スマートフォン向けアプリ『学園アイドルマスター 』(以下、『学マス 』)は、2024年5月16日より配信がスタートした『アイマス 』シリーズの完全新作タイトル。 初星学園を舞台に、プロデューサー科に所属する若きプロデューサーと、アイドル科に通うアイドルたちのストーリーが展開される。 『学マス』 の配信を祝して、月村手毬役の小鹿なおさんにインタビューを実施。過去の自分を見ているようだという手毬を演じる際に心掛けていることなどを聞いた。 ※本インタビューは4月中旬に実施しました。
※本インタビューは5月16日発売の週刊ファミ通(2024年5月30日号 No.1849)に掲載した内容に加筆、修正を行ったものです。
※本記事では『アイマス』は『アイドルマスター』シリーズ全体、『学マス』はスマートフォンアプリ『学園アイドルマスター』の略称として使用しています。また、『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』を『デレステ』と呼称することがあります。 小鹿なお(おじか)
8月9日生まれ。愛知県出身。趣味はYouTube鑑賞で、特技はダンス。名古屋弁を話すのも得意。おもな出演作は、『僕の心のヤバイやつ』(まいまい役)、『カウンターサイド』(スズキ・ナオ役)、『けものフレンズ3 』(カニクイアライグマ役)、『もういっぽん! 』(里山可奈役)など。(文中は小鹿)
弱い姿を隠すために強い態度を取る手毬に共感 ──月村手毬役に決まる前から、『アイマス』シリーズはご存じでしたか?
小鹿
はい、もちろん知っていました。とくに 『デレステ』 は高校生のころプレイしていて、休み時間もずっと遊んでいたので、いつかは 『アイマス』 シリーズに出演できるといいなと思っていました。 ──もともと『アイマス』作品に親しまれていたのですね。そして、『学マス』でアイドルを演じるという夢が叶ったと。
小鹿
オーディションのお話をいただいたときは、大好きな 『アイマス』 のアイドルを演じられるかもしれないということで、本当にうれしくて、とても興奮しましたし、合格したい気持ちでいっぱいでした! ──オーディションは、手毬のみを受けられたのですか?
小鹿
手毬のほかに、花海咲季ちゃん、藤田ことねちゃんも受けました。スタジオオーディションに進んだときに、手毬役で呼んでいただき、終わった後に追加で有村麻央ちゃんの原稿をいただき、オーディションを受けさせていただきました。 ──手毬の第一印象はいかがでしたか?
小鹿
演じるのが難しそうだなと思いました。見た目としては、私好みのかっこよくて、クール系だったので、落ち着いたイメージで役作りをすればいいのかなと思いながらオーディションの台本を見たのですが、セリフの半分以上がモノローグで、ビックリしましたし、たいへんそうだなと。ふだんの会話とモノローグのテンション感の違いなどをどのように演じ分ければいいのか、悩みました。 ──苦労されたとのことですが、手応えはいかがでしたか?
小鹿
たいへんに感じたとお話ししましたが、終わった後は、スタッフさんの反応がいいように見えて期待していました。 ──好感触だったのですね。
小鹿
ですが、じつは、スタジオオーディションに進んだ段階では、自分の中で手毬のイメージが定まっていなかったんです。そんな中でテストとして演じた際に音響監督さんから、「見た目はクールだけど、内面はチワワみたいな子。すごく臆病で、縮こまりがちで、寂しがり屋だけど、それを感じさせないように、狼のように強く振る舞っている子」だと教えていただいて。 弱い部分を隠すために、強い態度を取ってしまうのだと認識できたときに、自分の中でビビッときました。「私の子どものときと同じだ!」と感じたんです。 私も、手毬ぐらいの年齢のときは、ふつうにしていても目つきが悪くて、怒っているように見られてしまうことがありまして。柔らかい言葉遣いもできなくて、思ったことをストレートに表現してしまうことが多々あり、少し人間関係で悩むことがあったんです。なので、「この子は、昔の自分だ」と強く感じたんです。 ──過去の自分を見ている感覚だったと。
小鹿
そうなんです。ですので、自分の過去を思い出しながら演じることで、納得のいくお芝居ができました。その後、歌唱審査もありましたが、手毬のイメージをしっかりつかめたのと、「全力を出し切って表現してください」とオーダーをいただいたこともあり、がむしゃらに歌いました。私の思う手毬を、お芝居でも歌唱でもすべて表現できました。それが評価いただけたようでうれしかったです。帰り道ではマネージャーさんにも「受かっていると思うよ」と言われ、ルンルンで帰宅した記憶があります。 ──そうしたオーディションを経て、手毬役を射止められました。合格を聞いたときの心境はいかがでしたか?
小鹿
合格の発表は、じつはドッキリで知らされまして。最終審査としてカメラテストが行われ、さらにそこで渡される台本を読んでお芝居もする必要があると聞かされていたんです。事前に台本をもらえないので、準備もできないということもあり、焦っていましたね。 ですので、最終審査までは早寝早起きをして規則正しい生活を心掛けて、毎日いっぱい野菜を食べてスタイルを維持したり、近くの神社にお参りもしたり、思いつく限りのことに取り組んでいました。 そして、当日を迎えて会場で待機していると、「ドタドタドタ!」とたくさんの人がやってきて「おめでとうございます!」と言われたのですが、正直、理解が追い付かなかったです(笑)。「じつは、受かっていました!」とプロデューサーの小美野さん(小美野日出文氏)からすごく満面の笑顔で伝えられましたが、ずっと緊張もしていて、当日を迎えるまではネガティブな気持ちにもなっていたので、発表されたときはどうしていいのかわからず……。ただ、少しずつ合格している事実を理解できていくにつれて、笑顔が止まりませんでした。その後にコメントを収録したのですが、にやけが止まらなくて、笑いながら行った記憶があります。
プロデューサーやほかのアイドルとの交流を通じて見えてくる手毬の魅力を丁寧に表現 ――サプライズという形ではありましたが、合格を知った後は喜びで満ち溢れていたのですね。その後、収録が始まっていったと思いますが、演じるにあたって心掛けていることはありますか?
小鹿
実際に収録が始まってからも、オーディションのときのように演じました。全力で物事にぶつかっていくように収録していたのですが、少しだけ違うなとも感じまして。というのも、プロデューサーと出会ったばかりの手毬は、少し冷淡な素振りで、会話も早く終わらせようとする子だったので、スタッフさんにも「言葉を投げかけようとせず、冷たく演じてください」と言われました。オーディションで思い描いた手毬とのギャップがあり、演じるのに少し苦戦しましたね。 ただ、プロデューサーと関係を深めていくことで、チワワな内面も見え隠れして、理解されることで柔らかな表情も見せていくので、段々と手毬のよさを見せられるように演じることを心掛けています。 ――収録していて印象的だったコミュなどは?
小鹿
初星コミュのとある話数で、手毬が鬱憤を爆発させて咲季ちゃんとぶつかる場面があり、お互いにまくし立てるように言い合うのがおもしろくて、自宅で原稿を読んだときにひとりで大笑いしました。この初星コミュはお気に入りですね。手毬が早口で不満を露わにする様子を思いっきり演じさせてもらえて、すごく楽しかったです! ――手毬は、咲季やことねといっしょにいるときは感情を爆発させる様子が見られるのもおもしろいですよね。
小鹿
確かに、とくに咲季ちゃんは思ったことをはっきり口にする子なので、手毬も感情をぶつけやすいのかもしれません。プロデューサーはある程度受け入れてくれる部分もあるので、プロデュースのときとは違った一面もぜひ楽しんでいただきたいです。 ――そんな手毬には、秦谷美鈴というライバルがいます。彼女との物語で印象的だったところはありますか?
小鹿
手毬の中等部時代のお話で、ふたりが所属していたユニット内で、考えかたの違いからケンカしてしまうエピソードがありまして。美鈴ちゃんのことは大好きだけど、価値観が違うのでいっしょに活動する選択ができず、突き放した態度をとってしまうんです。そこがもどかしくて、演じていて切なく感じました。そんな背景があるのにも関わらず、美鈴ちゃんはやさしくて、手毬を甘やかそうとするところがあるので、今後ふたりの関係がどう描かれるかにも注目してほしいですね。
全身全霊な手毬の歌を表現するために、立ち眩みを起こすほど全力で収録 ――本作では、アイドルの成長度合いなどに応じてライブ中のパフォーマンスが変化しますが、歌の収録についてはいかがでしたか?
小鹿
手毬は全身全霊で、焦燥感も感じさせるように歌うのが特徴的です。それを表現するために私も全力で歌っていたのですが、スタッフさんから「もっと全力で、強く歌ってください」と何度もディレクションをいただきました。ですので、私も半ば叫ぶように歌い、収録の終盤には立ち眩みが起こったほどで、たいへんでしたね。ただ、できる限り感情をぶつけて歌うのは楽しくもあり、収録後は達成感もありました。 また、成長前の、プロデューサーと出会って間もないころの歌の表現については、まだまだ未熟で体力もコントロールできない状態なので、それを感じていただけるように歌いました。音程を外すけれどあまり外しすぎずに、その中で息も絶え絶えな様子を表現するのは、かなり難しかったですし、体力の消耗も激しかったですね。 成長前と成長後の歌も聴き比べたのですが、やっぱり成長前は下手でビックリしました。それだけに、プロデュースを通じて彼女が心身ともに成長した後に聴く歌は感慨深く、きっと感動していただけると思います。 ――手毬のソロ曲としては『Luna say maybe』が初期から実装されています。こちらの聴きどころを教えてください。
小鹿
じつは 『Luna say maybe』 の作詞作曲を担当された美波さんが、歌詞のひと言ひと言に対して、「Luna say maybeとはこういう意味です」、「この歌詞はコミュのあのシーンを思い描いて書きました」というような説明を書いてくださったんです。 そんな中でも私が“聴いて”ほしいのは、歌の始まりと終わりの「あのね」です。最初の「あのね。」は「。」、最後の「あのね、」は「、」で終わっていまして。プロデュースを開始して間もないころの手毬は、ひとりで閉じこもっていて、自分から周りの人に相談できない状態なので、「あのね。」になっています。でも、最後は、そこから信頼できるプロデューサーや仲間と出会うことで、自分の世界が開けて、これが正真正銘の私だと自信を持って全力歌えるようになったからこその「あのね、」なんです。 レコーディングの前にいただいた仮歌では、最後の「あのね、」の後に息を吸う音が入っていて。それを聞いたときに、 「『Luna say maybe』 は、“あのね、”で終わりではなく、その先があるものなんだ」と感じました。ですので、私も息の吸う音を絶対入れて、手毬の物語がこれから始まっていくということが表現できるように、「あのね、」はとてもとても大切に歌うように心掛けてします。 ほかにも、切なさを表現するために「雨」という言葉が使われていたりと、手毬の成長を感じていただける、すばらしい楽曲となっていて、私も全力で歌ったので、ぜひ彼女との物語を思い出しながら聴いてくださるとうれしいです。 ――個人的には、Cメロから楽曲の雰囲気がガラッと変わって、それまでの切なげな雰囲気から一気にポジティブな曲調へと変化するのが印象的でした。こちらの表現についてこだわった点はありますか?
小鹿
レコーディング時には、美波さんも同席してくださり、「Cメロからぱっと花が咲いて、視界が開ける様子を表現してほしい」とディレクションしていただきました。それを受けて、私も一気にギアを上げて「ここからどこまでも行けるんだ!」という感情を表現したので、Cメロからの曲調の変化にも注目していただけたらなと思います。
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――今後はライブも予定されているので、会場でのお披露目を楽しみにしているプロデューサーさんもたくさんいらっしゃると思います。
小鹿
『アイマス』 シリーズのライブは、現地や配信などで何度か観覧させていただきましたが、やはりプロデューサーさんの熱量がすごいですよね。本当にアイドルやコンテンツが好きな方で埋め尽くされているんだと強く感じます。ですので、ステージに立たせていただく際には、会場のプロデューサーさん全員を魅了できたらと思います。 ――これからの活動の中で、挑戦してみたいことはありますか?
小鹿
ライブでトロッコに乗ることに憧れています。あとは、ステッキを持ったり、椅子を使ってかっこよく歌ってみたりしたいです。手毬はクールでかっこいいパフォーマンスが似合うと思うので、彼女の魅力を存分に感じていただけるステージをお届けできたらなと思います。 ──それでは最後に、プロデューサーさんへのメッセージをお願いします。
小鹿
私たちキャスト陣も、新しい 『アイドルマスター』 がスタートするということで、本当にドキドキしていますが、みんなアイドルと全力で向き合って演じています。プロデューサーさんたちの期待を裏切らないようにがんばりますので、温かく見守って、応援していただけたらうれしいです!