『ポケポケ』バトルはスマホにあわせてシンプルな戦略性に。日常がちょっとだけ楽しくなるアプリとして、長期的な運営を目指す。ポケモン開発者にインタビュー

『ポケポケ』バトルはスマホにあわせてシンプルな戦略性に。日常がちょっとだけ楽しくなるアプリとして、長期的な運営を目指す。ポケモン開発者にインタビュー
 2024年10月30日より正式サービスがスタートしたスマートフォン向けポケモンカードゲーム『Pokémon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)』

 1日2回まで無料で拡張パックを開封できることや、まるでカードイラストの世界に入り込んだかのような体験が楽しめるイマーシブカードが本作の目玉となっており、とくにコレクション要素にフォーカスされたアプリだ。

 従来のポケモンカードゲーム(ポケカ)の圧倒的な人気も影響してかリリース前から大きな話題となっており、2024年12月12日には、早くも全世界で6000万ダウンロードを突破するほどの盛り上がりを見せている。

 さらに、リリースからわずか2週間後の2024年11月14日には新たな拡張パックを年内に追加予定であることが発表され、2025年1月中を目途に新機能“トレード”も実装予定であることなどが同時に明かされた。
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 リリース直後からすさまじい勢いに乗っている『ポケポケ』は、そもそもどんな経緯で開発されたのか。株式会社ポケモンと株式会社クリーチャーズ、株式会社ディー・エヌ・エーの3社が共同開発している本作だが、リリースにいたるまでの道のり、開発に懸けた想いやこだわり、今後の展望など、気になるアレコレを株式会社ポケモンの塙諒介氏に訊いた。

塙 諒介はなわ りょうすけ

株式会社ポケモン シニアディレクター

デジタルだが“モノ感”を追求したポケモンカード。特徴を持ったパックにはこだわりが詰まっている

――まずは改めて本作の開発の経緯からお聞かせください。

 より多くの人にポケモンカードに触れてもらうため、スマートフォン向けのアプリを開発することが決まりました。『ポケポケ』においてバトルではなくコレクションをメインに楽しんでもらうことをコンセプトとしているのも、同じ理由からです。

――長い期間をかけて、満を持してのリリースとなりました。かなり話題になっている印象はありますが、実際の反響はいかがですか?

 本当に多くの方に楽しんでいただけていてうれしいばかりです。純粋にコレクションを楽しんでいただいている方はもちろん、バトルに挑戦してくれている方も想像していたより多くいらっしゃる印象です。また、ユーザーの皆さんがいろいろな情報を発信して盛り上げていただいていて、とてもうれしく思っています。

――“ある特徴を持ったパックからは高レアリティのカードが出やすい”などですよね。絶妙に真偽不明なところが、古きよき時代の裏技や噂話に近い印象を受けます。実際のところ、影響はあるのでしょうか?

 すみません、その質問にはお答えできませんが、先述の通り、演出としてとてもこだわっている部分であることは間違いありません。本作の開発においては、デジタルのアプリでありながらカードのモノ感を表現することをすごく大事にしているのです。パックを開封するときの手触りやわくわく感、実際に店頭でどのパックにしようか選んでいるかのような体験を楽しんでもらいたいと思って、開発には力を入れています。

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――パックを裏返しにするとカードも裏向きで出てきたり、カードを好きな方向に傾けられたり。バトル時においても手触りに対するこだわりの強さはよく伝わってきます。現時点でまだあまり気付かれていないような細かなこだわりはありますか?
 
 気づいていただいている方もいらっしゃるかもしれませんが、パックから手に入れたカードが、ライブラリに入っていくときに1枚ずつちょっとした振動があります。これは機種によって対応していないものもあるのですが、少しずつコレクションが増えていくことをうれしいと感じてもらえたら幸いです。

――カードを手に入れたとき、必ず累計の獲得数が表示されますよね。あの部分もきっとこだわられて作っているのだなと感じました。

 仰るとおり、同じように自分のカードが増えていく楽しみを感じてもらいたいという思いで入っている演出です。もしかすると、中には毎度表示されるのが億劫だと感じられてしまう方もいるかもしれない。しかし、1枚1枚のカードを大切に感じていただけるのではないかと考え、最終的に現在の演出となっています。

 カードの獲得枚数が何かポケモンに縁のある数字になったときには、ポケモンのTipsも見られるようになっていますので、コレクションの充実とともに、楽しんで頂ければと考えています。

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――ちなみに、全部でいくつくらい用意されているのですか?
 
 数は内緒です(笑)。つぎの数字は何なのか、予想しながら楽しんでいただければと思います。

 それからもうひとつ、ライブラリの見せかたも力を注いだポイントです。2本の指でピンチイン操作をすると、カード1枚1枚のサイズは小さくなりますが画面内に表示されるカードの数がどんどん増えていきます。言ってしまえばそれだけではあるのですが、それぞれのカードに思い入れができてくると、この一覧を眺めているだけでも愛おしく感じていただけるようになるはずだと期待しています。

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――もっと多くの人にポケモンカードを届けたいという願いが企画の根底にあるとのことでしたが、具体的にどのような層をターゲットとして想定していたのでしょうか?
 
 これは本作に限らずポケモン関連タイトルに共通して言えることですが、特定のユーザー層のみをターゲットにすることはありません。すべての方に楽しんでもらえることを前提に開発をしています。ただ、その中でも強く意識していたのは、以前はポケモンカードに触れていたけど卒業してしまった方や、ポケモンカードに興味はあるけど手に取るきっかけがなかったというような方たちです。昔懐かしいイラストのカードが複数収録されているのも、かつて遊んでくださっていた方々に喜んでもらえるといいなと思ったためです。

――懐かしいカードがある一方で、まったく新しいカードもたくさんあります。中でもひときわ目を引くのは、やはり本作オリジナルのイマーシブカードだと思います。イマーシブカードへのこだわりについても教えてください。

 デジタルのポケモンカードとして魅力をさらに引き出す表現とは何か。ポケモンカードの開発社であるクリーチャーズ様が、それを徹底して突き詰めた結果生み出されたのがイマーシブカードです。

 昨今の技術では、やろうと思えばフル3Dや映像にすることだってできたと思います。ただ、あくまでも我々の根底にあるものは慣れ親しんだ紙の“あのポケモンカード”です。そこから逸脱することなく、デジタルの表現も最大限活かすにはどうすればいいのか。この問いに対する我々なりの答えが、まるでカードイラストの中に入り込んだかのようなイマーシブカードの表現なのです。

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ピカチュウexのイマ―シブカード演出。

“ポケモンカードらしさ”はそのままに、スマートフォンでのデジタル表現で魅力をさらに引き出す

――本作の肝である1日2パックの無料開封ですが、毎日コツコツ開封すればひと月に約60パックにもなります。紙のポケモンカードでいえば毎月2ボックス相当が無料でもらえるようなものと考えると、結構な量だと感じます。このシステムを用意した理由を教えてください。

 先ほども申し上げた通り、本作ではポケモンカードをより多くの方に楽しんでいただきたいと考えていました。ではポケモンカードのいちばん分かりやすい楽しみかたは何か。それはパックを開けてカードを集め、コレクションすることだろうと考えました。この楽しみをたくさんの人に体験してもらいたかったので、無料でのパック開封を用意しています。

――カードを集めるということで言うと、ほかのプレイヤーの開封したパックからカードを1枚おすそ分けしてもらえる“ゲットチャレンジ”もユニークな機能ですよね。

 ゲットチャレンジには、ただひとりでカードを集めるだけでなくユーザーさんどうしでのコミュニケーションも楽しんでもらいたいという願いを込めています。

――ゲットチャレンジをさせてもらった相手には「ありがとう!」を贈りたくなるのもいいシステムですよね。

 自分自身もいちプレイヤーとして『ポケポケ』を楽しんでいますが、想定していた以上に「ありがとう!」と言いたくなるんですよね(笑)。運よくポケモンexのカードを手に入れられたときや、貴重なイラスト違いのカードが当たったときなどはとくに。

――よくわかります。それから、海外の方とフレンドになるとゲットチャレンジでお互いの言語で書かれたカードを手に入れられるのもいいですよね。バトルで海外の方と当たるとフレンド申請をもらいやすい気がしています。

 各国版のカードを集められているコレクターの方はこれまでにもいらっしゃいましたし、『ポケポケ』でも同じ体験が楽しめるようにと考えての機能です。お気に入りのカードを各言語版集めてコレクションファイルに入れれば、きっとたくさん“いいね”がもらえるのではないかなと思います。

 もちろんすべてのユーザーさんにそこまでコアな楽しみかたをしてほしいとは思ってはいませんが、興味のある方はそれこそバトルで海外の方とマッチングした際にはフレンド申請を送ってみるところから始めてみてもらえるとうれしいです。

――ここからはバトルについても聞かせてください。『ポケポケ』のバトルは従来のポケモンカードの基本的なルールは踏襲されているものの、変更点も多くあります。バトルをデザインするにあたってもっとも意識したことは何ですか?

 スマートフォンへの最適化です。スキマ時間に気軽に遊べるようにというのはとくに強く意識していて、デッキの枚数が少なくなっていたり勝利条件が3ポイント先取になっていたりするのはそうした理由からです。

――最適化と言葉にするのは簡単ですが、一歩間違えれば薄味になってしまうリスクも確実にあると思います。実際、リリース前はそうした懸念の声も見られました。しかしふたを開けてみれば、多くのユーザーが熱中しています。その理由はどこにあると思われますか。

 ポケモンカードの開発社であるクリーチャーズ様には、ポケモンカードのバトルであることを、徹底して開発をしていただきました。最適化をするにあたってルールを変更した部分も多いですが、ポケモンを場に出して、山札を引いて、エネルギーを付けて、ポケモンどうしが戦う。その点をぶらすことなく、開発いただいています。だからこそ従来のポケモンカードでバトルを楽しんでいただいていた方にも楽しんでいただけているのだと思います。

――『ポケポケ』で初めてバトルに挑戦したという方も本当に多く見られます。

 ありがたい限りです。やはり、スマートフォンで遊べるがゆえの手軽さというのは大きな理由だと思います。そのうえで、従来のポケカプレイヤーの方々が新しい仲間が増えることを快く歓迎してくださっていることも影響を与えていると確信しています。初心者の方に分かりやすく情報をまとめてくださっていたり、困っていたらすぐにやさしく教えてくださったり。そうした温かい雰囲気が初心者の皆さんにとっても居心地よく感じていただけているのではないかなと思っています。

――エネルギーカードをデッキに入れるのではなく、エネルギーゾーンとして独立させた理由も知りたいです。

 バトル面では、はじめての人が遊びやすいようにすること、スマホという媒体に併せて最適化することを目指した変更がなされています。とくにエネルギーに関しては、エネルギーゾーンに変更したことでデッキに何枚エネルギーカードが残っているか、を含む戦略から、どのポケモンにエネルギーをつけるか、といったシンプルな戦略になっています。

――ほかに、バトル面でとくにこだわった部分はありますか?

 はじめてバトルを遊ぶ方でも気軽にお楽しみいただけるようにしております。自分のペースで遊べる“ひとりで”バトル、コンピューターが助けてくれる“オートバトル”、迷ったときにデッキを編成してくれる“おまかせ編成”や“レンタルデッキ”といった機能も、実装されています。

――今後、バトルに関するコンテンツ追加などのアップデートはあり得るのでしょうか。

 はい。バトルをより楽しんでいただけるようなアップデートも予定しています。まだ詳しくはお話しできませんが、ご期待いただければと思っています。

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日常生活がちょっと楽しくなるようなアプリに。長期的な運営を目指す

――リリース直後であることを考えても、なかなか類を見ないほどの盛り上がりを見せていると思います。今後、この勢いを維持するために考えられていることはありますか?

 いまこれだけ多くの皆さんに楽しんでいただけている最大のポイントは、1日2回のパック開封だと思います。ささやかだけれども、毎日確実に積み重なっていく喜び。その基本的な楽しみを変えてしまったり、複雑なものにしてしまったりすることは考えていません。いま体験していただいている楽しみを、いつでも体験できることを大事にしながら運営をしていきたいと思っています。

 そのうえで、先日発表させていただいたとおり新たな拡張パックを追加したり、機能を実装したり、イベントを開催したりといった形で遊びの幅を広げていきます。

――2024年10月末にリリースされて、年内にもう新たな拡張パックが追加されるという展開は意外でした。ちなみに、新しい拡張パックが出ると既存のパックは引けなくなってしまうのでしょうか。

 基本的には既存の拡張パックはそのままに新しいものを追加していきます。好きな方を選んで引いていただけるようになります。ただ、あくまで現状の話であり、今後は別の形の拡張パックが登場する可能性もございます。


――しばらくは欲しかったカードを期間内に引けない悲しみを味わわなくて済みそうで安心しました(笑)。拡張パックの追加だけでなく、ゲットチャレンジ、ラプラスexなどのバトルイベントも頻繁に開催されていると感じます。今後も同じようなペースで開催されるのでしょうか。

 ユーザーの皆さんの反応も見ながらご満足いただけるようなペースを探っていきたいと考えています。楽しめるコンテンツがなくなってしまわないようにというのと同時に、やらなければいけないことが多すぎて大変、ということにもならないように意識して調整を行っていきます。仮に、少しのあいだプレイしていない期間があったとしても、いつでもスムーズに再開できるゲームでありたいと思っています。

――改めて、今後『ポケポケ』をどのようなタイトルにしていきたいと考えておられますか?

 くり返しになりますが、いま楽しんでいただけている体験を変えるということはしないつもりです。1日2回のパック開封を基本として、日常生活がちょっと楽しくなるような体験を長期的に提供し続けたいと考えています。そのために、ユーザーのみなさんそれぞれのカードコレクションひとつひとつを大事に思っていただけるような運営を心掛けていく所存です。

――最後に、『ポケポケ』を楽しんでいる皆さんに向けてメッセージをお願いします。

 『ポケポケ』を遊んでいただいてありがとうございます。もしよろしければ、手に入れたカードをコレクションファイルやコレクションボードという機能を使ってご自身のカードを飾ってみてほしいなと思います。そして、ほかのユーザーさんたちに公開してみてください。やってみると、結構“いいね”がもらえるんですよ。自分の作ったものに対して人から評価をしてもらうことって、本来ハードルの高いことだと思います。それがすごく手軽にできますし、やっぱり人に評価してもらえるのってそれだけで嬉しい気持ちになります。それをぜひ皆さんにも体験してもらえたらと思います。
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集計期間: 2025年01月16日23時〜2025年01月17日00時