2005年12月22日に『テニスの王子様 学園祭の王子様』(以下、『学プリ』)がプレイステーション2で発売、2010年2月11日には追加要素を加えたニンテンドーDS版『テニスの王子様 もっと学園祭の王子様 ~More Sweet Edition~』が発売された。
そして『テニスの王子様 ドキドキサバイバル』(以下、『ドキサバ』)は2006年12月21日に『山麓のMystic』、2007年1月25日に『海辺のSecret』が連続発売。2011年6月23日にはニンテンドーDS版『テニスの王子様 ぎゅっと!ドキドキサバイバル海と山のLove Passion』が発売されている。これらは一度リメイクがされているのにもかかわらず、ファンの中で復刻を非常に待ち望まれていた作品だ。
そんなリマスター版のプロデューサーである、石原明広氏へインタビューを実施。本作をリマスターすることになった経緯から、本作へかける想い、DLCでの追加キャラクターの越前リョーガ・財前光を選んだ理由、衝撃の豪華版特典までたっぷりと話をうかがった。
石原明広(いしはら あきひろ)
コナミデジタルエンタテインメント所属。『学プリ』&『ドキサバ』リマスター版ではプロデューサーを務める。『シャインポスト』プロデューサー。『Elebits』、『ラブプラス』、『ラブプラス+』などのタイトルではディレクターを担当。(文中は石原)
現代のムーブメントにも合致したリマスター
――まずは、今回のリマスター版が動き出した経緯を教えてください。
石原
以前よりリマスター版を希望される方がいらっしゃることは聞いていましたし、昨年が『学プリ』発売から20年という節目の年でもあったので、タイミングとしても「いまかな」という感じになり、プロジェクトが動き出しました。
私自身、マンガ連載当時から作品を拝見しており、会社で『学プリ』・『ドキサバ』が開発されていたころも、別のゲームを作りながら「おもしろそうなことをやっているな」と非常にポジティブなイメージを持っていました。当時はまだ少年漫画と恋愛ゲームの組み合わせは斬新だった時代ですから。やっぱり時代を作ってきたタイトルだと思うんですよね、『学プリ』・『ドキサバ』って。
――連載から27年、最初の『学プリ』の発売から20年経ったいまもファンの方の熱量がすさまじいですよね。リマスターや続編の要望もかなり多かったように思います。
石原
そうですね。先程もお話した通り、ありがたいことに定期的にお客様からご要望の声をいただいていて、社内的にも「やらないのか」という気持ちはあったと思います。当時私自身もおもしろそうだと感じていたことなので、自分が手を挙げてプロジェクトを立ち上げさせていただきました。
お客様がいま『テニスの王子様』に触れられるゲームを求めている、という空気が社内外で一致していたり、『学プリ』の発売から20周年だったりという時期もあり、いまこの時代に制作出来てよかったと改めて感じています。
――KONAMIさんでは『テニスの王子様』関連のゲームをたくさん作られていると思いますが、やはり『学プリ』や『ドキサバ』の復活の声が多かったのでしょうか?
石原
その2タイトルがやはり多かったですね。また、当時数多くのタイトルを作ることができたのは、現代と開発をとりまく環境が大きく異なることがあったのではないかと思います。いまだとこの本数はなかなか出せないですね(笑)。
――ハードの性能や、ゲームに求められるクオリティなど、何から何まで違いますよね。
石原
当時開発に携わっていた人間も社内に残っていますので、今回リマスター版を作るにあたって、いろいろと話を聞きました。当時の環境でもさまざまなシチュエーションを楽しんでいただけるように、立ち絵をものすごく活用していたり、創意工夫がなされていて「すごい」の一言です。とくに『学プリ』や『ドキサバ』は攻略対象が30~40人いるというボリュームが当時からかなり異次元だったのではないかと。


――恋愛ゲームというジャンルにおいていまなお、なかなかない人数ですよね。
石原
そうですね、44人ってゲームの中でもほぼないんじゃないかな(笑)。たくさんの攻略キャラクターの中から、自分の好きなキャラクターを選べるというのは、現代のムーブメントにもマッチしており、改めていまの時代に出すべきタイトルだなと思います。
――ちなみに、本作が発表された際の反響を受けた感想は?
石原
リマスター版を発表したのが2025年9月に開催された“テニプリフェスタ2025 応援(エール)”で、我々制作陣も現場でドキドキしていました。要望が多いとはいえ、実際どれほど望まれているものなのか、というのはやはり未知でして。そんな中、現場でもSNS上でも大反響をいただきものすごくうれしいという気持ちと同時に、気も引き締まりました。もちろん適当に作るつもりは毛頭ありませんでしたが、制作陣一同かなり気合が入ったのは事実です。
――ものすごい歓声でしたね。皆さん本当に心待ちにしていたと思います。
石原
歓声はもちろんなのですが、終演後皆さんからお声をかけていただけたことも、とても貴重な体験でした。当日は会場の外で本作の号外を配布したのですが、自分を含む制作チームで配っていたんです。シナリオを描いた人間や、イラスト担当なども含めて。
結構な枚数を配ったと思うのですが、驚くことにほぼ全員、99.9パーセントの方に持って帰っていただいたんです。この手のものって断られることも多いのですが、本当にびっくりしました。そしてお持ちいただく際に一声かけてくださるんですよ、「楽しみにしています、買います」って。ゲームを制作していて直接お客様のお声をお聞きできることは、そう多くはないんです。本当にありがたかったですね。


ほぼすべて描き直し!でも想い出はそのままに。気合の制作
――今回はリマスター版としての発売となりますが、当時のハードスペックなどを鑑みても環境が大きく異なると思います。どのように手を入れているのでしょうか?
石原
正直に言うと、当時のアセット(素材)でそのまま使えるものはありませんでした。プレイステーション2版は4:3の画面、ニンテンドーDS版は2画面な上に、もとになるデータもほぼ残っていなかったんです。そもそも、解像度が大きく違いますからね。
――それはつまり……ほぼ作り直しているということでしょうか?
石原
そうですね。イラストが400枚以上、素材もほぼすべて制作し直しというボリュームですので、技術というよりは、もはや“気合”の物量作戦でしたね(笑)。プログラミングも書き直しです。ただ、20年応援し続けて待ってくださっている皆さんの思い入れを損なったり、想い出を台無しにしないよう、あくまでも当時の作品を再現することに注力しています。背景もキャラクターの線も上からなぞりつつ、現代の比率に合わせて描き直しました。

――少しプレイさせていただきましたが、当時の印象とはほとんど変わりなく、解像度があがったんだな、と感じられましたね。かなり注目してみてみると、たとえば「千石清純のウインクの上向きと下向きが変わっている、ということは描き直しているんだな」と気付きはしても、違和感はなかったように思います。むしろ自然になっていたような。
石原
当時を再現することを意識はしているのですが、やはり絵として違和感がある部分は少し変更を加えていますね。本音を言うといまの時代にあわせて変えたい場所はたくさんあるんです。20年経っていますからね。でも、やはり当時の想い出を大切にしたいので、なるべくそのまま残せるよう、本当にひとつひとつ、直すべきかどうかを話し合って調整しました。

そのうえで、どうしてもシチュエーションにあっていないスチルもありました。これは当時の容量などの問題で、素材をうまく再利用して作っていたことが原因かと思います。そういった点は今回新たに描き直し、新スチルとして追加しました。これはワンボタンで新旧切り替えられるようにしています。


――新旧の切り替えができるのも、当時を大切にする方への配慮ですよね。新規スチルについて、こだわりがあれば教えてください。
石原
とくに告白シーンとエピローグは“ご褒美”なので、気合を入れて描き下ろし、少しアニメーションもつけて動くようにしています。


――告白やエピローグの新スチルは、当時のものとは絵柄も違う印象です。
石原
そこはあえてそうしています。昔の絵柄で想い出を楽しみたい方は旧スチルを見られますし、新たな解釈やシチュエーションは絵柄からすべて新規で楽しめた方がよいかなと考えました。


――ちなみにプレイフィールなども当時のままなのでしょうか?
石原
現代のアドベンチャーゲームでは当たり前に備わっている機能であるUIの非表示や、ロード時間の短縮、当時は画面上の表示限界などもありましたので、そういったところも調整してキャラクターがどこにいるのかわかりやすくしたり、不具合修正などは行っています。
ただ、こちらもどこまで当時のものに手を加えていいものか悩みまして、当時のプレイフィールを残している部分もあります。市場に出てお客様に遊んでいただき、もしご意見などをいただけましたら改めてアップデートなどを検討できればと考えています。
――リマスター版ならではの要素はありますか?
石原
先述の通り、当時を再現することを目標としているので、ほとんど追加はしていないのですが、HD画質で楽しめること、“ミニドラマモード”をおすそわけ通信できることですね。本作でのキャラクターの会話や立ち絵を使ってオリジナルのミニドラマを作れるモードがあるのですが、完成したものを友人やご家族の方などに見てもらうことができます。お友だちといっしょに遊びに行った際などに、ミニドラマモードでコミュニケーションが生まれたらうれしいですね。
そして、じつは英語と中国語(繫体字・簡体字)の字幕対応をしています。これは日本以外でも人気が高まってきている『テニスの王子様』を、海外のファンの方にもぜひ手にとってほしいと考えたからです。日本のお客様が英語や中国語(繫体字・簡体字)で遊びたい場合は、追加で言語パックを入れていただければ遊んでいただくことも可能です。

越前リョーガ、財前光がDLCに選出された理由
――DLCで『学プリ』に越前リョーガが、『ドキサバ』には財前光が追加されることが発表されていますが、この2名はどのように選ばれたのでしょうか。
石原
この15〜20年の間に、ファンコミュニティの中でキャラクターの魅力が肉付けされ、当時よりアンケートやSNSなどで求める声がはるかに多くなったキャラクターもいます。とくに財前光は、原作での出番は限られていましたが、テニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)やアニメ(OVA)、グッズなどの影響で、いまや欠かせない存在となっていますよね。
さまざまなムーブメントがあり、いろいろなところでキャラクターの魅力に触れる機会があるのが『テニスの王子様』のおもしろいところであり、魅力のひとつだと思っているのですが、そこを我々もアップデートしないといけないと考えました。財前はアンケートやご要望の中でも名指しで攻略希望が多かったキャラクターですね。
――『新テニスの王子様』の連載も始まり、それこそ越前リョーガや高校生たちも魅力的に描かれていると思います。やはり本作の時系列的にも、越前リョーガが選ばれたのでしょうか?
石原
そうですね。高校生たちのファンの方々ももちろんいらっしゃると思います。実際アンケートでもたくさんのお声をいただきました。やはり時系列の都合もあって調整が難しい部分もあるのですが、そんな皆さんにもまずは越前リョーガとの恋愛を『学プリ』で楽しんでもらえればと思っています。『ドキサバ』の無人島に高校生たちがみんなで遊びに来たら楽しそうではあるんですけどね(笑)。
――そうなると、3隻目が同じ島に上陸することになりますね(笑)。ちなみに今後もDLCでの攻略キャラクターが追加される予定はあるのでしょうか?
石原
まずは越前リョーガと財前光のDLCを楽しんでいただき、反響やご感想をいただいてから考えさせていただければと思います。我々の気持ちとしては、『学プリ』や『ドキサバ』でフォーカスが当たらなかったキャラクターを追加していきたいという思いはありますが、ぜひプレイした後にお声を聞かせてください。

豪華特典・ねぎらいスタッフT&ルービックキューブ、KONAMIならではの手書きメッセージ
――豪華な限定版が販売されるとのことで、内容とこだわりについてぜひご紹介ください。
石原
まず、限定版は本編のパッケージのほか、いくつかの特典が付いています。『学プリ』では跡部からのねぎらいのメッセージが入った学園祭の運営スタッフTシャツが目玉ですね。このメッセージはじつは手書きなんです。

――『テニスの王子様』で手書きって、貴重ですよね。それこそKONAMIさんが過去に販売した『テニスの王子様 Love of Prince』の特典や、『テニスの王子様 MIX&MATCH CARD』のカードなど……、なるほどKONAMIさんだからできる特典なんですね。
石原
じつは、ほかにも手書きの特典があって。KONAMIのECサイト“コナミスタイル”でご購入いただくと、プラスアルファで有償特典がありまして、『学プリ』ではそれぞれの模擬店メンバーからのサプライズ寄せ書きがもらえます。どの模擬店の寄せ書きにするかはお選びいただけます。豪華版プラス有償特典でもいいし、通常版プラス有償特典といった方法も選択可能です。
――すごい、ということは跡部景吾様以外のみんなの手書きメッセージも見られるんですね、ファンとしてはかなりうれしいですね。
石原
喜んでいただけるとうれしいです。そして『ドキサバ』のほうの目玉特典はルービックキューブです。

――ルービックキューブ??
石原
これ、ちゃんと公式ライセンスを受けており、ルービックキューブと称することができる、ルービックキューブスピードキューブエントリーというモデルなんです。競技にも使えるモデルにプリントしているんですよ! 皆さんぜひご使用ください。ただ、イラストなので普通のルービックキューブより難度は高いかもしれませんね。
――なぜルービックキューブをお選びになったのでしょうか……?
石原
まず、「無人島に持っていくなら何がいいだろう」と考えて選びました。また『テニスの王子様』はあらゆるグッズが出ていますので、これまでにないものを生み出したかったんです。
――ルービックキューブは今後もなかなか出てこなさそうですもんね。ちなみに、『ドキサバ』も“コナミスタイル”での特典はあるのでしょうか?
石原
もちろんありますよ。こちらはサバイバルの中で撮影した生写真(スチル)のセットが有償特典として選択できます。昔、学校の修学旅行で廊下に写真が張り出されているのを見ながら、自分や友だちの写真を選んで、紙に写真と該当する番号を記入して買う、といったことがあったと思うんです。もしかしたら現代ではないのかな……。
――ありました、ありました!
石原
あれを再現したかったんですよね(笑)。たとえば木手くんが映った写真があって、それを選んで買うみたいなイメージです。今回はそこに木手くんからのサバイバルを振り返った手書きのメッセージが付いていて、数名分でセットになっています。
――こちらも手書きなんですね、ものすごくありがたいです。
石原
“コナミスタイル”の豪華版は抽選販売で、当選した方のみ購入可能なのですが、『学プリ』の手書きの寄せ書きや、『ドキサバ』の手書きのメッセージ付き写真セットは通常版か豪華版かいずれかの商品さえ買っていただければ、いっしょに追加購入できるものになりますので、ぜひお好きなものをお選びいただければと思います。
――最後に『学プリ』、『ドキサバ』リマスターを心待ちにしている読者の皆様へメッセージをお願いします。
石原
皆さんが昔からずっと大切にして支え続けた、『学プリ』・『ドキサバ』への想いをいちばん大切にしたい、ということをコンセプトの真ん中に据えて、今回のリマスターを制作いたしました。現行ハードで当時の想い出をそのまま味わっていただけるのではないかと思っておりますので、ぜひ手に取ってあのときの気持ちをまた感じていただければと思います。
ウワサでは聞いていたけど、遊ぶ機会がなかった、ハードの都合上遊ぶのが厳しかったという方にもぜひ楽しんでいただきたいです。きっと笑ったり泣いたりといった青春が待っていると思いますので、ぜひ発売を楽しみにお待ちください。