チーム構成は本気で戦いに行くつもり満々のメンバーだ。
選手4名中3名がパラリンピックの選手で、ドライビングコーチとしてABSSA社の澤氏に指導を仰ぐ。
選手のひとり、三阪洋行さんは車いすラグビー選手としてパラリンピックにも出場経験がある。
「高校生のときにスポーツ練習中の事故で脊髄を損傷しました。胸から下をうまく動かすことができません。障害を負うと、運転できる車種に限りがあります。パラリンピックもパラスポーツも、支援技術を使ってスポーツを楽しめる環境は同じで、この先もっと普及していくでしょう。その支援を選手として活動しながら進めていきたいです」
「脊髄を損傷し、指がほとんど動きません。通常のコントローラーだとうまく操作できなくて、子どもたちにもコテンパンにやられてしまう。操作するのもすごく疲れるのでストレスが溜まるし、だんだんゲームから遠ざかっていました。テクノツールさんにハンドコントローラーを作っていただいて、実際にプレイしてみたらこれなら戦えると思ったんです。初めて、障害か健常か関係なく戦える、楽しいと思えました」
3人目の選手、太田詔さんはなんとレース経験者。
「ミオパチーという進行性の筋肉の病気を持っています。2年前まで実際にサーキットで走っていました。病気の進行で、2022年にレースを引退、観戦のほうにシフトしようと思っていました。テクノツールさんを紹介していただき“そうか、こういう楽しみかたもあるんだな”と知りました。これでまた自分も走れること、障害があってもなくても、同じ土俵で戦えることを周知していけたらと思います」
干場慎也さんはチームメンバーで唯一リアル自動車の運転経験がないが、「週末は気づくと8時間くらいプレイしている」というハマりっぷり。
「僕は車を運転したことがありませんし、恐らくこの先も運転することはないでしょう。でもeスポーツなら他の方と同じ土俵で戦うことができます。僕が挑戦することで、僕と同じような重度障害を持っている人たちが頑張りたいと思えるモチベーションになってもらいたいです」
会場では、実際に試遊して、取材に来ていた記者などと挑戦者と対戦した。ひとりひとり、動かせる範囲や筋力が異なるため、プレイ前により快適に動かせるようにコントローラーをセッティングし、スタート。
WHOによると障害とは「個人の特性と環境の相互作用によって生じる動的な状態」だ。
つまり「社会の環境や対応が整備されれば“障害者”ではなくなる」ということ。
障害による不得意部分を技術で支援すれば、健常者と障害者の垣根は限りなく低くなる。
「障害は不便」「障害者はかわいそう」といった古い固定観念を壊すためにも、こうした支援技術の進歩とそれを利用する人たちの活躍に期待したい。
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