2024年11月1日にエレクトロニック・アーツからプレイステーション5/Xbox Series X|S/PCで発売されるRPG『ドラゴンエイジ: ヴェイルの守護者』。本作のプレイステーション5のレビュー版をプレイしたので、その内容をご紹介しよう。
さて本作は、海外RPGの雄・BioWareのファンタジーRPGであるドラゴンエイジシリーズの最新作。前作『ドラゴンエイジ: インクイジション』(2014)から10年ぶりの続編であり、久しぶりの新作として大胆にモダンな設計に変更されたリブート的な性格もありつつ、ある意味シリーズのこれまでの集大成的な作品にもなっているという、大作のカムバックにふさわしい作品となっていた!
メインクエストをクリアーするだけでも公称約40時間、フルにやったら100時間ということで、締切が迫っていることもあり「まぁとりあえずほぼメインだけでクリアーしてから考えるか」と思っていたのだが、いざ始めたら結局は仲間や各地の勢力にまつわるサブクエストをやりまくり、必須ではない凶悪なボスたちまで倒して、クリアーまで54時間(※)きっちり遊び倒した次第だ。
(※ボス等のリトライ時の重複分は除くので、実際の純粋なプレイ時間はもっとかかっている)世界の危機を食い止めるため、さまざまなバックグラウンドを持つ仲間たちが集結する
さてゲームは、ドワーフのローグであるヴァリックに率いられた主人公たちの一行が、強力な魔道士であるエルフのソラスの儀式を阻止しようと急行する場面からスタートする。
シリーズの作品世界であるセダスは、生身の者たちの現実世界と精霊や悪魔が住む精神世界“フェイド”が”ヴェイル”と呼ばれる障壁で隔てられることによって安定して存続してきたのだが、ソラスはそのヴェイルを解こうとしているというのだ。
冒頭シーン。ヴァリックが率いる一行は、ソラスの儀式を阻止するために大混乱の街中を急行する。
かくしてチュートリアルパートはヴェイルの裂け目から飛び出してきた悪魔たちによって大混乱に陥る中で進行してくのだが、(本編でもなかなかない)派手な演出やカットシーンの連発でオープニングからド迫力だ。
最終的に主人公たちはかろうじて儀式の妨害に成功するものの、その代償としてヴェイルによって閉じ込められていた古代エルフの神々が復活。漏れ出す“穢れ”とともにセダスをその手に収めようと暗躍するエルフの神々を止めるべく、主人公たちが各地の情報収集を行いつつ協力してくれる仲間を集めようとするところから本編がスタートする。
蘇ってしまった二柱の邪悪な神。各地の仲間の力を結集して彼らの目論見を食い止めるのが大きな目標となる。
ところで、シリーズものということで「新規にプレイできるの?」という点が気になる人もいると思う。これは人にもよると思うが、記者の体験(1/2は触ったがほぼ忘れており、インクイジションはほぼノータッチ)では、昨今の作品でよくある“新規に入っても作中で触れられることだけで話を理解可能で、旧作をやっているとより深い理解が得られたり新たな事実に気づく”という形になっていると感じた。
というのも、ヴァリックは『ドラゴンエイジII』(2012)から、ソラスは『ドラゴンエイジ: インクイジション』から登場している重要キャラクターとしてさまざまな出来事を見届けてきたいろんな因縁の当事者なわけだが、主人公ルークはヴァリックがその腕を見込んで呼んできた今作からの助っ人的存在。
なので大事なことは基本的にゲーム中のセリフで説明されるし、状況や勢力の関係性などの重要なポイントは章の変わり目にヴァリックがまとめてくれる。さらに固有名詞等がわからないような時はゲーム中の用語集で確認できるようになっている。
オープニングで一行を率いるヴァリック(右から2人目)。小説家でもあり、語り部として章の間のまとめをやってくれる。
かなりアクション寄りなアクションRPGへと変貌
プレイしてまず驚いたのが、基本的な作りがめちゃくちゃアクションRPG寄りになっていたことだ。シリーズの旧作は「アクションゲームっぽい見た目のストラテジーRPG」的な要素があった。それは『バルダーズ・ゲート』や『ネヴァーウィンター・ナイツ』といったコンピューターRPGを手掛けてきた開発のBioWareの伝統を感じる部分でもあったのだが、今作はドッジ(回避)やパリィ(敵の攻撃の弾き返し)、3Dプラットフォームアクション的な動作など、今どきのアクションがもりもり取り込まれたものとなっている。
バリバリアクティブに動き回るアクションRPGスタイルに。
その度合はかなり徹底していて、ゲーム序盤に至ってはアクションRPGどころかほぼアクションゲーム的な感覚でプレイできるぐらいだ。通常攻撃/強攻撃ボタンで簡単に出せるコンボや溜め攻撃、遠距離攻撃、ダッシュ/ジャンプ攻撃といった基本アクションは使いやすいし、合間に飛んでくる敵の攻撃をパリィしたりドッジで華麗に交わし(ほぼクールダウンなしで使える)、チャージ完了した派手なアビリティをぶっ放す……といった感じに、手軽にカッコいいアクションで立ち回れる。大胆な変更だが、個人的には大歓迎だ。
弓矢のエイム(狙い)などもTPS的に行う。近接攻撃も含めて、あまり厳密に狙わなくても程よく補正してくれるのがいい感じ。
もちろん、ゲームが進むに連れてスキルやアビリティの構成や装備などの組み合わせによるRPG的なシナジーを考えていかないといけなくなっていくんだけど、旧作にあったストラテジーっぽい部分はアビリティの発動/仲間への攻撃指示のインターフェースを出すと一時ポーズがかかるのに名残を感じるぐらい。なんせ戦闘中に仲間の体力を気にする必要すらないのだ。
装備ダブりなし、最初から近接魔道士が可能など、合理的&割り切った設計
なぜ仲間の体力を気にしなくていいのかというと、それはもうシンプルに仲間に体力の概念がないからだ。戦闘中の仲間については、ほぼアビリティのクールダウンと発動タイミングだけ気にして、あとは優先して集中攻撃したい敵がいる時などに攻撃指示を出すぐらいという、大変割り切った作りになっている。
アビリティホイールを出すと戦闘の進行が一時停止して、攻撃目標やアビリティ発動の指示を出せる。UIが有能で、後述するコンボ対象のアビリティなども教えてくれる。
本作は他の部分でも超合理的な設計になっている要素が多く、参考までに箇条書きにすると以下の通り。旧作プレイヤーも「お、そこメンドかったんだけど今回そうなってるの?」という要素がちらほらあるはずだ。
- アイテムのインベントリー制限がない
- 装備は主人公の職かコンパニオン(仲間キャラ)用のアイテムだけが登場する。不要な他職の装備などは出てこない
- 同じ装備を入手してもダブりにならず、代わりにその装備のレア度が上がってボーナスが追加される(※攻撃・防御力などの基本性能値の強化は素材を使って行う)
- 魔道士が近接戦を十分に行える技を最初から持っていて、戦士も遠距離攻撃を持っている。ローグは武器切り替えボタンを押さずに両方を使いこなせる
- 敵の遠距離攻撃はパリィして送り返せる(戦士のみ反射にはスキルの取得が必要)
- アビリティなどを入手するスキルツリーはいつでもポイントを振り直せる
- 各コンパニオンは固有能力でマップ上の特定の仕掛けを発動できるが、そのコンパニオンがいなくても主人公が代わりに発動できるようになる
- レベル上げはクエストをやっているだけでオーケー。野良を倒すレベル上げは不要
- ポーションは自分専用で基本的に3個しか持てないが、ファストトラベルすると全回復する上、フィールドに頻繁に落ちている
- 装備の見た目にこだわりたい場合、外見は別に設定できる(カットシーン時は頭装備を外すといった指定も可能)
- キャラの外見は後から簡単に直せる(ただし、職・種族・生まれ・性別などのアイデンティティは変更不可能)
- 各マップ内には基本的にかなり細かくファストトラベルポイントがある(特殊イベント用のマップ除く)
- 落下時ペナルティはなく、暗転後に近くの足場から復帰する。一方で敵は高所からの落下時は死亡扱いになる
- コンパニオンとの恋愛ルートに入りそうな時は警告してくれる。完全に恋愛関係になる前に優しくフラグを折ることもできる
- 物語上の重要な判断を下した時は“決断時セーブ”が残され、間違ったと思ったら戻れる
……などなど長くなるのでこの辺にしておくが、こういった作りのおかげで50時間超のプレイ中もダルく感じるようなことがなくサクサク進められ、かなり快適に戦闘と探索とストーリーに没頭できた。
宝箱や商人から同じ装備を入手するとダブりにならず、レア度がアップして追加効果が増える。気に入っていた装備が再び魅力的になったりして最高。
仲間と力を合わせて強力なアビリティコンボを炸裂させろ!
コンパニオンは戦士(ダブリン・ターシュ)、ローグ(ハーディング・ルカニス)、魔道士(ナーブ・ベララ・エムリック)と、3職に分散して登場。それぞれキャラ固有の装備とスキルツリーを持っている。
セダス各地での冒険には最大で2人を連れていくことができ、クエストによっては確定で参加しなければいけないキャラが1人決まっているという感じ。また一般的なレベルシステムとはちょっと異なっていて、“クエストやキャラ専用イベントを通じて親密度のレベルが上がると各アビリティに追加効果を足すためのスキルポイントが手に入る”という仕組みだ。
クエストによっては参加必須のキャラや、逆に参加不能なキャラがいるので、できれば満遍なく親密度を上げてスキルツリーを伸ばしておきたいところ。
本作には特定の状態の“付加”アビリティと“爆発”アビリティの組み合わせで発動するコンボシステムがあるので、3人パーティの中で付加アビリティと爆発アビリティの組み合わせが最低でもひとつ揃うようにしておくといいだろう。どの効果の付加・爆発アビリティを持っているかは、以下のようにキャラの職で決まっている。
- 戦士 “圧倒”の付加・“弱体化”の爆発が可能(主人公は”防御力低下”の付加も可能)
- ローグ “防御力低下”の付加・”圧倒”の爆発が可能(主人公は“弱体化”の付加も可能)
- 魔道士 “弱体化”の付加・“防御力低下”の爆発が可能(主人公は“圧倒”の付加も可能)
コンボが発動すると一定時間相手をロックした後に爆発ダメージまで与えるので、ボスに大ダメージを与えたり、厄介な敵を優先して瞬殺するチャンスとなる。
このコンボシステムや、すべてのローグと魔道士が回復アビリティを選択できること、そしていざとなったら自分もコンパニオンもスキルツリーを自由に組み直せることで、パーティ構成の柔軟性は高い。“お荷物”と感じるキャラなしに全コンパニオンの専用クエストを進められたと思う。
新米リーダーとして愛すべきめんどくさい人たちを導き、ともに成長していく物語
コンパニオンたちは、それぞれ異なるバックグラウンドを持ち、いろんな悩みや事情を抱えている愛すべき人々だ。正直「こいつめんどくせぇな」と思うこともないわけじゃないんだけど、プレイヤーは新米リーダーとしてともに彼らが抱える問題を乗り越え、真にヴェイルの守護者と呼びうるチームへと成長していく。
BioWare作品の常として会話の選択肢が相手の反応や一行の運命を変えたりする仕組みがあるのだが、さすがに執筆がうまく、この手の仕掛けでありがちな「え、そんなキツい言い方したかったわけじゃないんだけど……」といったようなことはなく、自分の決断や相手にどう接するかに集中できた。
屍術師イケおじのエムリック(&お手伝いの骸骨マンフレッド)は記者のお気に入りコンパニオン。ちなみに、会話中に提示される選択肢と選んだ時の実際のセリフにそんなに違和感がなかったのもいい所。
それはその分、ルークというキャラが基本的に飄々としつつも熱い人でロールプレイの幅が狭いがゆえ(たとえば『バルダーズ・ゲート3』のような作品と比較して)とも言えるかもしれないけど、冒険中にコンパニオン同士で勝手に交わされる雑談(“カッコいい決め台詞講座”が突如始まったりする)とか、本拠地で発生する細かいカットシーンイベントでのやり取りなども本当に楽しかったことをお伝えしておきたい。
クリアーした今、どのキャラについても「こいつはこういうとこあるけど、ここがいいヤツなんだよなぁ」と語れる。本作の発表時のサブタイトルは問題の発端となるソラスの別名である“ドレッドウルフ”(戦慄のオオカミ)だったが、やはりこのチームを示す”ヴェイルの守護者”がふさわしいタイトルだと思う。
メンバーが揃ってからしばしば見られる、車座になっての会議シーン。みんなの所作やあーだこーだする会話の内容がそれぞれのパーソナリティをよく反映していて最高です。
マップの作り込みはスゴい、が……。
世界の作り込みについても言及しておこう。マップの作りはオープンワールド的なものではなく、大きな作り込まれたマップがセダス北部の各地にあり、世界をつなぐ異空間“十字路”を介してワープしていくという形式だ。
各マップは立体的かつあらゆるところに仕掛けや宝箱などのシークレットが置かれているので飽きない。また一度行ったマップはファストトラベル可能で、さらに細かいスポットに移動できるマップ内ファストトラベル、そしてクエストの次の目的地に行くにはどこを通ればいいかを示すナビ機能や、近くにシークレットの宝箱がある事を示す機能なども付いている。
先に書いたようにダブり装備を見つけるとレア度アップ(=追加効果アンロック)だし、仮に見つけたのがゴミアイテム(正式名称は“貴重品”)でも各勢力の商人に売ることでお金をゲットするだけでなくその勢力を強化(=販売アイテムの追加)できるので、すみずみまで探索しまくってしまった。
スゲーいろんなとこに宝箱やらスキルポイントとか体力増強をもらえる像やらが仕込まれているので、探索がたまんねっす。
……のだが、ちょっと難点もある。せっかく作ったマップをフル活用するようにアイテムやコンテンツが詰め込まれているのは本来素晴らしいのだが、ちょっと詰め込みすぎなのだ。
終盤が近づくにつれ、クエストエリアが隣り合っているせいでクエスト中に別のクエストの開始地点にいるキャラと遭遇してしまうとか、妙な空間を発見したのに先に行く方法や宝箱にたどり着く方法がなくて困っていたら実は別のサイドクエストで解禁される所だったりとか、「お、この敵なんだ!?」とワクワクして戦ってみたら後回しにしていたクエストのボスだったといったことが結構起こって、そのたびにゲームの構造を意識させられてちょっと萎えてしまう。
また、特定のミッションでしか行かないマップにも「丁寧に」アイテムが隠されているので、話の上では「どこどこに急がねば!」となっているにもかかわらず脇道を細かくチェックしたり、邪魔な箱などを無駄に破壊してまわるようなことになりがちだった。
ほとんど一度しか行かないような所にも宝箱が仕掛けてあったりして、それ自体は見つけるのが楽しいんですけどね。
ついでに別の難点を書いておくと、クエスト内容に適正レベルの表示や警告がないので、ボスまで行ったらこちらの強化が全然足りておらず話にならなかったなんてこともあった。探索にしてもサブクエストにしても変な方向に掘り下げず、基本的にメイン系のクエストに沿って進めながら適宜やっていくのがいいかと思う。
全体的に質が高いゆえにやりすぎている事が浮いてしまうというのはなんとも悩ましいが、これはBioWare型の世界の作り込みをかなりやりきったものであると同時に、その限界を示しているとも言えるだろう。
10年ぶりの新作にふさわしい、新たな出発でありひとつの集大成でもある堂々たる大作
というわけで本作、冒頭で書いたようにゲームプレイ的には今どきのアクション要素を大胆に取り入れた作品であると同時に、物語的にはインクイジションでコンパニオンキャラとして登場しDLC“招かれざる客”でも重要な役割を果たしたソラスのサーガの集大成であり、また初代ドラゴンエイジから始まったセダスという世界の根幹に迫っていくという、ひとつの区切りとなる作品になっている。
物量は先に書いたように詰め込みすぎなレベルに詰まっているし、グラフィック面も美しく、BioWareが久しぶりにガッツリ取り組んだファンタジーRPGとして申し分ない、文句なしに今年の洋RPGを代表する超大作と言えるだろう。