基調講演は立ち見も出るほどの賑わい

では、どこまで変えていいのか。そして、何を変えてはいけないのか。
Gallegos氏は『サブノーティカ2』の開発を例に、巨大な成功を収めた作品の続きを作るからこそ得られる“自由”と、同時に生じる“制約”について紹介。シリーズのアイデンティティーを守りながら新しいゲームを生み出していくという、続編開発ならではの難しさに焦点を当てた講演となっていた。
こうしたゲーム開発の現場で得られた経験やノウハウを、企業や国の垣根を越えて共有すること。それこそがgamescom devというイベントの大きな役割のひとつだ。
会場内外で積極的なコミュニケーション。開発者たちの横のつながりが新作を生む
もともとは2017年に“devcom”としてスタートしたイベントで、2025年に現在の“gamescom dev”へと名称を変更。gamescomとの結びつきをより明確にしながら、ゲーム開発者、パブリッシャー、ゲーム業界関係者らが集う国際的な場として開催されている。
会場では基調講演をはじめ、トークセッション、パネルディスカッション、ラウンドテーブル、ワークショップなどが複数のステージで同時進行。2026年は約390人のスピーカーによる、およそ220ものセッションが用意された。

講演で知識を得るだけでなく、“クリエイターどうしをつなぐ”こともgamescom devの重要な目的なのだろう。
翌日から始まるgamescomが、発売前の新作をプレイしたり、大規模なブースやステージイベントを楽しんだりできる“ゲームそのもの”のお祭りだとすれば、gamescom devの中心にいるのは、それを“作る人たち”だ。
会場を歩いていて印象的だったのは、登壇者と来場者との距離の近さだった。
ステージ上では世界的なタイトルを手掛けるクリエイターが自身の経験を語り、そのセッションが終われば、今度は参加者どうしが廊下やラウンジで議論を続けている。そこでは著名なスタジオの開発者からインディー開発者、パブリッシャー、サービスプロバイダーまで、さまざまな立場の人々が入り混じる。



規模や置かれている環境こそ違えど、ゲームを作るうえで直面する課題を共有し、ほかの開発者がそこから何かを持ち帰る。そんな知識の循環が、gamescom devという場所ではあちこちで生まれているように感じられた。
そんなgamescom devを作り出した、マネージングディレクターのフレデリック・ハメス氏に話を聞く機会を得た。ここからは、イベントの狙いや今年の手応え、そしてgamescom devが目指す今後の姿について伺ったインタビューをお届けする。
Frederik Hammes(フレデリック・ハメス)
gamescom dev 2026 マネージングディレクター
クリエイター目線で見ても、今後のトレンドはやはりAI。どこで線引きするかが課題に
イベントはケルンメッセ内でもっとも近代的な施設“Confex”で、落ち着いた雰囲気の中、開催されます。展示フロア、380名を超えるスピーカーと18のステージからなる本格的なカンファレンス、リーダーシップ関連の専用イベント、そしてgamescom本番に向けた数多くのサイドイベントを備え、gamescom devは、専門教育、ネットワーキング、そしてgamescomに先駆けたビジネス機会という3つの要素をつなぐ、唯一無二の立ち位置にあります。
――こうした開発者向けカンファレンスの成果は一般ユーザーには見えにくいものですが、こういったカンファレンスが行われる意義、開発者どうしが知見を共有することで生まれるメリットをお教えください。
だからこそ、gamescom devのような開発者向けカンファレンスには非常に温かく、心のこもった誠実な雰囲気があります。とくに現代においては、互いを励まし合い、多くのクリエイターが直面している課題や厳しい状況を乗り越えるためにも、コミュニティで互いを助け合うことが必要なのです。
――ゲームにおける技術や、マーケティング手法は新しいものがどんどん登場しています。開発者向けカンファレンスでもトレンドは大きく移っていると思いますが、2026年はどのようなセッション・トークテーマが多くなっていますか? 傾向をお教えください。
この3つの要素はいずれもプログラムに反映されています。AI関連の専用コンテンツ、オフレコ形式のリーダーシップサミット、そして資金調達、事業の持続可能性、業界の現状を扱うセッションやフォーマットがそれにあたります。
――2026年のgamescom devでは、どのようなセッションの応募がありましたか? 応募の傾向や、選考の過程で重視した点、注目している技術・研究テーマがありましたらお聞かせください。
私たち運営側の最大の課題は、資金調達、文化、法務、ゲーム開発の基礎といった定番テーマと、AIのようなトレンド、そして本当にニッチなアイデアとのバランスを取ることです。選考は、画一的な基準に基づくというよりも、直感的な部分が大きいです。新しい視点や新技術、タイムリーな業界課題を通じて際立つセッションを選び、コピー&ペーストのようなプログラムにならないよう心がけています。内容面だけでなく、本当に積極的に関わろうとする人物であることも全員にとって大きなプラスとなります。なぜなら、本当の価値はセッション後に生まれることが多いからです。セッションによって生じる会話にこそ、その価値があります。
――ゲームジャンルにはある種の流行が見られますが、技術的な流行というものはあるのでしょうか? 技術に詳しくないユーザーにもわかりやすい事例がありましたらお教えください。
この流れの中でも規模の大きな例が『Clair Obscur: Expedition 33』のようなタイトルでしょう。AA規模の開発でありながらAAA級の成果を出しました。一方その対極には、ローコード・ノーコードのプラットフォームや『Roblox』のようなゲームプラットフォームが挙げられます。アイデアからゲーム化、そして流通に至る道のりがさらに短く、非常に手軽にゲーム開発が行えます。
ある意味これは、ゲームが黎明期の売り手市場から完全な買い手市場へと変化してきた流れの延長線上にあり、その集大成とも言えるかもしれません。そしてそれは、クリエイターにとって、大きなチャンスと苦難の両方をもたらしています。
――素人目線だと、デジタルゲーム開発における技術的発展の余地がまだまだ残っているという点に驚き、そして喜びを感じます。今後、ゲーム開発やゲーム体験に大きな変化をもたらす可能性があるハードウェア、プラットフォーム、技術には、どのようなものがあると考えていますか? また、その実現に向けて現在ボトルネックとなっているものは何でしょうか?
今後さらなる進化が見込まれるのは“プロシューマー”の分野だと考えています。プロシューマーとは、既存のアイデアやコンセプト、さらにはゲームそのものを直接発展させる機会と能力を持ち、開発に深く関与でき知識も豊富な消費者たちのことです。たとえばビッグタイトルを生み出したクリエイターが独立し、たったひとりで、人気だがまったく異なるふたつのジャンルを融合させるといったケースや、大手パブリッシャーの目に留まる前に、高校生がミーム的なトレンドをゲーム化してしまうといったケースが考えられます。
ボトルネックとなり得るのは、AIへの投資を回収するため、急速に上昇しているAI利用コストでしょう。あるいは、欧州に限って言えば、過度に野心的な規制もボトルネックとして挙げられますね。
――生成AIの利用については、ゲームファンや開発者のあいだでもさまざまな意見があります。ゲーム業界は、AIによって得られる利点と、権利、雇用、創作性などに関する懸念を、どのように両立させていくべきだと考えていますか? また、今後AIがゲーム開発のどのような領域に定着していくと予想していますか?
たとえば経理担当者がExcelの関数についてAIに質問するだけでも、そのゲームは定義上、AIによって実現されたものということになります。このようにあらゆるところで利用されるからといって、権利やオーナーシップ、そしてAIが創作活動にどう影響するかについて、各企業がみずからの立場を明確にする責任がなくなるわけではありません。ですが、ゲーム業界の経済状況が世界的に厳しくなっている現状では、生成AIを一切利用しないという選択をする、余裕のある企業はほとんどないでしょう。
私たちの生活に生成AIが浸透していくほど、消費者はフロントエンドでのAI利用と、目立たず基盤的な箇所での利用とを、感覚的に区別できるようになっていくのではないかと思います。
――来年のgamescom devは、どのようなイベントにしたいですか? 今後の展望や、もしすでに決定しているコンセプトなどがありましたらお聞かせください。















