みんな限界、心がしんどい、逃げ出したい。だから、海へ行こう。逃げてみよう!


- 読んでいるだけで、なんとなくやさしい気持ちになれる
- 1時間程度でサクッと終わるので、時間がない人向け
- 酒呼吸のお姉さん、ヤケノハラがなぜか頭に残る
まず、最初に書いておかなければならないのは、このゲームは1時間程度でクリアーできるアドベンチャーであること。選択肢もない、読み進めるノベルゲームであるということです。何度も周回するローグライクでもなければ、ガッツリと長時間遊べるオンラインゲームでもありません。短くてすぐに終わり、クリアーするだけで実績もすべてアンロックできます。プレイヤーにできるのは、ボタンを押してテキストを送ることのみ。そんなゲームです。
しかし、だからこそ、私はこの作品を推したい。『限界OL海へ行く』という作品には、取り上げるべき価値があると思うから。この作品が刺さる人に遊んでほしいと思うから。そして何より、遊んだ後にやさしい気持ちになれると思うから。世界の見えかたが、ほんの少し変わるかもしれないから。時間やコスパや値段では測れない、遊んでよかったと思えるゲーム。それがインディーゲームだと思うから!
本作は、物語自体もわかりやすく、タイトルそのまんま。仕事に疲れてしまった限界OLが海に行き、一期一会かもしれない出会いを経験する。日常の中で、ちょっとだけ非日常的な行動をして、なんとなく知らなかった誰かの知らない人生、生きかたを少しだけ知る。ただ、それだけです。劇的な大事件や、登場人物どうしの感動的な心の交流みたいなものや、すごく巧みに仕込まれた伏線を回収する展開なども一切なし。通常のゲームがアッパーならば、本作はダウナー。短文で区切られた会話を通して、お姉さんが知らない誰かに出会う。それだけなのですが……だからこそよい!

舞台もいいんですよ。作中で地名が語られることはありませんが、どう見てもお台場海浜公園が舞台。東京なら、ゆりかもめで行けてしまう場所です。フラッと行けそうな場所だけど、日常とは違う。とてもよいチョイスです。ゲームというには、読み物に近いのですが、お姉さんの旅……というか冒険というか、非日常の体験に癒されます。クリアーした後は、他人にやさしくしたくなる。無償の善意で、何かをしてあげたくなる。そんなやさしい物語なのです。


さて、ここからはゲーム中盤に登場するキャラクター・ヤケノハラの話をしていきましょう。たぶん、このゲームのテーマ的な何かや笑える部分、記憶に残る部分が、たっぷり詰まっている女性。それが、ヤケノハラなのです。彼女だけで、ゲームのよさをずっと語れちゃうくらい好き。

ここまで読んだ人は、おそらく「この女のどこが師匠なの?」と思ったかもしれません。ですが、そこは師匠。彼女が酒呼吸とともに口から吐く言葉には、人生を楽しく生きる真理があるような気がします。限界な人たちに、限界から逃げ出した先で、限界に負けずに日々を楽しむコツを気づかせてくれる。彼女は人生の師匠なんですよ。まあ、主人公もプレイヤーも彼女が酔っぱらっているところしか見られないので、もしかするとシラフだったらぜんぜん違ったりするのかもしれません。だけど、酔っぱらった彼女の言葉には、彼女にしか見えない人生の意味があるように見えます。お酒はほどほどにしたほうがよいとは思いますが、それも彼女の自由。主人公は、彼女が酔うこと自体を止めることはありません。このゲームは、何が正しい、何が間違っているかを決めつけないのもすばらしい。他人の人生を否定しないですし、全肯定もしない。でも、尊重はするんですよ。
だからこそ、ただの駄目な酔っ払いのようなヤケノハラさんが、人生の見えかたを変えてくれる師匠にもなれる。ストロングなロングの缶チューハイを飲んでグルグルでピカピカしているだけなのに! それでも、主人公にとっては人生の師匠と言っていいかもしれない。一期一会で、出会った後はもう再会することすらない。そんなキャラクターなのですが、彼女とのイベントを見た人は、絶対好きになると思います。

超OKのそこまで限界じゃないゲームたち
『PHRASEFIGHT』

『ツキササリーナ』

限界OL海へ行く
- プラットフォーム:Steam
- 発売元:超OK
- 発売日:2024年1月31日
- 価格:1000円[税込]
- ジャンル:アドベンチャー
- 対象年齢:審査なし
- 備考:ダウンロード専売





















