2024年9月4日にプレイステーション5(PS5)、Xbox Series X|S、PC(Windows、Steam、Epic Games Store)用ゲームとして発売された、ナラティブ型ホラーアドベンチャーゲーム『The Casting of Frank Stone』(ザ・キャスティング・オブ・フランク・ストーン)。
本作はSupermassive Gamesが開発、Behaviour Interactiveが発売を手掛ける作で、人気非対称型対戦ゲーム『Dead by Daylight』(以下、『DbD』)の外伝作品だ。田舎町のシーダーヒルズと不気味な館オーガスティン邸を舞台に、殺人鬼フランク・ストーンの死と再生にまつわる物語を、さまざまなキャラクターの視点から紐解いていく。
本稿ではそんな本作の特徴や魅力をプレイレビューとともにお届けする。
過去と未来、それぞれの時間軸で展開される恐怖の物語
本作は3つの時間軸に分かれている。ひとつ目は1963年のシーダーヒルズ製鋼所。体験版でもプレイできたチャプター1であり、連続殺人犯フランク・ストーンと警察官サムの戦いがくり広げられる。チャプター1のラストでフランク・ストーンはサムの銃弾によって倒れ、命を失う。のちに製鋼所は閉鎖となる。
警察官のサム。行方不明となった赤子を捜して製鋼所を訪れ、そこでフランク・ストーンと対峙する。
殺人鬼フランク・ストーン。かつて製鋼所に務めていたが、ある日を境に精神が病む。のちに殺人鬼へと豹変する。
ふたつ目は1980年のシーダーヒルズ。チャプター1の17年後の世界で、クリス、リンダ、ハイメ、ロバートの4人が、閉鎖されたシーダーヒルズ製鋼所で『殺人工場』という自主制作映画を撮影する。その際、4人は亡霊となったフランク・ストーンと遭遇し、底知れぬ恐怖を体験することに。
クリス。ハイメの彼女で、好奇心が旺盛。映画『殺人工場』の監督。
リンダ。ハイメの幼なじみで真面目な性格。カメラマンと演出を担当。
ハイメ。仲間想いの優しい青年。映画の主役。
ロバート。警察官サムの息子で、ホラーが大好き。照明を担当。
3つ目は2024年。曰く付きの遺物を集める謎の収集家オーガスティンから、「『殺人工場』の映画フィルムを買い取りたい」という手紙を受け取ったマディソン、リンダ、スタンは山奥にあるオーガスティン邸を訪れる。そこで3人は『殺人工場』の映画フィルムとオーガスティンの秘密を知ることとなる。
オーガスティン。遺物コレクター。とくに殺人工場のフィルムを熱心に収集している。
マディソン。母親が亡くなり、『殺人工場』のフィルムを受け継いだ。
リンダ。ホラー映画監督。かつて『殺人工場』の映画を撮った人物。
クリス。ある人物から殺人工場のフィルムを格安で譲り受ける。それをオーガスティンに高値で売りつけようと画策する。
チャプター2以降は1980年と2024年を軸に進んでいき、さまざまな登場人物の視点から物語が紡がれていく。本作のタイトルにある“キャスティング”(配役)は、この“さまざまな視点”のことを指している。各登場人物に焦点を当てることで、各々の人間性がわかりやすくなり、感情移入もしやすくなる。さらにその人物の視点から間近で物語を見ることで、恐怖感や臨場感がより強く感じられるようになっていたのも印象的だった。
本作はカットシーンとTPS視点の操作パートのふたつで構成されているが、どちらかと言えばカットシーンが多め。純粋なシネマティックホラーとしても楽しみやすい作りになっている。
あなたの選択によって、登場人物たちの運命(物語)が大きく変わる
本作はカットシーン中に表示されたプレイヤーの選択によって登場人物たちの運命が変化。その後のストーリーが大きく変わる仕組みになっている。選択の中には制限時間のあるものもあり、咄嗟の判断が求められることも。登場人物たちがどういう結末を迎えるのか、しっかりと見届けよう。
メインメニューにある“編集室の床”にアクセスすれば、プレイ済みの地点に戻り、別の選択を選んで、異なる分岐を進めることもできる。分岐の多さも魅力のひとつで、場所によっては登場人物どうしの関係(好感度)によって新たな選択肢が追加されることもあるので、いろいろなルートを試すリプレイ性もある。
なお、この手のアドベンチャーゲームでは小まめなセーブがセオリーだが、本作はオートセーブにのみ対応。手動セーブできないため、選択の直前に戻って即座にやり直すということができない。やり直す場合は毎回編集室の床を利用しなければならない。
ちょっとしたアクション操作“クイックタイムイベント”もあり
TPS視点の操作パートではマップ上を自由に移動しながら、アイテムを拾ったり、資料を読んだり、謎解きギミックに挑戦したりできる。場所によっては収集品やイースターエッグが隠されているため、念入りな探索が必要なことも。
収集要素の中には、キラーレリックと呼ばれる『DbD』に登場する殺人鬼のデフォルメ人形もある。
加えて、本作にはクイックタイムイベント(QTE)と呼ばれる、制限時間内にアクション操作に挑戦する要素もある。アクション操作と言っても、ボタンの連打やポインターを動かして攻撃など、簡単なものしかない。ただしカットシーン中にいきなり発生するため、ムービー中もボタン・キーから指を離してはいけない。このクイックタイムイベントが物語にほどよい緊張感を与えていた。
特殊な8ミリカメラを使って敵を撃退する場面もある。
そんなアクション操作の中でも、多くの人が苦手意識を持ちそうなのが、スキルチェックだ。これはポインターが成功ゾーンを指しているあいだに、対応するボタン・キーを押してポインターを止めるというもので、『DbD』ではおなじみのシステム。
ほかのアクション操作同様、突然発生する上に、タイミングよくボタンを押さなければならないため、焦る人も多いはず。苦手な人は難易度をいちばん簡単な“オブザーバー”にしておこう。なお、難易度はほかのアクション操作にも影響するので、純粋にストーリーを楽しみたい人もオブザーバーを選んでおくといい。
難易度“オブザーバー”でのスキルチェック。
難易度“サバイバー” でのスキルチェック。
難易度“サクリファイス” でのスキルチェック。
『DbD』の小ネタ満載! 粋な演出も楽しめる
キラーレリック以外にも、探索パートで調べられるものの中には、『DbD』にまつわるアイテムが数多く存在する。ある殺人鬼のマスクや、殺人鬼の人形が装飾されたオルゴールなど、『DbD』ファンであれば思わずうれしくなるような一品と出会える。
またアイテムの取得音が『DbD』と同じだったり、実際に発電機を回してスキルチェックしたりといった粋な演出も楽しめる。
良質なシネマティックホラー。『DbD』ファンならより一層楽しめる! ただし規制演出は不満が残る
体験版をプレイした際は『DbD』の小ネタが満載なだけかと思っていたが、物語を読み進めていくと意外な形で『DbD』本編と絡むようになっていたことに衝撃を受けた。ネタバレになるので多くは語れないが、結末のひとつを見た筆者は「そこに繋がるのかぁ」と、思わず感嘆してしまった。各所に散りばめられている小ネタも含め、ファンであれば間違いなく楽しめる内容となっている。
ふたつの時間軸が交差していく物語と演出は秀逸で、純粋なシネマティックホラーとしての完成度も高い。『DbD』を知らなくても楽しめると思うが、本編の世界観ぐらいは頭に入れておいたほうがいいかもしれない。
ちなみに筆者はホラー、とくにジャンプスケア(ビックリ)が死ぬほど苦手。しかし、そんな筆者でも本作をエンディングまで一気にプレイできた。本作の怖さは不気味さやパニックホラーに重きを置いているため、ジャンプスケア要素は片手で数えるほどだった。心臓に悪いようなホラーを求めている人は物足りないかも。
ストーリーはかなり楽しませてもらったが、ひとつだけ不満な点もあった。それは演出に関する規制だ。本作にはグロテスクなシーンが少しだけあるのだが、それらのシーンでは過度な残虐描写対策として、画面が暗転したり、死体が消えたりする箇所がある。仕方がないとはいえ、せっかくの盛り上がりに水を差される形になっていて、残念な印象を受けた。
『DbD』要素が満載の『ザ・キャスティング・オブ・フランク・ストーン』はプレイステーション5(PS5)、Xbox Series X|S、PC(Windows、Steam、Epic Games Store)にて、好評発売中だ。ぜひ本作で『DbD』の新たな一面を体験してみてはいかがだろうか。