『デビルリバーシ』常識破りのテーブルゲームはヴァニラウェア神谷盛治氏がキャラデザ&ベイシスケイプ崎元仁氏が作曲と、リバーシとしてはクリエイターも常識破り【BitSummit Drift】

by世界三大三代川

byマンモス丸谷

更新
『デビルリバーシ』常識破りのテーブルゲームはヴァニラウェア神谷盛治氏がキャラデザ&ベイシスケイプ崎元仁氏が作曲と、リバーシとしてはクリエイターも常識破り【BitSummit Drift】
 2024年7月19日~21日に京都みやこめっせで開催のBitSummit Drift(19日はビジネスデイ)。このインディーゲームの祭典に、とても興味深いタイトルが出展された。『DevilReversi(デビルリバーシ)』だ。

 本作は、誰もが知っている定番テーブルゲーム
『リバーシ』のルールを大胆アレンジ。これまで長きにわたって定着していたセオリーが通じない、新作ゲームとして生まれ変わっている。

 さらに驚くべきは、キャラクターデザインにヴァニラウェアの神谷盛治氏、音楽に音楽にベイシスケイプの崎元仁氏という、豪華クリエイターが起用されていること。謎多き
『デビルリバーシ』とはどのようなゲームなのか。生みの親である喜多山浪漫氏を直撃した。その前に、いったい『デビルリバーシ』はどのようなタイトルなのか、ご説明していこう。
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定番ゲームの『リバーシ』を大胆にアレンジ

■常識破り1:X型に配された石でポイントを奪い合う

 通常の『リバーシ』は盤面中央にふたつずつ石を置いた状態からスタートするが、『デビルリバーシ』では双方が8個、盤面にXを描くように石を配置する。そのため開幕から盤面全体を使った攻防が発生し、スピーディーに試合が進んでいく。

 また、勝利条件も通常の
『リバーシ』とは異なり、取った石の枚数ではなく、試合中に獲得したポイントで勝敗が決定する。石の初期配置と合わせて、本作ならではの試合展開を生み出す仕掛けのひとつとして機能している。
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石が8個ずつ置かれた状態から試合が始まる『デビルリバーシ』。石を置いて挟める場所が多いため、どこから攻めていくかにプレイヤーの個性が出る。

■常識破り2:石を重ねて奪い合う縦の攻防

 『デビルリバーシ』最大の特徴と言えるのが、盤面に置かれた石の上に、さらに“石を重ねられる”という点。この独自ルールにより、通常の『リバーシ』だと一度石を置かれると絶対にひっくり返せない盤面の4隅に置かれた石も、“上から”挟んで裏返すことが可能。

 加えて石を重ねるほど裏返した際に獲得できるポイントも増えていくため、石が高く積まれたマスをモノにできるかが、勝敗の行方を大きく左右することになる。
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本作では横と上から挟むことで相手の石をひっくり返して自分のものにできる。

■常識破り3:チェインに生贄、応用テクニックで一発逆転

 “石を重ねられるリバーシ”という点を理解すればスムーズに遊べる本作だが、戦略の幅が広がる応用テクニックも複数存在している。

 攻めではひっくり返す石を、パズルゲームの連鎖のようにつなげる“チェイン”、守りでは盤面に置いた石を“生贄”として捧げることで重ねた石を絶対にひっくり返されない“要塞化”など、研究のし甲斐がありそうなシステムが用意されている。いかに活用していくかを考えるのも、本作の楽しみどころだろう。
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盤に置いた石は生贄として消費すると、ほかの場所を守る要塞化のコマに変化。

『デビルリバーシ』から始まる? 定番ゲームの常識破壊


 『デビルリバーシ』の制作を手掛けるのは、元ゲーム会社社長の覆面小説家という異色の肩書を持つ、喜多山浪漫氏。インディーゲームシーンに参入した理由や、『デビルリバーシ』から始まる野望、“定番ゲーム常識破壊”シリーズの構想などを聞いた。

喜多山浪漫きたやまろまん

小説家。『デビルリバーシ』クリエイター。

小説家・喜多山浪漫の誕生とインディーゲーム制作に至った経緯

――本日はよろしくお願いします。

喜多山
 よろしくお願いします。今日は『デビルリバーシ』の話よりも先に、まず「喜多山浪漫って何者?」って話から始めたほうがいいですかね?

――そうですね。

喜多山
 わかりました。私はもともと前職がゲーム会社で、新卒で入って、そこから26年ほど勤めていました。その半分ほどの期間は社長もやらせてもらい、結果的にゲーム会社の開発と営業、両方を経験しました。

 社長になってからも、自分の会社で作ったゲームは自分で売りに行くというスタイルで働いていたのですが、「社長になったのだから、現場には出ないほうがいい。それよりも若手を育てるためにもそろそろ退いてくれ」みたいな声もあり、確かにその通りでもあるので、ただの社長になりました。

 それで引き継ぎはうまくいったのですが、それまで自分がやってきた作る仕事と売る仕事を手放すと、社長としての仕事は経営だけなんですよね。でも、自分にどれだけ経営の能力があるのかと考えたときに、得意だとは思えなかったし、経営がやりたくてこの業界に飛び込んできたわけでもない。これでは自分の能力で会社を大きくするのは難しいと、限界が見えてしまったんです。

 社長の限界が会社の限界という部分もあると思うので、それなら早いところで誰かに渡してしまったほうがいいなという判断がありました。それが前の会社を辞めるまでの経緯です。

――いろいろと考えるところがあったのですね。

喜多山
 会社を辞めたら当然食べられなくなります。前の会社ではシナリオとかを書いていたので、小説を出してみようと思ったんです。小説家をやったら自分ひとりで書いてひとりで出せますよね。

 組織を作ったり、社員を雇ってマネージメントをするのはもういいかなと思っていたので。いまならカクヨムさんとか小説家になろうさんに投稿すれば世に出せる。そこで小説を発信すれば、「自分のIP、コンテンツになる!」と思い、小説家を名乗らせてもらうことになりました。

――大胆な転身ですね。もともと小説は書いていたのですか?

喜多山
 いえ、シナリオだけでした。ゲームのシナリオをノベライズしてもらったときに、巻末に短編みたいなものは書いたりしたことはあったのですが、本格的に長編を書くのは、会社を辞めてから書いた、『エトランジュ オーヴァーロード ~反省しない悪役令嬢、地獄に堕ちて華麗なるハッピーライフ無双~』が初めてでした。

――小説が書けるという手応えは、最初からあったのですか?

喜多山
 それ(文章を書くこと)しかないので、書いてやろうと(笑)。でも、やってみたらすごくいいなと思いました。何がいいかというと、最速、最短、最安値でコンテンツが生み出せるからです。

――ああ、たしかにそうかもしれませんね。

喜多山
 そうやって執筆でコンテンツを作っていって、ある程度どういうものか中身がわかるところまで仕上がった段階で、今度は営業にも行きました。「『エトランジュ オーヴァーロード』をマンガ化しません?」とか、「商品化しません?」みたいな話をして、契約してもらって商品化してもらう。この流れがある程度見えてきたので、これ(執筆→営業→商品化)を、あと何回かくり返していけばいけるなと。

 ここから小説を2本、3本と書いていけば、小説家という肩書きを軸にして、“喜多山浪漫”という道筋でやっていく態勢が整ったかなという感じです。

――極めてアグレッシブですね。喜多山浪漫というペンネームで活動しようと思った理由を教えてください。

喜多山
 喜多山浪漫というペンネームにしたのは、前職への配慮です。前の会社を辞めてすぐに活動するというのは、異業種なので問題はないのでしょうが、ご迷惑をおかけする可能性もある。そこで、ひっそり活動しようかなと。

 それと、まだ小説ができあがっていない段階で本名を出して、「あの〇〇の元社長が手掛ける小説!」みたいな売り出しかたをするのもどうなのかなという思いもありました。ならばせっかくなので、まっさらなペンネームを使ってどこまでいけるのか挑戦してみようかな思ったんです。

 とはいえ、ありがたいことに人とのつながり、人脈は残ったんです。退職したらみんなそっぽを向くのかなという心配がなきにしもあらずだったのですが、みなさんやさしくしてくださって。

 このインタビュー自体もそうですよね、名もなき新人小説家の話を聞いてくれて(笑)。とてもありがたいです。そういう人脈は最大限に使わせてもらっている感じです。

――(笑)。『デビルリバーシ』のキャラクターデザインに神谷さん、音楽に崎元さんという座組は、前職でのつながりから生まれたわけですね。

喜多山
 はい。もともとひとりでゲームを作れるわけではないので、『デビルリバーシ』ではいろいろな人に手伝ってもらっています。

 ただ、神谷さんに描いてもらったキャラクターは、ゲーム用に描き下ろしてもらったわけではないんです。じつはゲーム会社を辞めた際、荷物をまとめて退社したその足で、ヴァニラウェアに行ったんです。そこで神谷さんに「会社を辞めてきた」という報告をしたら、そこからいろいろ話が転がって、「独立祝いに会社のロゴとか作ってくれない?」という流れになったんです。そうしたら即引き受けてくれました。

 しかも「台座みたいなロゴをベースにして、その上にゲームを象徴するキャラクターの顔を乗せる。それで毎回タイトルロゴを変えていったらどう?」みたいなアイデアもいろいろいただきました。ヴァニラウェアのタイトルもゲームに合わせて自社のロゴを毎回変えていますよね。それを自分でもやれたらなかなかおもしろいなと。

 で、その会社ロゴをいくつか作ってもらったときの最初のデザインがこれなんです。上に女の子、下に悪魔小僧みたいなのがいますよね。これが
『デビルリバーシ』のキャラクターの原案になりました。
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――そんないきさつがあったのですか。

喜多山
 言ってしまえばボツイラストなのですが、世界の神谷盛治が描いたものですよね。でもあの人って執着がないから、使わないイラストは捨ててしまうんですよね……。一生世に出ないもので終わってしまう。私はもったいないと思うタチなので、これはいずれどこかで使おうと、1年以上寝かせていました。

――いずれ日の目を見ることもあるかもしれないと、寝かせておいたのですね。

喜多山
 それで、『デビルリバーシ』を本格的に作ろうと思った際に、これは使えるのではないかと思い、神谷さんに聞いたら、「好きに使っていいよ」と、あきらめてくださいました (笑)。そういう経緯があったので、“キャラクターデザイン・神谷盛治”と言っても嘘ではないという。メインキャラクターを神谷さん、魔王ふたりをゲーム本編の制作も手伝ってもらっている方にデザインしてもらうという、ふたりのキャラクターデザイナーがいるという立て付けにしています。

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こちらが最終的にできあがった『デビルリバーシ』のロゴ。キャラクターデザインは神谷盛治氏!
――元社長らしい力技な展開ですね(笑)。
喜多山
 一方で、音楽のほうはせっかくキャラクターデザインが神谷さんになったので、ここは崎元さんしかないよねという流れですね。ある意味当然の法則。

――確かに。ヴァニラウェアと言えばという組み合わせでユーザー側からでも思いつく当然の法則ですが、実現させられるかどうかは別の話ですよね。

喜多山
 そこも人のつながりで、ご厚意に甘えさせてもらった感じはあります。崎元さんにお願いしたのはわりと最近で、今年(2024年)の5月に飲みに行ったときに『デビルリバーシ』の話をして、「3曲、できれば6月末までに作ってくれない?」と頼んだらやってくださることになりました。

――こちらも力技で……。

喜多山
 曲の感じは崎元さんらしい、壮大な感じでとオーダーさせてもらいました。言いかたで誤解を招くかもしれないですが、崎元さんのムダ使いをしたいなと思っています。「リバーシに崎元さんが曲を提供する? そんなアホな!」と言われる曲にしてくださいと。

――崎元さんのムダ使い(笑)。
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『オーディンスフィア』、『十三機兵防衛圏』など、ヴァニラウェア開発のソフトでタッグを組む神谷盛治氏と崎元仁氏が参加している本作。こちらは神谷氏デザインによるシビィ。

『デビルリバーシ』は“定番ゲーム常識破壊シリーズ”の第1弾⁉

――『デビルリバーシ』のアイデアはいつごろから持っていたのですか?

喜多山
 もともと、「定番のゲームにアレンジを加えられたらおもしろいのでは?」という考えはずっと持っていました。定番ゲームには不滅のおもしろさがあります。だからルールも固定化されていて、それがいちばんおもしろい形になっているとは思います。

 ただ、たまにはそうではないルールとか遊びが入ってもいいのではないかとは考えていました。ずっと固定化していたら新しいものが生まれない。でも、意外と定番ゲームのルールをいじろうと考える人って少ないんだなと感じていたので、だったら自分で1回やってみようかなと。

 大きいゲームを1本作ろうとすると、時間もコストもすごくかかりますよね。でも、定番ゲームをいろいろアレンジするという方向であれば実現可能だなと。ゲームでも少人数、低コスト、早くやるというのを試してみるいい機会だなと思い、定番ゲームの中でもいちばんやりやすそうなリバーシを選びました。

――確かに。多くの人がルールを知っているうえに、用意するものも2色の石だけでいいですものね。

喜多山
 そうですね。常識と思っていることを変えてみて、「こういうゲームってどうでしょう?」といった提案をしたかったというのもあります。

 『デビルリバーシ』をきっかけに、「なるほど、そういうのもアリだよね」って思ってくれる人たちが業界の中に増えてきて、常識だと思い込んでいたジャンルやゲームシステムなどをどんどん新しいものに変えていくようなウェーブが起きたら、それはすごくいいことだなと思っています。

 独占的に何かをやりたいとはぜんぜん思っていなくて、何かのきっかけになったらおもしろいなと。

――トランプからいろいろなルールのゲームが生まれていったようにですか?

喜多山
 そうです。『デビルリバーシ』きっかけでいろいろなリバーシが生まれてきたらそれもいいことだし、きっかけになれたら光栄です。そういう動きに貢献したから「1本ぐらい買ってやるか」となったら、小説のほうの活動も捗るかなと(笑)。

 将来的には“定番ゲームの常識破りシリーズ”みたいな感じで、ポーカー、将棋、麻雀、囲碁をモチーフにしたゲームも作りたいです。このあたりはおもしろくできそうなアイデアがあるので。

――そうなのですね。ゲームのシステムに関してもお聞きしていきたいのですが、やはり石を重ねられるというルールが、リバーシとしては新しいポイントになるのですか?

喜多山
 はい。『デビルリバーシ』は、もともと石を重ねたらおもしろいのではないか、というところから着想が始まっています。8x8の盤面に石を並べて裏返しあって、最終的に石の枚数が多いほうが勝ちというルールや、盤面の四隅を取ったらひっくり返せないから有利というリバーシの常識を覆したかったのです。

 リバーシはセオリーが固定化されてしまっていて、けっこう早い段階から勝負が見えてしまうのがもったいないと思っていたので、それを覆すには重ねればいいのではと発想したのです。重ねたら端だろうがひっくり返せるよね」という。

 白側が端を取っていても、その端を取っている白の隣りに黒を重ねて挟めるのだったらひっくり返せる。「端を取ったからといって油断できない」ということがやれるのではないかなと。そこが
『デビルリバーシ』が生まれた着想です。

 ふつうに石を交互に置いていくとあまりゲームの展開が変わらないので、最初からX型に石を配置するとか、勝敗を石の枚数ではなくてポイント制にするといった要素は、実際のゲーム作りに入ってから、協力している人たちと相談しながら肉づけしていきました。
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試合が進むとあちこちで石が重なり、一度の攻防で得点が大きく動くようになる。
――勝ち負けをポイントで決めるというのは、リバーシというゲームの根幹を変えるルールだな思いました。

喜多山
 ポイント制にするのはかなり早い段階で決まりました。最初は盤面を上から見た結果にしようかなと思っていたのですが、ひっくり返せば返すほどポイントが加算されていくというのがおもしろかったので、すぐにまとまりました。

――ひっくり返したときに発生するチェインや、重なった石の中に相手のコマがあった場合、ひっくり返すと相手の点数に加算されてしまうみたいな要素もおもしろいと思いました。

喜多山
 ここを挟んだらこういうことが起きてしまうよねという予測が必要で、ひっくり返してもいいことばかりが起きるわけではないという点は、『デビルリバーシ』の意外と奥深いところになると思います。

 基本的なルールはリバーシなので、カジュアルに遊べるのですが、遊び慣れてくると見えてくるものが変わってくるケースというのが出てきます。

――そうですよね。さっき遊ばせてもらったときも、「これ以上裏返ってしまうと相手に点が入ってしまう」、「ここはチェインを止めたほうがいいかな」といった状況がありました。確実にふつうのリバーシとは違う頭の使いかたになりますよね。テストプレイをされている方たちのあいだでは、もっと進んだ『デビルリバーシ』ならではの戦略が生まれていたりするのですか?

喜多山
 まだそんなには(笑)。作っている側でも、なかなか考えることが多くて難しいみたいです。

 あと、ルールもいろいろ試行錯誤している段階です。たとえば石を重ねるというシステムにも、「無制限に重ね過ぎるのはどうなのか?」という意見もあったので、自分の石を生贄に捧げるとひっくり返されないようになる特殊技みたいなのものを作りました。盤面に石をひっくり返せない場所を作る、いわゆる“要塞化”ですね。これをどこでするかも、ひとつの戦術になると思います。
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チェインが発生すると得点に倍率がかかる。一発逆転が狙えるシステムだ。
――基本は、プレイヤーどうしの1対1、もしくはCPUと戦っていくテーブルゲームですが、ストーリーモードがあるとも聞きました。どのような内容になっているのでしょうか?

喜多山
 一応ストーリーはちゃんとあります。この世界には魔王がふたりいて、宇宙の半分ずつを支配しているんです。このふたりはケンカすると宇宙が滅びてしまうくらいの力を持っているため、基本的には争わないのですが、すごく暇なので、ずっとリバーシをしていたんです。でもなかなか勝負がつかなくて、飽きてきている。それで違うリバーシを作ろうか、みたいな話になって、生まれたのが『デビルリバーシ』という話です。

――なかなかに壮大ですね(笑)。

喜多山
 こういうストーリーにしておけば、のちのち魔王が「麻雀ってさあ……」、「将棋ってさあ……」と言いだして、新しい常識破りが始まるという設定でゲームを作っていけるかなと(笑)。最後は1周回って、「やっぱりリバーシがいいね」って言いだすかもしれないですけど。

――世界観がつながる関連作が続々と生まれるという(笑)。

喜多山
 このストーリーモードはチュートリアルに近いです。いまお話した魔王の暇つぶしのために『デビルリバーシ』が生まれたという話からスタートするのですが、プレイヤーはそこからデビィという悪魔っ子から『デビルリバーシ』の問題を出されて、その問題を解いているうちに、ストーリーを進めつつゲームの内容も理解できる作りになっています。誰にとっても初めてのゲームなので、いきなりポンと渡して「はい、遊んでください」みたいな作りにはしていませんので、そこは安心してほしいです。

――プレイヤーどうしで遊べる機能、たとえばオンライン対戦などを実装する予定はありますか?

喜多山
 いわゆる知らない人どうしがマッチングして試合をする、一般的なオンライン対戦は用意します。最初は知ったユーザーどうしでコードを認証して試合する形式だけでもいいのかなと思ったのですが、知らない人とマッチングして遊べるようにと考えています。
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ナビゲート役のデビィ
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魔王アストラ
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魔王ヴリトラ

『デビルリバーシ』発売後も複数のゲーム企画を展開予定

――『デビルリバーシ』の発売はいつころを想定していますか。

喜多山
 どこまで調整するかで変わるところなのですが、年内には絶対出せると思います。BitSummit Driftでプレイアブル出展しますので、そこでのお客さんの声やアンケートの結果でも変わるかと思います。年内には発売できるので、アーリーアクセスもたぶんやらないかな。

――Steam以外でのリリースは考えていますか?

喜多山
 Steamでリリースされれば、いろいろなフィードバックが出てくると思うので、そちらに対応するためのアップデートと合わせて、家庭用ゲーム機向けでもリリースできたらいいなとは思っています。遊びかたが確立できたというところで、Nintendo Switch版だったりを出せたらいいなと。プラットフォームをひとつに限ろうとは思っていないです。

――『デビルリバーシ』のパブリッシャー表記はRoman Kitayamaとなっていますが、今後もゲームはこのブランドで発表していくのでしょうか?

喜多山
 そのつもりです。ただ、Roman Kitayama名義で展開するのは、同じ方向性のゲームになるのかなと思っています。先ほどから少し話題に出している麻雀や将棋といった、“定番ゲームの常識破壊シリーズ”をやっていきたいです。

 また、私の書いた小説を原作にした商品展開を積極的に考えていますので、もしかしたら近いうち、東京ゲームショウ202あたりに
『デビルリバーシ』とは違った流れのゲームもお見せできるかもしれません。

――そうなんですか⁉ ゲームの企画を複数走らせているうえに、小説も書いていらっしゃるというのは、すごいバイタリティですね。

喜多山
 小説のほうも『エトランジュ オーバーロード』のほうは完結しているのですが、連載中の『魔法捜査官』シリーズのほかにも、世に出さずに書き溜めている作品もあったりします。私の中では、小説の執筆とゲーム制作を筆頭としたそのほかの活動はリンクしていて、いろいろなメディアでやっていこうというのは、もともと考えていたことではあるんです。

 もともとインディーゲームを作ろうと思ったのも、喜多山浪漫が活動するための資金稼ぎのためです。私は小説家という形で活動していますが、ウェブに無料で投稿しているので、基本的にそこで稼ぎを作ることはできないんです。

 でも、
『エトランジュ オーバーロード』では、大塚真一郎先生、『魔法捜査官』ではエナミカツミさんに、それぞれキャラクター原案&イラストを描いてもらったりと、けっこう豪華なことをやっているんです。小説に音楽をつけてもらったりもしています。

 こういうのは基本、先行投資だと思って取り組んでいるのですが、最終的にゲームだったりマンガにならないと回収できない。コンテンツに触れてもらう機会を増やすため、目立つためには必要なコストなのですが、それなりのコストをかけていて、これをやり続けていこうとするには、資金源がほしくなります(笑)。
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『エトランジュ オーヴァーロード ~反省しない悪役令嬢、地獄に堕ちて華麗なるハッピーライフ無双~』(左)と『魔法捜査官』(右)。
――先立つものが必要というのはありますね。

喜多山
 そういう事情もあって、自分でゲーム作りも始めたのですが、いま流行りのクラウドファンディングには、まだ少し抵抗があります。もちろんぜんぜんありだと思うのですが、投資をしてもらってから作るよりも、先にある程度コンテンツを作っておいて、それを見てもらっておもしろかったらお金を払ってもらうほうが、個人的にはしっくりきます。

 ですので、私の小説家としての活動の幅を広げるためにも、まずは
『デビルリバーシ』というゲームを世に出して、その利益で活動の幅を広げたいです。

――喜多山浪漫をひとつのコンテンツとすると、『デビルリバーシ』自体がアーリーアクセスの役目を担っている部分もあると言えそうですね。

喜多山
 いいことをおっしゃいますね(笑)。買い支えをしてもらうっていう意味では、クラウドファンディングと同じなのでしょうが、ぜひ『デビルリバーシ』を応援してもらいたいです。まずはウィッシュリストに入れてもらうという応援からお願いしたいです。それが今後の展開にもつながっていくと思うので。


――BitSummit Driftに『デビルリバーシ』を出展するということですが、喜多山さん自体は会場にはいらっしゃるんですか? 基本正体は明らかにしないのですよね?

喜多山
 行きます。会場にはもちろん行って、『デビルリバーシ』を出展させてもらうアウリンさんのブースにはずっといます。ブースにはマスクを被っている人間が全部で5人いて、そのうちのひとりがルチャロマンという謎のプロレスラーで、中身は私です(笑)。
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会場の模様から。
――(笑)。

喜多山
 前職でまあまあ顔出しや声の出演とかでイベントや配信番組には出ているので、「喜多山浪漫って、○○のあの人だよね」と言われるぶんには問題ないです。すでに察していらっしゃる方も多いですし。何かしら本名を出す必要に迫られたら、どこかのタイミングで発表するかもしれませんが……。

 あと、東京ゲームショウ2024にも出るつもりでいまして、そのときは着ぐるみで会場を練り歩く予定です。いろいろな着ぐるみとコラボしたいです。要は顔がバレなければいいんです(笑)。

――ちなみに喜多山さんの小説のファン層ってどんな感じなのですか?

喜多山
 そもそもファンがいるのかどうか(笑)。先ほど話した先行投資、コンテンツを大きく見せるという戦略を取った影響で、小説が埋もれることはなく読者は獲得できたのはPV数を見ればわかるのですが、年齢層みたいなデータ的なことはわからないですね。

 『エトランジュ オーバーロード』のときは執筆に集中したいのもあって、コメントもできないようにしていたんです。心ないコメントが来て、そこでヘコんでもいいことはないので……。とりあえず第1部が終わったときに、コメントできるようにはしたのですが、あとからコメントをつけるというのは誰もあまりやらないようですね。

 書き始めたころには知り合いにLINEとかを送りまくって「読んでくれ!」みたいなこともやっていたのですが、いまはおそらく前職とはつながりのない、新規の読者層も開拓できたのではないかなとは思っています。

――おもしろいから読まれていると。

喜多山
 だといいのですが(笑)。『エトランジュ オーバーロード』のほうは第一部を書き終わってからは少しお休み状態で、いまは「連載中のマンガを読んでください」という状態で、小説のほうもPV数はずっと上がり続けています。コミック展開があったからでしょうが、情報を発信し続けていることで小説までたどり着いてくれる人がいるのはありがたいことだと感じています。

――着実に認知度が上がっているようですね。

喜多山
 一方で、リアルでも新しいご縁も増えてきていて、今年の3月にコミティア(一次創作がメインの同人誌即売会)に初めて行ったんですよ。これがとてもおもしろくて、自分のオリジナル作品を発表する場だから、熱量のある絵描きさんやマンガ家さんとかがいっぱいいるんです。

 その中で気に入った人が何人かいたので、すぐイラストを発注したんですよ。「1枚だけ喜多山浪漫の絵を描いてください」みたいなオーダーを出したのですが、そこからできあがったイラストを見ると、人それぞれの仕事のやりかたというものが見えてきてすごくおもしろいです。いま私の手もとには、いろいろな作風の“喜多山浪漫”の絵がありますよ。

 私ひとりで運営している会社なので、こういうことをやるために稟議を通したり、経営会議で予算を通すために苦労する……みたいことがいまはないので、けっこう好き勝手に仕事をできることを楽しんでいます。暴走しつつ、人とのつながり、ご縁を大事にしています。

――けっきょくコンテンツって、人と人のつながりで作られていくものだったりしますものね。

喜多山
 その通りです。人と人とのつながりで成立しているなあと、日々感じています。

――本日はありがとうございました。最後に読者へのメッセージとして、BitSummit Driftやその後に用意されている、“喜多山浪漫コンテンツ”の今後の展開を告知していただければと思います。

喜多山
 はい。まず『デビルリバーシ』ですが、BitSummit Driftのアウリンさんのブースに、試遊できるバージョンを出展します。ゲームをプレイされた方にはステッカーをプレゼントしますので、その後のアンケートも含めて、ぜひご協力ください。

 そして、小説家喜多山浪漫としても、いろいろな展開を用意しています。いま発表できるものとしては、
『魔法捜査官』のボードゲーム化が決まっています。これはデジタルと紙、両方用意する予定で、ベータ版扱いではあるのですが、今年の東京ゲームショウにデジタル版を出展して、遊んでもらえるようにしたいと思っています。そのときには紙のほうでも体験キットを配布できればと考えています。

 ほかにも、東京ゲームショウ2024ではもう少しいくつか仕掛けを考えていますので、
『デビルリバーシ』とともに、ぜひ注目してもらえればと思います。
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