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【ポケミク】企画陣インタビュー。ポケミク立案者&初音ミク産みの親に訊く“重音テト”コラボ実施の経緯や、さらなるポケミクの展開について。今後も新曲が登場予定

byゆーみん17

by竹内白州

【ポケミク】企画陣インタビュー。ポケミク立案者&初音ミク産みの親に訊く“重音テト”コラボ実施の経緯や、さらなるポケミクの展開について。今後も新曲が登場予定
 “ポケモン”と“初音ミク”によるコラボプロジェクト“ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE(ポケミク)”。

 これまで初音ミクとともに音楽を作り上げてきた楽曲クリエイターらが、『
ポケットモンスター』シリーズのBGMやSEを使って楽曲を制作し、初音ミクたちが歌う。そして、『ポケットモンスター』シリーズのキャラクターデザインやアートワークを手掛けてきた方々をはじめとするイラストレーターらが、“初音ミクが◯◯タイプのトレーナーだったら……?”というテーマで、18タイプの初音ミクをデザイン。

 ポケモン、初音ミク、そして個性豊かなクリエイターたちが巻き起こす、彩りに溢れたプロジェクトがまさに、“ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE”だ。

 企画発表当初に予定されていた18曲の公開が終了した後も、ファンからの熱烈な要望に応え、“ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE High↑(ポケミク)”としてプロジェクトが継続。現在までにRemixを含む合計25曲が公開されており、さらなる新曲の制作も決定している。
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 そして、2025年4月1日に公開されたばかりの
『ファサード・クエスチョン』は、なんと初音ミクに加えて重音テトが歌唱参加。“ポケミク”はいまなお進化を続けている。

 そんなポケミクの新展開と今後について、ポケミクの企画を立ち上げた株式会社ポケモンの的場昴樹氏と、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社の佐々木渉氏のおふたりにインタビューを行った。2023年、2024年に実施したインタビュー同様、今回も大ボリュームの記事となっているので、ぜひ最後まで楽しんでいただきたい。

 また、今回のポケミク×重音テト企画および本インタビューを記念して、なんと! 重音テトオフィシャルサークル・ツインドリル代表の小山乃舞世さんからのコメントも特別にいただいたので要チェック(インタビュー内に掲載)。

ポケミクに期待してくれるファンの声に応え続けたい

的場 昴樹マトバ タカキ

株式会社ポケモン “ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE”立案・制作リーダー

佐々木 渉ササキ ワタル

クリプトン・フューチャー・メディア株式会社 初音ミク生みの親。『初音ミク -Project DIVA』、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』など数々の企画立ち上げに関わる。

――“ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE 18 Types/Songs”として始まってから1年と9か月が経ちました。プロジェクト名は“ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE High↑”に変化。当初予定されていた18曲に加えてRemix3曲、完全新曲4曲が発表され、合計25曲に。今後も新曲の追加が予定されています。想定以上にプロジェクトが走り続けている現状だと思いますが、いまの心境を教えてください。

的場
 もうずっとですが、本当にありがとうございます!! という気持ちです!! 昨年のインタビューでもお答えしたとおり、当初は18曲で完結する想定だったのです。それが、ポケモンファン・初音ミクファンの皆さんからの多大な反響を受けて継続できることになりました。また、一部のクリエイターさんたちから「ポケミクに参加したい」、「もっとこういうことがやれませんか」といったようなお声がけをいただく機会もありました。最初に設定したゴールラインを大きく超えてなお走り続けられているのは、そうした作り手と受け手双方のお声の積み重ねがあってこそなので、本当にありがたい限りです。

佐々木
 ボーカロイドの楽曲の基本は、クリエイターさんの個性やオリジナリティをダイレクトにリスナーが楽しむというものでした。ですがポケミクはポケモンと作家さんの世界観の融合がテーマになっています。作り手も聞き手も、みんなのゲームで遊んだ記憶がミクたちの歌で繋がっていくという、新しくも懐かしい体験です。クリエイターさんどうしでも共鳴が起こりやすく「あの人がそういうテーマなら、自分ならこのテーマでこうしたい」というインスピレーションが沸き上がりやすいアイデアの連鎖が見られてとても刺激的だなと改めて思います。

的場
 楽曲・MVだけでなく、イラストに対しても同じようなリアクションをたくさんいただいています。ファンの皆さんが新作を見たい対象として、あるいはクリエイターさんたちが熱量をぶつける対象として注目してくれているというのは、本当にうれしいです。

――ファンの皆さんだけでなくクリエイターさんからも大反響だったということですが、社内からの反応はいかがでしたか?

的場
 ここまで継続していることが何より物語っているわけですが、とても評判がいいです。初音ミクさんたちとごいっしょしたことで、ポケモンのBGMやSEの魅力、ポケモンたちのユニークな魅力を、これまでと違った形でお届けできている。それが感覚だけでなく数字にも表れていますし、クリエイターさんやクリプトンさんのおかげで純粋におもしろいエンターテインメントを作り上げられている、と好評です。ポケミクから生まれる楽曲やイラスト、そもそも初音ミクさんたちが大好きなメンバーもたくさんいますからね。

佐々木
 初音ミクはバーチャルシンガーで、キャラクターでもありながらインターネット全体が生み出した概念だという意識が強いんです。社内でコンテンツを生み出しているというよりはインターネットとファンと向き合った結果として、クリエイターさんたちと協力して、ライブを行ったりしているのですが、ポケミクは、さらにあのポケモンさんの世界観が加わっていて壮大な印象なんです。両方好きなスタッフも多いですし。楽しくて、夢見心地なのですが、いまだにリアルに受け止め切れていないかもしれませんね(笑)。

――“ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE High↑”になってからのファンの皆さんの反響はどのように感じていますか?

的場
 まず、何より大感謝です。私はポケミクに関するほぼすべてのお声をチェックさせていただいているのですが……一言でも話題にしてくださる皆さんのお力が積み重なってポケミクを続けることができています。感想を見かけるたび、我々も熱を絶やさぬように全力で皆さんと歩んでいかなければ……と考えております。

佐々木
 的場さんが膨大な数のポストや動画へのコメントをすべて見ているというのは本当ですよ。仕事って感じではなく、前のめりでポケミクを見た・聴いた皆の心境を知っておきたい。そういう心意気。今回のインタビューに関するリアクションも、全部チェックすると思います(笑)。

的場
 もちろんです(笑)。栄養素や燃料みたいなものですね。そんな中でも、とくにありがたいと感じるものが2種類ありまして。

 ひとつは、ポケミクをきっかけに初音ミクさんやボーカロイドについて詳しくなったり、ついには楽曲制作を始めている方をお見かけしたり、逆に登場したポケモンのことをいろいろと知ってくださって、そこからゲームやアプリを始めてみたり……といった形で、ポケモンや初音ミクさんの世界に飛び込んでくださっている方々がいらっしゃることですね。ポケモンにも初音ミクさんにも多様な魅力があるなかで、その一部だけでもこのプロジェクトで表現できていることの証左だと思っています。

 そしてより大きなもうひとつは、“つぎの展開”に期待してくださる声が届き続けていることです。ポケミクに対して「つぎはこうなってほしい、こんなことをしてほしい」という希望を発信していただけるのは、さまざまな表現を受けて、ファンの皆さんに期待と想像の余地が生まれているから、そしてポケミクなら応えてくれるかもしれないという信頼があるからだと捉えています。

 であるならば、私たちもその信頼に応え続けたい。ただ一方的にお出しするのではなく、ファンの声を受けて新展開を行ってきたポケミクならではの、インタラクティブなプロジェクトであり続けたい。そうあるためには皆さんのお声を可能な限りすべて見に行く必要があると考えています。

佐々木
 すでに25曲もの楽曲が公開されました。そのうえでまだ“つぎ”を熱望されるのは、クリエイターさんたちが、新たな切り口を模索し続けてくれているからにほかなりません。

 ポケモンの世界をまわって、楽しく遊んだり感動した気持ちがモチベーションに繋がっていると思いますが、これは当時少年少女だったゲームのプレイヤーが、ゲームへの想いを持ち、年月を経た上で、クリエイターとして作り込んだ「あの日あのころ」へのアンサーになっている。ときを経て大人になったから立ちあがった作品なんだよなぁ……と、ときの流れを感じてしまいます。だからこそファンにも熱い思いとして刺さっていることもあったり、ゲームの感動ってすばらしいなと改めて思いますね。

ポケミクの世界を拡張し続ける挑戦

――先ほどクリエイターさん側からも意欲的な声が挙がっているという話がありましたが、19曲目以降の楽曲に関するオファーの基準や意図をお教えいただけますか?
的場
 18曲目までもそうですが、明確な基準を設けてはいません。意図の部分をお話しするとすれば、それまでの18曲によって我々およびファンの皆さんの中に“ポケミクらしさ”のようなものが、おぼろげながら形成されたと感じています。その枠から、あえてすこしはみ出せる方にお声がけできるとうれしい、という気持ちはあるかもしれませんね。

佐々木
 そこは同様です。「枠からはみ出だす」というポイントは重要ですね。自分ならではの角度や切り口からポケモンやミクの魅力を引き出すべく果敢に挑んでくださる方にお願いする傾向が強いと思います。

的場
 もちろん絶対的なルールではありません! 可能性を狭めたくないので!

――サツキさん&読谷あかねさんのインタビューでも、「冒険に焦点を当てたものがこれまでの王道だったが、あえて違う道を選んだ」という趣旨のお話をされていました。

的場
 ポケミクに参加してくださっているすべてのクリエイターさんたちは、毎度必ず私たちの期待に応えて、さらに超えていってくださります。まだ道も何もない世界を切り拓いてくれたDECO*27さんの『ボルテッカー』を始めとする18曲が公開される過程で、“ポケミクらしさ”と言えるような道ができあがっていったのかもしれません。

 それがあるからこそ、続くクリエイターさんたちはより挑戦的な表現ができるし、ファンの皆さんも「こういうのポケミクで聴いてみたかったよね」「これもまたポケミクらしさだよね」と、許容できる範囲が広くなっているのかな? と思いますね。

佐々木
 いい機会なので的場さんにきいてみたいことがあります。たとえば最初は18タイプの初音ミクたちのイラストが公開されて、彼女たちそれぞれをテーマとした“キャラクターソング”のようなものができあがる、といったイメージを持たれていた方もいらっしゃったかと思います。でも蓋を開けてみれば1曲目の『ボルテッカー』では彼女たちとは別のミクが、ピカチュウと登場して。ここで一気にポケミクという世界の可能性が無限に広がったと思うんです。

 いちばん最初から、クリエイターさんと、枠からはみ出すことを実行してしまっていたと思えます。天邪鬼なやりかたを皆で楽しむ流れができたというか。結果的に、
『ボルテッカー』『電気予報』も続く曲たちも、広く深く支持されて、公式側が用意したものだけではなく、皆がそれぞれ考えるポケミクの可能性がすべて肯定された気がしました。だからこそファンアートもすごい勢いで広がっていったのだと思います。そしてこの世界の広がりは的場さんが最初から睨んでいたものではないかと。どうですか?

的場
 最初から睨んでいたか……難しいですね(笑)。もちろん、初音ミクさんとごいっしょするなら、いろいろなクリエイターさんを巻き込んで、イラストでも楽曲・MVでも、多角的にさまざまな表現をやるべきで、それがポケモンたちの魅力を引き出すことにもつながる、と思っていたのは最初からです。“18タイプの初音ミク&相棒ポケモン”も、『ボルテッカー』に始まる楽曲たちも、それぞれのクリエイターさんのベスト、「私にとってのポケミク」に向き合っていただいたからこそ生まれたものですし。

 とは言え、企画者である我々自身が領域を広げる動きを意図してすべきであると、日ごろから思っているのは確かです。つねに新しいものを提供し続けなければいけない、と言いますか。この新しさにつながる拡張性こそが初音ミクさんの大きな魅力のひとつですよね。数多のクリエイターさんたちが“自分なりの初音ミク”を自由に表現できる。クリプトンさんが18年間大切に培ってこられたものだと思っています。我々もそこに可能性を感じてオファーさせていただいたわけで、ポケモンとコラボしたことで失わせるわけにはいかないですよね。

佐々木
 その拡張性を尊重いただける理解度は、ありがたいものですよね。ポケモンのように何層にも広がっている巨大なコンテンツで、その理想を実現するのは口で言うほど簡単なものでは決してないはずです。

的場
 いえいえ、むしろポケモン側の多層的な部分は、初音ミクさんの拡張性とは相性ばつぐんだとも思います。ポケモンたちは現在1025種類が確認されていて、その全員にポケミクで登場してもらうのは途方もない道のりだと思えるほどですが、だからこそ「このポケモンと初音ミクさんがいっしょにいたら、初音ミクさんはこういう表情になるんじゃないか。きっとこういう歌声になるよね」といった想像の余地が、それこそ無限にある気がします。

 企画段階から見えていたことではありますので、世界を限定してしまうような見せかたはせず、どんどん広げていくための動きを取り続けることが、これまでもこれからも変わることのないポケミクのスタイルだと考えています。

――無限の可能性が広がっていることは、受け取る側のファンとしてはすごくうれしい反面、作り手側としては本当に難しいだろうなと感じます。

佐々木
 そうなんですよね。無限の中から何かを選択して作品を作り上げるって、本当にたいへんだと思います。とくに“ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE High↑”になってからの楽曲たちは、テーマの裾野が広がっていると思います。

 たとえば、原口沙輔さんの
『しんかしんかしんか』は、メタ的な視点からポケモンや初音ミク、ポケミク、そしてファンの皆さん自身も含めたあらゆる“進化”がどう見えていますか、と問いかけているような印象があります。原口さんが本当はどう考えているのかはわからない推測の範囲ですが、ポケミクの世界の概念やシンプルな言葉のより深いところまでみんなを先導してくれているような気がしています。

 また、稲葉曇さんといよわさんの交換Remixも、アイデアと閃きに満ちたクリエイティブで、知っている曲が知らない魅力を示していて、新しい世界を見せてくれているようで感動しました。

ポケミク×重音テトはなぜ実現した!?

――世界の広がりという話でいうと、先日のエイプリルフール企画で行われた重音テトとのコラボには驚かされました。構想自体はいつからあったのでしょうか?

的場
 ポケミクが動き出したのは2023年8月31日からですが、私が個人的に重音テトさんの登場を考え始めたのは2024年3月9日にEveさんの『Glorious Day』が公開されるころでした。18曲目までの公開がいったん終わり、ありがたいことにその続きの展開が見え始めたタイミングで、「もしかしたらつぎの4月1日・エイプリルフールに重音テトさんが出てきたらおもしろいかもな〜」と。

 とはいえ初音ミクさんとできることもまだまだたくさんありますし、重音テトさんとコラボできるとしたら、それは超絶特別編となるので、生半可なジョークには絶対にできません。重音テトさんと、彼女を形成してきたすべての方々へのリスペクトを持ちたいと思いました。なので、その時点では可能性は頭の片隅に置きつつ、なにか目に見えない条件のようなものがすべて揃う瞬間を待つべきだな、と思ったんです。

――その瞬間が、2025年4月1日だったと。

的場
 はい! とても幸運なことに。ひとつの契機としては“ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE High↑”にリニューアルできたことでした。ポケミクの世界が広がり、それがお客様にも好意的に迎え入れていただけた中で、さらなる1歩、枠を飛び出すおもしろいこととして、新しい歌声が特例的に入るというのはアリなんじゃないかと。その考えを佐々木さんにお伝えしたところ、「やりましょう」と快く受け入れていただけました。

――そのとき佐々木さんはどう思われたのでしょうか。

佐々木
 僕としては「そうだろうな」というか。予知していたとまで言う気はありませんが、的場さんならそういうことを考えるだろうなという納得がありました。自分の心の中では「もっと企画概念を壊して!」という感じです。

 的場さんは大きな企業のプロデューサーでありながら、コアな“ネット民”でもあると僕は感じていて。すごく個人的な感覚ですが、最初期の“ニコニコ技術部”に紛れていてもおかしくないというか(笑)ボカロP名も持っているんじゃないかとも疑ってしまうんです。だから的場さんの口からUTAUや重音テトの名前が出てくるのは、むしろ、自然なことなんです。

的場
 どうなんですかね(笑)。あまりにもすんなり快諾されたので、私としては驚いたくらいです。

――重音テトはもともと“クリプトン社製の4番目のキャラクター・ボーカル・シリーズ”というエイプリルフールの噓をもとに、インターネット上の有志の手で作り上げられた存在です。その出自やこれまでの経緯について、改めて佐々木さんがどう考えているかお聞きしたいです。

佐々木
 その存在が弊社公式のものかということよりも、ニコニコ動画には、パロディや創作の連鎖を愛する人が多く、とくにテトを愛して支えてきた方々がたくさんいらっしゃるという事実が重要だと考えています。

 僕個人としてもミクシンフォニーや、手塚治虫さんの企画で、何度かごいっしょしていて、愛着のある存在でもありまして、正直なところネットに純粋培養されたという意味では、ミクとテトが完全に別個の存在であるとは思えないんです。お互いにお互いがいたおかげで高め合いながら今日まで来られたと思っています。だから的場さんの提案はうれしかったし、当然の帰結だとも感じました。

――実際にコラボするにあたって、ツインドリル(※)さんもチームに入られているんですよね。
※重音テトが生まれた掲示板に集まった有志によって結成されたオフィシャルサークル。権利者である公式イラストデザインの線さん、音源提供の小山乃舞世さんもメンバーに加わっている。
的場
 はい。重音テトさんにご登場いただくものについては、すべてごいっしょいただいています。

佐々木
 ツインドリルさんと的場さんの意見交換会は僕の中で伝説的なミーティングとして記憶に残っていますよ。ネットのディープなところで熱く活躍しているツインドリルさんと、いわゆる大きな企業であるポケモン社のプロデューサーである的場さんとのあいだで、「ネット民どうしの解釈議論かな?」と錯覚するような、WEB会議が行われたことに僕は感動を覚えていました(笑)。

――その会議ではどんな議論が……?

的場
 佐々木さんにはそんなふうに見えていたんですか?(笑)  ポケミクへの参加は事前にご快諾いただいていたうえで、企画内容についてツインドリルさんのご意見があったほうが絶対よくなると思ったので、そのための場をお願いしました。本当にたくさんのことを楽しくお話させていただいたのですが、たとえば“ルアーボール”にたどりついた経緯でしょうか。『ポケットモンスター』シリーズにおいてルアーボールというのは、基本的につりざおで“釣り”上げたポケモンが捕まえやすくなる 特別なボールです。
※インターネット上では、フェイクの情報で人の関心を引こうとすることを“釣り”という。そして重音テトが産み出された大型掲示板のスレッドのタイトルが“架空のボーカロイド作ってニコ厨つろうぜww”である。[IMAGE]
重音テトが手に持っているのがルアーボール。
 「重音テトが持っているとしたらどんなボールかな?」という会話の中から生まれたアイデアではあったのですが、ツインドリルさんとしても重音テトさんの出自とルアーボールを重ね合わせることに価値を見出していただくことができました。こういった形でルアーボールの晴れ舞台が作れたのは個人的にもうれしく思っています。ルアーボールにもファンはいるので。もうひとつ出た案のプレミアボールは、ライバルのほうの重音テトさんが持っているようですね。

 ちなみに、ウソッキーとミミッキュは、同じくKEIさんによるポケミクの最初のビジュアルにおける、偉大なカモネギとピカチュウの前例があったからか、速攻で満場一致でしたね。今回のビジュアルは、KEIさんによる“セルフパロディ”が裏テーマなのですが、そこも重音テトさんらしくなってよかったなと思っています。初音ミクさんとカモネギとピカチュウもお祝いしてくれていますね。

佐々木
 今回、テトとポケミクとのコラボ、ということで改めて感じたことがあるんです。MVの中でテトが登場することに驚かれても、ミクが登場することが自然になっていたんですよね。すごく自然に溶け込んでいて、バーチャルシンガー側のはずが、まるでポケモン側の一員みたいになっていますよね(笑)。

 企画が始まった当初はポケモンとミクが並んでいることに驚きの反応がたくさんありましたが、いまではもう当たり前になってきています。そうやってミクがまたひとつ空気のように違和感なく存在できる場所が増えたということがうれしいです。

的場
 そこは私もうれしく思っていると同時に、ファンの皆さんの温かさに感謝していますね。ポケモンと初音ミクさんがコラボしていることそのものもそうですし、今回で言えば重音テトさんがなぜウソッキーやミミッキュといっしょにいるのか、なんでルアーボールなのか、わからない人も少なくないと思います。そういった方々に「これはね……!」とやさしく丁寧に説明してくださる方々がいて。すごくありがたいですよね。

――ポケモンファンとミクさんファンがそれぞれの知識を共有している場面はよく見ますね。ほかに、ツインドリルさんとの意見交換で生まれたものは何かありますか?

的場
 “ライバルテト”さん概念もそうですね。18タイプの初音ミクさんという前例がある中で、せっかく重音テトさんとごいっしょできるのに、単なるタイプの二番煎じはおもしろくないかも……と、新しいテーマ、重音テトさんならではのテーマはないかと悩んでいました。そんな状態で、ツインドリルさんとの会議の中で、重音テトさんのイメージをお伺いできる機会があったんです。

 ツインドリルさんいわく
「初音ミクさんという偉大な先人の偽物として生まれ、その背中を追いかけながらもミクさんが光に対して、テトは影のような側面がある」と。それを聞いて、「ポケモンでいうと、“ライバル”ですかね?」と問いかけたところ、「それです」とお返事をいただきました。もちろんポケモンのライバルたちは偽物でも影でもありませんが、「なにかに焦がれて追いかける、隣りに並び得るアイツ」というのは、もう“ライバル”なんじゃないかな?と感じたんです。
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 “ライバル”概念を得てからは早かったですね。18タイプの初音ミクさんの中で、最初に登場した、ある意味“主人公”ポジションなのはエスパータイプの初音ミクさんですが、彼女の相棒ポケモンはメロエッタ(ボイスフォルム)です。メロエッタにはステップフォルムというもうひとつのすがたがあり、これが重音テトさんにぴったりの相棒なのではないか?と。

 “エスパーミクとライバルテト”、“ボイスフォルムとステップフォルム”が見えて、これをエスパーミクのデザインをご担当いただいた竹さんに描いていただけたなら、おもしろく新しいものになるはずだ、と可能性を感じました。また、ポケモンにおける“ライバル”には、特定のタイプのエキスパートというイメージがあまり強くないのも、18タイプとの違いが作れてラッキーでした。

――エイプリルフール当日は、ライバルテトさんのイラストや楽曲の公開そのものはもちろん、公式Xにて投稿されたポストの内容も注目を集めていましたね。

佐々木
 あれができるっていうのがポケミクのすごいところですよね。あそこまでインターネット文化を理解した内容の投稿を企業の公式アカウントがするなんて、ツインドリルの小山乃さんも驚いていらっしゃいました。

的場
 Xでの投稿内容については、重音テトさんの出自や愛されかた、根底にあるエンタメ精神をポケミクとしてリスペクトしつつ、細心の注意を払ってハメを外した結果です。エイプリルフールという記念日に、中途半端にやるのはよくないかなと。

 このようなおふざけはさておき……(笑)、重音テトさんとのコラボがあれだけ盛り上がったのはおもしろがってくださったファンのみなさんと、すばらしい作品のおかげです。KEIさんや竹さんのイラスト、そしてサツキさんと読谷あかねさんの
『ファサード・クエスチョン』も本当にすばらしいクオリティに仕上げてくださいました。

――今回、重音テトを用いた企画で、サツキさんや読谷あかねさんにオファーをした経緯について教えてもらえますか?

的場
 『メズマライザー』や『オブソミート』などサツキさんの楽曲をすべて視聴させていただきながら、「ポケミクのエイプリルフールをいっしょにおもしろがってくれそう」と思ったのがきっかけです。「いっしょにウソをつきませんか?」というお誘いなので。

 それと、今回の企画はこれまでに比べて少しだけ自由度が低い側面があります。ポケミクでは、クリエイターさんに対してテーマの指示を出すことは基本的にないのですが、今回は4月1日に絶対に公開することや重音テトさんにご登場いただくこと、そして“嘘”をテーマにすることなどを指定させていただいています。その縛りをもってなお、「好き勝手やろうぜ。」の精神で楽しんでいただけるのでは……と思ったんです。
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 そして読谷さんへのオファーは、サツキさんからのご希望によるものでした。我々としても重音テトさんへの情熱と、唯一無二の独特な世界観をお持ちの読谷さんであれば、いい意味ですごくおかしな映像を生み出してくださるという予感がありました。そしてその予感は、最初のミーティングで確信に変わりましたね。「嘘は必ずしも悪いものではない」といったお話、「クイズ番組のようなコンセプトで」などのアイデアが、その時点でたくさん出てきていました。詳しくはおふたりへのインタビューをご覧くださいませ!!

 正直、我々やファンの皆さん……この場合はポケミクのファンに加えて重音テトさんのファンも加わるわけですが、その期待はとてもとても大きなものだったと思います。その高い高いハードルを見事に飛び越えてくださって本当に感謝しています。私個人としてもまたお気に入りの楽曲・MVが増えちゃったな、という気持ちで、これまでのポケミク楽曲同様に、何度もリピートして聴かせていただいています。

ツインドリル・小山乃舞世さんからのコメント

 私は、マンガもアニメも見ない、音楽も詳しくない。ゲームは『ポケットモンスター』シリーズだけ『ポケットモンスター 緑』から最新作までやっている人なのですが、唯一の好きなコンテンツであるポケモンと、自分たちが手がけるキャラクターがコラボできるなんて夢にも思わず、お声がけいただいた際は本当にびっくりしましたし、とてもうれしかったです。

 ポケミク企画が始まったとき「ミクさんがポケモンと!?」と驚き、すぐにサイトに飛んだことを覚えています。なかでも18タイプのミクさんイラストが大好きで、見るだけでワクワクしていました。なので、重音テトコラボのご提案をいただいたときも「テトはどんなポケモントレーナーになるんだろう、ほのおタイプの使い手? ドリルだからじめんタイプ? もしくは……」とすぐにいろいろな妄想が膨らみました。

 佐々木さんに“伝説的なミーティング”と言っていただいたミーティングでは、とにかくポケモンへの愛とリクエストを全力で伝えました。後悔しないように当たって砕けろ精神でしたが、意外にも皆さんがおもしろがってくれて、さらにいいアイデアをご提案してくださるなど、とても有意義なミーティングとなりました。

 もうひとつ意外だったのが、重音テトの出生や背景についてもかなり理解していただいた上で、ポケモンさん側が重音テトに歩み寄ってくれようとしていたことです。

 我々はポケモンという巨大コンテンツをジャマしないようにどう溶け込むか、どうしたらテトの登場がプラスになるのかを考えていましたが、逆にポケモンさんは「重音テトさんのおもしろさとポケモンたちのおもしろさが相乗効果になるような企画にしないと、せっかくのコラボがもったいない」と、重音テトをリスペクトしながら、ポケモンといっしょに並び立つ提案をしてくださいました。

 むしろポケモンだからこそ、ネットで成長していった自由なキャラクターとコラボすることで、まだ見ぬ世界をみたい、みせられるはずだ、という思いを読み取り、ハッとさせられたのを覚えています。それでも私は「ポケモントレーナーになった重音テトがみたい! みんなも絶対みたいはず!」と議論を重ね、ライバルテトさんの輪郭が浮かんだ際は思わず鳥肌が立ちました。

 その後、KEIさんのTOPイラスト、
『ファサード・クエスチョン』が生まれ、本当にどちらのファンにもうれしく、さらにお互いを高め合う最高のコラボができたなと思っています。まだまだ語り足りないですが、忘れられないとてもいい思い出になりました! ありがとうございました!

■プロフィール
小山乃舞世
 重音テト公式サークルツインドリル代表。重音テトの音声制作をはじめ、公式サークルとしても個人としても重音テトにまつわる様々なクリエイティブやプロデュースを手がける。

今後の展開について

――ポケミクというプロジェクトは、大きなコンテンツを持つ会社が作り上げるコラボとしては、あまりにも熱量が高く、濃く、自由だ、と勝手に感じています。企画を生み出す仕事をしている立場からも内情が気になり、読者としても知りたい方は多いと思うのです。企画者のおふたりが、コラボレーションにおいて重要視されていることを改めて教えてください。

的場
 自分たちの世界および、コラボ相手の世界への理解とリスペクトが十分に備わっていることは大前提として、そこからさらに両者のよさを引き出すことが重要だと考えています。片方だけでは引き出せていなかった新たな魅力を互いに引き出せることがベストです。これまで交わらなかったものどうしがコラボすることで、ファンの皆さんの想像を超える何かを作れるのではないか……と思いますし、それがコラボの理想形なのかなと。

 一方で、ファンの方々の愛や理解度というのは我々よりも高いものなんです。私ももちろん、ポケモンたち、初音ミクさんたちへの愛と理解は、それはもうたくさん持たせていただいていますが、実際にはもっともっと愛情を持って接してくださっている方がいるはずなんです。そういう方がポケミクのなにかに触れたときに、違和感を覚えることがないように徹底して突き詰めなければならないと思っています。

佐々木
 通常、企業のプロデューサーさんや仕掛け人の方々としては、企画の立て付けを作ったら、仕事としてはそこまでだと思うんです。でも今回、的場さんは、企画そのものというよりポケモンたちや初音ミク、そしてそれらを取り巻く世界のパワーのようなものを強く信じ込んでいるように感じました。クリエイターさんとお仕事するときにキラキラされていて、だから誰よりも楽しそうなんです。

 企画者がそれだけの情熱を滾らせていれば、周りもそれに応えようとしますよ。そうしてできた作品を、いちばん無邪気に楽しんでいるんです。イラストのラフや楽曲のデモが上がってきて確認しているときの的場さん、本当にうれしそうですもんね(笑)。

的場
 本当に恐縮です。役得の最たるものですね。

佐々木
 直接言葉にしなくとも周囲へ伝播させるだけの熱くて強い想いと楽しむ心が、ポケミクをポケミクたらしめているものの正体なのではないかと思います。

――ありがとうございます。これからも末永く続いてほしいと願うばかりですが、今後の展開について可能な範囲で教えていただけますか?

的場
 新曲や新イラストの公開ペースについては、気長にお待ちいただけるとありがたいですね。その分、1回1回のインパクトがより大きいものを目指していきます。

 そしてちょっとしたお知らせです。
これまでポケミクにお寄せいただいた、たくさんのファンの皆さんからの期待の声に、少しでもお応えできるようなHigh↑な新展開を、2025年内のどこかで発表できるだろうと考えています。今後も新情報は公式Xアカウントでお伝えしますので、フォローと通知ON、よろしくお願いします!

佐々木
 たぶんこの記事が公開されるくらいのタイミングで、僕たちは札幌で合宿をしていると思います(笑)。これまでとはまた違った展開も考えていますので、引き続きご期待ください。

――今後の展開とは別に、この先ポケミクというプロジェクトをどんなものにしたいか、想いをお聞かせください。

的場
 ポケモンたちも初音ミクさんたちも、誰もが親しみやすい、隣りにいてほしくなる存在としてこの先ずっといてほしいですし、そのために、いつでもどこでも入口になり得るプロジェクトとしてありたいと思っています。

 10年後や20年後、あるいはそのもっと先にたまたまどこかでポケミクの楽曲・MVやイラストを見つけて、そこで初めて知ってくれる人がいてもいいのかな……なんて思いますね。これからも新しい領域には挑戦し続けますが、初心は忘れることなく進んでいきたいと思います。

佐々木
 ふつうならあり得ないと思うようなことでも、やってみたら案外ハマることがあるというのが、このプロジェクト全体で起こっていると思っています。これも冒険なのだと。今回の重音テトコラボがまさにそうだったように、"いたずらごころ"を忘れずに持ち続けていたいなと思います。

――それでは最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

佐々木
 Kanariaさんの『チャンピオン』を聴いたとき、思わずハッとしました。Eveさんの『Glorious Day』やsasakure.UKさんの『アフターエポックス』であれだけ大団円のような雰囲気になっていたはずなのに、起承転結のどれにも当てはまらないようなものを持ってきて、この世界に決められたストーリーなんてないと言われたような気がしました。Kanariaさんの真意はわかりませんが、僕は勝手ながらそう受け取ったんです。

 まだまだクリエイターさんごとに違ったスタイルや切り口がたくさんあるんだということを見せていただき、改めてポケミクはこれからもずっと続けていくべきだと強く思ったんです。

 企画が始まった当初は見えていなかったけど、時間が経ってポケモンやポケミク自身への理解が深まったことで見えるようになったものがあります。もっともっとポケミクを続けていく中で、どんな風景が見えるようになっていくのか楽しみです。皆さんもぜひいっしょのポケミクを楽しみ続けていただけるとうれしいです。

的場
 ファンの皆さん、クリエイターの皆さん、そしてポケモンたち、初音ミクさんたちに何度でも、いちばんお伝えしたいことは、ここまでいっしょにポケミクを作ってきてくれてありがとうございます! という気持ちです。これからもあの手この手で、関わるすべてのいきものと存在たちに楽しんでいただけることをやり続けようと思っています。

 この世界の誰もまだ知らないような、ポケモンたちと初音ミクさんたちの魅力をクリエイターの皆さんが描いてくださるのが、ポケミクのおもしろさのひとつです。そして、それを楽しんでくださったファンの皆さんの感想やリアクションも含めてポケミクです。これからもいっしょに、初音ミクさんとポケモンたちの、未来への冒険をいっしょに楽しんでください。ここからも、よろしくお願いします!!!!!! 
新展開、お楽しみに!!!!!!

【ポケミクCD】ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE 18 Types/Songs Collection

 『ボルテッカー』から『チャンピオン』までのRemixを含む21曲を収録した、ポケミクのスペシャルなCDアルバムが全国のCDショップほかにて発売中!
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