【ミス・ユースケ】のおすすめゲーム
『シチズン・スリーパー』
- 対応ハード:Switch、PS5、PS4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC
- 発売日:PC(Steam)版2022年5月5日発売、Xbox SeriesX|S、Xbox One版2022年5月6日発売、Switch、PS5、PS4版2024年2月1日発売
- メーカー:Jump Over The Age
- 価格:PC(Steam)版2300円[税込]、Xbox SeriesX|S、Xbox One版2350円[税込](Xbox Game Pass/PC Game Pass対応)、Switch版2570円[税込]、PS5、PS4版2640円[税込]
- 『シチズン・スリーパー』Steamページ
- 多くを語らず、想像力にゆだねる演出
- 翻訳文の雰囲気がとにかくいい
- プレイヤーを甘やかさないSF的な難解さ
文字から頭の中に世界が広がる。だけどそこはディストピア
だからといってグラフィックが不要かと問われるとそんなことはなく、ゲームの雰囲気を端的に表現して、想像を助けてくれるものだといい。
音も重要だ。BGMは雰囲気作りに欠かせず、個人的には雑踏の音がちょうどいいゲームは名作だと思っている。
そういうゲームを求めているときに『シチズン・スリーパー』と出会った。
宇宙ステーション“アーリンの瞳”が舞台のSFアドベンチャーで、そこは富裕層に支配された極端な格差社会。ストーリーに定評があることは知っていたので「ディストピアものか!」と腕まくりして臨んだところ、まあこれが難しい。そもそも自分が何者なのかもよくわからない。
テーブルトークRPGのようなメッセージを読み進めていくと、自分は“スリーパー”と呼ばれており、どうやらロボットに人間の精神をコピーした疑似生命体らしい。詳細な説明はなく、困惑をよそに物語は展開。知らない単語が出てきたらいったん頭の片隅に置き、気にしないふりをして進めていくうちに徐々に情報が蓄積され、どこかで「そういうことか」と気付く。脳内に渦巻く不安がスリーパーの記憶として少しずつ形成されていくようで、妙な気持ちよさがあった。
最初は目的すら曖昧だが、とにかく生きなければならない。機械の体は徐々に朽ちていくからだ。行動回数には制限がある。その成否はサイコロの出目で決まるため、つねに焦燥感がつきまとう。精神的な安らぎを得るためにも何らかのコミュニティに属することになり、そこで誰かのために行動することが物語の真相へとつながっていく。
あるとき、汚職にまみれた権力者を糾弾しようとする青年と出会う。彼自身も清廉潔白な人間とは言えないようだが、巨大な悪に立ち向かう姿に痛快さを感じたのも事実だ。またあるときは、ひまわりのような明るさを持ったバーの店主と出会う。閉塞感が漂う世界において、彼女の言動はとても開放的だ。夢を抱いた先にはすてきな未来が待っているような気がした。
海外ハードボイルド小説のような文章のひとつひとつから、アーリンの瞳の空気が伝わってくる本作。用語を参照できるようなシステムはなく、ストーリーテリングの手法は親切とは言えない。
だが、それがいい。
クリエイターは自分の好きなことを表現し、プレイヤーはそれを好き勝手に受け取る。ぶっきらぼうな信頼関係は存外に心地いいものだから。