
本作は高い評価を得ているオープンワールドゲーム『キングダムカム・デリバランス』の続編で、15世紀のボヘミアをリアルに描いた、中世ヨーロッパの世界を追体験できるのが見どころだ。
史実の出来事をベースにしつつ、主人公ヘンリーが政治的争いや戦争に引き込まれていく物語や、豊富なサイドストーリー、中世の世界に没頭できる要素が満載で、100時間以上遊べる大ボリュームになっている。
本記事では、そんな『キングダムカム・デリバランス II』のプレイレビューをお届けしていこう。
どん底から始まるヘンリーの物語
いちおう途中で前作のストーリーがわかる会話などは挟まるのだが、前作をプレイしていたほうがより楽しめるのは間違いない。本作から興味を持った人は前作をプレイするか、ストーリーだけでも知っておくことをおすすめしたい。
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ストーリーのネタバレは避けつつ簡単に紹介すると、冒頭は戦友とも呼べる間柄のカポンとともに、陽気に旅をすることになる。カポンはやや高慢なところはあるが、貴族ながら平民とも仲を深められる、憎めないキャラクターだ。
ヘンリーとカポンの陽気な掛け合いが楽しく、ずっとふたりでバカ騒ぎをしてほしいと思えるほど最初は穏やかな雰囲気で進行していく。
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前作を知っていると、ヘンリーの成長を感じられてエモーショナルな気分に浸れるのもポイントだ。最初はろくに剣も振れなかったヘンリーが、野営中にカポンに剣術指南をする場面などはニヤニヤしてしまった。人の家に糞を投げつけていたころのヘンリーはもういない。
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ある程度戦闘技術や知識もあり、頼もしい主人公になってくれたヘンリーだが、かといって今回の旅が簡単になるわけではなく、またいちからのスタートになる。
何があったかのネタバレは避けるが、旅は順調ではなく、一度すべてを失うことになってしまう。装備も馬もすべて失い、パンツ一丁になってから本格的なオープンワールドの旅が始まる。
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紆余曲折あり予定通りに出会えなかったフォン・ベルゴーに面会するために、貴族の結婚式に参加するのが物語の流れだ。
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物語を進めていくと多くの軍隊が激突する戦争や、攻城戦にも参加することになり、よりストーリーが深みを増していく。前作を知っているとより楽しめるのは間違いないが、本作から始めても十分な満足感は得られるだろう。
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自分が物語に介入していく確かな手応え
進行の自由度も高く、序盤の目標となる結婚式への参加も複数ルートが用意されている。鍛冶屋で働き、結婚式で使う剣を作り信頼を得るか、それとも怪しい稼業をしている粉屋の仕事を手伝い紹介してもらうかはプレイヤー次第だ。
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メインの進行は鍛冶屋か粉屋の依頼をこなしていくことになるが、その道中ではさまざまなサイドストーリーと出会うことになる。このサイドストーリーは単純に報酬を得るおつかいクエストではなく、しっかりと物語になっているのが魅力。
また、プレイヤーの選択次第で展開も分岐していくので、自分の選んだ選択がどのような結末に帰結するかを見届けてほしい。
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一例を挙げると、よく訪れる町の酒場では、住民とクマン人(傭兵)が喧嘩をする場面に遭遇することになる。ここでは話術で穏便に済ませるか、喧嘩でどちらかに加担するかをプレイヤー自身が選んでいく。
筆者の場合、本当は喧嘩を止めたかったのだが、説得に失敗したのでクマン人に協力して住民たちとの殴り合いに発展した。
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クマン人に協力したことである程度信頼を得ると、彼らの住処に案内されて、いっしょに酒を酌み交わす仲になる。そこで飲みすぎて泥酔し、とんでもない展開に発展したりもするのがおもしろいところだ。
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こういったサイドストーリーが各所で発生するため、旅をするほどに知り合いが増え、多くの人と関わりを持っていくことになる。また、サイドストーリーは終わってもそこで関係が途切れることはなく、後々べつのストーリーで再会できるのも本作の魅力。
仲よくなればその後も協力関係ができるし、逆に敵対する結果で終わると顔を合わせる度に悪態をつかれることもある。こういったイベントの多くは、メインストーリーにも影響を与えていく。
ストーリーで参加する結婚式には旅路で出会える多くのキャラクターが参加しており、ここで再会を喜んだり、新たなクエストに派生することもある。逆に仲が悪くなった人と再会して、ちょっと決まずい思いをすることも……。
プレイヤーが寄り道をして縁を結んでいるほどに、メインストーリーも深みを増す仕掛けになっているので、プレイ時は焦って進めずに寄り道も楽しんでほしい。
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クエストを進めるための単純な舞台装置ではなく、どのキャラクターも『キングダムカム・デリバランス II』という世界の中で生きていると実感できるのは、本作の大きな魅力と言える。
NPCが町中で喧嘩を始めて気絶していたりと突発的なイベントも発生するので、旅をするたびに新たな出会いや縁が広がっていく感覚を味わえた。
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過酷だが美しい中世で生きていく特別な体験
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風景や建物はもちろんだが、NPCの着ている服や食事など、徹底的なこだわりを感じさせる細部の描写も見どころだ。どこを冒険していても置いてある道具や建物に違和感がなく、「これが中世ヨーロッパなんだ」という説得力がある。こういった細かな描写への違和感のなさは、中世ヨーロッパを冒険している没入感をより高めてくれた。
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また、没入感を高める要素はプレイヤーの操作にも盛り込まれており、これが本作独特の世界観、ゲーム体験を演出してくれる。前作同様、弓やクロスボウを撃つ際は照準がなく、狙いが定まらないのもそのひとつだ。
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ほかにも薬草を摘む、食事の摂取、身体を洗うといった動作は、すべてモーション付きで演出される。ボタンを押せば即完了とならないため、人によってはテンポが悪いと感じるかもしれない。
だが、こういった細かな動作のひとつずつが世界への没入を高めてくれるのも確かだ。本作は何もかもが簡単ではない、不便も含めて楽しむリアルな手触りが魅力なので、ハマる人はトコトン好きになれるはずだ。
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ほかにも、錬金術や研磨などじっくり遊ぶ要素も豊富に用意されている。錬金術はレシピを見ながら薬草をすりつぶして煮込むといった作業が必要になり、研磨は武器をじっくりと研いでいく。
どちらも丁寧に仕上げていくため完成まで1分程度かかるのだが、くり返すと手慣れてきて一連の動作をサクッと終えられるようになるので、成長を実感できる。
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本作から登場した鍛冶も、丁寧に武器を仕上げていくのが楽しいコンテンツのひとつだ。鍛冶は素材を炉に入れて熱を入れ、均等に叩いて成型、最後に焼成までやることになる。
金槌を動かして叩く位置を調整したり、リズムよく叩くなどやることが多く最初は混乱するのだが、慣れると自分が鍛冶職人になった気分でテンポよく武器を作れるようになっていった。
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簡単なミニゲームではなく、本当に武器を作っていく感覚を味わえるため、鍛冶職人として生計を立てていくのもプレイスタイルのひとつになりそうだ。
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町では平和な要素が多いが、一歩外に出れば当然戦闘が発生することもある。馬に乗っていれば大抵の危機は回避できるが、山道などを歩いていると盗賊に襲われることも茶飯事だ。
戦闘は前作から引き続き、動きの読み合いが必要になる独特なスタイル。左右、上、下と攻撃する方向をスティックで決めながら攻撃を仕掛けるのだが、動きが読まれているとほとんどはガードされてしまう。
敵が武器を構えていない方向を選んで即座に攻撃を仕掛けたり、カウンター狙いで攻撃する、一回ずつの戦闘を丁寧にこなしていくシステムだ。
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フレーム回避などが求められるアクションではなく、作った装備の力を活かしたり覚えたスキルを駆使しながら戦っていくRPGな側面も大きい。戦闘システムはマスターストライクというカウンター技を使うアクション面の楽しさと、成長を感じるRPGな要素のいいとこどりな印象だ。
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ストーリーの進めかたについても、装備やヘンリーのレベルが影響する部分が多く存在する。本作には魅力や話術といったステータスや、ヘンリーの評判が上下するシステムがあり、これによって選択の結果が変化していく。
ヘンリーが話術に長け、魅力的な姿をしていれば平和的な解決をできることもあるが、口下手なら戦闘に発展することもあるのだ。これによってストーリーの展開が分岐していくこともあるため、見た目にも気を使いたい。
服も時間経過で汚れていくため、身体を洗わずにいると避けられ、まともに会話すらしてもらえないこともある。清潔感、着ている服の品性、トーク力が求められるのは中世も同じのようだ。
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本作はいつでもセーブできるわけではなく、プレイヤーの選択に重みがあるのも魅力だ。もちろんストーリーが一定の進行をしたり、寝床で眠ればセーブはできるのだが、「戦闘前にセーブしておこう」と気軽にはできない。
突発的なセーブには、救世主のシュナップスというアイテムが必要になる。このアイテムは錬金術でも作れるし、商人からも購入できるのだが、セーブが重要になるのは間違いない。
安易にセーブ&ロードをするのではなく、失敗したら失敗後の結果を受け止めることも本作の楽しみかただと感じた。とくにストーリーは行動によって結末も変化するので、自分が失敗した結果の結末を受け止めるのもまた一興だ。
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いつでもやり直しができないぶん、悔しい思いをすることもあるのだが、それも含めて中世の旅を楽しむのが本作の醍醐味と言える。盗賊に襲われた村人を助けたらなぜか悪態をつかれたり、出会った人に騙されたりもするのだが、そういったイベントもすべて自分の冒険の1ページだ。
ぜひ自分ですべてのイベントを体験してほしいが、ひとつだけ思い出を語ると筆者は最低な奴にお金を奪われるイベントに遭遇した。
旅の途中に出会ったのは、「息子が生まれるんだ」と心底うれしそうに語り、いっしょにお祝いしてくれと陽気に語る男。これはぜひお祝いせねばとお酒を飲んだ瞬間、意識が吹っ飛んで2時間ほど眠りについていた。
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目が覚めると、男はいなくなりお金が奪われるというまさかの事態に。シンプルに最低すぎる奴で、つぎ出会ったら必ず復讐しようと誓った。
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というような最低な思いをすることもあるのだが、それでも出会う人たちとの多くのイベントが楽しく、中世の旅を満喫できるのが『キングダムカム・デリバランス II』というゲームだ。
ストーリーを追いかけるだけでも楽しいが、遊べば遊ぶほど味わい深くなり、最高の冒険が待ち受けているので、興味を持った人はぜひともプレイしてみてほしい。
『キングダムカム・デリバランス II』商品情報
- 発売日:2025年2月5日発売
- 対応プラットフォーム:プレイステーション5、Xbox Series X|S、PC(Steam)
- 発売元:PLAION
- 開発元:Warhorse Studios
- 価格:各8091円[税込]
- ジャンル:アクション・RPG
- 対象年齢:CERO 18歳以上のみ対象
- 備考:Xbox Series X|S版とPC版はダウンロード専売、ダウンロード版は各7590円[税込]、PC版は8090円[税込]、ゴールドエディション(ダウンロード版)のプレイステーション5版・
- Xbox Series X|S版は各9790円[税込]、PC版は10790円[税込]