
レトロを超えたノスタルジックな物語の始まりがクセになる!
本作は今井秋芳氏が総監督として制作をした『東京魔人學園伝奇』シリーズの1作目にあたり、1998年から1999年の東京を舞台に不思議な “力”を得た少年少女が自分たちの宿命と向き合っていく伝奇ジュヴナイルです。神話、風水、クトゥルフ神話など、オカルト要素も多く、なかでも舞台である東京23区で実際に噂された都市伝説を活かした内容は物語をより身近に感じさせました。
ストーリーは新宿にある真神学園、通称“魔人学園”に主人公が転校してきたところからスタート。転入早々、学園のマドンナと呼ばれる美里葵と親しくなったことで、それを妬んだ不良たちから校舎裏へと呼び出されます。そこへ木の上で昼寝をしていたクラスメイトの蓬莱寺京一が主人公に加勢し、ケンカへと発展していくことに……。この昔の学園トレンディドラマでよくあっただろうお約束な展開は、当時のプレイヤーたちに大きな衝撃を与えました。
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全23話で構成された物語は1話完結型。各話にアドベンチャーパートとそこに付随する戦闘パートがあり、プロローグ→メインストーリー→戦闘→エピローグという流れで、まるで連続ドラマを見ているような気分を味わえます。この展開こそが、あえて劇画タッチで描かれた小林美智氏のキャラクターデザインも相まって『東京魔人學園伝奇』シリーズの味わい深い魅力となっているのです。
主人公=プレイヤーというコンセプトを掲げる本作では、基本的に主人公はセリフを発することがありません。その代わりに採用されたのが【愛】・【友】・【同】・【喜】・【悩】・【怒】・【悲】・【冷】という8つの感情と【無視】で気持ちを表す“感情入力システム”。キャラクターの問いかけに友好的な【友】や【愛】で返答して朗らかな愛され主人公になるもよし、相手が友好的なのにも関らず怒り狂って困惑させるトンデモプレイもよし、敵に対して【愛】をささやいて仲間からドン引きされるもよしと、セリフがないからこそ多種多様で自由な主人公像を作り出すことができました。ときには想定していた感情とは違う意図で捉えられることもあり、「そういう意味で言ったわけじゃないのに……!」とすれ違うこともありますが、そのすれ違いさえもリアルさを感じておもしろいポイントです。
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本作では絶対に仲間になる4人のほかに、この“感情入力システム”によって仲間になる21人のキャラクターが存在します。個性的なキャラクターばかりなので、やはり全キャラクターを仲間にしたいものですが、これが意外と難しい……! キャラクターによっては友好的だったり、同情的だったりする無難な感情だけでは信頼が得られないこともあり、相手の顔色を窺うだけでは親しくなれないという現代社会の教訓にも繋がります。
しかし、それゆえに仲間となり、仲よくなれたときは非常にうれしい気分に! 主人公への呼びかたも好感度によって変わっていき、たとえばふだん異性と一定の距離を保つタイプの美里が「緋勇くん」、「龍麻くん」、「龍麻」(デフォルト名:緋勇龍麻)と呼び捨てになっていくさまは感慨深いものが。相棒ポジションの京一の場合は最終的に「ひーちゃん」とあだ名呼びになり、キャッキャした男子高校生のかわいさも感じました。
ちなみに、『剣風帖』では好感度によって美里と桜井小蒔のふたりの特別エンディングが見られましたが、のちに発売したファンディスク『東京魔人學園朧綺譚』では男女全キャラクターのエンディングが追加。いちばん仲よくなった仲間との未来が見られるうれしさがありました。
シミュレーションを含んだターン制バトルでおもしろかったのは、特定のキャラクターを敵の周りに配置することで発生する必殺技“方陣技”。「この仲よしメンバーなら方陣技が発生するだろうな」と予想できるものから、「えっ、なぜこのメンバーで!?」と驚くものもあり、宝探しのような楽しみが♪ 方陣技がくり出される際はちょっとした会話も発生するのですが、なかには無理やり参加させられたギャグ方陣技もあり、アドベンチャーパートだけでは見えにくい仲間どうしの関係性も感じ取れました。ちなみに、筆者は狙った方陣技を出したいがために、あえて敵を倒さないでおくという戦法をよく取っていました。
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また、今井監督はもともと『東京魔人學園伝奇』シリーズは3部作で完結すると発表していたため、この2作品以外に昭和初期を舞台にしたシリーズ最終作となる『東京魔人學園帝戰帖』のお話も……! こちらは2020年のインタビューで「出したい」と語っているほか、第壱話&第弐話のシナリオもアップされているので、いつか、もしかしての希望を胸に秘めながら待ちわびたいです。