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『東京サイコデミック』レビュー。監視カメラの映像を見つめ、波形から環境音を解析。地道でリアルな科学捜査がオカルトの真相を暴く

byありみち

更新
『東京サイコデミック』レビュー。監視カメラの映像を見つめ、波形から環境音を解析。地道でリアルな科学捜査がオカルトの真相を暴く
 2024年5月30日に発売予定の 『東京サイコデミック ~公安調査庁特別事象科学情報分析室 特殊捜査事件簿~』(『東京サイコデミック』)。Nintendo Switch、プレイステーション5(PS5)、プレイステーション4(PS4)、PC(Steam)のプラットフォームで、日本先行販売されることが決定しています。

 都市伝説好きと刑事ドラマ好き、両方の好奇心をおおいに刺激してくれる本作の、第3章までの内容をもとにレビューをお届けします。

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※本稿はグラビティゲームアライズの提供でお届けします。

怪奇事件を暴く糸口は現代的な科学捜査

 本作の舞台は東京。数年前に謎のウイルスが蔓延したことにより首都封鎖まで追い込まれた後、新内閣が立ち上げられ徐々に立ち直りつつある、という背景があります。現実世界で流行したコロナウイルスを彷彿とさせる展開です。

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本作は実写と2Dアニメーション、両方を駆使した描きかたが特徴。

 そして、我々プレイヤーは、とある事件のせいで解体に追い込まれた探偵事務所の探偵として、東京で起こる怪奇事件の真相に迫っていきます。

 なぜ、そんな捜査を行うのか。それは、
“本物の超常現象を発見するため”です。

 ちょっと話がオカルトじみてきましたが、主人公たちはただのオカルト・都市伝説好きだというわけではありません。大真面目に超常現象を、そしてその裏にいる異能力者たちを探しているのです。

 なぜなら、上述した通り主人公は解散した探偵事務所の調査員。そしてその探偵事務所が解体されるきっかけの事件が、
“人体実験による異能力者育成計画”という、極めて不可解なものだったから。

 そんなわけで、登場する事件は超常的な現象ばかり。このあたりがふつうの刑事サスペンスものと異なる、本作ならではの味付けとなっています。

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 本作の章タイトルは都市伝説や怪奇現象になぞらえてあります。たとえば1章は
人体自然発火現象(※1)、2章はファフロツキーズ現象(※2)、3章は神隠し(※3)、といった感じです。

 オカルト好きの筆者は、章タイトルがババンと出るたびに「今回はどんな事件になるのだろう」とワクワクしていました。
※1……人体自然発火現象:人間そのものが火元になってしまっているかのように燃え上がり、骨も残さず燃え尽きてしまう現象。 ※2……ファフロツキーズ現象:空から通常降ってこないようなもの(カエルや魚など)が突然降ってくる現象。原因は竜巻や航空機の落下物という説も。 ※3……神隠し:人がなんの前触れもなく突然行方不明になってしまう現象。
 この世界では、まるで「オカルト系雑誌の表紙かな?」と思うような題字が新聞の一面を飾っています。

 しかし本作のジャンルは“リアル科学捜査シミュレーションアドベンチャー”。オカルトチックな事件を調べ、物的証拠と推理でその真実を暴いていくのです。

 “怪奇現象を否定するために科学的な証明をする集団を取り扱う”という作品はチラホラありますが、本作の主人公たちはその逆、というのがまたおもしろいポイント。

 主人公たちはどうにかして本物の超常現象に出会いたいんですよね。好奇心からではなく、過去の事件を終結させるために。

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奇譚新聞、というオカルト臭ただよう新聞。最高。

映像・音声解析で科学的な証拠をつかむ

 本作では、実際の事件捜査に使用されるような、本格的な科学捜査が体験できます。なかでも、映像解析と音声解析はかなり作り込まれています。

 映像解析では、監視カメラの映像などを詳しく調べることが可能です。

  たとえば、監視カメラに残った映像を詳しく解析。ただ流れる映像を見るだけでなく、顔写真をスキャンして該当の人物かどうか特定するなど、一歩踏み込んだ操作もできます。

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映像解析に使うビデオデッキ。実際の捜査でもデッキは現役なんだろうか。
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映像に映っている人物が探している当人なのかどうか、AIが判定してくれる。

 また、音声解析では、音の波形を視覚化して調べられます。

 周波数(Hz:ヘルツ)ごとに聞こえてくる音の種類が違うので、音量調節をしながら証拠となる部分を抜き出しましょう。なんとなく聞き逃していた環境音にヒントが隠されていたりすることも。

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音声解析に使う装置。こちらもかなり年季が入っている。
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ボリュームのつまみをいじることで聞こえる音が変わってくる。

 じつはこれらの作業……
めちゃくちゃ地味! そして手間が掛かる!

 ゲームプレイ中、実写で映し出される歩行者がただ歩いて流れていく監視カメラの映像を何分間もじっと見つめていなければいけないし、何種類もあるビデオを再生するためにデッキからいちいち取り外して交換する手間もあります(自分で換えます)。

 音声データを調べるときも同様で、つまみをちまちまといじって、事件と関係ありそうな音を抜き出していく作業はなかなかに根気が必要です。お、おお……リアリティ。

 ゲーム的にテンポがいいとは決して言えないですが、おそらくは、
これこそがリアルで本格的な捜査。現実世界の刑事さんたちも、こうした砂の中から針を探すような作業を経て、証拠をつかんでいるのでしょう。この現実を再現するこだわりと、いっそ根気が必要になるほどリアルな“ごっこ遊び”感が本作のオリジナリティーを生み出しています。

仲間の栢原隆一とかいう男がチートすぎる

 主人公は、たったひとりで怪奇事件に立ち向かっているわけではありません。それぞれ得意分野を持った心強い仲間が何人もいます。

 黒幕側に素性や捜査内容がバレないように、彼らはふだん、ダークウェブ上のツールで連絡を取り合っています。

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秘密結社みたいでかっこいい。

 ここで紹介したいのが、Mechanicこと栢原隆一(かしわばらりゅういち/声:森田成一)。

 さまざまなデータベースをハッキングして、捜査に必要な情報を持ってきてくれる心強い味方。……なのですが。

 
いかんせんチートすぎる。

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 街に設置されている防犯カメラをハッキング。上場企業に所属する社員の個人情報をハッキング。病院に通う患者のデータをハッキング。果てには国が管理するデータベースにまでハッキング。

 ……と、こんな感じでありとあらゆるデータを「これちょうだい」の一言で持ってきてくれます。事件の捜査に必要な証拠の大半は、彼が持ってきていると言っても過言ではありません。

 この男が味方でよかった。本当に。もし敵だったら……と思うと安心して眠れません。

 データベース上に痕跡を残さない人間など現代ではまず考えられないので、栢原にありとあらゆるデータを抜かれてしまうに違いない。YouTubeの視聴履歴、Amazonの購入履歴、ふだんどの道を通ることが多いのか、自宅の場所はもちろん付近のお気に入りの店はどこか、X(Twitter)のアカウントはいくつあるのか……うん、こわい。

推論を積み重ねていくという捜査体験

 本作のシステム最大の特徴として、選択肢から正解を当ててストーリーが進むのではなく、自分なりに考えた答えを提出する、という点が挙げられます。

 ふつう、ミステリー系のアドベンチャーは、正解の答えを選ばないとそもそも話が進まない、というシステムになっていますよね。本作は、間違った答えでもそのまま進んでいってしまうのがおもしろい。相棒の紅葉に「うーん……本当にそれで合ってるかな」と苦い顔をされますが、「大丈夫、黙って俺についてこい!」と強引に話を進めることも可能です。

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状況を視覚化して把握しやすいエビデンスボード。
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自分なりに事件の整理がついたら、質問項目に根拠を示して最終フェーズへ。

 章のラストに推理の答え合わせがあり、回答によって事件の顛末における演出がちょっと変わります。間違えた回答を提出すると残念な感じに……。

 ゲームシステム上、総当たりのような戦法が通用しない場面が多々あるので、自分で正解をきちんと考えたい、物語を楽しんだうえでさらに自分で謎を解きたい、そのためには地味で地道な科学捜査も望むところだ、という本格志向のプレイヤーに向いていると思います。ヒントなしでは難しい場面もけっこうあるので、そういうときは相棒の紅葉に相談してみてください。ヒントがもらえます。

 本作は各プラットフォームで体験版が配信中。気になった方はぜひ遊んでみてから購入の検討をしてみてはいかがでしょうか。そして、栢原隆一のチート具合に震えてください。
余談ですが、筆者の出身地・八王子が出てきてテンション上がりました。八王子市民も注目です!
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集計期間: 2025年03月27日19時〜2025年03月27日20時