2010年12月2日にプレイステーション3で発売されたRPG『テイルズ オブ グレイセス エフ 』。約14年の月日を経て、より美しく、遊びやすくなったリマスター版が2025年1月16日に発売(Steam版は2025年1月17日発売予定)。 本稿では2024年9月2日にバンダイナムコエンターテインメントで行われた『テイルズ オブ グレイセス エフ リマスター 』メディア体験会の模様と、シリーズ総合プロデューサーの富澤祐介氏と本作のプロデューサーの石川結貴氏へのインタビューをお送りする。 主人公アスベルと記憶のない少女ソフィ、王子リチャードの友情をベースに、世界の命運を握る戦いを描いた 『テイルズ オブ グレイセス エフ』 。リマスター版ではグラフィックが向上しているほか、遊びやすさを追求したさまざまな要素が追加されている。まずは、生まれ変わった“守る強さを知るRPG”のプレイ感から紹介していこう。
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試遊レビュー:グラフィックと遊びやすさの向上がうれしい メディア体験会の試遊範囲は、3章“ラント奪還編”のバビロン城から章のクリアーまで。グラフィックと遊びやすさの向上をうたうだけあって、最初に目に留まったのはゲーム全体を通してさらに美しくなったビジュアルの数々でした。
とくにイベントシーンとグルーヴィーチャットの鮮明さが際立ちます。本作はNintendo Switch、プレイステーション5(PS5)、プレイステーション4(PS4)、Xbox Series X|S、Xbox One、PC(Steam)でリリースされますが、とくにSteam版は最大で解像度3840×2160、4K対応、120fps対応とのこと。きめ細やかな映像美により、没入感がアップすること間違いなし。 遊びやすさも飛躍的に向上していて、エンカウントOFF機能、ダッシュ機能、目的地表示、時限イベントのマーク表示、イベントスキップなど、追加要素を挙げればキリがないほど。こまめなオートセーブのおかげで、ボス以外のバトルで負けてもその場で再戦できるのがうれしいですね。
経験値5倍、アイテム入手確率2倍など、さまざまな便利機能を開放できるおなじみの“グレードショップ”が初回プレイ時から利用可能なのも、リマスター版の大きな特徴。プレイスタイルに合いそうなものからどんどん購入して活用していくと、より本作が遊びやすくなります。
そのほか、本作にはオリジナル版で配信されたDLCが80種類以上も収録されています。シリーズの歴代衣装や学園衣装に着せ換えれば、いつもと違う気分で冒険できるはず。
美しいビジュアルを眺めながら、自分好みの設定でプレイできる 『テイルズ オブ グレイセス エフ リマスター』 。本作はオリジナル版のファンから初めて触れる人まで、多種多様な要望にこたえてくれる、懐が深いゲームに進化していました。
インタビュー:「遊びやすくなる機能を豊富に入れさせていただきました」 ここからは、 『テイルズ オブ』 シリーズ総合プロデューサー富澤祐介氏と、本作プロデューサーの石川結貴氏のインタビューをお届けしていきます。
富澤祐介氏(左)と石川結貴氏(右)。手で30周年を形作ってもらいました。
――『テイルズ オブ グレイセス エフ』をこのタイミングでリマスター化した理由を教えてください。
石川
ひとつの特定の理由があったという訳ではなく、複合的な理由があります。しかし、何よりも長く『テイルズ オブ』シリーズを、『グレイセス』を愛してくださっている方がいらっしゃるからこそリマスタープロジェクトが立ち上がっております。 ――2021発売の『テイルズ オブ アライズ』の人気によってグローバルなファンがさらに増えて、『テイルズ オブ グレイセス エフ』の認知度が高まっていったのでしょうか。
石川
『テイルズ オブ グレイセス エフ』 に限らずですが、『テイルズ オブ アライズ 』は昔の作品に目を向けていただく機会になったと思っています。 ――『テイルズ オブ グレイセス エフ』をリマスター化する際、遊びやすさという点にいちばん力を入れられたのでしょうか。 石川
まずリマスターといえば“この機能”というような追加要素を搭載し、『テイルズ オブ グレイセス エフ リマスター』以降のタイトルが発売される際のディファクト・スタンダード(事実上の標準)とする目的がありました。また、『テイルズ オブ』シリーズならば“この機能”がほしいというものも、本作を皮切りとしていくつか入れさせていただいています。 今回、遊びやすくなるような機能を豊富に入れさせていただきましたが、オリジナル版プレイヤーも初めて遊ぶ方にとっても手に取りやすくなるためのひとつのきっかけになると、チームとしてうれしく思います。 ――本作ではグレードショップが1周目から利用できたり、エンカウントをOFFにできたりします。ゲームの難度が変わってしまうような要素を追加するにあたって配慮した点はありますか。
石川
追加機能については、ゲーム中にいつでも切り換えられるように意識しました。目的地表示や時限イベントの砂時計マークの表示などは便利な機能ですが、迷ってこそRPG体験だというお客様もいらっしゃいますので、そういう方は機能をOFFにして遊んでいただけます。経験値2倍も同様で、ONにしていると簡単に勝てすぎると感じた方は、経験値2倍をOFFにしてオリジナル版ならではの難度でプレイしてほしいですね。
富澤
よい思い出を今の時代に合わせた体験として提供するというのが、リマスターに求められていることだと思います。そこに向き合うことがリマスター化の最低ラインなのかなと。
――『テイルズ オブ グレイセス エフ』における戦闘システムの魅力についてお聞かせください。
石川
『テイルズ オブ グレイセス エフ』ではスタイルシフト・リニアモーションバトルシステムという戦闘システムが特徴で、1キャラクターごとに2通りの戦い方が可能となっています。多くのゲームではバトル中にスタイルをキッチリと切り換えますが、ひとつのコンボの中でスタイルを組み合わせつつ切り換えられるのは、この作品ならではだと思います。 また、回避主体のバトルシステムとなっている点は、昨今のアクションゲームに通じる要素です。横薙ぎにはバックステップ、縦振りにはサイドステップといった具合に、鮮やかに回避して反撃するバトルの考え方は、Wiiで『テイルズ オブ グレイセス』が発売された2009年から取り入れています。現代のアクションゲームが好きな人に遊んでいただいてもおもしろいものだと自負しておりますので、ぜひプレイしてみてください。
――『テイルズ オブ』シリーズは豪華な特装版も特徴となっていますが、今回の特典はどのように決められたのでしょうか。
石川
シリーズを発売するたびにさまざまな特典や限定版を作ってきましたが、まず“どうすればユーザーから喜ばれるのか?”という前提をもとに、販売チームと協議を重ねました。その結果、日常で使いやすいものから作品を象徴するシーンを使ったものまでを取り入れ、総合的に判断して特装版を構成しました。 個人的には、アスベルとソフィが遠景を眺めているアクリルジオラマが推しですね。ピンバッジも実用的で、“テイルズ オブ フェスティバル”の会場に向かう途中にピンバッジを付けたデコバッグを下げたファンの方もいらっしゃいましたので、日常に取り入れていただけたらうれしいです。ほかにも秘奥義のカットインのイラストカードといった、印象的なシーンをピックアップしたものもオススメです。
――リマスター化の要望が多いほかの作品についてお聞きしてもいいでしょうか。
石川
X(旧Twitter)などでリマスター化の要望が多い作品はある程度把握していますが、公式での集計はしていないですね。
富澤
ファンのみなさんのご要望は、リマスター化する作品へのいちばんの指標です。総合的に判断して、今回は 『テイルズオブ グレイセス エフ』 の発表にいたりました。日頃からXのお声を読ませていただき、その熱さや想いを受け取らせていただいています。 2019年の“テイルズ オブ グレイセス Anniversary Party”は、それまでやれていなかった作品単体でのイベントでした。そのときファンの皆様からまた遊びたいという熱量を感じたことが強く記憶に残っており、それが『テイルズオブ グレイセス エフ』のリマスター化にいたったきっかけのひとつとなっています。 ――さまざまなハードで過去の名作がリマスター化されることが増えていますが、そのあたりも意識されてのプロジェクトとなりますか?
富澤
昨今の市場においては、PCも含めてハイエンドからカジュアルなものまで、さまざまなゲーム体験がお客様にマッチしています。市場が開放されてきたからこそ、これまで過去作を遊ぶ機会がなかった方々のために、我々も広く作品を出していきたいですね。私もチームのメンバーも、対応ハードと言語をできる限りサポートしていくことが、リマスター化への必須条件だという話をしていました。 ――30周年でこれだけタイトルが出て、なおかつ密度の濃いシリーズもなかなかありませんよね。
富澤
お客様から日々反応をいただくことでありがたみを強く感じ、我々も使命感を覚えています。本来はシリーズを発売順にお出しするのが喜んでいただけるのかなと思うのですが、さまざまな事情があって順番にこだわりすぎると何も出せずに歯がゆい思いをした時期があったんですね。 その経験があって、これだけたくさんのタイトルをそれぞれファンの方に待っていただいているのだから、出せる見込みがあるものからどんどん着手していこうという形に切り替えました。長い目で見て、1作でも多く展開していくことで皆様にも喜んでいただけるだろうと。
――最後に、シリーズ30周年に合わせてリマスターだけでなく新作も制作されているのかお聞かせください。
富澤
チームとしてはブランド自体が成長していけるように、つねに動き続けています。新作については未来に向かってマイルストーンを作っており、よい発表ができるように開発チーム、プロデュースチーム、宣伝チームともどもがんばっていきたいです。 30周年はファンの皆様といっしょにお祝いできるありがたい節目なので、プロジェクトを彩れるような展開を進めていきたいですね。それらの情報を定期的に皆様にご提供できるように30周年を盛り上げていきます。