胸に響く「もう、勇者しない」の言葉
なぜ勇者はモンスターを倒すのか、なぜ勇者は人の家のタンスを勝手に開けてアイテムを盗っていくのか……。本作『moon』は、それまでのRPGの基本概念に真っ向から異を唱えた“アンチRPG”。その謳い文句に見るRPGへの反骨精神もさることながら、独特の風合いのあるグラフィックと魅力的な世界観で多くのユーザーを虜にした。かく言う筆者もそのひとりで、26年間ずっとマイベストゲームである。






住人ひとりひとりをじっくり観察していくと、やがてラブの獲得に繋がるエピソードに触れることになるのだが、それがほっこりする内容もあれば、現代社会に対する毒っ気をぐつぐつと煮込みつつもユーモラスに味付けした内容のものもあり、思わずハッとさせられる。
本作の“アンチ”という文句は、RPGだけでなく現代社会の様相に対するものでもあると思う。音楽を愛するバーンのギター練習、フレッドの睡眠不足の理由、王様と大臣が進める計画の裏側、風車庵のおじいちゃんの怒り、エコ倶楽部の活動、山猫軒でアルバイトをするクリスの夢……。どんなエピソードもかわいらしいグラフィックと世界観を通して描かれているから、プレイヤーとしてはとても受け取りやすいし、小さな世界で懸命に生きている住人たちがとても愛おしくなる。
主人公がラブを獲得して大人の階段を少しずつ上がっていくように、プレイヤーもいっしょに成長をしているような感覚を味わうことができるのだ。



そんな暇潰しにピッタリなのが、“MD(ムーンディスク)”という音楽が入った小さなディスク。ジャンルはロック、テクノ、アンビエント、三味線……と多岐にわたり、手に入れたMDを好きな順番でプログラムしてBGMとして流すことができる。音楽そのものはもちろん、MDのパッケージも素敵で、MDを販売するバーン堂でジャケ買いをした人も多いのでは?
















