eスポーツ=“若者のためのコンテンツ”という印象がないだろうか。
事実、eスポーツは多くの若者をヒーローにしてきた。それに伴い、私たちのようなゲームライター・ゲームメディアも、ヒーローとなった若者たちにインタビューするケースが増え、彼らの声を多く世の中に伝え続けている。
本当にそれでいいのだろうか。
筆者は(eスポーツ文脈において)若者の声だけを発信する日々に疑問を抱くようになった。シニアの方々の言葉には含蓄があるのではないかと考えるようになった。
我々に足りないものは数十年の人生からにじみ出る経験、余裕、そして金言。そこで、60歳以上限定FPSプロチーム“マタギスナイパーズ”にアプローチ。『VALORANT』中心に活動するmark25さんから話を聞かせてもらうことに相成った。御年70歳である。
これは、eスポーツの記事に飽きた人に読んでほしいeスポーツの記事だ。

mark25(まーく にじゅうご)
秋田県に拠点を置くプロゲーミングチーム“マタギスナイパーズ”所属。御年70歳のFPSプレイヤー(文中はmark25)。
“ゲーム=悪いもの”。だけど仕事では使える
――本日はよろしくお願いします。まずは簡単な自己紹介からいただきたく。
mark25
mark25と申します。読みかたは“マーク にじゅうご”。由来は、車のトヨタ マークIIからです。名前に数字をつけたほうがプレイヤーネームを覚えてもらいやすいと聞いて。排気量が2500ccのモデルがあるんですよ。だから、25。
1955年生まれの70歳。65歳で定年退職して、マタギスナイパーズのお世話になっています。
――言える範囲で大丈夫なのですが、何関係のお仕事をされていたのでしょうか。
mark25
最後の仕事は地方銀行、金融関係でした。
――かなりお堅いお仕事ですね。もともとゲームはお好きでしたか?
mark25
ゲームはほとんどやってなくて。ただ、PCは好きでしたね。昔のPC-98、FM-7を触っていて、PC/AT互換機でPCがいまのようなスタイルになって、Windowsが入ってきてから自作するようになりました。動作確認をする際に、ゲームをベンチマークソフト代わりに使ってたんですよ。ゲームにハマったということはなくて、あくまでPCはビジネス用。
――年齢を考えると、ちょうど“ゲームは悪いもの”論争があった世代かと思います。当時の印象はどうでしたか?
mark25
悪いものだと思ってました(笑)。
――正直!
mark25
ファミコンは1983年発売ですよね。結婚したのが、その年の5月なんです。新婚なのに単身赴任が決まってしまって……妻が寂しくないように「これで遊んで待っててね」とファミコンを買いました。
なので、息子が生まれときはもうファミコンが家にあったんですね。(息子は)3歳くらいからハマって、いくら「勉強しろ」と言ってもやめないんです。仕方ないから電源を落としたりファミコンを隠したり。
――いわゆる、当時の親のあるあるの行動をしていたと(笑)。
mark25
そうですそうです。そんな人間がいまではゲームに没頭しているので、人生はわからないものですよね。
――漠然と“ゲームは悪いもの”と思っていたなかで、ゲームのイメージが変わった時期はあったのでしょうか。
mark25
いやぁ……。遊びとして没頭していた時期はなかったのですが、(自作PCの動作確認として)シューティングゲームやフライトシミュレーターをインストールしてみると、技術の進化がすごいと感動していました。

mark25
「これは使えるな」と思ったんですよ、仕事に。車の運転の安全管理シミュレーションですとか。
――すごく素直に受け入れたんですね。我々の親世代はゲームの好き嫌いが両極端なイメージがあります。
mark25
昔から機械が好きなんです。(ゲームは)遊び以外にも、いろいろ使えるなと。当時の計算は手計算。めんどくさいじゃないですか。PCを使えばすぐにできるなと思って。固定の式を用意すればみんな失敗しないですからね。
――めちゃくちゃ上司にいてほしいタイプですね。いまでいうDX(デジタルトランスフォーメーション)を、当時から実践されていた。
過去にネットで大失敗。オンラインゲームの印象も最悪
――ゲームへの印象もよくなかったということは、定年退職後にまさか自分がeスポーツチームに入るとは思ってなかったですよね。
mark25
まったく思っていませんでした(笑)。そもそもマタギスナイパーズに入ったきっかけは妻なんです。妻から「あなたパソコン好きだったよね?」、「パソコンとゲームに関する募集があるよ」、「やってみたら?」と言ってきたわけですよ。私も「ずっとPCを触っていられるんだったらいいかな」くらいの気持ちで応募したら、入れていただけた。
そしたら、ただのゲームではなくオンラインゲームなんですよね。個人的にネットには苦い思い出がありまして。最初はやりたくないとチーム側に言ったんですけどね。ただ「それではチームが成立しない」ということで、しょうがない、やるか、と。
――過去にインターネットでどんな経験を?
mark25
まだパソコン通信(※)時代の話です。通信相手とケンカのようになってしまった経験があるんですよ。いまだったら“炎上”と言われているかもしれない。これはだめだな、仕事に影響したらまずいなと思って、ネットのコミュニケーションは全部オミット(除外)したんです。それが42~43歳ごろかな。ネットは見るけど、自分からは絶対に発信しない。
※1980年代半ばから1990年代にかけて普及した、インターネット前夜の通信サービス。――金融系のお仕事となると、ちょっとしたトラブルが大問題になるからでしょうか。判断が早いですね。
mark25
それもあるかもしれませんね。なので(オンラインゲームなど、ネットでのコミュニケーションへの)印象は最悪でした(笑)。こんな●●●●●●●なことなんて、できない。それくらいの感覚でしたから。
――記事に書けない(笑)。
mark25
いまはぜんぜん違いますよ。自分でやってみたら、それだけじゃないことはわかりましたので。
――ずっと“インターネットで発信すること”を拒んできたのに、やってみようと思った理由は何なのでしょう?
mark25
『VALORANT』は5人チームでやるものですからね。Discordでやり取りして、ネットの向こうには相手もいる。ネットを介さないとできないですし、基本的には味方と会話するから敵と話すことはないだろう、と。
――嫌だったけど、自分の意見を言うだけじゃなくて、周囲の迷惑も考えて行動する。ちゃんとした大人だ。

――チームでは、練習やスクリム(プロチーム同士などによる練習試合)だけでなく、配信活動もされていますが、顔出し配信に抵抗はありませんでしたか?
mark25
本当はやりたくなかったです(笑)。この歳になってネットに顔を出すのはどうなんだろうという気持ちは正直ありました。でも、マタギスナイパーズでは配信をひとつの柱にしたいという方針を聞いて、じゃあやってみるかと思い。
それに、新しい試みですからね。お年寄りで顔出し配信をやっている人はあまりいないでしょ。試しにやってみたら、やれないことはない。自分ではそんなにおもしろいとは思ってないんですけど。
いまでも配信でしゃべる内容には困ってます。だいたい3時間くらいやるんですけど、事前に考えておくと棒読みで説明みたいになっちゃうから、それはやらないように。『VALORANT』だったら「ここでこのアビリティ使って~」なんて話すのがいちばんいいんですよね。でも、それは若い人の配信を見たら十分でしょ。
mark25
年寄りなら年寄りなりの話しかたでね。そうすると、「癒される」とか「ほっとするんです」と言ってもらえることがあって。雑談ですよね。秋田のここがおいしいですよとか、秋田に来たらここに行ってみてくださいねとか。
――差別化も意識されていて、すごい……。
mark25
「安心して見ていられます」なんてコメントがあると「これでよかったのかぁ」って。喜んでくれる人がいるんだったら、悪いものじゃないんだろなと。それで続けていられます。
「まず、ここは社会なんだぞ」辛辣なコメントへのカウンター金言
――とはいえ、オンラインゲームなので、野良だと味方や相手から暴言が飛んできませんか? 配信中の辛辣なコメントですとか。
mark25
ええ、ありますよ。
――どう思います?
mark25
ばかやろーと思いますよ(笑)。

mark25
言わないですけどね。まあ冗談じゃないぞとは思いますよ。やり始めのころはやっぱりへたですし、「へったくそだね~」なんてコメントもありました。「やかましいわ!」って(笑)。最初からうまい人間なんていないだろ、連れて来いくらいの気持ちでね。腹立たしいこともありましたけど、「まあ、そういうコメントする人もいるだろう」と思います。
――大人だな~。辞めたくなりませんか?
mark25
最初のころは辞めたくなりましたよ。何でこの歳になってそんなこと言われなきゃいけないんだって。監督に話したら「仕方ないですよ。レベル帯によってはそういう人もいます。そこから抜けたら大丈夫なんです」と説明されて、そうなの? と。半信半疑だけど続けてみようかな。
――mark25さんってものすごく素直じゃないですか? 折れるところはちゃんと折れる。失礼ながら、年齢的に頑固になってもおかしくないと思うのですが。
mark25
そうなんですかね。へたなりに動かせるようになってくると、みんな文句を言わなくなるんです。定石のスモークを出せるとか、定点のリコンを使えるとか。そうなると「やることはやってるな」という評価に変わる。悪い人ばかりじゃないなって、そこでわかったんです。たまに(文句を)言う人はいるけどしょうがないですよ、人間ですからね。それは気にせずに、ほかの4人で楽しんだらいいんです。
――適応が早すぎませんか。若いプレイヤーだったら心が折れてしまいます。
mark25
ケンカしても何も生まれないかなと思って。最初は海外のプレイヤーからも英語で煽られましたが、プレイが上達してくるにつれて、嫌なコメントは目にしなくなりました。
――配信での嫌なコメントにはどう対処していますか?
mark25
無視ですね。反応してもしょうがないですし、好意的なコメントの方が多くてありがたいですよ。さすがに一気にコメントが流れることはないので、お名前を読み上げて「ありがとうございます」って。
――ライバーの基礎に忠実。ネットでの活動を始めて、ご自身の中で何か変わりましたか?
mark25
インターネットに対する考えかたが変わりました。昔のパソコン通信は1対1に近いので、対面のケンカみたいになりやすかった。でも、複数人とコミュニケーションを取るのが、いまのネット。そこまでひとつの発言に執着しなくなりました。
私がもう会社を辞めている(ような年齢)というのもあるでしょうけど。とはいえ、“マタギスナイパーズ”という名前を背負って活動しているわけですからね。ケンカするわけにはいかないですよ。
仲間内では「こんなこと言われた」って話はします。冗談じゃないよななんて言い合いますけど、現場に持っていくかというと、それは違う。
――仕事の愚痴は家庭ではしない、みたいな話ですね。
mark25
似てるかもしれません(笑)。

――若い人に限らずですが、きついことを言われてビックリしちゃう人は多いです。それでメンタルをやられたり。mark25さんには心の余裕を感じます。
mark25
うーん……たしかに、若い子にはきついだろうと思いますよ。きついコメントの特徴としてあるのが、一歩目から核心をつくというか、人を詰める感じがします。言ってることは間違ってないかもしれないけど。言われた方が説明すると「言い訳するな」なんて、もっと詰めてくる感覚もありますね。
――会社だったらパワハラ認定されるかもしれない。
mark25
そう。「プロの世界だから甘っちょろいこと言うな」と言う人がいます。「プロとしてやってるんだから、厳しいことを言われても当然だ」なんてね。でも、それは違う。それは“プロ”という言葉に甘えているだけ。ネットだろうとゲームだろうと、「こっちは社会の話をしているんだ!」と。
――人と人が関わる以上、人間関係であり、実社会と同じなんだぞと。みんな、どうしてそんな当たり前のことを声を大にして言わないのでしょう。
mark25
もしかしたら、ひとりでやってひとりで完結するならいいかもしれない。でも、『VALORANT』にしても『Apex Legends』にしてもチーム競技ですから。
――1対1の格闘ゲームにも対戦相手がいますし、大会を運営するスタッフ、ゲーム開発者、多くの人が関わっています。
mark25
教えるにしても言いかたひとつです。みんなで切磋琢磨したほうが上達は早いんじゃないのと思いますよ。言葉でつぶすことになると人は育たないですからね。
――オリンピックなどでも同じような話を聞きます。選手に投げられる荒い言葉が問題になっている。叩くことが目的になったら本当に無意味です。
mark25
(心ないコメントに対して)あなたがそれを言える理由は何だと突っ返したいですよ。
――強い……。でもきっとmark25さんはそれを直接言ったりしないですよね。ここは丸く収めたほうがいいだろうと総合的に判断するというか。
mark25
そうです。言わないですね。飲み込むときは飲み込んで、どこかで話す機会があったら、表現を丸めながら話します。(言われたときに)カッとなってすぐに返すといいことないですから。相手も話を聞く準備ができてないから反発するだけになっちゃう。後で、「お互いに反省しましょうね」みたいな空気を作りながら言った方がいい。
――その考え方はお仕事であったり、これまでの人生経験で育んだものですか?
mark25
だと思います。若いときはぶつかってきましたよ。30代半ばくらいまでは先輩や上司に食ってかかってました。でも、自分に部下ができるとそうもいかなくなりますから。
コメントをする前に「社会の中でその発言は正しいのか」、「ほかの人からはどういう風に見えるのか」を考えるべきでしょう。優しく教えてあげれば、つぶれずに成長する人もきっといる。その方がいいですよね。

――ほかにも考えかたが変わったことはありますか?
mark25
“若い人”とひとくくりにしていいものかわからないですけど……ふつうだなと思います。
――ふつう?
mark25
会社員時代は「若い人はこういうものだ」という考えがありました。世代の違いを感じることが多かったけど、(eスポーツのような)共通項があれば話せる。我々と同じなんだなとわかったので、ふつう。
――「最近の若いもんは……」みたいな思考ではなくなったと。
mark25
そうですね。会社は世代で分断されやすいじゃないですか。基本的には上司と部下で分かれる。査定のときはお互いを気にするけど、業務以外は話すことがほぼなかった。上からわざわざ話しかけることはないし、話しかけられる(若い)方も困りますよね。
なので「いまの若い人たちのことはよくわからん」と考えがちだったけど、ゲームという共通の話題があるから話が通じるようになっちゃって。
考えかたの合理性に関してはまったく別かな。いまはタイムパフォーマンスが大事だなんて言われますよね。「違うんじゃない?」と言いたくなりますけど、いいんですよ。全部同じじゃなくて、違うところは当然あります。違うということを理解し合っていればいい。
――お互いの違いがきっちり見えるほどのコミュニケーションは、会社員時代はあまりなかったということでしょうか。
mark25
なかったですね。ゲームでそれが見えてきたのはおもしろいと思いますよ。
高齢者×eスポーツにカテゴライズされないマタギスナイパーズ
――ゲームを使ったコミュニケーションだと、たとえば麻雀をみんなで打ったりもありますよね。ゲームと接する前からそういうコミュニティはありましたか?
mark25
麻雀はいまでも打ってますよ。大学時代の同級生と毎週1回程度。ネットでやってます。
――40年来のご友人といまでも!? 理想的な友人関係ですね。
mark25
40歳ごろまでは直接会って打ってました。ただ、いまは散り散りバラバラになって集まれない。ふとメンバーのひとりが「ネットで麻雀できる」と言ってくれて、それからオンライン麻雀をやるようになりました。
その友だちを「『VALORANT』やろうぜ」と誘ってます。配信だったり記事が出ると見てくれるんですけど、「あれはできねえよ~」って。おもしろいんですけどねえ。
――麻雀がお好きだったら相性いいと思いますけどね。どっちも相手の手を考えるゲームだから。

――マタギスナイパーズは、年齢構成からも高齢福祉の観点から語られることが多いように感じます。その点に関してはいかがですか?
mark25
認知症予防だとか思っていないんですけどね。ただ、年齢の高いチームなので、ほかのチームに比べて“体力の衰え”はあると思います、実感はないですけど。なので研究材料として見てもらって、衰えの具体的な正体と対策がわかれば、むしろ利用して克服したいくらいです。(高齢福祉の視点も)利用価値はあるな、と。
――まだ貪欲に成長したいわけですね。
mark25
プロを名乗ってますからね。負けたくないですよ。どうせだったら弱い部分を直して強くなりたいじゃないですか。
――マタギスナイパーズは「秋田県の高齢者を元気づけたい」からスタートしたと聞いたことがあります。いまでは世界中の高齢者に対するメッセージを感じますね。
mark25
そこまで大きなことは考えてないですよ。とにかく、できることをやる。やるからには上を目指す。仕事と同じです。『VALORANT』がeスポーツである以上、ただ遊んでよしじゃなくて、上があるんだから目指したい。時間はかかるかもしれないけど。
そのうえで仲間が増えればいいなというのも理由のひとつ。県内、国内、世界にプレイヤーが増えてほしい。「高齢者を元気に!」みたいな声がありますよね。だったらゲームはいいと思いますよ。
――年配の方や親世代がゲームをプレイするのは、若い世代にとってうれしいんですよね。仕事を引退してからゲームを遊んでもいい。ある種、夢が広がる。
mark25
仕事を辞めた高齢者っていうのは、どうしても暗いイメージが付きまといます。野球やサッカーみたいなスポーツをどれだけやりたくても、ケガのリスクを考えると無理じゃないですか。ただ、eスポーツはできるんです。

インタビューにはマタギスナイパーズGMの土門悠さんも同席。高齢者×eスポーツの組み合わせは、どうしても世間から福祉的な観点で見られがち。「それもすばらしいんですけど、自分たちはあくまでプロのプレイヤーとして活動したい」とのこと。
mark25
それに(マタギスナイパーズが活動する)秋田県は雪が厳しい地域なので、冬は屋外でスポーツをしにくい。でも、eスポーツは家にネット環境があれば365日いつでもできる。そう考えると、年寄りにとってこんなにすばらしいものはないと思いますよ。だったらやろうよって広めたいんですけどね、なかなか。
――ものすごくシンプル。理にかなった話ですね。
mark25
それに、“認知症予防”でゲームを広げようとすると、高齢者は余計やらなくなっちゃうんです。うちの親もそうでした。介護施設に行くのを嫌がるんですよ。恥ずかしいんでしょうね。
――認知症予防で手遊びをするなんていいますよね。いいことなんだけど、「自分は認知症予備軍なんだ」と自覚するのはつらいかもしれないなと思います。
mark25
そう。eスポーツをそういう風にはしたくない。もうちょっと手前で「みなさんチャレンジしてみませんか」と。チャレンジというのも(ニュアンスが)違うかな……。まあ、自分から前向きな気持ちでやれるのがいちばんですよ。
生涯現役。体が動かなくなるまでeスポーツを続ける
――介護施設の『鉄拳8』大会が話題になるなど、高齢者×ゲームは徐々に話題になっている気がします。定年後にゲームを始めたことはプラスになっていると感じますか?
mark25
私自身は65歳になったとき、前職に関係するものにはいっさい関わらないと決めたんですよ。
――それもまた珍しいですね。
mark25
というのも、私は仕事を好きで選んだわけではないタイプだったんです。いまは好きなことを仕事にできる人も増えたかもしれませんが、私自身は家庭のためにも仕事を選んでいられなかった。
それなりにがんばってきたから、今度は自分の好きなことをやろう。最初はレコードを集めたりパソコンいじりでもやろうと思っていたんですけど、女房から勧められたのがたまたま『VALORANT』。やり始めたら、これは上を目指せるやつだ。5人で遊ぶゲームなのか。だったらみんなでうまくなって、負けられないでしょ? ってね。

mark25
負けられない気持ちはあるんだけど、ほかの人を蹴落とすわけではない。みんなで一生懸命やって、弱い人がいたら協力して同じレベルまで引き上げればいいんですよ。みんなでうまくなったほうがいいですから。始めたからには、体が動かなくなるまでプレイし続けたいですね。
――まさに生涯現役。
mark25
そうです(笑)。ただ、これ以上伸びしろがないと自分ではっきり認識できたら、そのときが引き際だとは思ってますけどね。
――ということは、まだ伸びしろを感じていると?
mark25
基礎練習をやっていると、壁にぶち当たるんですよ。それこそ試合でも。ただ、それをくり返していくと安定してきて、レベル帯も上がったり下がったりですけど、徐々に上がってくるんです。なので、まだいける。
――若い人にとっても希望の光だと思います。
mark25
ありがたいことにそう言っていただくこともあるんです。中年層の方が配信を見てくれて、「俺ももう1回ゲームやろうかな」、「勇気をもらいました」なんてコメントをらうこともあるんです。
何かを与えるなんて、おこがましいことは思ってません。でもまあ、私の配信で元気になってくれる人がいるなら、それに越したことはないですよね。
――年配になると顔出しを避ける傾向がある気がしていて、写真に写ることさえも嫌がる方はいるのですが、mark25さんはそこを切り開く存在な気がします。
mark25
そう言っていただけるのはうれしいですよ。恥ずかしいですけど。
「まずはちゃんとしよう」。生活基盤あってこそのeスポーツ
――最後にひとつ。東京eスポーツフェスタ2025のセミナーで、mark25さんの「私は生活基盤があるからeスポーツの活動ができている」という回答が印象に残りました。こういう“そもそも”の話は、若いプレイヤーからは絶対に出てこない言葉だなと思いまして。
mark25
ありがとうございます。その通りでして、いまの私に生活基盤がないとしたら、まわりから「そんなことしてる場合じゃないだろ。稼げよ」と言われるのが当たり前ですから。生活をないがしろにしてゲームだけやったら、それはだめです。きちんと自立できてからゲームにのめり込むのが自然な流れ。

mark25
自身のやるeスポーツに生産性があるならいいんです。お金をきちんと稼いで、eスポーツが生活基盤の一部になるなら問題ない。それだけのステータスがあればいいけど、そんな人は多くないですよね。であれば、まだ、生活がいちばん大切。ゲームはそれからというのが私の考えです。
――おっしゃる通りです。よく考えれば、子どものころからゲーム機やゲーミングPCを与えられて、eスポーツに熱中させてもらえるのはかなり贅沢なこと。決して当たり前ではないと、mark25さんの発言で改めて気づかされました。
mark25
いまのeスポーツの競技シーンでは、20歳前後が全盛期で、25歳から衰えて、30歳前後で多くの選手が引退すると聞きました。そこから仕事を始めてゲームの時間が取れなくなっていく。じゃあ、つぎに自分の人生においてゲームに熱中するのはいつか。多くの方は定年退職後しかないと思うんです。
仕事で忙しい中間層がゲームを全力でやるのは難しいでしょう。そうなると、ゲームに打ち込めるのは、学生や10代のころ、それか定年退職後の高齢者。65歳まで仕事をがんばり続けたら、定年後にまたゲームに熱中できるご褒美が待っています。そういう感覚を持って、しっかり仕事に打ち込んで生活基盤を整える。そのうえで仕事にもゲームにも取り組む。この考えは悪くないと思いますよ。
取材を終えて
ネットだろうとeスポーツだろうと特別な世界ではなく、人が関わっている以上は実社会と同じ。相手が何をしても暴言をはいていい理由にはならない。冷静に行動することが何だかんだで効率的。要するに“ちゃんとしなさい”ということだ。社会を回してきた人生の先輩が言うからこそ、ふつうのことは深みを増すようだった。
高齢者とゲームの関係もおもしろい。“ゲームを高齢福祉に役立てよう”という動きはたしかにある。付きまといがちな後ろ向きイメージを振り払い、前のめりな姿からタフさがにじみ出る。ゲーミングおじいちゃん・mark25はまだまだ成長期だ。

取材後、GMの土門悠さんが週刊ファミ通編集長・ロマンシング☆嵯峨の同級生と発覚。急遽、名刺交換の場が設けられた。そんなことあるんだ。