サイレントヒル山岡晃氏、クロックタワー河野一二三氏らも登場! 古今東西のホラーゲームクリエイターがその真髄を語る海外ドキュメンタリー『TerrorBytes』

byミル☆吉村

サイレントヒル山岡晃氏、クロックタワー河野一二三氏らも登場! 古今東西のホラーゲームクリエイターがその真髄を語る海外ドキュメンタリー『TerrorBytes』
 ホラーゲームの歴史を扱った海外制作の長編ドキュメンタリー『TerrorBytes: The Evolution of Horror Gaming』が、2025年4月の正式公開に向けて公式サイトで予約を受付中だ。コンポーザーの山岡晃氏、ゲームデザイナーの河野一二三氏・木村祥朗氏・SWERY氏ら日本のホラーゲームクリエイターも登場しており、全体は5エピソードで構成。ただし言語は英語のみとなっている。

 さて本作、予約をするとエピソード1と2の粗編集版をダウンロードできる。今回そちらを個人的に見たので、実際どんなものか内容をご紹介しよう。なおデジタル版では英語音声のみで、英語が母語ではなかったり聞き取りづらい人のコメントだけに英語字幕がついているという形式。ブルーレイ盤には全編に英語字幕がつくようだ。
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全5エピソードでホラーゲームの真髄に迫る

 各エピソードはそれぞれ“サバイバルホラー”、”原作付きゲーム”、“実写/インタラクティブムービー形式のホラーゲーム”、“インディーホラーゲーム”、“物議をかもしたホラーゲーム”と異なるテーマを扱っており、ひとつのエピソードがゆうに1時間を超えるという大ボリューム。

 たとえばサバイバルホラーについてのエピソード1では1時間半にわたって、『
バイオハザード』や『サイレントヒル』や『クロックタワー』はもちろん、その源流にある『スウィートホーム』や『アローン・イン・ザ・ダーク』、さらにはそれより前の“恐怖の対象が追ってくる要素のあるゲーム”などまで遡って「サバイバルホラーとは何なのか」を掘り下げていく。
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エピソード1・2の主な登場作品はこんな感じ。

古今東西のホラーゲームクリエイターたちが語る、名作から受けた影響や衝撃

 ここで面白いのが、『サイレントヒル』に参加していた山岡晃氏や『クロックタワー』の河野一二三氏らのクラシックな作品のクリエイターに取材して当時のことを聞くだけでなく、むしろ自作以外についての印象やそこから受けた影響などを聞くことにかなり時間を費やしていること。

 山岡氏や『
エターナルダークネス 招かれた13人』のデニス・ダイアック氏が『バイオハザード』の衝撃を語り、河野氏は『スウィートホーム』や『アローン・イン・ザ・ダーク』をどう受け止めたかを明かす……といった塩梅だ。

 『バイオハザード』の生みの親である三上真司氏に取材できていないのは若干片手落ちと言えるかもしれないが、それでも同業のゲーム開発者ならではの技術的・演出論的な視点による分析があったり、当時のクリエイターの相互的な影響が感じ取れたり、後世の『
Dead by Daylight』や最近の欧米のインディーホラーのクリエイターたちがどんな衝撃を受け、いかに解釈して自分たちの糧としていったかなどが語られていて抜群に面白いのだ。
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河野氏(左)は『スウィートホーム』について、単にホラーテーマなだけではない初めての“ピュアホラー”ゲームだと考えているそう。ダイアック氏(右)は特に『バイオハザード2』のタイラントに大きな衝撃を受け、ゲーム表現の可能性を感じたのだという。
 ちなみに『サイレントヒル』シリーズでは山岡氏に加えて、『サイレントヒル2』の英訳やボイス収録に関わったジェレミー・ブラウスティン氏、さらには海外開発作品の『サイレントヒル ホームカミング』、『シャッタードメモリーズ』、『ダウンプア』などに参加したスタッフたちが当時を振り返っており、なかなかディープ。

 メインで扱われる作品はほどよく時間が経過していることもあって、駄目だったり微妙だったりしたことも率直に語られていたりするのも楽しい部分だ。『サイレントヒル』シリーズの海外作品でそれぞれがどう取り組んでいたかは作品の評価とは別に一聴に値するし、ホラー映像作品の版権モノの回では、業界悲話としてありがちなゲーム開発に理解がない関係者が介入することによっておきるズンドコなエピソードが披露されている。
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『Her Story』『Immortality』などで知られるゲームデザイナーのサム・バーロウ氏は、『サイレントヒル シャッタードメモリーズ』のリードデザイナー兼ライターでもあった。

ジョン・カーペンター監督などの大物も

 全5エピソードでは50人以上が登場予定となっており、その中にはホラー映画の巨匠であるジョン・カーペンター監督の姿も。これはご本人が熱心なゲーマーというだけでなく、先日リマスター版が発売されたホラーゲーム『The Thing』の原作映画(『遊星からの物体X』)の監督であることに加えて、ゲーム中にもカメオ出演しているという縁から。

 そのほかのゲストとしては、『Dead by Daylight』のくだりで同作とコラボを行ったバンド、スリップノットのボーカルであるコリィ・テイラー氏も出演している。
 さらに『Doom』や『Quake』でFPSジャンルを確立したジョン・ロメロ氏、アドベンチャーゲームの超大御所であり実写ホラー『ファンタズム』も手掛けているケン&ロバータ・ウィリアムズ夫妻、『アローン・イン・ザ・ダーク』のシナリオ担当であるユベール・シャルド氏ら、海外ゲーム業界のレジェンドの姿も。

 また冒頭で触れたように、日本のクリエイターでは山岡氏と河野氏に加えてSWERY氏(『
レッドシーズプロファイル』)と木村祥朗氏(『RULE of ROSE』)も参戦。自作の解説に加えてそれぞれのホラー観などを語っている。
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左: ゲーム版『The Thing』について振り返るジョン・カーペンター監督、右: 『Doom』でのホラー映画からのインスピレーションについて語るジョン・ロメロ氏
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左: SWERY氏の『レッドシーズプロファイル』は“正式には版権モノではないが別の作品に多大な影響を受けているゲーム”の例として登場する、右: 『RULE of ROSE』の心理的テーマについて語る木村祥朗氏。ちなみにエピソード1は木村氏の発言で幕を開ける
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左: 「いつかフレディと戦いたいな、ってバンドはじめるわけじゃないからよ」とコラボが導いた運命について語るコリィ・テイラー氏、右: アビー・ハワード氏いわく、それぞれの関わり合いのなかでしか他人を知ることができないというテーマがインディーホラー『Slay the Princess』の核なんだとか
 多少の英語のリスニング能力が必要というハードルの高さはあるのだが、エピソード1・2を観た感想としては内容にはかなり満足。個人的に好物の実写ホラーアドベンチャーが出てくるエピソード3、『Slay the Princess』などが登場するインディー特集のエピソード4、そして木村氏の『RULE of ROSE』などが登場するエピソード5も非常に楽しみだ。なお参考までに、デジタル版は27.99ドル、ブルーレイ版は79.99ドル+送料で公式サイトから購入できる。
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集計期間: 2025年05月01日07時〜2025年05月01日08時