【ポケカ】“テラスタルフェスex”収録のイーブイexにケーキが登場!? どうしてケーキがポケモンカードになったのか、株式会社ポケモン・石原社長とパティシエの庄司夏子さんに訊いてみた

byゆーみん17

by竹内白州

【ポケカ】“テラスタルフェスex”収録のイーブイexにケーキが登場!? どうしてケーキがポケモンカードになったのか、株式会社ポケモン・石原社長とパティシエの庄司夏子さんに訊いてみた
 2024年12月6日に発売したポケモンカードゲーム(ポケカ)のハイクラスパック“テラスタルフェスex”は、ポケモンexが必ず1枚パックに封入されているほか、大会やイベントなどでよく活躍している強力なカードも再収録しているパックだ。

 再収録されたカードのうち一部が新規描き下ろしのイラストに差し替えられているほか、完全に新登場のカードも収録されている。その中でも目玉となるのが、イーブイと、その進化した先の8匹。全員がポケモンexとして登場し、“テラスタイプ:ステラ”になった姿で描かれている 。
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 そんな本パックの発売を記念して、前代未聞のタイアップ企画が立ち上がった。それは、イーブイexをイメージしたケーキを作成し、そのケーキをカードのデザインに採用するというものだ。
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 そのケーキを作成したのが、渋谷区のフレンチレストラン“ete” (※eは二つともアクサンテギュ)のオーナーシェフ・庄司夏子さん。彼女は2020年に食のアカデミー賞とも言われる“アジアのベストレストラン50”にベスト女性パティシエ賞を受賞、2022年には日本人女性として初めて同アワードの最優秀女性シェフ賞を受賞するという、“食”の世界での一流。

 ファミ通.comでは、今回のタイアップが立ち上がった経緯やケーキ制作へのこだわりを中心に、庄司さんと株式会社ポケモンの石原恒和社長へインタビューを実施。本記事にてその模様をお届けする。
※本記事内ではアクサンテギュをeと表記しています。[IMAGE][IMAGE]
インタビュー前にパック開封を楽しむおふたり
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石原社長が自力で(!)引き当てたイーブイexと、タイアップされたイーブイexと記念撮影

石原恒和いしはら つねかず

株式会社ポケモン 代表取締役社長・CEO/株式会社クリーチャーズ ファウンダー 『ポケットモンスター 赤・緑』を始め、ポケモンのビデオゲーム全作品でプロデューサーを務める。また、株式会社ポケモンにおいて、ビデオゲームやカードゲーム、映像、アプリなどのプロデュースと、ポケモン全体のブランドマネジメントを手掛けている。

庄司夏子しょうじ なつこ

ete オーナーシェフ  2014年に“世界でただ一つの、小さな楽園”を形にするレストラン“ete”を開業。2020年に食のアカデミー賞とも言われる“アジアのベストレストラン50”にベスト女性パティシエ賞を受賞、2022年には日本人女性として初めて同アワードのベスト女性シェフ賞を受賞している。好きなポケモンはミュウ。

石原社長からのご褒美で訪れた“ete”の美しい料理でポケカチームがトリコに

――ポケモンカードとケーキのフュージョンは前代未聞で驚きました。この斬新な取り組みが実現した経緯を教えていただけますか?

石原
 もともと庄司さんのお店“ete”に何度か通っていまして、2年ほど前にクリーチャーズのポケカチームが大きな仕事を終えたご褒美に連れて行ったのです。そうしたら、おいしくて美しい料理に皆が感動して心を奪われてしまったようで(笑)。後日あるスタッフが「あのすばらしい料理を作る庄司さんといっしょに何かやらせてほしい」と言ってきたのです。

庄司
 うれしい! 光栄です。

石原
 それを聞いて、庄司さんなら引き受けてくれるかもしれないと思いました。というのも僕が初めてお店に行ったとき、ダニエル・アーシャムさん(※)の作られたピカチュウの彫刻が展示されていたのです。それで「ポケモンが好きなのかな?」と思っていまして、その後何度かお店へ通うあいだにだんだん確信を持つようになっていました。だから一度お声がけしてみようということになったところが、本企画のスタート地点ということになりますね。
※ダニエル・アーシャム……現代アート界でもっとも注目されるアーティストのひとり。2020年にポケモン初の現代アートコラボプロジェクト“Daniel Arsham × Pokemon”を発足させた 。

――庄司さんは以前からポケモンがお好きだったのですか?

庄司
 はい、もちろんです。子どものときは『ポケットモンスター』シリーズにとにかく没頭していました。ミュウやミュウツーをなんとか仲間にしようとしたり、通信ケーブルを使って友だちといっしょに遊んだり。当時はポケカも集めていて、レアリティの高いカードのキラキラしたイラストを見たときの興奮は、何にも代えがたい幸福だったと思います。お小遣いはすべてポケモン関連に費やしていましたね(笑)。

――ダニエル・アーシャムさんの彫刻も買われたとのことで。

庄司
 私の中で思い入れの深いポケモンが、最近は現代アートを始めとするさまざまなカルチャーと融合しながら幅広い分野で世界的に広がっていくのを見ていて、それに自分でも触れてみたくなったんです。ダニエル・アーシャムさんの作品はピカチュウのほかにミュウとゼニガメも購入しました。

石原
 すごい。簡単にできる買い物ではありませんよ。

庄司
 お小遣いをすべてポケモンに費やした当時と変わっていませんね(笑)。せっかく購入したからには展示のしかたにもこだわっており、ピカチュウは雷をイメージしたアートといっしょに飾ったり、ミュウは彫刻家のイサム・ノグチさんがアトリエを構えていた香川県の石で作られたという作品と雰囲気が合うのでいっしょに置いたりしています。そのように工夫した甲斐があって、お店でもより幅広い世代のお客さんに楽しんでもらえている気がしています。

 私にとってポケモンはDNAに刻まれた宝物のようなものなので、まさか石原さんがお店に来てくださって、しかもタイアップまでさせてもらえることになるなんて、いまでも信じられない思いです。
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――初めてタイアップのお話を聞いたときはどう思われましたか?

庄司
 とにかく興奮しました。私のようないちシェフにもこんなすごいことが起こる可能性があるんだって、ユメのようなことが叶うんだって、すべてのちびっこに伝えてあげたい。子どものころの自分に教えてあげたい。そんな思いでいっぱいで、とにかく声を大にして言いたかったです。もちろんお仕事上の機密事項なので言えないんですけど……(笑)。

――ようやく情報解禁になりましたから、これで存分に伝えられますね(笑)。石原さんはお店に何度か通われていたそうですが、おふたりは直接ご親交を持たれていたんですか?

石原
 基本的にはお店におじゃまするくらいでしたが、連絡先は交換してしばしばコミュニケーションもさせていただいていました。ダニエル・アーシャムさんがお店にいらっしゃったときの写真を送ってきてくれたこともありましたよね。

庄司
 そうなんです。その関係でハンプトンにあるダニエルさんのおうちにもおジャマしたのですが、ミュージアム風に作り込まれていて素敵でした。中でも枯山水とポケモンの融合は新しい世界観を感じましたね。

石原
 ダニエル・アーシャムさんのメインとなるアートコンセプトは“Fictional Archaeology”というもので、これから約1000 年後、西暦 3020 年にポケモンを発掘したとしたらどのような形態になっているかを想像しながら彫刻を作られています。体のいろいろな部分が“結晶化(crystallization)”しているというのがその表現のひとつですが、これはテラスタルのコンセプトにとても近いですよね。日本語では“テラスタル”ですが、フランス語では“Teracristallisation”と呼称されているくらい似ている表現です。

 ポケモンのテラスタル現象、ダニエル・アーシャムさんが表現する結晶化するポケモンの美しさ、そして庄司さんのお作りになる宝石のようにきらめく料理のすばらしさ。これらはそれぞれシンクロする部分があって、だからこそ人を惹きつけるタイアップが生まれるのではないかと思っています。

――石原さんの思う庄司さんのお料理のすばらしい点というのはどんなところですか?

石原
 通常は、お料理をいただいたときの感想は“おいしい”という味に対するものですよね。でも庄司さんのお料理は、それに加えて“美しい”という感動があります。食べる前に、テーブルに運ばれてきた瞬間に誰もが「わぁ~」と声をあげてしまうような美しさ。それが体験できるレストランってそうそうないですよね。今度は誰を連れて行こうかと、わくわくしてしまいます。その人がどんな反応をするのか、どういった目のかがやかせかたをするのか、見てみたくなります。だから、ポケカチームへのご褒美として庄司さんのお店を選んだのです。
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テラスタルしたイーブイの宝石感を見事に表現したフルーツケーキが完成!

――ポケモンカードと料理という前代未聞のタイアップですが、どういったインスピレーションを受けて今回の作品ができあがったのでしょうか。

石原
 庄司さんにお声がけする際に、どういったタイアップの可能性があるかを我々も考えました。そこであがってきたのが、ケーキでした。先ほども申し上げたチームのメンバーがもっとも感動したのが、庄司さんの作る彩り鮮やかなフルーツケーキだったのです。あの美しいケーキを背景に、それに合うポケモンたちといっしょにカードを作ってみたい。それが彼らの考えでした。

庄司
 お話をいただいたとき私が最初に考えたのは、じつはイーブイではありませんでした。私のシグネチャー(※)であるマンゴーのタルトにしたいと思っていて、カラーリング的にリンクするピカチュウを考えていたんです。
※シグネチャー(signature)……署名やサインのこと。転じて、その人(店)を代表する料理や作品などを指す
石原
 なるほど、そうだったのですね。それはそれで見てみたかったですねぇ。うちのスタッフがイーブイをおすすめしたのは、イーブイが8匹ものポケモンに進化する可能性を秘めていることや今回のコンセプトでもある“テラスタイプ:ステラ”の特徴が、庄司さんのイメージにぴったりだと考えたからなんです。庄司さんの作るケーキもフルーツのバリエーションが豊かで色彩もカラフル。まさに宝石のように輝く美しさが特徴ですから。

庄司
 おかげさまで、ケーキ作りの面でも新しい経験ができました。とても感謝しています。
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――最初にイーブイexのカードで取り組んでほしいと聞いたときはいかがでしたか?

庄司
 テラスタルについては詳しくは知らなかったので、子どものころから慣れ親しんだイーブイの新たな一面を見て、ポケモンというコンテンツの進化に驚きました。それと同時に、私の中で作品のイメージが湧いてきました。

 私は常日頃から、自分の取り扱うフルーツは日本が世界に誇る宝石だという信念を持ってフルーツタルトを作っています。それとテラスタルしたポケモンの頭部など にある“テラスタルジュエル”の表現が合致したんです。だからこのテラスタルしたイーブイといっしょに、私自身も含めてまだ誰も見たことのない作品を作りたいと思って取り掛かりました。なので本当にこれのためだけにアイデアを出してチームで試作して、最終的に私もこれまで作ったことがないアート性を最大限に高めたフォルムのケーキを作り上げることができました。

――まさしく見たことがない、美しい作品だと感じました。先ほどカードのデザインもご覧になったかと思いますが、仕上がりはいかがでしたか?

庄司
 もう本当に感動しました。子どものころに感じたポケモンの根源的な美しさはそのままに、現代の進化した技術が全部この一枚に集結しているような印象を受けました。そして、関わった人たち全員がそれぞれの分野に対して最大限のリスペクトを持っていることが感じられます。私たちもポケモンに対して最大限のリスペクトを込めていますし、ポケモンカードゲームの開発側の方々もケーキやフルーツを美しく見せようとしてくれているのが分かります。

――具体的にはどんなところに感じられましたか?

庄司
 たとえば、フルーツの形が“テラスタイプ:ステラ”の“テラスタルジュエル”の周りに浮かんでいるを石をイメージして六角形になっているのですが、その縁の部分にエンボス加工がされているんですよ。それって私たちのケーキへのこだわりをちゃんと読み取ってくれて、それを尊重してくれている証だと思うんです。そういうところに、お互いのリスペクトが混じり合っているのを感じます。

石原
 本当に今回のタイアップのイメージにぴったりな作品を作っていただいたと思います。
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――“ポケカとケーキ”という言葉だけを聞くと驚きが強いですが、作品を見るとすんなり受け入れられる納得感があるように感じました。

庄司
 このアイデアがすんなりと出てきたことに、自分でも驚いています。やっぱり私に刻まれたポケモンファンとしてのDNAがそうさせたんだと思います。うちのお店のお客さんはおそらくポケモンカードゲームのファンとは客層がけっこう違うのではないかなと思っています。今回のタイアップをきっかけにお店に来てくださるお客さんがポケモンカードを集めてくれたり、ポケモンファンの皆さんがお料理の世界に興味を持ってくれたりといったようなことがあればうれしく思います。

大好きなポケモンはミュウ。イメージフルーツ(?)は桃

――ここまでにも少しお話しいただいていますが、改めて庄司さんのポケモンというコンテンツへの印象をお伺いできますか?

庄司
 私だけでなく、全人類のDNAに刻まれているのではないかと思えるほどに、あらゆる国や地域、人種、文化にかかわらず愛される存在だと思います。もはや水や空気と同じくらい、この世に当然あるものという認識です。

――水と空気! 確かに、我々には欠かせない存在ですよね。幼少期から慣れ親しんでいるというお話でしたが、好きなポケモンはいますか?

庄司
 ピカチュウやイーブイも好きですが、いちばん大好きなのはミュウです。幻のポケモンであるがゆえの入手難度の高さも相まって、当時は必死にゲットする手段を調べた覚えがあります。私はよく、新しい刺激を受けたときの興奮を“脳の新しいエリアが動く”というふうに表現しているのですが、ミュウを知ったときの興奮がまさにそれだったんです。だからいまでもミュウは私にとって特別な存在で、ミュウに関することは我を忘れてしまうくらい夢中になってしまいます。

――そんなに大好きなのですね。もし、もう一度今回のようなタイアップがあるとしたらモチーフにしたいポケモンはミュウになりそうですか?

庄司
 はい、やっぱりミュウですね。今回もイーブイやピカチュウのほかにいろいろなポケモンとフルーツの組み合わせを考えていましたが、ミュウであれば桃がいいかなと考えています。

石原
 確かに、色彩的には合っている気がしますね。なるほど。そうか、それはおもしろい着眼点ですね。ミュウは桃ですか。

庄司
 かわいらしい目の感じとかもちょっと桃っぽいかなって。ミュウツーだったらもうちょっとブドウ寄りかなと思います。

石原
 それはわかるなぁ。

庄司
 シーズン的にも、桃ってリミテッドなのでレアなんですよ。桃ってジューシーで柔らかいじゃないですか。あの状態に管理するのってやっぱり農家さんもたいへんなんです。

石原
 色も変わりやすいですよね。

庄司
 その通り、色もすぐに変わってしまいます。でも、そうやって手間暇かける価値が十分にあるくらい、桃を食べると幸せになれますよね。そうした貴重さとたいへんさに見合うだけの価値みたいなところが、自分の中ではミュウと似ている気もしていて。そういう意味でもミュウと桃は相性がいいんじゃないかと思います。

石原
 挑戦しがいがありますね。

――ほかに、庄司さんは今後の夢やチャレンジしたいことはありますか?

庄司
 テレビアニメ『ポケットモンスター』のサトシの隣りに並んでみたいです! ダニエル・アーシャムさん風のトレーナーがサトシとバトルしている映像をアートギャラリーで見たとき、うらやましくて「うわぁー!」ってなったんですよ。これが実現したら本当にうれしいので、この場で発言しておきます。ユメは口に出して言っておいた方がホントになると思うので。

石原
 アーティストのエド・シーランさんも同じようなことを言っていましたね。“Celestial”を作ってもらったときに、何がしたいか訊いたら「サトシになって『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』のクライマックスシーンを演じたい」と言っていました。彼はMVで実際にその夢を叶えましたよ。

庄司
 サトシのようになりたいって、みんな思っているんですね。もしかするとその夢を叶えるための方法のひとつは、ダニエル・アーシャムさんやエド・シーランさんのように、何かしらのクラフトマンシップを極めることなのでしょうか。自分もその域に到達するべく、もっともっと精進しなければいけませんね。

石原社長から見たポケモンカードゲーム28年間の歩みと『ポケポケ』への期待

――ここからは、ポケカについて石原さんに詳しくお伺いしたいと思います。まずはポケカについて創成期から携わり続けている立場から見て、ポケカの魅力を改めて教えていただけますか?

石原
 最大の魅力は根源的でシンプルなものだと思っています。それは、パックを開けてカードを取り出す楽しみです。カードがどんなイラストでどういう能力を持っていて、どんなふうに世界が描かれているかを見ながら、そのカードが伝えたいものや語りたいものを感じ取って遊ぶのです。

 そして集めたカードたちを自分なりに組み合わせてデッキという名の世界を構築し、それをぶつけ合うのがポケカにおける対戦です。これらを使って、コミュニケーションを楽しむというのがポケカの変わらない魅力であり、その表現方法は時代によってつねに変化と拡張を続けている部分でもありますね。

――カードのイラストから世界を感じるというのは、とくにゲームのグラフィックがドット絵だった当時はより強く感じていた気がします。ゲームの中ではなかなか見られない景色がカードに詰まっていましたね。

石原
 ゲームボーイの時代は黒と白、そのあいだにライトグレーとダークグレーという4階調だけの世界でした。それなのに、記憶の中にいるピカチュウは体が黄色い気がするし、ほっぺも赤かったような気がするのです。そうやってプレイヤーが頭の中で補完してくれていた時代でもありました。ミュウツーはきっとこんな能力で、空を浮遊するに違いないみたいな、ある意味で妄想のような世界を作り出してくれていた人も少なくないと思います。

 それもまたドット絵の魅力であったわけですが、技術の進化に伴って、現代ではものすごく精密に表現したいものをそのまま映し出せるようになっています。そしてそれはそれで現代アートの魅力でもあると思います。そうした現代の技術を大いに活用して、表現したいアートへのこだわりをより細かく突き詰めていっているのがいまのポケモンカードだと思いますね。

――表現が目まぐるしく進化していく中で、根本的な遊びのルールは変わらないまま長年親しまれ続けています。そして2018年ごろを境に爆発的なブームが起こり、世間的な認知度もいっきに高まったと思いますが、その要因は何だったと考えておられますか?

石原
 いま振り返ってみると、2016年の『ポケモンGO』のリリースがひとつの転換点だったのかもしれません。リリースからもう8年が経ちますが、いまもなお1000万人を超えるユーザーの皆さんが毎日プレイしてくれています。当時はその何倍もの人が遊んでくれていたことを考えれば、ポケモンというコンテンツが急速に広がったタイミングだったのだと思います。ポケモンカードでもそのタイミングでスタートデッキを始めとする入門用の商品を展開したことが、プレイ人口の大幅増加に繋がったと考えています。

――スタートデッキは当時は約500円で始められるという手軽さで、かなり印象的でした。

石原
 そこからは券面アートへのこだわりをだんだんと深めていきました。作家さんやイラストレーターさん、そして今回の庄司さんのような別ジャンルのアーティストさんも含めて、より幅広いクリエイティブを生み出せるような体制を整えました。ただカードを眺めているだけでもうれしくなるようなカードそのものの価値を高めてきたことで、パックを開けたときのわくわく感もかなり大きくなったのではないかと思っています。
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――券面へのこだわりというのは、2024年10月末にリリースされた『Pokemon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)』からもこれでもかというほどに伝わってきました。

石原
 『ポケポケ』はデジタルのアプリでありながら、実際のカードのフィジカル感を表現したいというのがコンセプトになっています。スワイプ操作でパックを開封する演出やカードの角度をずらせたりパックを裏返せたりといった動作もすべてそのコンセプトに沿ったものなのです。

――『ポケポケ』リリース後の反響はどう捉えていらっしゃいますか?

石原
 我々の中では、『ポケモンGO』がひとつのベンチマークとなっているのですが、その観点でいえば、かなり好調だと言えると思います。150を超える国と地域でサービスを行っており、DAU(デイリーアクティブユーザー)も高い水準を維持していますので、多くの方に1日2パックの無料開封を楽しんでいただいていると捉えています。ただ、ユーザー数は現在3000万ダウンロードを超えていますが、まだもう少し広がるはずだという目算も立てています。

――ただでさえ大人気だったポケカで、さらなる新規層にリーチできてしまうのかという驚きをもって見ていましたが、さらに広げられるとお考えなのですね。

石原 
『ポケポケ』の開発には、じつはものすごく長い時間がかかっています。よく辛抱強くやってきたものだと思いますが、それに見合った手応えも感じています。そんな『ポケポケ』が目標としているのは、ポケモンカードを楽しむユーザーをもっと増やすための入り口になることです。

――『ポケポケ』をきっかけに、従来のポケモンカードも遊んでほしいと。

石原
 ええ。いまのポケカは、言ってしまうとすこし難しいですよね。世界大会のようなレベルを目指すのはもちろん、60枚のデッキを作って見知らぬ人と対戦するというのはまぁ、敷居が高いと感じる人も多いと思います。ではデッキが20枚ならどうか。レンタルデッキが使えれば、対戦相手がコンピューターなら、対面ではなく画面の向こうであれば。そうやって敷居を下げて、まずはポケモンカードを『ポケポケ』を通じて遊んでもらう。それからもっともっと奥深いポケモンカードの世界を知ってもらいたいのです。そういう人たちがこれからどんどん出てきてくれるとうれしいですね。

――今後の『ポケポケ』はどのような展開をしていくのでしょうか。

石原
 くわしくは明言できませんが、これまでポケモンカードが28年間歩んできたような道を『ポケポケ』においても歩んでいけたらと考えています。『ポケモンGO』と同じく、長寿のアプリにしたいです。

つぎはミュウ×桃のケーキの可能性?

――庄司さんからは先ほどテレビアニメ『ポケットモンスター』のサトシに並ぶのが夢だというお話がありましたが、本業であるお料理やケーキ作りの面で目標や展望はありますでしょうか?

庄司
 自分自身の日々の鍛錬を重ねていくというのは当然なのですが、業界の人材不足解消への取り組みに目を向けていきたいと考えています。離職率の高さも相まって、とくに次世代の人材が不足していると考えています。私たち料理人だけでなく、食材を生み出してくれる生産者さんも含めて、次世代の人材不足を解消するための変革を行っていきたいです。

 そんな中で今回のポケモンさんとタイアップができたことは、本当にありがたく思っているんです。これを機にこういう料理の世界があることをたくさんの人に知ってもらいたいですし、その中からすこしでもこの業界に将来携わってくれる人が出てきてくれるとうれしいなと思います。また、そう思ってくれる人がもっと増えるような活動を今後もしていきたいと思っています。

――ありがとうございます。では、改めて最後に読者のみなさんにメッセージをいただけますでしょうか。

庄司
 私が小さいころから大好きだったポケモンと、今回このような革新的な取り組みができたのは、サトシのように日々諦めずに鍛錬を積み重ねてきたからこそなのかなと思っています。同じように夢を実現する可能性はすべての人が秘めているはずだと思いますので、皆さんそれぞれのポケモンマスターへの道を一歩ずつ歩んでいただきたいと思います。

石原
 本当にポケモンを愛してくださってうれしく思います。

庄司
 いやいや、本当に先ほどの通りだと思っているんですよ。上手くいくことばかりではないですけど、ボロボロになりながらでも諦めずに道を進んでいれば今回のようなことが起こり得ると、多くの人に知っていただきたいです。

石原
 最後に、庄司さんに僕からひとつ質問があるのですが、桃はいつが食べごろでしょうか?

庄司
 一般的には7月から8月が最盛期ですね。9月にはもう旬を過ぎていると思います。

石原
 では、来年のそのころに、期待してもいいですか。

庄司
 もちろんです!
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庄司さんから石原社長へのプレゼント。イーブイと似た色の栗のケーキとなっている。
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集計期間: 2025年01月17日02時〜2025年01月17日03時