Unreal Engine 6は2027年末に早期アクセス開始予定。UEFN/Verse統合により、対『Roblox』も意識したオープンな開発エコシステム構築を目指す

Unreal Engine 6は2027年末に早期アクセス開始予定。UEFN/Verse統合により、対『Roblox』も意識したオープンな開発エコシステム構築を目指す
 エピックゲームズが、アメリカのシカゴで開幕した同社の技術イベント“ Unreal Fest Chicago”の基調講演で、次世代のゲームエンジンUnreal Engine 6の概要を公表した。2027年末に早期アクセス版を提供開始予定で、そこから1年から1年半での正式リリースを予定している。
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単なる機能向上ではない、根本的な3つの変化

 Unreal Engine 6(以下、UE6)は、先月末に『ロケットリーグ』の大会“Paris Major”で同作に採用されることがティザー的に公表。満を持して行われたUnreal Festでその構想が明かされた形になる。

 今回の発表では、グラフィック描写やパフォーマンス向上は当然のこととして軽く触れつつ、現行のUE5系とは異なる根本的な変化が3つの軸で説明されている。

1. UEFNを統合し、ゲームプレイ設計の中心はVerseとScene Graphへ。アクターやブループリントは当面残るものの、将来的に非推奨に

 まずUE6では、予告されていたように『フォートナイト』ベースのUGC(ユーザーが自主作成するコンテンツ)向けエディターであるUEFNが統合される。

 ゲームプログラミングの点でも、UEFNで使われているプログラミング言語“Verse”に移行。さらにゲームプレイを構築していくためのツールとして、同じくUEFNからVerseで作られたScene Graphと呼ばれるフレームワークも導入される。

 一方、これまで使われていたアクターとブループリントについては、UE6の初期バージョンでは引き続き搭載されるものの、将来的には新しいフレームワークの成熟とともに非推奨となり、移行のための変換ツールで対応していく形になるようだ。
 Verseは「PythonやC#などの言語の使用経験がある方は、すぐに使いこなせるようになります」(公式記事の説明より)としており、C++のコードを呼び出しながら動作する。

 大規模なオンラインゲームなどにおいては、Verseによって複数のサーバーにまたがるゲームプレイ処理をまるで単一のサーバーを扱っているかのように自動化する仕組みの構築にも取り組んでいるという。これにより、ゲームデータのセーブや同期といった処理もシンプルになるとしている。

2. コンテンツポータビリティへの取り組み。『フォトナ』のコスチュームを自分のゲームで使用したり、自分のゲーム用にフォトナ対応のコスチュームを作れたり

 2番目に挙げられているのは、UEでの特定のゲーム開発そのものにとどまらないコンテンツポータビリティの新方針だ。

 UE6では「コンテンツとコードは、ゲームとエンジンの間でポータブルである」必要があると述べ、glTFやUSDといった既存のオープンフォーマット(いずれも3Dグラフィックのデータ形式)に対応していくほか、ニーズを満たす標準フォーマットが存在しない場合はUE側のシステムをオープン仕様として公開していくという。

 この実証例として挙げられているのがフォートナイトのコスメティック(外見用アイテム)で、基本システムをUE6のオープン仕様に移行することにより、他プレイヤーが持つフォートナイトのコスチュームを自分のゲームで使用できるようにしたり、自分のゲーム用のコスチュームをフォートナイトで使用可能な形で作成するツールなども提供されるという。

 こういったデータ互換性は『フォートナイト』とUEFNのエコシステムの内側ではすでに実現されていたことだが、UE6側に拡張することで単に『フォートナイト』だけにとどまらないデータ圏を実現しようという試みと言えるだろう。

“Team Open”というお題目、そして対『Roblox』の観点

 では、なんでこういう事をするのか? それは基調講演を締めくくったエピックゲームズのティム・スウィーニーCEOの発言から読み取ることができる。背景にあるのは、ゲームの開発費の高騰と収益の悪化。それに伴う欧米でのレイオフ(人員整理)やスタジオ閉鎖などのニュースは日々耳にするところだ。

 スウィーニー氏はそこに、トレンドの変遷を重ねる。シングルプレイから友達とのマルチプレイに主軸が移ってきていて、しかし新作マルチプレイゲームは十分なプレイヤーを獲得できずに消えていくことも少なくない。一方で、ゲーム収益はゲームそのものの販売よりもアイテム販売にシフトしてきている。だが、続けてプレイするかわからない新作のアイテムを買うよりも、既にみんながいるゲームに使った方がいいという心理が働く……という別の問題があるわけだ。

 つまり、データ互換性があればそこに変化を与えられるということだろう。もちろん、先に挙げられたような構造そのままだとエピックがアイテム収入を持っていくだけでゲーム側には何も残らないので何か新たな仕組みが必要なわけだが、それがなんであれ、そのためにはまずデータ互換性を実現してしまおうということならわかる。
 これだけならなんだかフワッとした理念的な話だが、ここにスウィーニー氏が言及しているもうひとつの軸を与えるとやりたいことがはっきりしてくる。それは、UGCプラットフォームとして『フォートナイト』&UEFNの競合である『Roblox』への対抗策だ。

 一応説明しておくと、『Roblox』は世界的に急成長しており、そこで提供されるゲームには同時接続が数百万に到達するメガヒットも存在。先ほど挙げたようなデータ互換性は『Roblox』内にもあり、ソーシャルネットワーク的でもある独自のゲーム経済圏であると言えるだろう。そこでのヒットを狙ってプロのスタジオが『Roblox』向けにゲームを作るケースや、化けそうなゲームを買収して本格化を狙うといったビジネスまである。
 しかし問題は、そのすべてが『Roblox』で完結した、スウィーニー氏いわく“中央集権型”のプラットフォームという点だ。出金時のレートまで含めるとプレイヤーが支払った額に対して実際に開発が出金可能な額は通常のゲームプラットフォームよりも低くなりうるとされ、しかも『Roblox』一社コントロールとなる。ならばオープンフォーマットを使ったよりオープンな経済圏(Team Open)でともに取り組んでいこう、という話なのだ。

生成AIによる開発支援の組み込み

 3つ目は、AIを使った開発支援だ。本日公開されたUE 5.8でもAIにより直接的にゲームエンジンの機能を触らせるためのMCPプラグインが実験的に導入されており、UE6ではより幅広い機能にアクセスできるよう注力していくとしている。

 社内での実験では、コンテンツの開発そのものだけでなく、問題に対処するための分析やテストツールなどの業務でも大きな成果が見られたとか。

現状ではUE5.9の予定はなし

 そのほか基調講演では、エピックゲームズ製のオープンソースのバージョン管理システム“Lore”を公開。なおUE6への道のりに関しては、現状ではUE5系は5.8以降のリリースは予定しておらず、必要に応じて5.9が出る可能性もある程度のようだ。