2026年8月20日に発売された(※)Nintendo Switch 2、Nintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Steam用ソフト『シュタインズ・ゲート リブート』。 同作の発売を記念して、『シュタインズ・ゲート』シリーズのプロデューサーを務める松原達也氏とシナリオを担当する林直孝氏にインタビューを実施。約17年間、走り続けてきた『シュタインズ・ゲート』シリーズの思い出や魅力、そして、『リブート』の制作秘話や今後の展開などをたっぷり語っていただいた。
※Xbox Series X|S版は、2026年10月29日発売予定。
※本インタビューは2026年7月下旬に実施しました。松原達也氏(マツバラタツヤ)
科学アドベンチャーシリーズで、プロデューサーを務める。テレビアニメ『シュタインズ・ゲート』などでは、林氏とともにシナリオ監修を担当する。文中は松原。
林直孝氏(ハヤシナオタカ)
MAGES.ゲーム事業部シナリオライター。科学アドベンチャーシリーズのほか、アニメ『プラスティック・メモリーズ』、『ダーリン・イン・ザ・フランキス』などの脚本も手掛ける。文中は林。

2010年の空気感を継承しつつ、完全新作の熱量で挑んだ再始動(リブート)
17年走り続けてきた実感が湧かない息の長いコンテンツへの感謝
――まず『リブート』のお話に入る前に、オリジナル版『シュタインズ・ゲート』の発売から今年で17年が経とうとしています。いまの率直なお気持ちはいかがですか?
松原
「もうそんなに経ったのか」というのが正直なところですね。ありがたいことに、アニメ化をはじめ、『シュタインズ・ゲート ゼロ』や『シュタインズ・ゲート エリート』といった数々の関連作の制作、ポップアップストアなどの展開を定期的にさせていただいていることもあって、自分の中では、つい最近のタイトルという感覚がずっとありました。だから改めて17年と聞くと、「本当に!?」という感じがすごいです。
林
終わりがないコンテンツという感じがしますよね。約17年間、ずっと作品に携わり続けていたイメージです。
松原
せいぜい「まだ10年くらいじゃない?」という感覚でした(笑)。
林
いまだにファンの方々からたくさんの声をいただけますし、海外の方からも「おもしろかったです」、「いまでも大好きです」と言っていただけたり、なんなら「いままさにプレイし始めました」という方々をけっこう見かけるんですよね。17年前のタイトルをいま遊んでくれている人がいるというのは本当にありがたいですし、大昔のタイトルという感じがまったくしないです。
――ここ数年でも、VTuberの方々によるアニメ同時視聴配信などの影響もあって、新規のファンが増えている印象があります。
松原
そうですね、それはすごく感じていますし、本当にありがたい限りです。
――17年前の開発当時に遡りますが、完成した際にこれほどの大ヒットタイトルになるという手応えはありましたか?
松原
いや、正直にお話しするとそこまでは思っていなかったですね。ただ、マスターアップの1~2週間前くらいに会社の引っ越しがあったのですが、僕たち『シュタゲ』の開発チームだけは引っ越さなかったんです。引っ越し前のオフィスの狭い会議室に残って、段ボールの机でプログラマーやグラフィックチームのメンバーと役職関係なく「ああでもない、こうでもない」と言いながらワイワイ開発していて。それこそ『シュタゲ』のラボみたいな雰囲気でみんなでもっともっとと突き詰めて作れたのが、いま思い返すと最後のブーストとしてすごく効果的だったのかなという気はしています。
――林さんはシナリオを書き終えたときの手応えはいかがでしたか?
林
自分の中では「おもしろいものができたな」と思っていたのですが、とくに確信を持てたエピソードがあって。音楽を担当している阿保(剛)さんが、シナリオ執筆中のある日、「シナリオの続きはまだですか?」と声をかけてくれたんですよ。音楽制作のために先行してシナリオを読んでくれていた阿保さんからそんなことを言われたのは後にも先にもその1回、『シュタゲ』のときだけだったので、「もしかしてめちゃくちゃおもしろいタイトルなんじゃないか?」と自信を持てました。
なぜ『シュタゲ』は人を惹きつけるのか
――17年経ったいま改めて感じる、『シュタインズ・ゲート』という作品の魅力はどこにあると思われますか?
松原
個性的なキャラクターたちはもちろんですが、僕が気に入っているのは“世界観が閉じている”という点ですね。秋葉原という狭い街の、さらにその中の小さな“未来ガジェット研究所”という部屋にいる数人のメンバーだけで物語が進んでいく。そこから第三次世界大戦などという大きな話がでてきつつもカメラはそこには振らない。ラボメンたちのドラマだけで風呂敷を広げすぎず、キャラクタードラマを濃密に描きながら綺麗に伏線を回収していくバランスが、すごく好きなんです。
林
ストーリーはもちろんですが、やっぱりキャラクターがファンの方々に深く愛されている印象がありますね。アドベンチャーゲームで男性主人公(岡部倫太郎)がいちばん人気になる作品というのは、なかなか珍しいですよね。キャラクターの配置やバランスが絶妙だったことや、2010年当時の秋葉原の空気感をうまく表現できていたことが、最初はコアなオタク層に刺さり、そこから広がっていったのかなと思います。

――そんな『シュタインズ・ゲート』を約17年経ったいま、リメイクした経緯を教えていただけますか?
松原
2~3年ほど前に、『シュタゲ』のキャラクターデザインを担当していただいている、hukeさんと久しぶりに会う機会がありまして。その際に「『シュタインズ・ゲート』のキャラクターをリニューアルしたいんですけど、どうですか?」と逆に提案をいただいて。それなら、今後のシリーズ展開につながるようにグラフィックから何から全部をアップデートして、もう一度科学アドベンチャーシリーズを再始動させるのがいいのではないかと思いついたのが最初のきっかけですね。
林
じつは2023年5月ごろに、hukeさんが「いま『シュタゲ』を描くとこんな感じ」というイラストを自発的に描いてアップされていたんですよ。
松原
そうそう! それを見て「めちゃくちゃかっこいいじゃん!」と思って、相談しに行ったんです(笑)。
――そもそもオリジナル版の時点で、なぜhukeさんにキャラクターデザインを依頼されたのでしょうか?
松原
前作の『カオスヘッド』では、ささきむつみさんをお迎えして当時の王道美少女ゲームのフォーマットで制作したのですが、『シュタインズ・ゲート』ではいわゆる美少女ゲームのラインから少し外して、ちょっと尖った見た目やイラストラインでいきたいと考えたんです。それでコミケで出展されていたhukeさんのところへ直接伺って、「こういう企画があるのですが」とお声がけしたのが始まりですね。
――まさかのコミケから始まっているというのは『シュタゲ』らしいですね(笑)。当時、hukeさんから最初にあがってきたデザインを見て、どんな印象を受けましたか?
林
僕はダルのデザインにびっくりしましたね。最初は痩せているオタクの設定だったのに、hukeさんが描いてきたダルが太っていたんですよ(笑)。「太ってる! でもこれいいじゃん!」となって、そのまま採用されていまのダルのイメージになっていきました。 あとは、岡部がサンダルを履いているデザインなど、こちらが伝えていなかった細かい部分にhukeさんがアイデアを入れてくださるのがすごくおもしろくて、デザインがあがってくるのを楽しみに待っていた思い出があります。


オリジナル版のダル(左)と岡部(右)。
時代に合わせたグラフィック一新と全編ボイス・サウンド新録の覚悟
――今回『リブート』で一新されたhukeさんのデザインをご覧になった感想はいかがですか?
松原
アップデートされた絵柄になりつつ、「これは紅莉栖だ」、「これは岡部だ」とひと目でわかるポイントを残したまま、時代に合わせた綺麗なリニューアルがされているなと感じました。社内でグラフィックを作る際、hukeさんの絵を模して描くのですが、一見シンプルな線に見えて絶妙なバランスで描かれているので似せるのに苦労していました。
林
デザインがすごくかっこよくなっていますよね。オリジナル版も味があったのですが、岡部なんかは、よりイケメンになっていて。僕がとくに気に入ったのは中鉢博士です。イケおじ感が出ていてすごく好きですね(笑)。
松原
ちなみに、オリジナル版ではラボメン以外のメンバーはhukeさんデザインではなかったのですが、今回はサブキャラ含めてすべてhukeさんに描き下ろしていただいているので、hukeさん版の中鉢博士などは今回が初披露になります。
――そうなんですね。それでは、せっかくなのでラボメン以外のサブキャラクターでお気に入りを教えてください。
松原
僕は、ミスターブラウン(天王寺裕吾)ですね。
林
僕は綯(天王寺綯)ちゃんです! 昔からずっと言っています。
――それはシナリオの展開も含めてということですよね。
林
もちろんです(笑)。
――(笑)。今回、デザインだけでなくボイスとサウンドをすべて新録されたのも大きな決断だったと思います。これは最初から決めていたのでしょうか?
松原
そうですね。僕の中では最初から決めていました。追加パートだけを新録する案もありましたが、ひとつのパッケージとして最初から最後まで全部録り直したほうが統一感もでますし、全編録り直しということ自体が大きな話題になると思ったので、そこは最初から決めていたポイントです。それと、なにより17年経たいまの皆さんの演技で全編聞きたかったので。
――すべて録り直しとなると、膨大な量だったかと思いますが、収録はスムーズに進みましたか?
松原
スケジュール調整はたいへんだろうなと思っていました。ただ本当にうれしいことに、役者の皆さん全員が『シュタゲ』という作品をいまでも大切にしてくださっていて、キャラクターや演技が完全に出来上がっているんです。そのため、説明も何もなくスムーズに収録は進み、かなり早かったですね。いま改めてプレイし直していただくと、キャスト陣の熟練した掛け合いに感動や発見があると思います。



新作を1本作り直す労力。新機能“オブザーバー”とシナリオ調整
――ボイスの新録やデザインのリニューアル以外で、開発においてとくにこだわった点や苦労された部分はありますか?
松原
リメイクをする以上、いままで遊んでくださったお客様にとっても「見たことがない『シュタインズ・ゲート』」を作りたかったんです。そのためイベントスチルの構図や差し込むタイミングも含めて、新しいゲームをゼロから作る気持ちでシナリオを読み込んで作っていきました。あえて同じ構図にしているカットもありますが、ほとんどのスチルは構図も入るタイミングも変わっています。いまの僕ならこうするといった感じで。ですのでリメイクと言いつつ、かけた労力は新作1本分と同等でしかも今回は多言語対応ということもあり、開発は想像していた以上に難航しました。
――今回の新機能として“オブザーバー”という機能も実装されていますね。
松原
ゲーム中に世界線のフローチャートが閲覧できる機能なのですが、これの構築がとにかくたいへんで……。
林
昔から公式資料集などを作る際、担当者の方々から「世界線変動のチャート図を作りたいです」と言われるのですが、「やりたい気持ちはわかりますが、めちゃくちゃたいへんですよ」と言いながら、僕らも全力で監修してきた歴史があるんです(笑)。だから、松原さんが「フローチャート機能を入れよう」と言ったときは「本気で言ってますか!?」となりましたが、みんなで知恵を絞って全力で構築しました。

――そこまでの苦労がわかっているのにもかかわらず、実装しようとしたのはなぜですか?
松原
もともとの『シュタゲ』は攻略情報なしだと相当難度が高いゲームなんです。それで、『エリート』のときに分岐ポイントが見えるようにして少し難度を下げたのですが、今回の『リブート』ではオリジナル版と同等の手応えある難易度に戻したかったんです。でも、ゲーム内の情報だけでもなんとかクリアーを目指せるヒント機能として“オブザーバー”を入れました。周回を重ねるごとにどこを通っていないか見えてくるので自力で試行錯誤できるようにしたつもりです。岡部が何度も世界線をやり直した苦労や絶望感をより深く追体験していただけたらうれしいですね。
――本作のテキストシナリオは『エリート』がベースになっているとのことですが、その理由と具体的な調整内容について教えてください。
松原
『エリート』はアニメを経てアップデートされた最新のシナリオだからというのが大きな理由です。それと僕がアニメ版で気に入っているラボの屋上やコインランドリーなどのシーンも入れられますし。そこへオリジナルのような地の文や各種テキストを追加・再構成して、アドベンチャーゲームとしてのテキスト表現に最適化するよう林に依頼しました。
林
オリジナル版のテキストは岡部の脱線トークも含めてかなり長尺で、序盤を読み進めるハードルが高かったんです。アニメをベースにした『エリート』はテンポ感が非常に洗練されているため、そこをベースにしつつ、アドベンチャーゲームに戻すにあたって足りない説明テキストを補筆しました。 また、この17年間で積み重なってきた「2026年現在のキャラクター像」を微調整として落とし込んでいます。初期の紅莉栖は岡部に対してかなり言葉遣いがキツく口が悪い部分があったのですが、長年愛されてきたいまの表現に合わせて少しマイルドに調整したり、まゆりのしゃべるテンポ感をアニメに準拠させたりしています。
――ネットスラングなどの表現はどのように調整されたのでしょうか?
林
hukeさんと最初に話した「“2010年当時の秋葉原”というレガシーを残す」というコンセプトを大切にしたかったので、ネットスラングはあえて残しています。企画段階では「いまの若い子に通じないから消そうか」という案もあったのですが、当時の空気感を出すために2010年当時のスラングはそのまま残し、死語になっているような言葉は“TIPS(用語集)”で補足解説を入れています。逆に、2010年以降に生まれた新しいスラングは一切入れていません。すべてのテキストを一行ずつ精査して調整を入れたので、シナリオ面でも実質新作1本分と言っても過言ではない作業量でしたね。
――先日のシュタゲの日(7月28日)に、『リブート』のプロローグの映像が公開されていましたが、その中でも世界線変動率が原作と違うと話題になっていましたね。
松原
あの数値(1.130246)はアニメのときに少しずらした値を設定したもので、『エリート』のときもじつは同じ数字がシナリオの中には設定されていたんです。ただどちらも劇中に登場する機会がなかったので完全に裏設定になってしまっていました。本作は『エリート』をベースに再構築をしていったのもあってこの設定が使われていたのですが、開発末期にやはり世界線の数値はオリジナルの数値(1.130426)を尊重しようということになり、もとに戻したのですが……それより前に撮影した一部PVには残ってしまっていた形です。
――本作の目玉として、新たなルートとなるγ世界線が追加されていますが、この世界線を選んだ経緯などを聞かせてください。
林
最初は新規ルートとして「ハーレムエンドとかを作る?」なんて冗談も出たのですが、雰囲気が壊れるので即ボツになりまして(笑)。ファンの皆さんからずっと「萌郁のエンディングも欲しかった」という声が多かったことを思い出しました。オリジナル版発売から1年後くらいにドラマCDでγ世界線の物語を作ったのですが、他メディア展開が一切されておらず現在入手困難になっていることもあり、「これを入れるしかない!」となりました。
――ドラマCDの内容をそのままゲーム化しているのでしょうか?
林
ドラマCDは1話完結のIFストーリーでしたが、今回は本編から分岐する正式な萌郁エンドとなります。つまり岡部と萌郁の物語がその先も続いていく形で決着をつける必要があったため、シナリオを大幅に再構築しました。その結果、ドラマCDよりもかなりハードで濃厚なストーリーに仕上がっています。



――それは楽しみです。ここからはシリーズ全体の話として、17年間の歴史の中で、とくに印象に残っている思い出などを教えてください。
松原
『シュタインズ・ゲート』は僕の初プロデュース作品なんです。発売日当日に秋葉原や新宿のショップを回ったのですが、思っていたほどは盛り上がっていなくて「案外ふつうだったな」と思った記憶があります(笑)。それが数日経ってネットの口コミで爆発的に広がっていったのをよく覚えています。また、アニメ化の際に「監督の候補がおふたりいます。どちらが合っていると思いますか?」と相談がきたのですが、選びきれずに「おふたりとも個性的でご提案も素晴らしく選べません」とお返ししたら、珍しい監督ふたり体制という座組になっていて驚きました。顔合わせの際に知ったのですが、監督をはじめとする製作陣の方々は6周もプレイして臨んでくださったとのことで、本当に担当していただけてよかったと思ったことをいまでも覚えています。
――『シュタインズ・ゲート』は科学アドベンチャーシリーズのひとつでもあります。このタイミングでリメイクが出たということは、つぎの新作は「『シュタゲ』関連か!?」と期待しているファンの方も多いと思います。2020年には『シュタインズ・〇〇』(※編注:〇〇の部分は後日発表予定)というタイトルの制作も発表されていましたが、可能な範囲で今後の展開についてお話しいただけますか?
松原
詳しくはまだお話しできませんが、志倉(志倉千代丸氏。本作の企画原案)を含めて新作の準備は着々と進めています。林もシナリオに関して志倉と綿密に打ち合わせを重ねています。
林
絶賛制作中です。『シュタゲ』関連以外にもやりたいという話も出ていて、いろいろと準備していますので、楽しみにお待ちいただければと思います。ちなみに『リブート』の中にも、シリーズファンならニヤリとできるちょっとしたお楽しみや仕掛けを用意していますので、ぜひ探してみてください。
――それでは最後に、発売を楽しみに待つファンの皆様へメッセージをお願いいたします。
松原
17年という長い期間、多くの方に愛される作品に携わることができて本当に感謝しています。今回『リブート』として作り直すことで、僕自身も『シュタゲ』の魅力を再発見することができました。それを皆さんに体験していただけるのがいまから楽しみです。科学アドベンチャーシリーズはこれからも続いていきますので、この先の17年間も長く応援していただけるとうれしいです……あ、でも17年経つと僕は定年をはるかに過ぎて70を超えていますね(笑)。
林
今回の『リブート』は、原作未プレイの方やアニメしか観たことがない方はもちろん、すべてを網羅しているファンの方にとっても新鮮に楽しんでいただける作品になっています。国内だけでなく世界中のファンの方々に遊んでいただきたいと思っていますので、ぜひ新しい『シュタインズ・ゲート』の世界に飛び込んでみてください!
