リメイク版『サイレントヒル 2』体験会リポート。アンジェラは原作と顔が似ていないが、演技力で魅力を表現。クリーチャーの亜種や新解釈のエンディングの追加も

by西川くん

更新
リメイク版『サイレントヒル 2』体験会リポート。アンジェラは原作と顔が似ていないが、演技力で魅力を表現。クリーチャーの亜種や新解釈のエンディングの追加も
 KONAMIより、2024年10月8日にプレイステーション5とPC(Steam)で発売予定のリメイク版『SILENT HILL 2』(以下、『サイレントヒル 2』)。開発はポーランドのゲームスタジオ・Bloober Team(ブルーバーチーム)が手掛けている。

 発売の2ヵ月前となる2024年8月8日に世界最速となるメディア先行体験会“
『SILENT HILL 2』Tokyo Media Premiere”がコナミデジタルエンタテインメント本社で開催された。この体験会ではトークステージやQ&Aセッション、さらには囲みインタビューが設けられ、開発チームに直接話を訊くことができた。

 本記事では体験会の模様と、開発陣のトーク部分をお届け。体験レビューについては別記事で公開しているので、ぜひチェックしてみてほしい。

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先行体験会場の様子

 会場には『サイレントヒル 2』のメインビジュアルとクリーチャーの大きなパネルが登場。また、メディア向けにTシャツやボトルなどのグッズセットが配布された。グッズはゲーム内にも登場するピザボックスに入っている細かい仕様。

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スモークが炊かれた試遊会場は霧に包まれた街さながら。さらに暗い中でのプレイと雰囲気は満点だった。

開発陣トークパート

 試遊に先駆けて、『SILENT HILL』シリーズプロデューサーの岡本基氏より本作の特徴が語られた。岡本氏は、肩越しの視点に変更されていることや、バトルや謎解きなどが現代的にアレンジされていることなどをアピール。

 その中で、クリーチャーの亜種として“スパイダーマネキン”が追加されていることが明かされた(デザイン自体はマネキンと同じ)。地面や壁を這い回るマネキンとなっているようだ。また、敵の配置はオリジナル版とは異なっているとのこと。

 さらにエンディングの追加も明らかにされた。既存のエンディングに加えて、新解釈を加えた新しいエンディングが楽しめるとのことだ。
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会場ではBloober TeamのMateusz Lenart氏(左)とMaciej Glomb氏(右)が各メディアの試遊の様子を興味深く見ているのが印象的だった。

Q&Aセッション

 Q&Aセッションではプロデューサーの岡本基氏、コンポーザーの山岡晃氏、コンセプトアーティストの伊藤暢達氏、Bloober Teamのクリエイティブディレクターを務めるMateusz Lenart氏、リードプロデューサーのMaciej Glomb氏の5名が登壇した(以下、各登壇者の敬称略)。

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Q.オリジナル版に携わった山岡さん、伊藤さんとリメイク版の制作を進めたことについて、岡本さんはどう感じましたか?

岡本
 オリジナル版は長く愛されているタイトルで、ファンの方々にも深い考察をしていただいています。その制作に携わったおふたりのおかげで、深い考察に関わるような設定を掘り下げることができて、とてもよかったと思っています。

Q.リメイク版で書き下ろされたBGMはありますか?

山岡
 楽曲はすべて作り直しています。オリジナル版の曲をパーツとしては使っていますが、基本全曲変えています。トータルで言うと9時間ほどのBGMになるわけですが、9時間もの楽曲をどうやってサウンドトラックにするのか考え中です(笑)。

 オリジナル版の楽曲も愛されていてすごくうれしいのですが、やはり25年前の楽曲ですから、BGMもリメイクして、現代の新しさを持って、これから初めて
『サイレントヒル 2』に触れる人にも感動を与えたいなと思い、全曲変えました。

Q.オリジナル版とクリーチャーの違いはありますか?

伊藤
 敵の動きですとか、バトルデザインに関連する部分での違いはあります。新しいビジュアルのクリーチャの追加はありません。ただ、とある人物の物語に関わる部分で、当時「こうすればよかったな」と思った部分をリファインしています。その違いを考察していただくのも、今回の楽しみのひとつであることをぜひ覚えておいてください。

Q.Bloober Teamが開発会社として、とくに注目してほしい部分はありますか?

Mateusz
 我々は原作に非常に愛情を持っています。本作では原作のゲームフローやレベルデザインなど、あらゆる要素を見つめ直しました。体験すべてを通して、一体感のあるゲームになることを目指しました。

Q.『サイレントヒル 2』はとても愛されているタイトルなので、信頼できるチームに開発を依頼したかと思います。なぜBloober Teamを選ばれたのでしょうか?

岡本
 リメイクするにあたり、世界中のあらゆるスタジオが候補にあがりました。実際にBloober Teamのスタジオに訪れたところ、いちばん愛情を感じたためBloober Teamにお願いすることにしました。

Q.オリジナル版と比べると冒頭のシーンが短くなっていると感じました。テンポ感などは意識されたのでしょうか。

Mateusz
 難しい判断ではありましたが、たしかに原作で間延びしている部分でもありました。序盤の部分にもう少しアクションを詰め込んだりして、今風の盛り上がりを追加することも検討しましたが、結果的には原作に極力近づけつつも、ゲームテンポがよくなるように変更しました。

Q.『サイレントヒル』シリーズのこれからの展開において、今回のリメイク版『サイレントヒル 2』はどのような存在になるのでしょうか?

岡本
 原作が、ファンの皆さんにとってのスタンダードなタイトルであり、深い思い出を持つ作品だと思っています。リメイク版を自信を持ってお届けすることで、ファンの皆さんにこれ以降の『サイレントヒル』シリーズのクオリティーを保証すると言いますか、今後もKONAMIが自信を持ってお届けしていきたいと思っています。

Q.オリジナル版に関わった方々は全部変えたかったが、Bloober Teamが反対したというインタビューを読みました。具体的にどのような意見交換があったのでしょうか。

岡本
 本当に最初のスタート時には、クリーチャーデザインからまったく変えようといった議論もありました。サウンドについても、新しい方向性を模索していましたね。リメイク作品なのですが、完全に新しいゲームにするような、大胆な意見もありました。

Maciej
 そういった案もありつつ、原作から極力変えない案もありました。最終的には現代で通用する作品にしたい思いがあり、ある程度の意向を汲みつつ、現在の形に落ち着きました。

Q.山岡さんと伊藤さんは、リメイク版に関わってどのような気持ちだったのでしょうか?

山岡
 セルフカウンセリングと言いますか、約25年前の自分の生き方ですとか、何を考えてどう生活していたのか考えることから、リメイクに挑みました。結果として、当時の自分のことは思い出せませんでした。どんなことを考えてオリジナル版に挑んだのか思い出せなくて、自分との問答の毎日で、苦しかったです。そのままの楽曲で作り直すなら逆に簡単だったのですが、やはり現代のプレイヤーにもゲームを受け入れてもらいたくて、今回の楽曲制作に挑みました。

 当時は、じつは僕はお金がなくて貧乏だったんです。そのときの曲を聞くと、ベースギターの音が曲に入ってないんですよ。お金がなくて、ベースが買えなかったんです。ですから、ギターのチューニングでベース音にしていたんです。ギリギリの状況でも、少しでもいいものにしたいと考えていたのかなと思いますが、それらを全部忘れてしまって(笑)。そんなことを考えながら制作していましたね。

伊藤
 正直に言ってしまうと、2019年ころに岡本さんから依頼を受けたときに、僕は『サイレントヒル 2』をオリジナル版からいじる必要はないと思っていたので、断るつもりでした。ただ、参加せずにまったく違う方向性に行ってしまう可能性よりも、参加して方向性がブレないようにしたほうがいいかなと。

 
『サイレントヒル 2』のストーリーテリングは、ゲームのコアとなる部分です。そこは原作から引き継がれるべき要素なので、そこは尽力しようと参加することにしました。先ほど「変える、変えないの意見交換があった」といった話がありましたが、コアとなる外側の部分はガラリと変えたほうがリメイク版を作る意義があると依頼を引き受けたときは思っていたので、そういった意見を出していましたね。

 最終的にこういった形になりましたが、個人的には
『サイレントヒル 2』を遊んだことがない人に向けて、原作の魅力やインパクトを、当時よりもブラッシュアップされた形でお届けすることを目標にしていました。

囲みインタビュー

 イベント終了後にはアフターパーティーが開催され、ゲームをモチーフにしたメニューやケーキが振舞われたほか、各国メディア向けの囲みインタビューも実施された。その模様をお届けしよう。
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――訪れることができるスポットが増えていましたが、なぜ増やしたのでしょうか。

Mateusz
 まず肩越しの視点にしたことで、オリジナル版とは異なるマップ構成にする必要がありました。屋外のマップ、つまりサイレントヒルの街並は、原作からほとんど変えていません。屋内のマップについては、肩越し視点で探索が楽しめるように、原作から一新してマップを構築しています。

――カメラ変更により演出や体験も変わっているかと思いますが、ポイントや見どころはありますか?

Mateusz
 肩越し視点ではありますが、なるべく原作で感じられた印象に近づけるようにしています。原作ではカメラが固定されていたので、何が見えるのか、何が見えないのかをゲーム側が決められます。本作は自由に視点が変えられるため同じ手法が取れません。それでも原作の印象に近づけるために、たとめばクリーチャーのマネキンの動きを変えています。マネキンは視界から離れると、ジェイムスから離れて隠れるような動きをします。

 また、原作では扉を開けるたびにロードが入っていましたが、本作ではシームレスに移動するので、同じような演出は取れません。つねに移動できることを念頭に置いて、恐怖の演出につなげられるように気を付けました。

――今回初めて遊ぶ人に向けて、気を使ったポイントはありますか?

岡本
 原作にもありましたが、本作にも難易度選択があります。バトル難易度変更もありますし、謎解き難易度変更にも対応していますので、幅広い層に遊んでいただけるかと思います。また、日本版には日本語吹き替え対応を決めました(※試遊版は英語ボイスだった)。字幕でゲームを遊ぶことに慣れていない人も、遊びやすいかと思います。

――謎解き難易度を下げると、どのように難度が下がるのでしょうか?

Mateusz
 探索中に見つかるメモの情報量が増えて、謎解きしやすくなります。また、探索している際に見つかる周囲のヒント量もアップします。謎解きの答え自体が変わることもあります。

岡本
 謎解き難易度選択があるのはシリーズの伝統でもありますから、今回がんばって導入してもらいました。マルチエンディングのゲームですから、周回プレイの際に難易度を変更して遊んでみるのもいいと思います。

――アクション部分における、恐怖演出を狙いを教えてください。

Mateusz
 原作と同じクリーチャーを肩越し視点で見ることになり、どうしても原作と変わってくる部分もあります。クリーチャーの挙動を、今回の視点に合わせて調整する必要があったため、複数の挙動を採用し、恐怖感を得られるようにしています。

 たとえばライングフィギュアは、地上を這い回ることもあれば、立ち上がって飛び道具で攻撃してくることもあります。マネキンならば、飛び掛かってきたり回避もしたり、さらに戦闘から離脱することもあるでしょう。さまざまな挙動を取り入れることで「何をするのかわからないな」といった恐怖感を演出しています。

――グラフィックの進化で狙ったことを教えてください。

Maciej
 伊藤さんとも議論と研究を重ねて、いまのスタイルのビジュアルにたどり着きました。とくに気を付けていたのは、霧の演出に力を入れて、雰囲気重視にすることでした。また、グラフィックが向上したからといって、グロテスクなゴア表現は原作の趣旨とは異なるので、採用しないことを徹底していました。

伊藤
 とくに屋外の霧の演出については、口酸っぱくなるほど意見を出しました。ですので、チームの皆さんには嫌な感情を持たれているかもしれません(苦笑)。ただ結果として、ジェイムスのストーリーに関わる部分をグラフィックで表現できたと思っているので、今回のリメイクでいちばん成功した部分なんじゃないかなと、僕自身は思っています。

――フェイシャル表現がとても素晴らしかったです。Bloober Teamは主観視点のゲームが多い中、どのような方法でノウハウを積み重ねたのでしょうか。

Maciej
 原作は物語重視のゲームです。人気が高いことからも、リメイク版への期待はかなり高くなるだろうと覚悟していました。KONAMIさんとも話し合って、カットシーンについては完璧なクオリティー以外許されない気持ちで挑みました。とくに表情や口回りの動きは、妥協しないようにしましたし、キャラクターグラフィックもパートナーチームのおかげで、いいものに仕上がりました。

岡本
 Bloober Teamはたしかに三人称視点のゲーム経験が少ないことはわかっていましたが、それを乗り越えてでも作ってくれると信じていました。

――アンジェラはとくにキャラクターデザインが原作と異なりますが、何か狙いがあるのでしょうか。

岡本
 今回、キャラクターをリアルに表現するとなったとき、人間の顔をイチから手作りするのではなく、俳優さんの顔の動きをキャプチャーしないとリアリティーが出ないと考えました。ですので、実在する俳優さんからキャラクターデザインが生まれた、というのが実際のところです。

 俳優さんはかなり議論を重ねて選んでいます。見た目の印象が違うといった意見は理解できますが、演技力も含めて俳優さんを選びました。オリジナル版と比べて顔が似ていないとしても、演技力で彼女の魅力が表現できると考えています。

――サバイバルホラーゲームが多くある中で、『サイレントヒル 2』ならではの魅力を教えてください。

Mateusz
 まずはストーリーです。プレイヤーそれぞれの胸に刻まれるような物語が盛り込まれたゲームですから、本作で欠かせない要素です。また、作品全体の雰囲気が素晴らしいです。さまざまなゲームが発売されましたが、当時としても『サイレントヒル 2』でしか見られない雰囲気だったと思います
 
Maciej
 キャラクターも魅力です。ゲームのみならずさまざまなメディアでも、時間が経てば物語の印象が薄れてきて忘れてしまうものだと思います。ですが、個々のキャラクターの印象が強ければ強いほど、まるで実在していたかのように深く心に刻まれます。『サイレントヒル 2』のキャラクターたちは、それを実感できるように設計されていると思います。

岡本
 私もやはりストーリーです。決してハッピーエンドにはならないような展開が魅力だと、個人的には思っています。

山岡
 このシリーズを含めてですが、ゲームはひとつの体験です。ゲームはちぐはぐな部分もたくさんありますが、どう遊んだかではなく、どう体験したかだと思います。だからこそ長く愛されているシリーズだと思います。「このシステムがよかった」という話ではなく、独特の意見をファンたちが持っているんですよね。そういったところが、独特の魅力なのかなと思います。

伊藤
 当時、チームにデザイナーが僕を入れて数人しかいませんでした。その中で、どうやってゲームを作ればいいのかもわからない。開発期間も決まってて、しかも予算も少なかった。議論を重ねることしかできませんでした。ですので、苦肉の策としてバトルデザインよりも、ストーリーを楽しむ道のりに特化したゲームを目指しました。

 本作ならではの魅力は、ゲームを進めていく道のりが、主人公の抱える物語になっていることです。1周するだけでは物語の全貌はわかりませんが、2周目になればきっと気づくこともあると思います。

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