数多くの映画やドラマCG制作、ゲーム委託開発事業を行っている7KINGDOMが、日本にも活動拠点を広げるべく、2024年2月に日本法人を設立し、事業をスタートさせた。
代表取締役を務める金田悠佑氏は、大学時代から中国に移り済み、日本と中国両方の文化に精通していることを強みにディレクション兼通訳業務に従事。前職では日本と中国の橋渡し的な立ち位置でさまざまなタイトルを担当してきた。同社をいっしょに立ち上げた柏磊(ハク ライ)氏は、Virtuos(ヴァーチャス)、Gameloft(ゲームロフト)、バンダイナムコスタジオなど数々のゲーム会社で3Dデザイナー兼案件管理者として活躍。上記写真の中央にいる営業担当の李澤嶢氏たちと協力して日々の業務に励んでいる。
そのふたりがタッグを組み、日本でゲーム開発事業を担う7KINGDOM株式会社を設立(以下、“株式会社”と表記する場合は日本法人を差す)。日本と中国の両方の開発現場や文化を把握しているからこそできる開発体制など、強みやビジョンについて話を伺った。
金田 悠佑(かねだ ゆうすけ)
2002年、中国・北京に渡り、北京外国語大学を2007年に卒業。その後、中国国内の通訳会社で勤務し、そこでの仕事を通じてゲーム開発会社と出会う。ディレクター兼通訳としてゲーム業界に入り、10年間にわたり最前線で活躍。7KINGDOM株式会社の代表取締役を務める。
柏磊(ハク ライ)
2013年にゲーム業界に3D背景アーティストとしてキャリアをスタートし、中国国内のVirtuosやGameloftで経験を積む。2017年には日本に活動の場を移し、バンダイナムコスタジオなどの企業に在籍。データ制作を担当しながら、アートディレクターとしても活躍し、同社の取締役を務める。
※本記事は7KINGDOMの提供によりお届けしています。15年間の滞在経験を活かし、中国でのゲーム開発委託サービスを日本のゲーム会社にスムーズに提供
――初めに、事業内容を簡単に教えていただけますでしょうか。
金田
2D、3Dゲームの開発やCGの制作、デジタルエンターテイメントの企画をしています。中国のC-peak社(シーピーク)を母体とし、深圳(シンセン)とカナダに所属するデザイナーが約450人体制。コンソールゲームやモバイルゲームの受託開発を中心として、各種サービスを提供しています。
また、ゲーム以外にはCG映画やドラマで使用されるCG映像も制作にも取り組んでいるほか、次世代クリエイターの育成事業にも力を入れています。
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中国にある7KINGDOMの社内の様子
――7KINGDOM株式会社は日本支社ということでしょうか。
金田
会社としては独立した体制を取っています。また弊社サービスのグローバル化を実現するために、世界の各地にローカルマーケットに対応したゲームサービス会社を続々立ち上げて行く予定で、 すでに中国の深圳とカナダのモントリオールにオフィスを設立しています。日本市場は世界のゲーム産業にとって不可欠な存在であり、7KINGDOM株式会社はグローバル化の重要な一翼を担い、国際的なサービスネットワークの構築に貢献していければと考えています。
――なるほど。会社設立の経緯を教えてください。
金田
柏とはもともと同僚で、2019年にゲーム制作会社をいっしょに立ちあげました。しかし、コロナ渦の影響でお客様に直接お会いできなかったので営業の話が進まず、SNSなどの動画制作に事業内容をシフトチェンジしました。
――再度、ゲーム制作会社を立ち上げたきっかけを教えてください。
金田
どうしてもゲームの業界で仕事を諦めきれずにいたところに、クライアントとして知り合った(中国の)7KINGDOMの代表が、日本で会社を立ち上げてくれないかと相談をもちかけられたのです。
――金田さんと柏さんはもともと同僚ということでしたよね。金田さんのキャリアパスを教えていただけますでしょうか。
金田
2002年に高校を卒業してからすぐ中国の北京外国語大学に進学をしました。
――どうして中国の大学を選んだのですか?
金田
通訳として旅行関係の仕事をしたいと考えていましたが、勤めていた翻訳会社の社長の知り合いがゲーム開発会社さんだったんです。縁があって、ゲーム関連のディレクション兼通訳をするようになりました。
――ディレクション兼通訳の仕事はいかがでしたか?
金田
日本と中国の文化の違いを意識せず、単純にそのまま翻訳してしまうと、わずかなズレが生じることがあります。そういう齟齬が発生するのは、翻訳者が中国国内にしかいたことがないとか、その逆だったりします。私は大学を卒業後、北京だけでなくほかの都市にも行きながら15年ほど中国にいた経験があるので、どちらにも寄り添った翻訳ができました。
――ゲームの翻訳についてはどのようにお考えでしょうか。
金田
セガの『龍が如く』シリーズで、翻訳者兼任でのディレクションを担当しました。日本の街並みや看板など日本特有の建物や設備が多いゲームですよね。建物自体やその構造の意味合いを考えずに翻訳すると、中国のデザイナーにとっても理解が及ばず、ただの装飾や訳のわからないものになってしまうという問題が発生します。私のほうで意図を細かく説明しグラフィックスの制作チームのサポートをしました。当時のクライアントさんからも「なぜ金田さんがやってくださる案件は、全部ちゃんと的を射たデータで提出いただけるんですか」とお褒めいただくことも多かったです。
――そういった経験がこちらの会社でも活かされているということですね。柏さんはどのような仕事をされていたのでしょうか。
柏
デザイナーとして、3D背景のチームリーダーをしています。
――デザイナーになった経緯を教えてください。
柏
貴州大学の美術専攻を卒業後に、Virtuos(バーチャス)で5年ほどゲーム開発の実践経験を積みました。その後、転職したゲームロフトがスタジオを閉じることになったので、会社の仲間といっしょに投資を受けてゲーム開発会社を立ち上げました。ですが、日本のゲーム制作技術を学ぶための来日を決め、会社を離れています。その後フロムソフトウェアで業務委託として、『SEKIRO』の制作に参加したのち、金田と同じ会社に移りました。その後、バンダイナムコスタジオを経て、金田と最初のゲーム会社を立ち上げることとなったのです。その後は金田が話したとおりです。
金田
私たちの主な役目は、日本のクライアントと、中国の開発スタジオの橋渡し。そこで得た知見がこの会社でも活かされています。
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――7KINGDOM全体での実績はどのようものが挙げられますでしょうか。
金田
イルフォニックが開発した『ゴーストバスターズ/スピリッツ・アンリーシュド』のゴーストのスキンや、『Apex Legends Mobile』のキャラクターのスキンやウェポンモデルを作成した実績があります。中国で大ヒットして、最近日本でもサービス開始した『Metal Slug: Awakening』の開発にも初期から参加しています。日本のデザイナーさんが起こしたデザインをゲーム用に3D化させていく作業を担当しました。
――今後、日本のゲーム会社のゲーム制作委託を進めていくということでしょうか。
金田
はい。“東京ゲームショウ2024”にてブースを出展することで、少しでも多く、日本国内外の業界の方々に7KINGDOMのことを知っていただければと思っております。ブースでは濃密な情報共有を行い、弊社サービスや詳しい実績をご説明できればと思っております。
――ブースの設営の方は順調でしょうか。
金田
けっこうギリギリですね。間に合わせるようがんばります(笑)。
企画からプログラミング、データの開発まで弊社におまかせを
――ゲーム制作において信念をお聞かせいただけますでしょうか。
金田
データ提出の納期を守るのは当然として、中国などの海外のスタジオに委託する際にとくに懸念されるのがカルチャライズです。「日本の文化を理解しているか」、「IPものを制作できるのか」という部分と、微妙なニュアンスを含む言語面かと思います。
――言語に関しては、金田さんのキャリアからすると問題なさそうですね。
金田
そうですね。コミュニケ―ションでつまづくと、納期にも影響が出てきますが、弊社であれば、双方の文化に精通した担当が何名もいますので、クライアントさんの不安は解消できます。また、クオリティーの高い仕事ができるかと思います。
――クオリティーとはどういう部分に関してでしょうか。
金田
弊社のスタジオでは、積極的に新しい技術を取り入れるようにしています。以前、日本国内のクライアントさんにから新しいツールを導入したいという要望がありました。その際は、ツールを使えるスタッフを派遣して、技術面でのサポートをしたこともあります。新しいツールを使えるデザイナーが多数いるのでクオリティーの高いモデリングを提供できます。
――柏さんから見た、日本のゲーム開発現場はどのようなものでしたでしょうか。
柏
実際に中国で働いていた経験があるので、そことの比較にはなりますが、日本の企業のほうが優れていると思える部分が多々あります。また、外注を依頼する際、基本的には全部丸ごとお願いできる会社を第一に探しているのが印象的ですね。ただ、日本国内に限定すると、一式をお願いできる会社さんはどうしても限られてしまいます。
――そこが、御社に委託するメリットでもあるでしょうか。
柏
企画からプログラミング、データの開発までを一気にやれるのが強みだと思います。私たち7KINGDOM株式会社は、ゲームの企画や2Dデザインからエンジンを使用した最終工程に至るまでのパッケージサービスの実績を持ち合わせています。中国とカナダのスタッフの実力も十分ですし、私たちはクライアントのニーズに沿ってゲームを完成品まで確実に開発する能力を持っているつもりです。
端的に言えば、弊社はすでにベンチマークとして12年の経験をもとに、クライアントの方々に制作プロセスと高いクオリティーを保証できると考えております。さらに言えば、私たちがもっとも重要視しているのは、開発を円滑に進めるコミュニケーション能力と調整力です。ゲーム開発市場の標準を上回るサービス体制を7KINGDOM株式会社は持っていると自負しているのです。
これからも、クライアントからの生産ニーズに応えると同時に、プロジェクトの過程で遭遇する問題に対して質の高いソリューションを提供していければと思っております。
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中国での開発現場の様子
テンセントなどに卒業生を輩出する人材育成システムの日本導入を目指す
――人材育成という話が最初の事業内容の説明でありましたが、詳しくお聞かせいただけますでしょうか。
金田
中国国内にて、ゲーム業界クリエイターの育成事業をしています。弊社の母体となる会社は美術系の大学が多いエリアにあるんです。そこを卒業された方々がゲーム開発会社に就職する前に、即戦力となるようなスキルを学べる学校を経営しています。業界の最新のトレンドや、現場の最新技術を学生に提供できるのが強みです。実績としては、卒業生がテンセントやNetEase Games、アリババゲームスなどで活躍しています。
――育成事業はいつごろから展開しているのでしょうか。
金田
15年ほど前からです。
――日本の専門学校とは違うのでしょうか。
柏
日本の専門学校は学費さえ支払えば入れるところが多いと思います。中国のクリエイター養成スクールの場合は、中国の美大を卒業した学生のなかでもエリートクラスの学生でなければ入学できません。そこでは、実践に対応できるような技術を習得させるような場所を提供しています。年間1200名の学生が入ってきて。半分以上がほかの企業に就職します。あとは、自社のほうで吸収させていただくというような感じになっています。
――日本でもそのような事業を考えているのでしょうか。
金田
中国側で成功した範例があるので、将来的には日本でも同様の人材育成をしたいと思っています。2025年問題のような日本が抱える問題によって少子高齢化が進むと言われています。人材面で頭を悩ませるケースが増えてくるでしょうから、その解決につなげたい気持ちもあります。もちろん中国のモデルをそのまま踏襲するのではなく、日本の風土に合ったモデルで展開できればと思います。
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クリエイター養成スクール
――会社としての短期的な目標と、長期的なビジョンをお聞かせください。
金田
短期的な目標としては、日本のゲーム業界に参入したばかりなので、可能な限り多くの企業に弊社の名前を知っていただきたいですまた、現状のサービスを日本に沿ったモデルに最適化して、サービス品質の向上を目指しています。
3年前後で100人前後のチームを発足させて、独立した日本の制作チームとしてご利用いただけるような体制を取れればと考えています。また、いまやゲームの大きなマーケットは、北米を中心とした欧米、日本を中心とした東アジアなどでの販売数だけでなく、中国での成功が必要。そこでの巨大なゲームファン獲得も視野に入れる必要があると思います。
クライアントの方々が中国でもさらなる成功を狙うのであれば、中国から世界や日本に高い品質のサービスを発信するだけの開発体制を持てる私たち7KINGDOM株式会社だからこそ、ワールドワイド展開のできるIP創出のお手伝いもできると思っております。
――なるほど。
金田
長期的な目標のひとつは、制作チームをより大きくすること。そしてもうひとつは、IPを創設して自社開発ゲームをパブリッシングすること。私自身、ずっと思い描いている夢です。
――最後に、今後の意気込みなどをお聞かせいただけますでしょうか。
金田
現状のメンバーは5人。営業の李澤嶢は、この業界とは関係ない業種から弊社に入り活躍しています。それぞれの強みを活かして、さまざまなニーズに応えられればと思います。また、すでに数名強力な助っ人となる方の入社の話も進んでおり、より強固な事業体制が整えられるよう努めていきたいと思います。