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ソニック(セガ)とマクラーレンがパートナーに! そこで“レースのことを知ったフリ”ができるゲームにまつわる知識をお伝えします

by齋藤モゲ

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ソニック(セガ)とマクラーレンがパートナーに! そこで“レースのことを知ったフリ”ができるゲームにまつわる知識をお伝えします

ソニック×マクラーレンのパートナーシップが発表

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 筆者はゲームと同じくらいモータースポーツが好きなのだが、ゲーム界でスピードのイメージが強い “ソニック・ザ・ヘッジホッグ”が F1チームの“マクラーレンレーシング”とパートナーシップを締結したことに驚きを隠せなかった。

 ファミ通.com関連記事にもあるが、セガがF1界の門戸を叩くのは約30年ぶりであり、おじさんライターである筆者にぶっ刺さる試みすぎで……!
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 マクラーレンと言えば、かつて日本でF1が大ブームだったころ、アイルトン・セナやアラン・プロストといった伝説のドライバーが所属していた、まさに名門中の名門チームだ(当時はマクラーレン・ホンダとして、ホンダがエンジンを供給していた)。この10年ほどはやや成績が低迷していた感もあったが、昨年から復調。2025年はぶっちぎりで強いチームになっている。こんな最高のタイミングでのパートナーシップ締結って!

 そんなわけで、ひたすら筆者のパッションが高まりまくっているいま、なぜセガがいまF1のチームとパートナーシップを締結したのか、そしてF1を中心としたモータースポーツ界とゲームメーカーのつながりなどをとくとくと語っていきたい。とりあえず、本稿をざっと読んでいただければ、“軽い知ったフリ”ができる程度の情報は詰め込んでおくので、隙あらば誰かに披露していただければと思う。

F1出資はソニックの北米人気を盤石にし、さらに世界を見据えた一手?

 では、さっそく本題へ。

 なぜ、いまソニックがF1に参加するチームであるマクラーレンとパートナーシップを結んだのか? これはもう、モータースポーツを通してソニック(とセガ)のイメージアップを戦略的に行おうとしているから、なはずだ(あくまで筆者の予想)。ターゲットは、もちろん北米を中心に据えた世界。ソニックは昔から北米で人気のキャラクターだったし、昨今では映画もヒットしている。その状況にあぐらをかかず、それをより広い世代・広い層・広い国に広げようとしているのだろう。

 そもそも論で言うと、F1はヨーロッパの文脈で行われているレース。北米(アメリカ)ではINDY CARシリーズ(F1のような形のマシンで、楕円のコースを走ったり、ふつうのサーキットや市街地を走ったりするレース)や、NASCAR
(映画『カーズ』のようなイメージのクルマで、ほぼ楕円のコースを走るレース)といったレースのほうが人気を博していた。

 ところが、2019年にNetflixのドキュメンタリー作品『Formula 1: 栄光のグランプリ』が始まると、アメリカでF1人気が高まっていく。もちろん、世界中で配信されていることもあり、そのほかの国でも人気は過熱。結果的に、F1人気は数年前から世界的にピークを維持しており、その結果が現在公開中のブラッド・ピット主演の映画『F1/エフワン』の大ヒットにもつながっている(『トップガン マーヴェリック』のプロデューサーであるジェリー・ブラッカイマーとジョセフ・コシンスキー監督というコンビが関わっていることも大きいとは思うが)。
 というわけで、いま、F1人気は世界的にめちゃくちゃ盛り上がっている。

 日本はいまひとつモータースポーツ人気が奮わないためにあまりピンと来ない方も多いかもしれないが、じつはこんな状況になっているのだ。パートナーシップという形であれ、F1への投資というのは決して安くはないはず。だが、昨今のF1は前述の通り北米を中心とした世界中で大ブームになっており、世界的なイメージアップ戦略という意味で考えれば、そのコスパは決して悪くないはずだ。

 さらに言えば、F1側としても「この人気を一時的なものにしたくない!」という想いが強くあるようで。

 2024年にはF1の運営がLEGOグループとパートナーシップを締結。さらに今年、F1とディズニーがパートナーシップを締結することも発表された。もう、完全に将来ファンになってくれる予定のキッズたちを見据えた計画であることは明確だ。ソニックの場合はチームとの契約なので規模感は異なるだろうが、注目度が高まることは必至なので、そういう意味でもソニック的に“オイシイ”のは間違いないだろう。

 ちなみに、ソニック(セガ)やディズニーがパートナーシップを締結したことで、どんなことをしてくれるかという具体的なものはまだ発表されていないが、ひと足早く契約を結んだLEGOの場合はどうか。F1マシンのブロックを販売するのはもちろんのこと、2025年5月のマイアミGPでは、LEGOで組み上げたF1マシンをドライバーたちに運転してもらい、サーキットを走るというイカしたイベントを実施している。
 こういった企画を見ると、ソニックやディズニーがどんな仕掛けをしてくかという意味で、ワクワク度が高まるのも理解してもらえるのではないだろうか。セガとディズニーは仲がいいという話も聞くので、複合的なコラボレーションがあったりするとアツいのだが……果たして!?

ソニックはバイクレースでも(しれっと)存在感をアピールしていた!

 ソニックがマクラーレンとタッグを組んだことに驚いた理由は、もうひとつある。じつはソニックは、“F1のバイク版”とも言える2輪最高峰のレース“MotoGP”に、ひと足先に進出していたのだ。

 2024年に開催されたMotoGPのアメリカグランプリでは、チェッカーフラッグを振る役割をソニックが担当。映画のプロモーションも兼ねてとは言え、開催国のセレブや俳優・アーティストなどに任されるような役割がソニックに任されたということに、「北米での認知度はさすがだな!」と感じ入ったものだった。

 また、同年の日本グランプリでは、MotoGPの下位クラスであるMoto3クラスでソニックがチェッカーを振っていたし、サーキットにはセガブースが設置されていた(これが日本だけなのかは、ほかの国のレースに行っていないので不明)。そんな流れがあったので「ソニックはMotoGPと絡むようにしたのか」と思い込んでいた筆者的からすれば、逆にF1進出は不意討ちのように感じたのだ。
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2024年、モビリティリゾートもてぎに設置されたセガ(ソニック)ブース(筆者撮影)。
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MotoGPのバイクとは違う方向性ではあるが、カスタムバイクも展示されていた(筆者撮影)。
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市販されていたソニックとシャドウのヘルメットも展示されていた(筆者撮影)。買っちゃおうか数刻悩んだものの、筆者のバイクにはデザイン的に合わなかったので見送り……。
 これはものすごくマニアックな話だが、2024年にMotoGP(と市販車をベースに改造を加えたバイクレース“スーパーバイク選手権”)の興行権を持つ“ドルナ・スポーツ”という会社をアメリカの企業“リバティ・メディア”が買収した。「だから何?」という感じだが、じつはこのリバティ・メディアこそ、F1のオーナー企業。つまり、2輪と4輪の最高峰レースを同時にひとつの企業が牛耳ったわけだ。

 これが意味するところは、いずれF1とMotoGPによるコラボなども実現させることが可能になったということ。買収の話は以前からあったが、このあたりも考えて横断的に何かをするべく、どちらのレースにもアプローチしていたのだとすれば……セガ(セガ・オブ・アメリカかも?)はなかなかの策士だ。しかも、あえてセガとの契約という形式ではなく、ソニックとの契約という形で、キャラクター認知度を広げようとしていることも気が効いている。

 ゲームとレースの両方を愛する身としては、このままソニックがさらなる大人気になって、ゲームもバンバン売れていただきたい。そうすれば、セガがかつてのように世界的なレースチームのビッグスポンサーになってくれるかもしれないから。F1でもMotoGPでもいいから……この夢、叶ってくれないものか。

ほかのゲームメーカーはレースをどう見ているのか?

 セガは、約30年前にF1をスポンサードしていたことからもわかるように、昔からレースに対して興味を抱いていた。だがレースチームをスポンサードするなり、パートナーシップを結ぶなりする、というのはとてもお金がかかること。とくに、世界規模のレースとなると、ウン億円からウン十億円レベルの投資が必要になる。当然、並みのゲームメーカーがその額を払うことは困難と言わざるをえない。だが、セガ以外にもけっこういろいろなゲームメーカーがじつはレースにお金を出しているのだ。

 そのパターンを大別すると、潤沢な資産を持っているか、「宣伝の効果がかなり見込めそう!」的な予測が立てられている、あるいは経営陣に相当のレース好きがいる……といった感じ。ここでは、このパターンに沿っている事例をいくつか見てみよう。

Xbox

 まずは、(たぶん)潤沢に資産がある系でいうなら、Xboxだ。
 2023年から2024年には、F1チームのBWT アルピーヌ F1 チームと提携しパートナーシップを結んでいた。残念ながら今年はXboxのロゴは貼られていないものの、マイクロソフト自体はスポンサーを続けている。

ソニー・インタラクティブエンターテインメント(SIE)

 『グランツーリスモ』シリーズなどでレース界との関係も深いSIEもいろいろとスポンサードしている。わかりやすいのがこちら。
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『グランツーリスモ7』。Gran Turismo(R) 7 (C) 2022 Sony Interactive Entertainment Inc. Developed by Polyphony Digital Inc. “Polyphony Digital logo”, “Gran Turismo” and “GT” are registered trademarks of Sony Interactive Entertainment Inc. Manufacturers, cars, names, brands and associated imagery featured in this game in some cases include trademarks and/or copyrighted materials of their respective owners. Any depiction or recreation of real-world locations, entities, businesses, or organizations is not intended to be or imply any sponsorship or endorsement of this game by such party or parties. All rights reserved.
 『グランツーリスモ7』にも収録されているこのマシン“プジョー HDi FAP”のもとになった実車は、2010年にル・マン24時間耐久レースに出走。

 車体の両サイドやフロントライト付近に大きくプレイステーションロゴが貼られたこのデザインの実車が、ル・マンを駆け抜けた。このように、年間に何戦もやらないが注目度の高い1レースのスポットでスポンサー契約を結ぶパターンもある。年間で支援しないぶん、スポンサードにかかるお値段も手ごろ(なはず)だ。

任天堂(ニンテンドウ・オブ・アメリカ)

 けっこう昔になるが、任天堂(正確にはニンテンドウ・オブ・アメリカ)もアメリカのNASCARで、選手をスポンサードしたことがある。2007年に、Wiiのデザインに仕上げられたマシンが存在していた。また、イレギュラーなケースではあるが、2014年にはアメリカのゲームショップがスポンサードしたマシンに、『マリオカート8』のデザインを施したというケースも!

ポノス(PONOS)

 経営陣がレースに愛を持っているパターンで言うと、代表的なのは『にゃんこ大戦争』を開発したポノス。ソニックとは異なり「『にゃんこ大戦争』の知名度を海外で高める」といった目的がある……わけではなく、純粋にF1を応援したいということで、2020年と2021年に、“ウィリアムズレーシングチーム”をスポンサードしたようだ。
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写真はポノス公式サイトより引用。車体側面に会社のロゴが入っている。
 なお、ポノスは継続して国内レースにも力を入れており、2024年にはPONOSレーシングというガチのレースチームを発足。 “FIA-F4選手権”や“SUPER GT”のGT300クラスで本格的なレース活動を行っている。

 FIA-F4選手権は、同じ性能のマシンを調整して走る、ドライバーの腕が問われるレース。F1へと続く登竜門的な位置付けにもなっており、現在F1で活躍している角田裕毅選手も、17歳という若さでシーズン3位の成績を残し、ステップアップしていった。
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写真はポノス公式サイトより引用。
 “SUPER GT”は、GT500クラスとGT300クラスという、速さの異なる2カテゴリーのマシンが混走する国内最高峰レースのひとつ。ここに参戦しているポノスのクルマはフェラーリ 296をベースにしたGTマシン。2025年は4戦中、トップ10フィニッシュが2回で、2025年8月6日現在、総合13位。
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写真はポノス公式サイトより引用。

『アイドルマスター』

 そして、SUPER GTに触れるなら、このチームに言及すべきだろう。ドン!
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PACIFIC アイドルマスター NAC AMG。SUPER GT公式サイトより引用。
 SUPER GTのGT300クラスにはPACIFIC RACING TEAMがいる。

 PACIFIC RACING TEAMは、毎年いろいろな二次元作品がタイアップしていることで知られているのだが、2025年はご覧の通り、『
アイドルマスター』だ。筆者はあまりこの手のゲームをやらないクチだが、レース界を盛り上げてくれるという意味で、とても応援している。2025年8月6日現在、総合21位。
 
 さらに、ゲームメーカーという趣旨からは外れるので詳細は省くが、このGT300クラスには長年レース活動を行っている、グッドスマイルレーシングの初音ミクさんがいらっしゃることも忘れてはいけない。2025年8月6日現在、総合4位の強豪チームでもある。

まずは動画を見てみては

 このように、さまざまな形でいくつかのゲームメーカーがレースに関与している。本稿でレースにフンワリと興味が出た方は、こういった情報を頼りにひとつのチームに注目してレースを見てみるのもいいだろう。

 たとえば、上でいくつかのチームを紹介した国内レース“SUPER GT”であれば、YouTubeで2024年のレースならフルバージョンを、2025年のレースならハイライトを無料で見られる。また、2輪のMotoGPであれば、Huluが無料配信を行っている。「ちゃんと興味が出るかわからないのに、いきなりお金を払うのも……」という方は、そういった無料のものを見て、まずはお金を掛けずにレースの魅力を知ってもらいたい。

知っておきたい世界的なレースでの日本人の活躍

 世界最高峰の4輪レース・F1と、2輪レース・MotoGP。いずれも世界で20人ほどしか出場できないスーパー狭き門のレースだが、この両方にそれぞれ1名の日本人選手が参戦しているということも、これを機に知って(できれば応援して)ほしい。本当はほかのレースカテゴリーにも注目選手はいるのだけれど、それを言い出すとキリがないので……。もはやソニックの話とはズレまくるが、それはひとまず置いておいていただきたい!

『Apex Legends』もうまい! 角田裕毅選手

 まずは、2021年シーズンよりF1のレギュラードライバーとして参戦している角田裕毅選手の紹介から。
 2025年は“レッドブル・レーシング”の姉妹チームである“ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズ”チームから参戦していたが、3戦目でレッドブル・レーシングにサプライズ昇格。

 2021年から2024年まで4連続かつ合計8回も年間チャンピオンの座を獲得している、マックス・フェルスタッペン選手と同じチームになるため、「もしかしたらF1で日本人の初優勝が見られるかも?」とムチャクチャ期待が高まった。

 しかし、先にも述べたようにマクラーレンチームのマシンがぶっちぎりで速く、さしものフェルスタッペン選手でも苦戦する状況。しかも角田選手のマシンは、フェルスタッペン選手よりさらに戦闘力が低いもので、がんばってはいるものの成績はいまひとつだった。夏休み明けにはおそらくマシンがアップデートされるはずなので、そこからの活躍に期待したい。

 ちなみに、角田選手はゲーム好きでも知られており、2025年9月26日14時からは『
Apex Legends』で世界有数のプレイヤーと戦うべく、東京ゲームショウ2025に登場予定。下記でライブ配信も予定されているとのことなので、ぜひチェックしよう。

日本GPでの活躍に期待! 小椋藍選手

 そしてもうひとりが、2025年にバイクレースのMotoGPでデビューを果たした小椋藍選手だ。
 2024年は、MotoGPのひとつ下のカテゴリーであるMoto2で、なんと年間チャンピオンを獲得。もともとホンダの育成ライダーだったが、Moto2の時点でその実力を買われ、ホンダの育成チームを卒業した。そしてMoto2での優勝を引っさげ、MotoGPのデビューはアメリカのレーシングチームである“トラックハウス・レーシング”で果たされることに。このチームの使用するマシンがホンダのものならまだ理解もできるが、トラックハウスはイタリアのアプリリア製のマシンを使用するチーム。つまり、バイクメーカーの思惑など関係なしに、完全に実力だけでMotoGPまでのし上がったライダーと言える。

 MotoGPは土曜日にスプリントレース、日曜日に決勝という2回のレースを行うのだが、小椋選手は開幕戦となるカタールグランプリで、なんとスプリント4位、決勝5位というルーキーとは思えぬ成績を達成。シーズン途中にケガをしたこともあってか、ここのところは少々苦戦気味ではあるが、夏休み明けには復調し、後半戦、そして9月26日から開催される日本グランプリで活躍してくれるに違いない!

F1とMotoGPにやってくるターニングポイント

 と、ここまで筆者が好き勝手に語ってきたが、最後にもうひとつお伝えしたいことがある。それは、2025年から数年はレースを見るのにもっともいいタイミングかもしれない、ということ。というのも、F1、MotoGPともにマシンに関する大きなルール変更が行われるターニングポイントが訪れようとしているからだ。

 ざっくり言うと、F1は2026年からはマシンを小型化させるとともに、走行中に前後のウイングが可変するアクティブエアロを導入、さらにエンジンと電動パワーのバランスの見直しなどが行われる。これにより、チームの実力差がかなり縮まったり、現時点ではいまひとつの成績となっているチームがいきなり跳ねたりする可能性がある。

 MotoGPのほうは2027年からより高い安全性を確保するため、スピード抑制を目的としたエンジンの排気量減が行われる。さらに、走行中の車高調整機能も禁止し、空力パーツを控えめにすることになった。そもそもバイクはクルマに比べるとマシンの性能が成績に与える影響は若干低め(本当に若干)。その上、これらの改定により、よりライダーの腕前が出るような方向性になるというわけだ。

 そんなルール改正もあり、さらに冒頭で述べたようにソニック(セガ)やディズニーなどのエンタメ企業がパートナーシップを結ぶようになりで、今後はより興業としてのレースがおもしろくなっていく気配はムンムンというのが昨今の状況だ。

 もちろん、本稿で語った知識など、レースファンからすれば「ぜんぜん足りていない!」というレベルのもの。だが、ひとまずこれで“なんとなくわかったフリ”くらいならできるはずなので、最後まで読んでいただいた皆さんは、明日から「レース? 好きなゲームに関わることならある程度知ってるよ」という顔をして過ごしていただきたい。
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