ファミ通.comの編集者&ライターがおすすめゲームを語る。今回NeverAwakeManが紹介するのは、Strange Scaffold開発によるFPS『I Am Your Beast 』だ。 NeverAwakeManのおすすめゲーム I Am Your Beast プラットフォーム: PC(Steam) 発売日:2024年9月10日 発売元:Strange Scaffold、Frosty Pop 開発元:Strange Scaffold 価格:2300円[税込] 【こういう人におすすめ】
『ジョン・ウィック』系の映画が好き トライアンドエラーで攻略したい ハードボイルドな物語を見たい 復讐がしたい。 ナメてるヤツらに一発かましてやりたい。 暴力的な連中を、もっとえげつない暴力でブッとばしてやりたい。 ああ、わかっている。もちろん、現実世界ではそんなこと許されない。復讐はよくないし、暴力に暴力で立ち向かうなんてもってのほかだ。けれど……それはそれとして…… カッコいい復讐がしたい! そんなフラストレーションを抱えたあなたに朗報だ。これから紹介する『I Am Your Beast』 をプレイすれば、きっとその欲望は満たされる。必要なのはウォレットに入れる少々のお金と、何度でも喰らいつく獣のような意志力だ。
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復讐するは彼にあり 『I Am Your Beast』 はスタイリッシュなタイポグラフィで語られるストーリーがカッコいいのだけれど、残念なことにまだ日本語化されていない。なので、先にあらすじを説明しておこう。
主人公の名はアルフォンス・ハーディング。昔はCOIという機関で働く凄腕エージェントだったが、いまは山で隠居生活を送り、日記を書いて過ごすハードボイルドな男だ。ある日、ハーディングが鳥を追いかけながらランニングを楽しんでいると、山に銃声が響きわたった。COIの部隊が山に侵入し、あろうことか、その鳥を撃ち殺したのだ。美しく、無垢な鳥を。 ハーディングはキレた。
彼は鳥を撃った兵士をすみやかに始末し、その仲間も返り討ちにした。奪った無線機からは懐かしい声が流れてくる。かつてハーディングの人間性を壊して"獣"に仕立て上げた、COI長官の声だ。長官は落ち着き払って言う。 「君にしかできない仕事がある。これが最後の仕事だ」 そんな言葉、クソ喰らえだ。なぜかって? 最後の仕事はすでに5回もやってるからだ。 それでもまだ俺を引っ張り出そうとするなら、やってみろ。ナメたケダモノどもを送り込むなら、それを狩る獣になってやる。
借りがあるのはCOIだろう?
こうして、ハーディングの復讐劇は開幕する。
Harder, Better, Faster, Stronger コミックブック風のビビッドな色使いで描かれる 『I Am Your Beast』 で、プレイヤーがやることはそう複雑ではない。フィールドを駆け抜け、敵が立ちふさがれば容赦なく殺し、逃走用ハッチにたどり着けば基本的にステージクリアーだ。そのクリアータイムによって、DからSまでランク付けされる。
オールSランクは壮観
とにかく速さがモノをいう本作において、リロードなどというモタモタしたことはやっていられないし、そんな機能もない。弾切れになった銃は敵めがけてブン投げてやろう。銃をぶつけられた敵はスッ転んで、自分の持っている武器を取り落とす。それを拾ってやれば実質的にリロード完了というわけだ。そして、それをくり返す。わかりやすい話だろう?
弾丸がなければ銃を投げればいいじゃない。
速さと同じくらい重要なのが、 どう殺すか だ。 というのも、 『I Am Your Beast』 には、キルの数とその内容によりクリアータイムが差し引かれていくというシステムがあるからだ。たとえば、ごく一般的なキルであれば0.3秒ずつ差し引かれるところが、ヘッドショットなら0.5秒、爆発キルなら1秒ずつ差し引かれていくという具合に。Sランクを手に入れるためには、 より速く、より多く、より美しくキルしなければならない。 おあつらえ向きに、どのステージにも赤ドラム缶やハチの巣やトラバサミといった不穏なアイテムがゴロゴロと存在している。高ランクを目指してトライアンドエラーをくり返すうちにこうしたアイテムの位置を身体で覚えられるようになり、気づけば最速最凶の攻略ルートが構築されるというわけだ。
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速さがモノをいうだのどう殺すかが重要だのとエラそうに書きはしたけれど、ランクによらずクリアさえすればストーリーは進められるため、 『I Am Your Beast』 はハードコアな雰囲気に反してとても遊びやすいFPSとなっている。カジュアルかつスタイリッシュに遊べるよう、ゲーム側がいい感じに補正してくれるのもありがたい点だ。全力疾走していても銃弾はクロスヘアの中心へとまっすぐ飛んでくれるし、 敵の全身が頭なのかと勘違いしてしまう くらいヘッドショットがよく当たる。
とっつきやすく、クリアーするだけなら簡単で、だが極めるのは難しい。このジレンマとも思えるような難易度調整を、 『I Am Your Beast』 は見事に成し遂げている。
スキマ時間にサクッと暴力 本作はアクションの手触りも最高にいい。敵の頭を撃ち抜き、ナイフを突き刺し、ショットガンで吹き飛ばすたびに、どっしりしたヒットストップと「ビシッ」という特徴的な効果音、そしてめちゃくちゃにデカい✕印のキルマーカーが確かな満足感を与えてくれる。この「ビシッ」という効果音が連続でキルをキメると少しずつ高くなっていくのも爽快で、これはもはや リズミカル暴力アクションゲーム といっても過言ではないだろう。
チャレンジモードも含めるとおよそ40近く存在するステージはどれも美しくデザインされていて、高低差を活かした立体的なプレイが楽しめる。暴走機関車のごとく一直線に突き進むようなステージもあれば、アップダウンしながら大きく一周し、スタート地点に帰ってくるようなステージもある。どのステージで遊んでも、ハリウッド映画さながらのスリリングなアクションが楽しめるはずだ。 かといってダラダラと長くもならず、ほとんどのステージは1、2分程度でクリアーできるという簡潔さも魅力的だ。なかにはわずか10秒足らずでクリアーできるステージすらあるので、本作は スキマ時間に暴力が欲しくなったとき にちょうどいいゲームと言える。
こういうスピードラン系のゲームはタイム更新ばかりで単調になりがちと思われるかもしれないが、 『I Am Your Beast』 はそこもぬかりない。 なぜなら、「爆発キルを◯回してクリアー」とか「ヘッドショットのみでクリアー」といったボーナス目標が各ステージにふたつずつ設定されているからだ。したがって、ひとつのステージで少なくとも4回は楽しめる計算になる。まずはふつうにクリアーし、それからボーナス目標をふたつクリアー。最後に、Sランクを手に入れるためにトライアンドエラーをくり返す、という具合だ。
届きそうで届かない、あと0.5秒の壁
いや、すぐにSランクを取れたら最短3回で終わる計算になるじゃないかって? やってみればいい、きっと無理だから。
“『ジョン・ウィック』のようなアクション”を実現した傑作 この10年ほどのあいだ、“ 『ジョン・ウィック』 のようなアクション”をやろうとしたゲームは数多く作られてきた。すなわち、銃撃戦と近接戦闘を両立しようとしたゲームだ。しかし残念なことに、 そのほとんどが失敗してきた と言わざるをえない。なにしろ、 『ジョン・ウィック』 の公式ゲームですらSteamで“賛否両論”止まりなのだから。
“ 『ジョン・ウィック』 のような”ゲームが失敗しがちな理由はいろいろある。たとえば、銃撃と近接攻撃のバランスが悪いため、“遠くからチマチマ撃ちあう”か“至近距離でひたすら殴りあう”かのいずれかにゲームプレイが偏ってしまうケース。どちらに偏ってしまっても、 『ジョン・ウィック』 らしいメリハリあるアクションからは遠ざかってしまう。 あるいは、プレイヤーにジョン・ウィックばりの高いスキルを求めてしまったケース。当然ながら ほとんどのプレイヤーはジョン・ウィックではない ので、結果として異様に難しかったり変に煩雑なゲームを遊ぶハメになる。 もしくは、そもそもアクションのキレやリズムが悪いせいで、遊んでいてあまり気持ちよくなかったり見栄えがよくないケース。先に述べた 『ジョン・ウィック』 公式ゲームは、どちらかと言えばこれにあたる。
そんな数多の屍を乗り越えて、 『I Am Your Beast』 は現れた。ランクによる時間制限と明確なゴールを設け、さらにリロードを省くことで、本作はプレイヤーがあえて敵に近づいて戦おうとするための動機づけとそれをくり返すプレイループを実現した。大小さまざまな工夫により、完成度の高いスピードランFPSと“ 『ジョン・ウィック』 のようなアクション”が美しく両立されたのだ。 これがどれだけ成功しているかは、1000件以上寄せられたSteamレビューのうち 99%がポジティブ というすさまじい好評ぶりからも明らかだろう。
モダンなアクションゲームやFPSに慣れ親しんだプレイヤーであるほど、本作に惚れ込むポイントはきっと多くなるはずだ。リトライの果てに得たSランクに無上の喜びを感じるハードコアゲーマーのあなたにこそ、この逸品をぜひ遊んでほしい。