『レインボー★パラソルコレクション』収録作のひとつ『パラソルスター』現行機移植を記念したインタビューが公開。PCエンジン版開発者が当時の裏側を語る

『レインボー★パラソルコレクション』収録作のひとつ『パラソルスター』現行機移植を記念したインタビューが公開。PCエンジン版開発者が当時の裏側を語る
 タイトーは、2026年10月8日にNintendo Switch用ソフト『レインボー★パラソルコレクション』(以下、パラソルコレクション)を発売する。その中に『パラソルスター』が収録されることを記念し、公式インタビューが公開された。
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 『パラソルコレクション』は、『レインボーアイランドCS』、『パラソルスター』、『スピカアドベンチャー』の3タイトルを収録した作品。『レインボーアイランドCS』には6種類の家庭用移植版『レインボーアイランド』が収録されるほか、『パラソルスター』、『スピカアドベンチャー』には多彩な新要素を追加したバージョンが収録されるという。

 今回公開されたインタビューでは、1991年に発売されたPCエンジン版『パラソルスター』の開発者が当時の裏側を語る内容となっている。
以下、プレスリリースを引用

『レインボー★パラソルコレクション』の収録作『パラソルスター』が開発当時の裏側を語る。「自分で作るしかない」から生まれた『バブルボブル』シリーズの第3弾

 株式会社タイトー(本社:東京都新宿区、以下タイトー)は、Nintendo Switch用ソフト『レインボー★パラソルコレクション』を2026年10月8日(木)に発売します。

 本作は、『レインボーアイランドCS』『パラソルスター』『スピカアドベンチャー』といった3タイトルを内蔵したソフトです。『レインボーアイランドCS』には6種類の家庭用移植版『レインボーアイランド』を収録しており、『パラソルスター』『スピカアドベンチャー』はオリジナル版に多彩な新要素を追加しています。一部ストアでは限定特典が付属するほか、ebten[エビテン]では
『ファミ通DXパック』も発売します。

『レインボー★パラソルコレクション』特典付き販売ページ

 なお各タイトルは、個別でもNintendo Switch / PlayStation 5 / PlayStation 4向けにダウンロード販売を行います。(※1)

 本日(2026年7月4日)、『パラソルスター』に関して1991年にリリースされたPCエンジン版を開発したスタッフへのインタビューを公開します。(※2)
※1:Xbox版の『パラソルスター』と『スピカアドベンチャー』はININ Gamesより同日発売となる予定です。※2:初出:英Future「Retro Gamer」Issue 253(2023年11月)『レインボー★パラソルコレクション』収録作のひとつ『パラソルスター』現行機移植を記念したインタビューが公開。PCエンジン版開発者が当時の裏側を語る

内村 語ウチムラ カタル

『パラソルスター』の企画立案、ストーリー&ゲームデザイン、ロゴデザイン、バランス調整などを担当。 タイトー在籍時にメイン企画を担当したタイトルは、他にファミリーコンピュータ用ソフト『究極ハリキリスタジアムIII』や、ゲームボーイ版『エレベーターアクション』など。 タイトー退社後はメガドライブ用ソフト『ベア・ナックルII 死闘への鎮魂歌』『ストーリー オブ トア ~光を継ぐ者~』などに携わる。

鈴木 治雄スズキ ハルオ

『パラソルスター』の基幹システムやプレイヤーキャラクター関連、サウンド全般のプログラムを担当。ゲームデザイナーとプログラマーの調整役も務めた。 タイトーへ1988年に入社し、セガ・マークIII版『ラスタンサーガ』におけるスタッフロールのテキストデータ入力をはじめとして、主に家庭用ゲームの開発に携わった。

Yasko. / 山田 靖子ヤマダ ヤスコ

『パラソルスター』のサウンドディレクションを担当。家庭用ゲームではファミリーコンピュータ用ソフト『フリントストーン』、アーケードゲームでは『オペレーションサンダーボルト』『ニュージーランドストーリー』や、『バブルボブル』および『パズルボブル』シリーズに携わった。

※他、一部タイトーからのコメントあり。
――『バブルボブル』と、その続編である『レインボーアイランド』はアーケードでリリースされましたが、それらに次ぐ『パラソルスター』はなぜPCエンジン用に作られたのでしょうか。

内村
 これは、それぞれのタイトルの開発経緯から説明する必要があります。

 『
バブルボブル』は1986年、『レインボーアイランド』は1987年にアーケードゲームとしてリリースされました。企画者はMTJ(三辻富貴朗)氏です。

 『パラソルスター』の企画者は私ですが、『レインボーアイランド』がリリースされた年はまだ18歳の高校生で、『バブルボブル』や『レインボーアイランド』の大ファンな、単なる1プレイヤーにすぎませんでした。放課後、友人と『バブルボブル』で協力し合い、『レインボーアイランド』で競い合ったのはとても良い思い出です。
『レインボー★パラソルコレクション』収録作のひとつ『パラソルスター』現行機移植を記念したインタビューが公開。PCエンジン版開発者が当時の裏側を語る『レインボー★パラソルコレクション』収録作のひとつ『パラソルスター』現行機移植を記念したインタビューが公開。PCエンジン版開発者が当時の裏側を語る
『バブルボブル』『レインボーアイランド』
内村
 1988年4月にタイトーに入社し、中央研究所での研修の際に講師としてMTJ氏からゲーム企画の基礎を学びました。中央研究所では今まで開発した仕様が閲覧できたので特に『バブルボブル』や『レインボーアイランド』の仕様書を穴が空くほど読みました。研修後、自分の希望である第二開発(コンシューマ開発)の企画として配属。移植の担当をしながら、オリジナル企画を書いて提出していました。

 1989年頃、MTJ氏が退社されたことを聞きショックを受けます。なにより「The Story of Bubble Bobble 2の続きは?」と。

 『バブルボブル』と『レインボーアイランド』のゲームシステムと世界観が好きすぎたので、いつか続編が出ると勝手な希望を抱いていたのです。

 その後も続編の話は無かったので、こうなったら自分で作るしかないと勝手に『バブルボブル』シリーズの続編として『パラソルスター』の素案を提出し、企画を進め、最終的にコンシューマーでの正式開発を獲得しました。

 その際、ハードの選択肢はPCエンジン、メガドライブ、スーパーファミコンがありましたが、双方向当たり処理で重くなりそう、カラフルな映像にしたいので色表示は多く欲しいなどの理由から、BGスクリーンは1枚だが、スプライトとBGがそれぞれに16本のカラーパレットを持ち、処理はバツグンに速くてハード的にもノウハウのあるPCエンジンで開発にすることになりました。

 このように、アーケード由来の『バブルボブル』、『レインボーアイランド』とは、発案者も経緯も異なり、コンシューマーゲームとして発案された為、PCエンジンでのリリースになった理由です。

鈴木
 エンジニアサイドとしてはPCエンジンの開発環境対応が進んでいた事が理由に挙げられます。『パラソルスター』以前にアーケード移植の『ニンジャウォーリアーズ』、コンシューマーオリジナルの『バリバリ伝説』などで開発のノウハウが溜まっていました。

――パラソルを武器に使うというアイデアはどこから来たのですか。

内村
 『バブルボブル』からです。『バブルボブル』にはパラソルというステージをスキップできるマジックアイテムがあり、そのパラソルをキーワードとして、遊びのイメージを拡げていきました。あと、この続編の主人公はバビーとボビーと決めていたので、今度は道具を持たせて、『レインボーアイランド』とのビジュアル的な違いを出したかったのもあります。
『レインボー★パラソルコレクション』収録作のひとつ『パラソルスター』現行機移植を記念したインタビューが公開。PCエンジン版開発者が当時の裏側を語る
――しずくを集めるというアイデアは、パラソルを使うことの自然な延長だったのでしょうか?
内村
 『バブルボブル』では「泡」、『レインボーアイランド』では「虹」がベースアイデアです。どちらも水由来の可愛らしいモチーフなので、水つながりで「しずく」としました。これらの共通点は、画面上にたくさん出現して互いに影響しあうオブジェクトであるということです。

 しずくはプレイヤーキャラクターの影響を受けて毎回動きが変わるので、マンネリ抑止のひとつを担っています。それをコントロールする道具がパラソルです。本来ならアンブレラの方が相応しいと思いましたが、名前の響きを優先してパラソルとしました。

 しずくには水、雷、火、星といった4種類があり、各元素の紋章をゲットできるキーにもなっています。紋章は3つ揃うと効果を発揮する仕組みで、ストーリーのキーとしても使っています。ギミック自体は『バブルボブル』のエクステンド、『レインボーアイランド』のダイヤを踏襲しています。エクステンドは6個、ダイヤは7個を揃える必要がありますが、『パラソルスター』ではあえて3個にすることで難度を下げて、プレイ中の重要度を低く設定しました。ステージごとのクリアギミックのほうに集中して欲しかったからです。
『レインボー★パラソルコレクション』収録作のひとつ『パラソルスター』現行機移植を記念したインタビューが公開。PCエンジン版開発者が当時の裏側を語る
――『バブルボブル』では画面上の敵をすべて倒すことが求められ、『レインボーアイランド』では画面上部のゴールに到達することが求められました。『パラソルスター』では画面上の敵をすべて倒すというルールに戻りましたが、そのようにした理由は何だったのでしょうか。
内村
 2人同時プレイを重視した、アクションパズル性の高いゲームデザインにしたかったからです。『バブルボブル』の2人同時プレイまで踏まえたゲーム性は調べれば調べるほどよく出来ていたので、基本ルールは踏襲したうえで、それを超えるゲームデザインを目指しました。

 また、『レインボーアイランド』のビジュアルが素敵で大好きでしたので、見た目はそれをお手本にしました。

――『パラソルスター』のステージは、『バブルボブル』の1画面ステージとは異なり、横スクロールが可能です。これは『レインボーアイランド』の縦スクロールステージに続く自然な流れだったのでしょうか。

内村
 『バブルボブル』の固定画面はシンプルで洗練されたデザインです。『パラソルスター』のビジュアルは『レインボーアイランド』を踏襲していたので『バブルボブル』よりキャラが大きく、固定画面のままだとより狭く感じてしまうことは予想していました。ユーザーに閉塞感は与えたくなかったこと、ステージに緩急を持たせたかったこともあり、横スクロールは必須の選択でした。ただし、スクロールは2人同時プレイや、特にアクションパズルとの相性が悪いことも分かっていたので、スクロールステージを徐々に慣れさせたり、敵や仕掛けが見えなくてゲーム性が破綻しないよう慎重にステージを調整したりしています。

――各ステージのグラフィックテーマはどのように決まったのですか?

内村
 企画初期、キャラデザイナーに敵たちをたくさんデザインしてもらった際、互いに意見を交わしながら世界観を拡げていきました。

 表ワールドの最終面はレインボースターに戻ると決めていて、ゲームの難易度やワールドごとの印象を考えながら、それぞれのテーマを決めていきました。

 最初のワールドは華やかで楽しげ、且つ他のゲームにはない印象的な音楽の星。その次は色合いを落ち着かせた森の星、表のラス前はパラソルで回せないデカキャラだらけのジャイアントスターなどなど……気がつけば、それでステージの設定がほぼできていました。

――『パラソルスター』には、ほとんどのステージで流れるメインテーマBGMがあります。プレイヤーがたくさん耳にするような音楽を作る上で、最も重要なことは何でしょうか?

山田
 個人的には
  • メロディアスであること
  • ラウンドごとに雰囲気やアプローチは違ってもベースとなるイメージは統一させること
  • 繰り返し聴いてもしつこく感じないこと
に注意して作曲・ディレクションしています。

 『パラソルスター』に関して、私はサウンドディレクションのみ担当ですが、作曲を担当された岩垂さんはゲーム音楽を熟知してらっしゃる方ですので、特に上記の事をお伝えすることもなく、イメージ通りの物が仕上がってきました。

――このゲームのボス曲はカオマの「ランバダ」と比較されているが、これはタイトー社内で人気のあった曲なのでしょうか。

山田
 この当時、日本では爆発的にランバダが流行っていました。特にこちらから要望を出したわけではないですが、当時のトレンドにも影響されてか、あのようなボス曲に落ち着きました。
『レインボー★パラソルコレクション』収録作のひとつ『パラソルスター』現行機移植を記念したインタビューが公開。PCエンジン版開発者が当時の裏側を語る
――『パラソルスター』と『バブルメモリーズ』は共に“The Story of Bubble Bobble III”というサブタイトルがついているため、それぞれ『バブルボブル』シリーズ全体の中でどのような位置づけにあるのか混乱しているファンもいるようですが、これに対する公式な答えはありますか?
内村
 『パラソルスター』はタイトーとしては正式な続編としてリリースされていますが、私の心の中では、本家のアーケードとは違いコンシューマー部署から発案した、いわば“分家”的な認識があったので、アーケードと区別するために敢えてナンバーをローマ数字の” The Story of Bubble Bobble III” と記しました。当時、アラビア数字は本家がいつか使ってくれたら良いなと思っておりました。

タイトー 『パラソルスター』(1991年)より後にバブルメモリーズ(1996年)がリリースされているため、1991年当時“The Story of Bubble Bobble III”は『パラソルスター』だけでした。

 『
バブルメモリーズ』の開発者によると、この2作はパラレルワールド的な関係性を想定しているとのことです。『レインボーアイランド』の後、人間の姿のまま進むのが『パラソルスター』で、再び泡はきドラゴンの姿にされてしまったのが『バブルメモリーズ』だと考えてください。
『レインボー★パラソルコレクション』収録作のひとつ『パラソルスター』現行機移植を記念したインタビューが公開。PCエンジン版開発者が当時の裏側を語る
『バブルメモリーズ』
――Ocean Softwareは1992年にゲームボーイ、Nintendo Entertainment System(以下NES)、Amiga、Atari ST版の『パラソルスター』を発売しました。これらのバージョンをプレイする機会はありましたか?
内村
 ある時、知り合いからNES版の『パラソルスター』を頂いており大事にしています。残念ながらNESを持っていないので動かした事はありません。他の移植版もプレイしたことはなく、最近動画を観たぐらいです。

鈴木
 プレイする機会はありませんでした。

――『バブルボブル』や『レインボーアイランド』に比べると、プレイヤーが『パラソルスター』を遊べる機会は限られていました。当時を除いて移植がほとんど行われなかったのは、何か特別な理由があるのでしょうか?

タイトー アーケードゲームはコンソール機へ移植される機会が多いのに対し、元々コンソール機(PCエンジン)向けのゲームは、移植の機会をあまり得られません。

 それでも『パラソルスター』はWii向けの
『バーチャルコンソール』版がありましたし、KONAMI様が海外で発売された『TurboGrafx-16 mini』にも収録されるなど、皆様のご支持もあって移植にも比較的恵まれています。今回、あらためて現行機で復刻の機会を頂き、バビーとボビーも喜んでいると思います。

――今、あらためて『パラソルスター』を振り返って、その最大の魅力は何だと思いますか? また、新たな復刻版で『パラソルスター』をプレイする方へのメッセージがあればお願いいたします。

内村
 “かわいい見た目と裏腹にガチなゲームデザイン”という当時のタイトーアクションゲームの王道を継承しつつ、オリジナリティがあるところが魅力です。あと、ビジュアルやサウンドなどの随所に溢れるタイトー愛でしょうか。
『レインボー★パラソルコレクション』収録作のひとつ『パラソルスター』現行機移植を記念したインタビューが公開。PCエンジン版開発者が当時の裏側を語る
内村
 『パラソルスター』は、コンシューマーゲームですが、作りはアーケードゲームを模していて100円を入れたテイでプレイします。ゲーム中にアイテムとして100円を稼げたりしつつ、クレジットが0だとコンティニューもできずゲームオーバーになります。再開しても1-1からスタートです。進行や装備のセーブもありません。

 一見、繰り返しプレイですぐ飽きそうな気がしますが、プレイ回数をこなす事でプレイヤー自身の経験とテクニックが蓄積されることを見越して、全ての面にレベルの異なる攻略方法を3~5重くらい用意しているので、同じ面でもよりハイレベルな攻略プレイを狙えます。2人プレイだとさらに攻略方法が増えるようにしているので、何度もプレイして楽しんでもらえると嬉しいです。

 また、もうひとつの繰り返し遊べる工夫がマジックアイテムです。この出現条件にランダムは使っていません。プレイヤーの行動ログを蓄積し、条件が合った時に出現します。例えば、たくさん歩くとスピードアップの靴が出るとかです。よりいろんな行動を蓄積することでレアなアイテムが出るようになっています。そして、ゲームオーバーになっても行動ログはクリアされず累積され続けます。この仕組みは『バブルボブル』や『レインボーアイランド』からあるマジックアイテム出現方法を継承しています。

 さらに、『パラソルスター』では自動セーブ機能があるので、行動ログは電源を落としても消えずに累積され続けます。プレイを繰り返して全マジックアイテムゲットを目指すのも良いかもしれません。

 全マジックアイテムの出現条件を一般公開できたら嬉しいですね。

鈴木
 プレイヤーキャラクターは魔法の傘しか持っていませんが、周りのオブジェクトを利用してクリアしていくところが魅力かと思います。一見すると面クリタイプのゲームに思えますが、ひたすら高得点を狙う、2人で点数対決、など色々な遊び方を楽しんでもらえれば幸いです。

――『パラソルスター』のストーリーは『ちゃっくんぽっぷ』と繋がっているようですが、これはどのように発想されたのでしょうか?

内村
 中学生の頃、『ちゃっくんぽっぷ』をプレイしに20km先のゲーセンまで自転車で行っていたのですが、当時の小遣いでは攻略できるほどのプレイはできませんでした。ゲーム自体に憧れはあるけど、明確なプレイビジョンは思い出せない。そんな『ちゃっくんぽっぷ』は、私にとってタイトーアクションの原風景と言えます。

 数年後の『バブルボブル』では、『ちゃっくんぽっぷ』の敵キャラだった「もんすた」や「まいた」が登場しています。『レインボーアイランド』のラスボスは、「もんすた」に似た「すかるもんすた」です。

 『ちゃっくんぽっぷ』から『バブルボブル』、『レインボーアイランド』へ繋がる歴史を感じたので、『パラソルスター』で『ちゃっくんぽっぷ』のキャラが登場するのは私の中で必然となりました。

 その経緯を踏まえて、アーケード版『ちゃっくんぽっぷ』のOPデモでメイズに蓋をして1匹だけ逃げた
『まいた』がラスボスになり、神話時代のヒーロー『ちゃっくん』を救うストーリーが生まれました。

 とはいえ、ゲーム内で明確なストーリーは伝えていません。この物語の詳細はユーザーにとって重要ではないと思いましたし、文章なしで雰囲気だけとした方が、老若男女・万国共通で楽しんでもらえるかなと。あとROM容量がなかったことも理由のひとつです。
『レインボー★パラソルコレクション』収録作のひとつ『パラソルスター』現行機移植を記念したインタビューが公開。PCエンジン版開発者が当時の裏側を語る
『ちゃっくんぽっぷ』
――その他、『パラソルスター』開発当時の思い出(開発現場の雰囲気、エピソード)などがあればお願いいたします。
内村
 開発の立ち上げから、鈴木治雄さんのレスポンスが超速かったのが印象的でした。初期仕様書を元に次々に実現化してプレイフィーリングを確認したり、良いの悪いの話し合って新たなアイデアが生まれたりと、どんどんブラッシュアップされていく体験はゲームシステム誕生の手応えを初めて感じた貴重な出来事です。

 チームメンバーはもちろん、部署全体の熱量が高かったですね。全員がゲームを作りたくてしょうがない人達だったので、気がつけばイメージ以上の世界がどんどん作られていきました。

 PCエンジンは、背景に使えるBGスクリーンが1枚しかありません。もちろん『パラソルスター』でもその制限がありますが、ステージの移り変わりの際、BGの最小単位である8×8ドットブのロック毎に、背景と迷路部分をずらしながら書き替える手法の多重スクロール処理を見た時はびっくりしました。ブロック単位の都合上8ドット単位の動きなのでガクガクに見える所を、敢えて速いスピードで描画する事で滑らか風に見せている所など、小技も効いていてサイコーな演出効果のひとつです。

 開発終盤にROM容量ギリギリまで仕込んでいるときに、圧縮後のファイルが2byteオーバーでバンクに入らない事があり、鈴木治雄さんに画像の圧縮アルゴを聞いて2byte分の圧縮が効くようドットを打ち替えて、圧縮後容量をクリアしたのも良い思い出です。

 傘のいろんな操作を盛り込む事ができたと思いますが、ROM容量や時間の関係で、基本操作ガイドを入れる事ができませんでした。その代わりに、プレイデモで基本動作と基本テクニックを披露したり、最初からステージをプレイしていくと自然と操作に気付けるようにしたりとステージ調整を仕込んだつもりですが、プレイされている動画を見ていてもなかなか想定通りに気づいて貰えないことが多く、まだまだ改良点はあるな~と反省してしまいます。

 反省繋がりで、このキャラに当たると死ぬけど、このキャラは平気、この弾はイヤイヤで済むけど、これは当ったら死んじゃうとか、ゲーム根幹部分が分かりにくいのは全然ダメだなと思いました。アクションの分かりにくさも含めて、客観的にも『バブルボブル』越えは叶わなかったけど、隠れた名作と評価してくれる人もいるところが純粋に嬉しいです。

鈴木
  • 開発現場の雰囲気
 ファミコン以外のプラットフォームが出てきて活気があった時期でした。このゲームに関わったコンシューマー部隊のエンジニアも若い人が多く、熱心に仕事に取り組んでいました。個人的にはハードウェアの性能が段違いのアーケードに対して、それに負けないゲームを作ろうと考えていました。
『レインボー★パラソルコレクション』収録作のひとつ『パラソルスター』現行機移植を記念したインタビューが公開。PCエンジン版開発者が当時の裏側を語る
  • 懺悔
 今と違って当時は発売したらバグを治せないので、特にROM提出前は非常に緊張感がありました。しかし残念な事に、ライトタイマーの効果中に自分が死んでコンティニューをすると効果が復帰したステージ中続くという残念なバグを残してしまいました。

  • 今となっては良い思い出
 サウンドをZUNTATAへ発注するにあたって、仕様書をなかなか出さずに当時担当の山田さんに怒られました。事務処理を疎かにしてはならないと反省しました。

【おまけ】エンジニア開発秘話:技術的な事で覚えている事

  • 秘話1
 『パラソルスター』は3メガROMを使用していますが、キャラクターの圧縮等で実質4メガ相当の容量を詰め込んでいます。これは3メガROMの方が原価が安かったからです。

  • 秘話2
 タイトル画像はなるべく大きくしたかったので、色々な圧縮方式を比較検討した結果、当時のPC用の圧縮形式PIC-Rを採用しています。しかし、解凍には2~3秒程かかっていました。

  • 秘話3
 傘の形状に沿って衝突判定を行うために、大雑把な判定を行ってから傘のドットパターンに沿った詳細な判定を行っています。これはプレイヤーがボーっと立ったまま動かずに傘を出していれば敵をからめとる事が出来る様になる事を防止するためでした。

  • 秘話4
 当時の基幹システムはV-Sync割り込み中にゲーム内処理を行う事が原則でしたが、ゲーム外の非同期処理を行う為に割り込み外の時間を使う事が出来る機能を追加しました。このおかげでPC用の圧縮データの解凍処理などを表示を停止させることなく効率的に行う事が出来る様になっていました。

  • 秘話5
 ゲーム起動時のTAITOロゴに至る、回転する三角形から丸への変形はジェネレーテッド・BGキャラクターとラスタースクロール手法で構成されています。当時のコンシューマーでは小さな演出を多用せざるを得なかったので、単純ではありますがなるべく全画面を使って大きな動きを目指していました。

内村氏補遺

 今考えると、あの時は自分に色々なバフが掛かっていたんだと気付きました。『バブルボブル』と『レインボーアイランド』という超完成度の高いゲームデザインを骨格にしたからこそ、周辺デザインはほぼ変わらずにすみ、最も改変して作るのも苦労したコアデザイン部分にリソースを注力できたので、何とか形になりました。もし新規で周辺デザインも必要だったら到底作り上げることはできなかったでしょう。

 世界観にしても、『バブルボブル』や『レインボーアイランド』はもちろん、元々タイトーアクションゲームの伝統があり、既にその世界観を理解されているグラフィックデザイナーやサウンドコンポーザーの方々だからこそ表現できたわけです。もしゼロから作っていたら世界観の完成度は低かったでしょうし、そのイメージを伝えることすらままならなかったと思います。
当時にバフが掛かっていたこと自体、この取材によって初めて気づく事ができました。今ならそれがどんなに貴重で恵まれていたかが分かります。気づかせてくれる機会を作っていただいたこの企画に感謝申し上げます。

鈴木氏補遺

 「もう少し爽快感を追求した方が良かったのではないか?」とか、「デザイナーの意向を十全に反映できていたのか?」とか、今になって見れば反省点や稚拙な所は色々見えますが、当時はこれが精一杯でした。

 そもそも自分がコンシューマー部隊に入ったのはゲームをより身近な家庭で楽しんでもらいたいと思ったからです。今となってはスマートフォンの普及でどこでもゲームが楽しめるようになりました。

 また、高校、大学時分から3Dレンダリングの分野を学習していて、アーケードの『
ミッドナイトランディング』の様な本格的な3Dゲームがコンシューマーでも出来ないかと夢想していました。今となってはスマートフォンでも3Dゲームは作れますが。

 この30年間のうちにゲームハードを取り巻く環境は劇的に進化を遂げ、当時の夢以上の世界が現出しました。
 黎明期からこの業界に関われた事は良い事でしたが、出来ればもう少し後に生まれたかったかもしれません。
 過去を振り返り、現在を確認し、未来を思う機会を与えて頂いた事に感謝します。

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