーム集。収録タイトルは、現在もオンライン上で公開されているフリーゲームから、現行のPC環境で起動させるのが難しい過去作まで、さまざま。それらは、ゲームコレクションのシステム内で快適に動作するよう、Terry氏自身の手によって調整・リメイクされている。
収録タイトル数は、9+α。往年のアナログレコードをイメージしてか、A-SIDES、B-SIDESのカテゴリー分けがされている。各タイトルの操作系統は、方向キー+0〜2ボタン構成。詳しい説明はないものの、数度ゲームオーバーになれば、要領を得られるだろう。『At a Distance』のみ、ゲームコントローラー接続必須のふたりプレイ専用ゲームとなっている。
 実際にプレイしてみると、遊びの少ないタイトな操作性。初見時には反応しがたい唐突な攻撃・トラップの応酬。答えはわかっても、その通りに操作するにはあまりにシビアな諸判定……とまあ、何度もゲームオーバーになり何度も再チャレンジすることを前提とした構成のゲーム、いわゆる“死にゲー”が、大部分を占めている。中には未調整というか明らかに作りかけの作品もあり、全編を通じて、さまざまな形の“死”を体験することになる。

 アナリストを気取って本作を評するのであれば、「クラシック・ゲームのストレートなオマージュ、またはジョークソフトとのニュアンスが強かった、個人開発規模の高難度プラットフォーマーに、リプレイ性を考慮したレベルデザインやゲームサイクル、高度なナラティブ要素が導入されたタイトルが同時多発的にリリースされた2010年前後のヒット作のひとつ『VVVVVV』の作者の、クリエイティビティーの足跡をたどれる貴重かつプレイアブルな資料」となる。言外で、ビデオゲームのコマーシャル的側面にしか関心がない人向けの内容ではない、とも伝えているあたり、良心的な表現ではなかろうか。
各タイトルのトップ画面には、制作された背景エピソードが綴られている。
煮詰めていないゲームの寄せ集めと思いきや、短期集中できる佳作揃いの『Terry’s Trainwrecks(意訳:テリーのダメゲー)』。
 であれば、そうしたコンテクストとセットでないと本作に触れる価値はないのかというと、それも微妙に違う。収録タイトルのひとつ『Mr. Platformar』(2023年)は、往年(ファミコン発売以前)のコンシューマーゲーム風の外観で、モダンなレベルデザインを包んだ質実剛健なジャンプアクション。『Naya’s Quest』(2013年)は、2Dグラフィックが主流だった時代の斜め見下ろし視点型ゲーム特有の、遠近感のわかりにくさをシニカルに発展させた“めまい”。そして、Terry氏の陰の代表作ともいえる『Don’t Look Back』(2009年)は、プレイヤーがゲーム開始からエンディングまで一貫して、“ゲームタイトルの意味であり続ける”という稀有な体験だ。

 これらは、未プレイであればぜひともオススメしたいタイトルではあるが、『Terry's Other Games』の真骨頂は、収録タイトルを横断することで浮かび上がる、ひとりの人間の思想体系──「自分にとってビデオゲームとは本質的にどのような体験であるか?」、「これまでに享受してきたゲームは自分に何をもたらしてきたのか?」といった、極めてプライベートな見解の総合だ。これはとがった主張とデベロッパーならではのサービス精神、そして自身のQOLのためにコマーシャリズムをひとつまみ……といった渾身の単体タイトルからは伝わらない、非常に繊細かつ曖昧な感覚である。Terry氏自身、まったく意図したものではないだろうが、本作は広大なインディー・オーシャンの中にぽっかりと開いた、ワームホール的存在なのだ。

Terry Cavanagh ってこんな人

 本作の作者、テリー・カバナー氏は、1984年アイルランド生まれのゲームデザイナー。幼少期よりコモドール64(アメリカ・コモドール社が1982〜1994年に販売したホビーユースPC)などでゲームを制作してきた彼は、市場リスクアナリストのキャリアを経て、20代前半で専業の個人ゲーム開発者に転向。現在はイギリス・ロンドンで、妻と2匹の猫と暮らしているとのこと。代表作に2Dプラットフォーマー『VVVVVV』(2010年)、ローグライクカードゲーム『Dicey Dungeons』(2019年)など。

死にゲー以外だって、生きた証。

『Grab Them by the Eyes』
 収録タイトルの中で変わり種といえるのが、ライバルの露店よりも人目を惹きつける電光掲示板を制作するカードデッキバトル(?)ゲーム『Grab Them by the Eyes』。ゲーム内コメントによれば、旅行先での電光掲示板の派手さに驚いたことが、制作のきっかけだったという。

 本作のアイデアは後に、Terry氏が手掛けたコマーシャル(商用)ゲームのひとつ『
Dicy Dungeon』に発展したとのこと。単に作りたいから作る、とは異なる判断もされていることがうかがえ、興味深い。
こちらも収録タイトルのひとつ、強引な突破・逃げ切りも可能なローグライクストラテジー『Tiny Heist』。

Terry's Other Games

  • プラットフォーム:PC
  • 発売元:Terry Cavanagh
  • 発売日:2025年2月14日
  • 価格:1200円[税込]
  • ジャンル:その他
  • 対象年齢:審査なし
  • 備考:ダウンロード専売

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