
ファンタジー世界の日常を描く挑戦的な作品
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『マリーのアトリエ』は、ガスト(現在はコーエーテクモゲームスのガストブランド)から発売されたRPG。いまなお人気の高い『アトリエ』シリーズの記念すべき第1作となる。
当時のRPGと言えば、勇者のような存在となって世界を救うような王道ファンタジー作品が主流で圧倒的な人気を誇っていたと思うが、そんななかでちょっとした異端の存在だったのが『マリーのアトリエ』。何せゲームのキャッチコピーからして「世界を救うのはもうやめた」だったのだから、なかなかに挑戦的。“錬金術”を題材にした内容で、プレイヤーは新米の錬金術士としてさまざまなアイテムを調合しながら生活していくことに主眼を置いているのが斬新だ。RPGとしての要素はひと通り揃っているが、プレイ感覚としてはシミュレーションのほうが近かったかもしれない。
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主人公は田舎から都会へやってきた学生、通称マリーことマルローネ。王立魔術学校“アカデミー”で錬金術を学んでいるのだが、創立以来の最低成績を記録してしまい、5年のあいだに先生が満足するような高レベルのアイテムを完成させる特別な課題を受けるはめになってしまう。かくしてマリーは、卒業を目指して城下のアトリエで錬金術修行に励むことになる、というのが導入の物語だ。マルチエンディングになっていて、クリアーした後も異なるプレイスタイルで再挑戦できるところがよかった。キャラクターデザインはイラストレーターの桜瀬琥姫氏。繊細で美しく描かれたキャラクターたちも非常に魅力的だった。
錬金術士の腕の見せどころは、やはり“調合”。冒険で収集してきた素材を使い、新たなアイテムを作り出していくのが楽しいのだ。稼いだ資金で設備を充実させたり書物を買ったりしながら、少しずつ錬金術士として成長していくことにもワクワクしたのではないだろうか。脇を固めるキャラクターたちのイベントが豊富で、彼らの依頼をこなして仲よくなっていくサブストーリーにも夢中になったのではないかな。
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本作のヒットを受けてシリーズ化。ただし、例外となるいくつかの作品を除いて主人公が毎回変わるため、『マリーのアトリエ』シリーズではなく『アトリエ』シリーズと呼ばれているのがユニークだ。また、何作かごとに世界設定を共有する作品群が作られているのもおもしろいところ。
たとえば、サブタイトルに“ザールブルグの錬金術士”を冠する『エリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士2~』や『リリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士3~』は初代の『マリーのアトリエ』と同じ作品群にあたり、ファンのあいだでは『ザールブルグ』シリーズと呼ばれている。ほかのゲームではあまり見られないお約束で、筆者のお気に入りのポイントでもある。タイトルの主人公の名前が愛称になっていて、正式な名前がしっかり設定されているのも非常にいい。初めて知ったときは『アルプスの少女ハイジ』のハイジの名前がアーデルハイドだったと知ったときと同じくらい驚いた。
現在はほかにも『グラムナート』シリーズ、『イリス』シリーズ、『マナケミア』シリーズ、『アーランド』シリーズ、『黄昏』シリーズ、『不思議』シリーズ、『秘密』シリーズなどがある。シリーズ最新作は、スマートフォン(iOS・Android)、PC(Steam)で展開中の『レスレリアーナのアトリエ ~忘れられた錬金術と極夜の解放者~』。150年前に失われた“錬金術”を再び世界に広めることを夢見る主人公・レスナが、伝説の地“果ての大陸”を目指して冒険していく物語が描かれている。
いま本作を遊びたいという方は、2023年にNintendo Switch、プレイステーション5(PS5)、プレイステーション4(PS4)、PC(Steam)で発売されたフルリメイク版『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』がオススメ。ファンはもちろん、長く続いているシリーズだけに何となくプレイのハードルが高かったという人にもピッタリの一作だ。