2026年7月16日にNintendo Switch 2、Nintendo Switch向けタイトルとして発売された『カルドセプト』シリーズ10年ぶりの完全新作『カルドセプト ビギンズ』(Steam版は2026年第4四半期に発売予定)。 本作の発売直前、『カルドセプト』の生みの親と言える大宮ソフトの取締役・鈴木英夫氏と、ゲームデザイナーの神宮孝行氏、プレイステーション版『カルドセプト エキスパンション』からプロデューサーを務める武重康平氏に話を伺った。
シリーズ復活の立役者であるネオスの所属メンバー抜きのインタビューで、古くからシリーズに縁のある3名からは、どんな話が飛び出すのか? ぜひ、本作が発表された際に公開されたネオスの長嶋朗氏、春木場將道氏をまじえたインタビューを踏まえて読んでいただけたら幸いだ。
本インタビューは、週刊ファミ通 2026年7月30日号に掲載された内容に、誌面の都合でカットした部分を追加した完全版となっている。週刊ファミ通 2026年7月30日号は、ほかにもシリーズファンアンケートや、別冊付録の取扱説明書(全8ページ)、さらに裏表紙ジャックなど、『カルドセプト ビギンズ』尽くしの一冊となっているので、あわせてチェックしてほしい。
鈴木英夫氏(すずき ひでお)
大宮ソフト 取締役社長兼プログラマー/『カルドセプト』シリーズディレクター
神宮孝行氏(じんぐう たかゆき)
元大宮ソフト所属、現在はフリーランスのゲームデザイナー。スマートフォン向け作品を除くすべての『カルドセプト』シリーズのゲームデザインに関わっている。
武重康平氏(たけしげ こうへい)
ジャムズワークス所属。『カルドセプト エキスパンション』以降、シリーズのプロデュースを手掛けてきた。
初めて社外に提供された、大宮ソフトの“秘伝のタレ”

――まずは、ネオスさん、グランディングさんとの初の共同作業を振り返ってみて、いかがでしたか?
鈴木
外部の会社さんと組むこと自体は初めてではないのですが、今回のようにやり取りをしながらガッツリと組むというのは、事実上初めてだったと思います。最初は、やはり心配もありました。ひとつのチームで作るのすらたいへんなのに、複数のチームがお互い牽制し合ってしまうのではないかと。
でも振り返ってみれば、お互いの持ち分みたいなものを守りながら、すごくスムーズに開発が進行しましたね。我々は開発チームの内部までは見られていないのですが、いつまでにこれができます、といった予定が毎回守られていたんです。「どこかで作業が遅れるのではないか」と身構えてもいましたが、そんなことはなく無事に終えられました。
今回のインタビューでもトラブルがあった話とかを期待されているかもしれませんが、「ネオスさんができていると言っていたものがじつは進んでいなくて……」みたいなこともなくて、ちょっとネタに困るなというくらい順調でした(笑)。
武重
作っておきますか、ネタ。
鈴木
捏造はよくない(笑)。
一同 (笑)

――それだけスムーズに進行していたんですね。クリエイティブに関する衝突などもなく?
鈴木
今回、大宮ソフトからは『カルドセプト』の“ルールエンジン”、能力の解決や魔力の計算などをパッケージしたプログラムのセットを、初めて外部にご提供したんです。
これまでは社内でコツコツ作っていたので、解説ドキュメントもないし、使いかたは担当者だけが把握しているような代物だったんですよ。だから当然、すごい数の質問が来るぞと身構えていました。でも、いざお渡ししたら、「組み込みました。動きました」とあっさり言われて、拍子抜けするぐらいでしたね。
――ルールエンジン自体は『カルドセプト ビギンズ』以前からあったものなのですか?
鈴木
単純にルールのロジックだけを切り出したものはずっと作り続けていました。それは、各ゲーム機専用のプログラムになっていたものを、単体で成立するように長年かけて引きはがすような作業です。
昔からこの“引きはがし作業”を続けてきて、ギリギリ社外にお出しできる状態まで来たのではないかという手応えが近年ようやく出てきました。ルールエンジンさえあればそれだけで『カルドセプト』が動作するので、イチから再構築してもらうよりスムーズだろう、と考えたんです。
――ルールエンジンがあったからこそのプロジェクトだったと言えるのでしょうか。
鈴木
大前提ではありませんでした。その点は武重さんの後押しもありましたね。
武重
僕の立場としては、今回のプロジェクトをネオスさんからプレゼンしていただいたときに、企画だけでなく実現可能性も考える必要がありました。ゲーム開発って、ちゃんと発売まで漕ぎ着けるのはすごく難しいんですよね。
UIやカードデザインを全部変えるというのは、けっこう大きな話ですよね。そうなったときに、エンジン部分までイチから作るとなったら、どれだけ時間がかかるかわからないと思いました。それなら、エンジンに関しては大宮ソフト側が担保できる部分もあるので、それを採用したほうがいいのではないかと。
その代わり、UIや初心者でも遊びやすい触りやすさの部分に注力しましょう、といったお話をさせていただいて、エンジンの採用が決まりました。同時に、ゲームのおもしろさを担保するために神宮さんに参加していただくのがいいのでは、という提案もしました。
鈴木
秘伝のタレじゃないですけど、改造と建て増し、取り壊しを重ねてきた『カルドセプト』の核と言えるものが、『カルドセプト ビギンズ』にも入っているんです。
最初は「こんな古めかしい構造では現代のゲームには組み込めない」といった問題が起きるのではないかと、危惧していました。ドキドキしながら提供したのですが、結果としてスムーズに開発を進めることができました。

大宮ソフトの社長であり、プログラマーでもある鈴木氏。ゲームのシステムや仕組みに関する造詣が深い。
――導入に不安もあったルールエンジンがスムーズに組み込まれて、大宮ソフトさん側としてもひと安心というか。
鈴木
グランディングさんのプログラマーチームの理解力が高かったというのはあります。ただ我々もそれなりに整備してきたので、それが間違っていなかったんだなという安堵感はありました。
完璧だったわけではなくて、細かな調整などは発生しましたが、大して手間はかかりませんでした。もしもグランディングさんのチームにもインタビューしたら、「いや、あのエンジンには苦労させられましたよ」みたいな話が出るかもしれませんけど(笑)。
神宮
私はデータの部分がメインだったので、エンジンに関しては脇からやり取りを見ている立場だったのですが、グランディングさんが新しいことをやりたいとおっしゃったときに、それに対応して調整するようなこともしていましたね。
鈴木
『カルドセプト ビギンズ』専用の能力を入れるときも、構造を大きく変えるような必要はなく、エンジンの自由度の中で対処できるものでした。
神宮
今回、とくに私のほうからエンジンに何かを追加してほしいみたいなこともありませんでしたからね。
鈴木
大宮ソフトで内製していたころも、神宮さんたち企画チームって、すごくプログラマーに気を遣うんです。「こういうことをやりたいんですけど、たいへんですよね」みたいに。でもプログラマー側としては、とにかく一度やりたいことをぶつけてほしいんです。それが無理ならそう言うし、だいたいのことは実現できるようにがんばりますから。
でも神宮さんたちは、「いや、あんまり苦労させてまで入れたいかと言うと……」みたいな感じで(笑)。グランディングさんの企画チームと神宮さんで会議をしてもらったときも、けっこうエンジン側を気にかけてもらっているようなところがあったんです。「いやいや、とりあえず言ってみてください」とお伝えするような、そんなやり取りはありました。
――神宮さんの人のよさが伝わってきますね。
神宮
あんまり持ち上げられると、邪悪な面が露見したときが怖いですね(苦笑)。
ひとりで考えるよりも“三人寄れば文殊の知恵”
――開発チームとの実際のやり取りは、どのようなものだったのでしょうか?
鈴木
週に一回のリモート会議で進捗確認はしていたのですが、僕は監修の立場だったので、あまり直に話す機会はなかったんですよね。「今月の予定は問題なく進んでいます。来月はこれをやるつもりです」という話を聞いて、「いいですね」と答えるくらい。神宮さんのほうがいろいろあるんじゃないですか?
神宮
私は途中から企画会議にも入らせていただいて、グランディングさんとおもにやり取りをさせてもらいました。「神宮さんは『カルドセプト』を作った人だから」みたいに私を立ててくれる雰囲気もありつつ、グランディングさんとしてやりたいことはやりたいとハッキリ言ってくださっていましたね。
――意見がぶつかることとかは?
神宮
過去にやろうとしたけど理由があって難しかったもの、『カルドセプト』にはあまりにそぐわないと思うものは、率直な意見を伝えて、ある程度やり合うみたいなところはありました。
全体で言えば、私はカードリスト作成がすべてと言っていいくらいです。実装や検証部分はグランディングさんが担当して、バランス調整されたものをテストプレイで触って、「ここはこうじゃないかな、よろしく」という感じで意見を投げては動いてもらっていました。
これまで部下もいないひとり企画部長みたいになっていたのが、偉そうな立場になった気分でした(笑)。進行していくと任せっきりになっていて申し訳ないと恐縮するところもありましたが、全体的には楽をさせてもらいました。

シリーズの生みの親と言える神宮氏。その丁寧な姿勢と、腰の低さを物語るエピソードが印象的。
鈴木
傍から見ていても、グランディングさんの企画チームが主体的なんですよ。指示待ちではなくて、自分たちで楽しみながら作られている印象でした。
神宮
とくにボードゲーム系に関しては、グランディングさんには経験に基づく持論もあるんです。今回は『カルドセプト』だから私の話を聞いてもらっていますが、本当にアイデアは積極的に投げてもらっていました。
――神宮さんのなかでハッとさせられるようなこともあったのでしょうか。
神宮
初期の段階から、やはり一回のゲームを早く終わらせることは、大きなテーマでした。「土地が連鎖したときの計算式を、もっと直線的にしたらどうですか?」と意見をもらったときは、「なんでこれまで気付かなかったんだろう」と、ハッとさせられましたね。
グランディングさんとしてはちょっとした一案くらいの気持ちだったと思うのですが、そこで私もすごく乗り気になったんです。もうこれはぜひやってくれと。今回その計算式を実装したことで、盛り上がりの速さや全体的な時短にもつながったのではないかと思っています。やはり、ひとりで考えるよりも“三人寄れば文殊の知恵”ですね。
“あの”ストーリー第15章と、クトゥルフ神話の要素が色濃くなった理由
――『カルドセプト』にそぐわないアイデアについてのお話もありましたが、たとえばどのようなものがあったのでしょう。
神宮
ひとつ挙げると、1ゲームにかかる時間を短くするためのアイデアとして、ゲーム開始時に各プレイヤーがいくつか土地を持っている状態からスタートするという案がありました。
じつは、『カルドセプト リボルト』のときもその案はあったんですよ。ただ、いい土地を公平に取らせるのは難しくて、だいたい不公平が出てしまうんですよね。ですので、それは今回やらないことにしました。
――どの属性にどのクリーチャーを置くか、なども含めて考えると、ゲームがスタートするまでの時間も長くなってしまいそうですしね。ただ今回、いま伺ったアイデアの延長線上にあるような特殊なシチュエーションが、ストーリーモードの終盤にありましたよね。
神宮
第15章のことですね。これまでの『カルドセプト』のメインシナリオにはなかったノリになっているので、初見では驚かれると思いますが、ぜひあの章ならではの試行錯誤を楽しんでもらいたいです。
武重
あそこに関しては、ネオスさんのシナリオから出てきた要望だったんです。そこまでゲーム的に同じ流れが続いていたので、ひとつ違うシチュエーションを作りたいと。そこから生まれたものでしたね。
――ストーリーで言えば、終盤でクトゥルフ神話の要素がかなり色濃く出てきたのには少し驚きました。
神宮
あれにいちばん思い入れがあったのは、おそらく長嶋さん(長嶋朗氏。ネオス所属の 『カルドセプト ビギンズ』プロデューサー/クリエイティブディレクター)ですね。企画書の段階でそういう雰囲気はありました。私も好きですけどね(笑)。

鈴木氏と、ネオスの長嶋朗氏、春木場將道氏の3名へのインタビューも弊誌に掲載中。
武重
神宮さんが推していたのは、どちらかというと中国のあのカードじゃないですか?
神宮
話が脱線してしまいますが……(笑)。新カードの中だと、ナーチャというカードを推していました。元ネタは『西遊記』や『封神演義』などに出てくるナタク(哪吒。ナタとも)で、当時ちょうどアニメ映画などもヒットしていたんですよ。
鈴木
『カルドセプト』としては伝統的なパターンですよね。古典的な、いわゆる西洋ファンタジーの要素だけではなくて、侍や忍者もいる、無国籍のファンタジーと言いますか。
武重
朝鮮半島に伝わる怪物のプルガサリなんかもいますからね。
――新カードについても、グランディングさんと話し合いながら決めていったのでしょうか。
神宮
ネオスさん側の要望で物語系のカードを入れたいというお話があり、それに対応したものもありますが、ほかのカードに関しては私の独断に近かったです。カードリスト全体で言えば、グランディングさんからの要望ももらいました。旧作から入れてほしいカードがないか聞いたら、ものすごい数の意見が来たんですよ(笑)。それも終盤に対応させてもらって、こちらで選んだカードを入れるようなことをしていました。
ルールエンジンの話と同じで、最初からカードの選定をグランディングさんに丸投げしていたら、たぶん無限に悩まれてしまうと思ったんです。ですので、今回は私のほうで草案をまとめる形で進めさせていただきました。
――神宮さんの中で、「このカードが復活するのか」と意外に感じたものはありましたか?
神宮
それで言うと、サクヤという地属性のクリーチャーでしょうか。サクヤは領地能力で自分の領地を地属性に変えられるんですよ。最初は能力が強すぎると思って抜いていたのですが、今回は地形変化のコストが一律になったのもあって、むしろ入れてもいいんじゃないか、となったんです。
――四属性の土地はレベルに関係なく300Gで変化させられますから、かなりバンバン地形変化させられるようになりましたよね。
神宮
だから、サクヤの能力もそこまで極端なインパクトにはならないな、ということで採用しました。

ナーチャ/プルガサリ/サクヤ
ビジュアルの一新は“娘が嫁いでいくような心境”

――『カルドセプト ビギンズ』における過去作からの変化としてとくにわかりやすかったのが、松浦聖さんによるキャラクターデザインでした。
武重
企画の初めから、キャラクターデザインは松浦さんにお願いする方向で検討していました。もちろん、テイストを変更することで大きな反応が出ることは理解していました。そこについてはネオスさんも悩まれていたのですが、鈴木さんが会議で「僕らは松浦さんがいいと思っているし、絶対に受け入れてもらえるから大丈夫」と話されたんです。
やはり、“変えること”はすごく不安だと思います。でも今回はその変化を生み出すための企画です。新しい層を呼び込むというコンセプトに対してベストな選択だと信じていましたし、それを応援しよう、と。我々もこの絵をすばらしいと思っているので、このまま突き進むべきだと、チーム全員の意見が一致したんです。
鈴木
僕が不安に感じていた部分があるとすれば、やはり作業量でした。あのクオリティーですべてのクリーチャーカードを描き切るのはすごく時間がかかるのではないかと思ったんです。
神宮
カードだけではなくて、ストーリーキャラクターのデザインもされていますからね。
鈴木
でも結果的には松浦さんのパワーがすごくて、完全に杞憂でした。今回、僕としては『カルドセプト』という娘が松浦さんに嫁いでいくような、そんな寂しさもありました(笑)。今後は『カルドセプト』と言ったら松浦さんの絵が浮かんでくるような、そういう未来が容易に想像できたんです。それだけ絵に力があるなと。これが、たとえば過去作から少し毛色を変えただけの、及び腰のアートワークだったら心持ちはぜんぜん違いました。
――「キミに託すことはできん!」みたいな感じでしょうか(笑)。
鈴木
でもドーンと来られたので、これはもうお任せできるなと。そういう心境は、開発の初期の段階でありました。とはいえ物量がすごかったので、そういう面での不安はあったんですよ。でも絵を見るとわかるんですけど、一枚一枚をノリノリで描いているんですよね。
「このクリーチャーはこの部分にこういう能力があって……」とか、いろいろ考えながら作画をされているのが伝わってくるんです。あれだけの枚数をこなしながら“描けることの喜び”が伝わってくるのは、ちょっと恐怖まで覚えるなと(笑)。
――神宮さんの視点からも、松浦さんのデザインについて伺えればと思います。
神宮
アルガスフィアという、マリモみたいなクリーチャーがいるのですが、正直そのまま描いたら楽ですよね。でも松浦さんは顔や足を付けて、わざわざ手間をかけて描いているんです。「この人は手を抜かないぞ」と思いました。
やはり、松浦さんもファンタジーが好きなんですよね。ご本人もおっしゃっていたのですが、好きなものをただ形にするのは嫌で、そこに自分の個性を織り込みたいと思われているようです。そのバランスがすごくいいんですよ。キメラなどの定番クリーチャーも、元ネタを押さえながら松浦さんの個性が出ていて、全体的にキャラクターが立っていて、すばらしいデザインだなと思います。
――神宮さんは、アルガスフィアに足を生やすことに、最初は反対されていたんですよね。
神宮
アルガスフィアは防御型で移動できないので、足がないほうがいいと言っていたんですけど。後々になって、これはこれでいいなって(笑)。変更があったもので言えば、コボルドが最初は灰色で、無属性っぽかったんです。そこは火属性と伝わりやすくしてほしいとお伝えして、赤くしてもらいました。

アルガスフィア/コボルド/ゼラチンウォール
――ひとつひとつ意見は戦わせたのですね。
神宮
会議の場で出てきた絵に、「いいね」とか「ちょっと能力とそぐわないね」といったやりとりはありました。
鈴木
松浦さんの絵はいくらでも褒められるんですよ。ゲームのコマとして、識別性や能力の説明性がありつつ、ファンタジー知識に裏打ちされたデザインで、全部をひっくるめたうえでパッと見のかわいさに着地していて。『カルドセプト』の入り口として、これだけポップなアートワークを提示できたのは奇跡的なことだと感じています。
神宮
SNSでカードを一枚一枚紹介しているのですが、「かわいい」という反応が増えていますね。ゼラチンウォールやカーバンクルとか。
――グーバクイーンはキモいとの反応も見受けられました(笑)。
神宮
あれは松浦さんから出てきたアイデアで、最初に見た瞬間、「うっ……」っていうのはありました(笑)。カタツムリを宿主にする寄生虫がモチーフなんです。でも「これはこういう個性だな」と受け入れて。
結果、ネットでも同じようなリアクションがあったので、ある意味で「してやったり」なのかなと思いながら見ていました。そういう引っかかりがあるのも、広く受け入れられる要素のひとつになるのではないかと。今回の反応を見て、改めて考えています。

カーバンクル/グーバクイーン/パウダーイーター
――そのほかに、なにかこぼれ話がありましたら。
武重
本当に細かいのですが、ロード画面でパウダーイーターが跳ねていますよね。開発の最初期に、僕がパウダーイーターが大好きだと言ったことがあったんです。そうしたら、いつの間にかロード画面であの子が跳ねていたという。もしかしたら忖度かもしれません(笑)。
神宮
昔から好きでしたよね。今回、「使いにくくなった!」って怒られましたけど(笑)。ゲーム展開が早くなった副作用ですね。
武重
「生き残ったらHPが増えるのどう?」と叫んでみたのですが、開発陣には見事にスルーされました(笑)。本作でもテストプレイでパウダーイーター用のブックは組みました。1周目で4連鎖まではいけるようになりましたよ。
神宮
すごいすごい(笑)。

ロード画面で跳ねているパウダーイーター。
――本作ではネオスが世界観などをかなり手厚く考えられている印象ですが、それによって生まれた変化について、どう考えていますか?
鈴木
今回に限らず、『カルドセプト』の新作に関するお話をいただいたときの大前提は、「過去の再生産だとつまらない」なんですよね。僕としては、なるべく大きく変えてほしいんです。ネオスさんの場合、もちろん過去作を大事にしてくださる部分はあるのですが、「ああしたい、こうしたい」という熱意をいっぱい語っていただけたんです。
「プリクエル(前日譚)なので好きにやらせていただきます!」みたいな姿勢が非常に小気味よかったです。そういう姿勢でゲームを作るのは、何十年前のゲーム業界ならいざ知らず、いまはなかなか難しい時代です。そんな中にあって、ネオスさんは本当にアツい。
企業でのゲーム開発にこれほどの熱量で取り組んでいらっしゃるというのは、本当に得難い存在だと感じていますし、今回ごいっしょできてよかったなと思います。
――これまでのファンの反応への不安とかは?
鈴木
もちろん、それはありました。ただ、そうした人たちにもこの作品に込められた熱意は必ず伝わると信じています。そういう意味でも、堂々と発売日を迎えられる作品になっていると確信しています。
武重氏の『カルドセプト』への想い
――ネオスの皆さんの覚悟を推し量ってから鈴木さんに引き合わせた話などから、武重さんは『カルドセプト』の“守護者”のような存在だと感じます。武重さんと『カルドセプト』の関係は、いったい何なのでしょう?
武重
『カルドセプト』との関わりは、プレイステーション版『カルドセプト エキスパンション』からです。当時はマリーガルマネジメント(任天堂とリクルートの合弁会社)に勤めていて、そこに大宮ソフトさんが来られて以来、ずっとお付き合いさせていただいています。
2003年に僕が独立するとき、「このまま『カルドセプト』の仕事を続けていいですか?」 と聞いたら「どうぞ」とすごく軽い返答をいただいて(笑)。それ以降もプロデュースやマネジメントの窓口を担当させていただいて、かれこれ20数年が経ちました。
僕自身、ゲームとして本当に好きなタイトルなんです。ここにきて「嫌い」と言ったらどういうことだって話になりますけど(笑)。「もっと多くの人に遊んでもらいたい」という気持ちをずっと持ち続けていますね。

『カルドセプト』を大切に守り続ける武重氏。体験会などではファンと気さくに交流する姿も。
――だからこそ、生半可な思いで新作を作りたいと言われても首を縦には振れないと。
武重
ありがたいことに、定期的にいろいろなところからお声がけはいただいていたんです。でも、「『カルドセプト』がなぜもっと広がっていかないのか?」という根本的な課題にアプローチをしている企画は、そうそうありませんでした。
ですから、ネオスさんからいただいた企画は、とても斬新に映りました。一方で、これを本気で実現できると思っているのか、という視点もありました。なので、方向性は理解したうえで、どう実現するつもりなのか、諸々をしっかり確かめたうえで鈴木さんにお話を持っていったんです。別に意地悪をしていたわけではないですよ(笑)。
僕にとっても非常に大切なタイトルですし、ある種ライフワークみたいなものですから、そこはしっかりと進めなければと思っていました。
『カルドセプト』を後世に伝える“SEED”のように

――過去作からの『カルドセプト』ファンにとってはまさに待望の新作ですが、昔からのファンの反応などはいかがですか?
武重
『カルドセプト』って、もう30年の歴史がある作品なんですよね。それだけの時間が経っていると、当然離れてしまった人もいます。でも今回、長期的にプロモーションを展開していただいている中で、そんな方々にも興味を持っていただいている感触がありました。
この前秋葉原でイベントを開催したときも、僕よりも年上の方と「ご無沙汰しておりました。お世話になっております」というよくわからない会話をして(笑)。「プレイステーション版以来、ひさびさにプレイしてみようと思うんです」とおっしゃる方が、今回の新作を遊ぶためにイベントまで足を運んでくださったんです。
昔の思い出を持ってくださっている方々に戻って来ていただけるのは、長く続いてきたタイトルならではの喜びだと感じています。
――作品を復活させた手応えを感じられるというか。
武重
アクションゲームではないので、年齢を重ねても遊びやすいですよね。そういう意味では、久しぶりに遊んでみようと思ってくださる方が多いのかもしれません。もちろん過去作からのファンの方々にも遊んでほしいですし、今回の企画としては、新しいファンの方々に触れていただくことも大きな目標でした。その両方に届く作品になってくれたらうれしいですね。
――ここからまたファン層が広がっていってほしいですね。
武重
そうですね。とくに、今回は初めて海外に本格的なアプローチをかけるので、そこも楽しみです。このあいだ、韓国の方からメールをいただきまして。プレイステーション2版が韓国で発売された当時、現地の大会にも参加されていた方なのですが、「今回もすごく楽しみです」と連絡をくださったんです。それもすごくうれしかったですね。
――ファミ通で行ったアンケートの回答者は、最年長は70代で、60代や50代の方も多かったです。このあたりは本当に、タイトルの歴史を感じますね。
武重
70代はすごいな。3代にわたって『カルドセプト』を遊ぶ、みたいな世界になってきましたね。昔は親子で遊んでくださる方もけっこういらっしゃったんですよ。
――鈴木さんから見て、そういった長年のファンからの反応というのはいかがでしょうか。
鈴木
旧作のファンの方々が営業みたいなことをしてくださっているのは、すごくありがたいです。一方で、『カルドセプト ビギンズ』を新作として出すうえで、あまり昔の話に偏りすぎるのもよくないのかなぁとは思っています。
シリーズを支えてくださったお客さんを大事にしつつ、松浦さんの絵を見て、「かわいいな」といった理由で入ってくれた新しいお客さんをいかに気持ちよくおもてなしできるか、そこがすごく大事な部分だとは思います。
――神宮さんは、『カルドセプト』の最新作として生まれた『カルドセプト ビギンズ』に、これから先、シリーズの歴史の中でどんな存在になってほしいですか?
神宮
『カルドセプト ビギンズ』はルールこそ『カルドセプト セカンド』ベースですが、ルックの印象は大きく変わりましたよね。イメージとして近いのは、『ガンダム』シリーズが続いてきたなかで出てきた『機動戦士ガンダムSEED』なのかなと。
最初は既存ファンから「どうなんだ?」と言われながらも、結果的に新しいファン層を開拓して、シリーズ自体の可能性を広げていきましたよね。まさにあのポジションです。
鈴木
『SEED』も、いまの若い方はピンと来ないんじゃない?(笑)
神宮
そうですか?(笑) では、最近で言うなら『機動戦士ガンダム 水星の魔女』ですかね。とにかくそんな風に、新しい層にしっかり届く作品として、シリーズを未来につなげるような存在になってほしいです。
