
これまで初音ミクとともに音楽を作り上げてきた楽曲クリエイターらが、『ポケットモンスター』シリーズのBGMやSEを使って楽曲を制作し、初音ミクたちが歌う。そして、『ポケットモンスター』シリーズのキャラクターデザインやアートワークを手掛けてきた方々をはじめとするイラストレーターらが、“初音ミクが◯◯タイプのトレーナーだったら……?”というテーマで、18タイプの初音ミクをデザイン。
ポケモン、初音ミク、そして個性豊かなクリエイターたちが巻き起こす、彩りに溢れたプロジェクトがまさに、“ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE”だ。
企画発表当初に予定されていた18曲の公開が終了した後も、ファンからの熱烈な要望に応え、“ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE High↑(ポケミク)”としてプロジェクトが継続。現在までにRemixを含む合計25曲が公開されており、さらなる新曲の制作も決定している。
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そして、2025年4月1日に公開されたばかりの『ファサード・クエスチョン』は、なんと初音ミクに加えて重音テトが歌唱参加。“ポケミク”はいまなお進化を続けている。
そんなポケミクの新展開と今後について、ポケミクの企画を立ち上げた株式会社ポケモンの的場昴樹氏と、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社の佐々木渉氏のおふたりにインタビューを行った。2023年、2024年に実施したインタビュー同様、今回も大ボリュームの記事となっているので、ぜひ最後まで楽しんでいただきたい。
また、今回のポケミク×重音テト企画および本インタビューを記念して、なんと! 重音テトオフィシャルサークル・ツインドリル代表の小山乃舞世さんからのコメントも特別にいただいたので要チェック(インタビュー内に掲載)。
ポケミクに期待してくれるファンの声に応え続けたい
的場 昴樹(マトバ タカキ)
株式会社ポケモン “ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE”立案・制作リーダー
佐々木 渉(ササキ ワタル)
クリプトン・フューチャー・メディア株式会社 初音ミク生みの親。『初音ミク -Project DIVA』、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』など数々の企画立ち上げに関わる。
――ファンの皆さんだけでなくクリエイターさんからも大反響だったということですが、社内からの反応はいかがでしたか?
――“ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE High↑”になってからのファンの皆さんの反響はどのように感じていますか?
ひとつは、ポケミクをきっかけに初音ミクさんやボーカロイドについて詳しくなったり、ついには楽曲制作を始めている方をお見かけしたり、逆に登場したポケモンのことをいろいろと知ってくださって、そこからゲームやアプリを始めてみたり……といった形で、ポケモンや初音ミクさんの世界に飛び込んでくださっている方々がいらっしゃることですね。ポケモンにも初音ミクさんにも多様な魅力があるなかで、その一部だけでもこのプロジェクトで表現できていることの証左だと思っています。
そしてより大きなもうひとつは、“つぎの展開”に期待してくださる声が届き続けていることです。ポケミクに対して「つぎはこうなってほしい、こんなことをしてほしい」という希望を発信していただけるのは、さまざまな表現を受けて、ファンの皆さんに期待と想像の余地が生まれているから、そしてポケミクなら応えてくれるかもしれないという信頼があるからだと捉えています。
であるならば、私たちもその信頼に応え続けたい。ただ一方的にお出しするのではなく、ファンの声を受けて新展開を行ってきたポケミクならではの、インタラクティブなプロジェクトであり続けたい。そうあるためには皆さんのお声を可能な限りすべて見に行く必要があると考えています。
ポケモンの世界をまわって、楽しく遊んだり感動した気持ちがモチベーションに繋がっていると思いますが、これは当時少年少女だったゲームのプレイヤーが、ゲームへの想いを持ち、年月を経た上で、クリエイターとして作り込んだ「あの日あのころ」へのアンサーになっている。ときを経て大人になったから立ちあがった作品なんだよなぁ……と、ときの流れを感じてしまいます。だからこそファンにも熱い思いとして刺さっていることもあったり、ゲームの感動ってすばらしいなと改めて思いますね。
ポケミクの世界を拡張し続ける挑戦
――サツキさん&読谷あかねさんのインタビューでも、「冒険に焦点を当てたものがこれまでの王道だったが、あえて違う道を選んだ」という趣旨のお話をされていました。
それがあるからこそ、続くクリエイターさんたちはより挑戦的な表現ができるし、ファンの皆さんも「こういうのポケミクで聴いてみたかったよね」「これもまたポケミクらしさだよね」と、許容できる範囲が広くなっているのかな? と思いますね。
いちばん最初から、クリエイターさんと、枠からはみ出すことを実行してしまっていたと思えます。天邪鬼なやりかたを皆で楽しむ流れができたというか。結果的に、『ボルテッカー』も『電気予報』も続く曲たちも、広く深く支持されて、公式側が用意したものだけではなく、皆がそれぞれ考えるポケミクの可能性がすべて肯定された気がしました。だからこそファンアートもすごい勢いで広がっていったのだと思います。そしてこの世界の広がりは的場さんが最初から睨んでいたものではないかと。どうですか?
とは言え、企画者である我々自身が領域を広げる動きを意図してすべきであると、日ごろから思っているのは確かです。つねに新しいものを提供し続けなければいけない、と言いますか。この新しさにつながる拡張性こそが初音ミクさんの大きな魅力のひとつですよね。数多のクリエイターさんたちが“自分なりの初音ミク”を自由に表現できる。クリプトンさんが18年間大切に培ってこられたものだと思っています。我々もそこに可能性を感じてオファーさせていただいたわけで、ポケモンとコラボしたことで失わせるわけにはいかないですよね。
企画段階から見えていたことではありますので、世界を限定してしまうような見せかたはせず、どんどん広げていくための動きを取り続けることが、これまでもこれからも変わることのないポケミクのスタイルだと考えています。
――無限の可能性が広がっていることは、受け取る側のファンとしてはすごくうれしい反面、作り手側としては本当に難しいだろうなと感じます。
たとえば、原口沙輔さんの『しんかしんかしんか』は、メタ的な視点からポケモンや初音ミク、ポケミク、そしてファンの皆さん自身も含めたあらゆる“進化”がどう見えていますか、と問いかけているような印象があります。原口さんが本当はどう考えているのかはわからない推測の範囲ですが、ポケミクの世界の概念やシンプルな言葉のより深いところまでみんなを先導してくれているような気がしています。
また、稲葉曇さんといよわさんの交換Remixも、アイデアと閃きに満ちたクリエイティブで、知っている曲が知らない魅力を示していて、新しい世界を見せてくれているようで感動しました。
ポケミク×重音テトはなぜ実現した!?
とはいえ初音ミクさんとできることもまだまだたくさんありますし、重音テトさんとコラボできるとしたら、それは超絶特別編となるので、生半可なジョークには絶対にできません。重音テトさんと、彼女を形成してきたすべての方々へのリスペクトを持ちたいと思いました。なので、その時点では可能性は頭の片隅に置きつつ、なにか目に見えない条件のようなものがすべて揃う瞬間を待つべきだな、と思ったんです。
――その瞬間が、2025年4月1日だったと。
――そのとき佐々木さんはどう思われたのでしょうか。
的場さんは大きな企業のプロデューサーでありながら、コアな“ネット民”でもあると僕は感じていて。すごく個人的な感覚ですが、最初期の“ニコニコ技術部”に紛れていてもおかしくないというか(笑)ボカロP名も持っているんじゃないかとも疑ってしまうんです。だから的場さんの口からUTAUや重音テトの名前が出てくるのは、むしろ、自然なことなんです。
――重音テトはもともと“クリプトン社製の4番目のキャラクター・ボーカル・シリーズ”というエイプリルフールの噓をもとに、インターネット上の有志の手で作り上げられた存在です。その出自やこれまでの経緯について、改めて佐々木さんがどう考えているかお聞きしたいです。
僕個人としてもミクシンフォニーや、手塚治虫さんの企画で、何度かごいっしょしていて、愛着のある存在でもありまして、正直なところネットに純粋培養されたという意味では、ミクとテトが完全に別個の存在であるとは思えないんです。お互いにお互いがいたおかげで高め合いながら今日まで来られたと思っています。だから的場さんの提案はうれしかったし、当然の帰結だとも感じました。
――実際にコラボするにあたって、ツインドリル(※)さんもチームに入られているんですよね。
――その会議ではどんな議論が……?
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ちなみに、ウソッキーとミミッキュは、同じくKEIさんによるポケミクの最初のビジュアルにおける、偉大なカモネギとピカチュウの前例があったからか、速攻で満場一致でしたね。今回のビジュアルは、KEIさんによる“セルフパロディ”が裏テーマなのですが、そこも重音テトさんらしくなってよかったなと思っています。初音ミクさんとカモネギとピカチュウもお祝いしてくれていますね。
企画が始まった当初はポケモンとミクが並んでいることに驚きの反応がたくさんありましたが、いまではもう当たり前になってきています。そうやってミクがまたひとつ空気のように違和感なく存在できる場所が増えたということがうれしいです。
――ポケモンファンとミクさんファンがそれぞれの知識を共有している場面はよく見ますね。ほかに、ツインドリルさんとの意見交換で生まれたものは何かありますか?
ツインドリルさんいわく「初音ミクさんという偉大な先人の偽物として生まれ、その背中を追いかけながらもミクさんが光に対して、テトは影のような側面がある」と。それを聞いて、「ポケモンでいうと、“ライバル”ですかね?」と問いかけたところ、「それです」とお返事をいただきました。もちろんポケモンのライバルたちは偽物でも影でもありませんが、「なにかに焦がれて追いかける、隣りに並び得るアイツ」というのは、もう“ライバル”なんじゃないかな?と感じたんです。
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“ライバル”概念を得てからは早かったですね。18タイプの初音ミクさんの中で、最初に登場した、ある意味“主人公”ポジションなのはエスパータイプの初音ミクさんですが、彼女の相棒ポケモンはメロエッタ(ボイスフォルム)です。メロエッタにはステップフォルムというもうひとつのすがたがあり、これが重音テトさんにぴったりの相棒なのではないか?と。
“エスパーミクとライバルテト”、“ボイスフォルムとステップフォルム”が見えて、これをエスパーミクのデザインをご担当いただいた竹さんに描いていただけたなら、おもしろく新しいものになるはずだ、と可能性を感じました。また、ポケモンにおける“ライバル”には、特定のタイプのエキスパートというイメージがあまり強くないのも、18タイプとの違いが作れてラッキーでした。
――エイプリルフール当日は、ライバルテトさんのイラストや楽曲の公開そのものはもちろん、公式Xにて投稿されたポストの内容も注目を集めていましたね。
このようなおふざけはさておき……(笑)、重音テトさんとのコラボがあれだけ盛り上がったのはおもしろがってくださったファンのみなさんと、すばらしい作品のおかげです。KEIさんや竹さんのイラスト、そしてサツキさんと読谷あかねさんの『ファサード・クエスチョン』も本当にすばらしいクオリティに仕上げてくださいました。
――今回、重音テトを用いた企画で、サツキさんや読谷あかねさんにオファーをした経緯について教えてもらえますか?
それと、今回の企画はこれまでに比べて少しだけ自由度が低い側面があります。ポケミクでは、クリエイターさんに対してテーマの指示を出すことは基本的にないのですが、今回は4月1日に絶対に公開することや重音テトさんにご登場いただくこと、そして“嘘”をテーマにすることなどを指定させていただいています。その縛りをもってなお、「好き勝手やろうぜ。」の精神で楽しんでいただけるのでは……と思ったんです。
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そして読谷さんへのオファーは、サツキさんからのご希望によるものでした。我々としても重音テトさんへの情熱と、唯一無二の独特な世界観をお持ちの読谷さんであれば、いい意味ですごくおかしな映像を生み出してくださるという予感がありました。そしてその予感は、最初のミーティングで確信に変わりましたね。「嘘は必ずしも悪いものではない」といったお話、「クイズ番組のようなコンセプトで」などのアイデアが、その時点でたくさん出てきていました。詳しくはおふたりへのインタビューをご覧くださいませ!!
正直、我々やファンの皆さん……この場合はポケミクのファンに加えて重音テトさんのファンも加わるわけですが、その期待はとてもとても大きなものだったと思います。その高い高いハードルを見事に飛び越えてくださって本当に感謝しています。私個人としてもまたお気に入りの楽曲・MVが増えちゃったな、という気持ちで、これまでのポケミク楽曲同様に、何度もリピートして聴かせていただいています。
ツインドリル・小山乃舞世さんからのコメント
ポケミク企画が始まったとき「ミクさんがポケモンと!?」と驚き、すぐにサイトに飛んだことを覚えています。なかでも18タイプのミクさんイラストが大好きで、見るだけでワクワクしていました。なので、重音テトコラボのご提案をいただいたときも「テトはどんなポケモントレーナーになるんだろう、ほのおタイプの使い手? ドリルだからじめんタイプ? もしくは……」とすぐにいろいろな妄想が膨らみました。
佐々木さんに“伝説的なミーティング”と言っていただいたミーティングでは、とにかくポケモンへの愛とリクエストを全力で伝えました。後悔しないように当たって砕けろ精神でしたが、意外にも皆さんがおもしろがってくれて、さらにいいアイデアをご提案してくださるなど、とても有意義なミーティングとなりました。
もうひとつ意外だったのが、重音テトの出生や背景についてもかなり理解していただいた上で、ポケモンさん側が重音テトに歩み寄ってくれようとしていたことです。
我々はポケモンという巨大コンテンツをジャマしないようにどう溶け込むか、どうしたらテトの登場がプラスになるのかを考えていましたが、逆にポケモンさんは「重音テトさんのおもしろさとポケモンたちのおもしろさが相乗効果になるような企画にしないと、せっかくのコラボがもったいない」と、重音テトをリスペクトしながら、ポケモンといっしょに並び立つ提案をしてくださいました。
むしろポケモンだからこそ、ネットで成長していった自由なキャラクターとコラボすることで、まだ見ぬ世界をみたい、みせられるはずだ、という思いを読み取り、ハッとさせられたのを覚えています。それでも私は「ポケモントレーナーになった重音テトがみたい! みんなも絶対みたいはず!」と議論を重ね、ライバルテトさんの輪郭が浮かんだ際は思わず鳥肌が立ちました。
その後、KEIさんのTOPイラスト、『ファサード・クエスチョン』が生まれ、本当にどちらのファンにもうれしく、さらにお互いを高め合う最高のコラボができたなと思っています。まだまだ語り足りないですが、忘れられないとてもいい思い出になりました! ありがとうございました!
■プロフィール
小山乃舞世
重音テト公式サークルツインドリル代表。重音テトの音声制作をはじめ、公式サークルとしても個人としても重音テトにまつわる様々なクリエイティブやプロデュースを手がける。
今後の展開について
一方で、ファンの方々の愛や理解度というのは我々よりも高いものなんです。私ももちろん、ポケモンたち、初音ミクさんたちへの愛と理解は、それはもうたくさん持たせていただいていますが、実際にはもっともっと愛情を持って接してくださっている方がいるはずなんです。そういう方がポケミクのなにかに触れたときに、違和感を覚えることがないように徹底して突き詰めなければならないと思っています。
企画者がそれだけの情熱を滾らせていれば、周りもそれに応えようとしますよ。そうしてできた作品を、いちばん無邪気に楽しんでいるんです。イラストのラフや楽曲のデモが上がってきて確認しているときの的場さん、本当にうれしそうですもんね(笑)。
――ありがとうございます。これからも末永く続いてほしいと願うばかりですが、今後の展開について可能な範囲で教えていただけますか?
そしてちょっとしたお知らせです。これまでポケミクにお寄せいただいた、たくさんのファンの皆さんからの期待の声に、少しでもお応えできるようなHigh↑な新展開を、2025年内のどこかで発表できるだろうと考えています。今後も新情報は公式Xアカウントでお伝えしますので、フォローと通知ON、よろしくお願いします!
――今後の展開とは別に、この先ポケミクというプロジェクトをどんなものにしたいか、想いをお聞かせください。
10年後や20年後、あるいはそのもっと先にたまたまどこかでポケミクの楽曲・MVやイラストを見つけて、そこで初めて知ってくれる人がいてもいいのかな……なんて思いますね。これからも新しい領域には挑戦し続けますが、初心は忘れることなく進んでいきたいと思います。
――それでは最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。
まだまだクリエイターさんごとに違ったスタイルや切り口がたくさんあるんだということを見せていただき、改めてポケミクはこれからもずっと続けていくべきだと強く思ったんです。
企画が始まった当初は見えていなかったけど、時間が経ってポケモンやポケミク自身への理解が深まったことで見えるようになったものがあります。もっともっとポケミクを続けていく中で、どんな風景が見えるようになっていくのか楽しみです。皆さんもぜひいっしょのポケミクを楽しみ続けていただけるとうれしいです。
この世界の誰もまだ知らないような、ポケモンたちと初音ミクさんたちの魅力をクリエイターの皆さんが描いてくださるのが、ポケミクのおもしろさのひとつです。そして、それを楽しんでくださったファンの皆さんの感想やリアクションも含めてポケミクです。これからもいっしょに、初音ミクさんとポケモンたちの、未来への冒険をいっしょに楽しんでください。ここからも、よろしくお願いします!!!!!! 新展開、お楽しみに!!!!!!