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“国政”という新境地へ挑む大作『Fable III(フェイブルIII)』インプレッション

ゲーム Xbox 360 インプレッション
欧米を代表するゲームクリエイター、ピーター・モリニュー氏がすべてのゲームファンに捧げる渾身のアクションRPG『Fable III(フェイブルIII)』の魅力を、気鋭のライターが語り尽くす。

●英雄の末裔は、革命を経て王となる

 『Fable II(フェイブルII)』から50年後のアルビオンで、悪王を打ち倒して王となる英雄の物語が描かれる『Fable III(フェイブルIII)』。欧米を代表するゲームクリエイター、ピーター・モリニュー氏がすべてのゲームファンに捧げる渾身のアクションRPGの魅力を、ファミ通Xboxとファミ通Xbox 360で過去2作の攻略記事を担当してきた古参ライター、まさーる男爵がインプレッションする。

●『Fable(フェイブル)』シリーズならではの魅力とは?

 『Fable(フェイブル)』シリーズの代名詞と言えるのが、モラルの概念だ。取った行動によりプレイヤーのモラルが善悪のどちらかに傾き、主人公の見た目や世界そのものが変容していく。とある選択によって、ひとつの集落からすべての住民が消えてしまったり、広大なマップの全域が変わり果てた姿になってしまうこともある。さらに、アルビオンに住む“人々の息吹”もモラルと連動していることがポイント。善行を重ねればみんなうれしそうに近づいてきて、プレゼントをもらったり子どもにサインをねだられる。一方、犯罪まみれの悪党になれば暴言を吐かれ、老若男女を問わず雲の子を散らすように逃げ去ってしまう。善悪のどちらを志すかで、同じ世界なのにまるで空気が違ってくるのが『Fable(フェイブル)』の非常にユニークなところだ。

 また、ほとんどの人物と個別にコミュニケーションを取ることができ、世界中の不動産を買い占めることもできる。労働、盗み、殺人、結婚などは序の口で、値段交渉、物件の装飾、犬と遊ぶ、避妊、出産、同姓婚、重婚、さらに養子をもらうことまで可能。ふつうのゲームでは考えられないほどの行動選択肢が用意されていることが『Fable(フェイブル)』シリーズの特徴であり、同時に大きな魅力にもなっている。

 こうした『Fable(フェイブル)』ならではの要素は、人々が生活している街なかで濃密に体験できるが、街の外では本来のジャンルであるアクションRPGとしての側面が強くなる。ひとたび街を離れれば、そこには緑豊かな、あるいはきびしい自然にさらされた美しい風景が広がっている。とくに今回はシリーズ初の砂漠地帯があり、灼熱の日差しが照りつける昼の景色と、荒涼とした夜の景色があまりにも違うことに驚かされた。フィールドやダンジョンは山賊や魔物が蔓延る無法地帯と化しているが、ときにはモンスターどうしによる弱肉強食の絵図が展開したり、街の近くでは衛兵と山賊が剣を交えていたりする。また、謎解き要素のデーモンの扉やシルバーキー、物語には直接関係のない洞窟や鉱山につながる入り口も随所にある。サイドストーリーを楽しめるサブクエストも豊富にあり、冒険心をくすぐる仕掛けが満載だ。

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▲アルビオンの世界は発見と興奮に満ちている。時間帯やモラルによって、街の空気は大きく変わる。

▲物語中盤で行けるうつろい砂漠には、新たな敵が多数出現する。この敵は“砂の怨霊”だ。

●民衆を虐げる悪王ローガンを討つために

 『Fable III(フェイブルIII)』の――とりわけシリーズ経験者にとっての――大きなトピックは、主人公のイメージがガラリと変わったことだ。これまでの主人公は英雄の血を引いてはいるものの、そのことを知らずに慎ましく暮らす庶民や貧民。コミュニケーションこそ大仰だが、基本的には言葉少なで、メイズやテレサに黙ってついていく純朴な若者というイメージがあった。しかしながら、今作の主人公は王子(王女)。バウワーストーン城に住まう王族であり、偉大な英雄の子息にして国王ローガンの弟(妹)という設定だ。ストーリーパートには非常に多くのセリフが用意されており、違和感を抱くほどに爽やかでハキハキしている(笑)。造形もかなり洗練された印象で、日本人にもだいぶ受け入れやすくなったのではないだろうか。そんなわけで、華やかなりし王室生活をちょっぴり期待して始めてみたが、そこはやはり『Fable(フェイブル)』。ゲーム開始から30分も経たずに絶望的なクライマックスが訪れることになる。

 気持ちのいい朝。愛犬とともに執事に起こされた主人公は眠い目をこすりながら着替えを済ませ、バウワーストーン市街を一望できる城の中庭へ恋人との逢瀬に出向く……優雅なシーンはたったこれだけ。ローガン王のこっぴどい悪政に耐えられなくなった民衆がデモを起こし、城内は急に騒がしくなる。兄の振る舞いに疑問を抱いていた主人公は民衆を許すよう懇願するが、非情な選択を突きつけられてしまう。ローガンが提示したのは、デモの首謀者たちを処刑するか、代わりに恋人を処刑するかという究極の二者択一。答えを出せずにいると、ローガンは言い放った――「お前にできぬのなら、私が決めよう。全員処刑だ」。

 断腸の思いで苦渋の決断を下すと物語は急転直下、主人公は兄の暴走を止めることを決意し、教育係のウォルター、執事のジャスパーとともに城からの脱出を試みる。最初に向かった地は、冠雪地に集落を構える山の谷のキャンプ。キャンプの代表者であるサビーンに、同胞となってくれることを依頼するためにやって来たのだ。集落に入ると、「今週は何も食べてないんだ」、「雪を食べるのはもうイヤ」などと、貧困にあえぐ山の民の嘆きがつぎからつぎへと耳に入ってくる。兄の悪政が残した傷跡は予想以上に深い。

 このような導入から物語は始まり、主人公はサビーンを初めとする土地の有力者たちと“約束”を交わしていく。これは革命に協力してもらうかわりに、王になったあと住民の希望をかなえる“公約”と考えるとわかりやすい。そして、この約束はのちに極めて重要な意味を持つことなる。

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▲今作に幼年期はなく、ゲーム開始後から主人公は分別のある若者として描かれている。一般市民だけでなく、城の中にもローガンに対して不満を持っている者が多い。約束を交わすと、街の住民たちは沸き立つが……。

●財源の確保に腐心する革命後の執政

 主人公は物語の後半になると革命を成し遂げ、兄に変わって国政を取り仕切ることになる。国政の議題はローガンの裁判に始まり、各地の代表者との約束を守るかどうか、治安維持に予算を回すかどうか、汚水処理問題、城の内装デザインといったことにまでおよぶ。これらへの決断がメインクエストになり、多くの場合ルートマーカーは城の謁見室を指し示すようになる。ちなみに国政クエストには、『Fable II(フェイブルII)』の終盤で一時行動をともにした英雄リーバーが深く関わってくる。彼の役回りはここでは伏せるが、前作よりも登場機会が大幅に増え、より強烈な存在感を放つ人物として活躍するので期待してほしい。

 この国政という代物は、何をするにも金、金、金! とにかくもうひたすらに金がかかる。あれほど憎んでいた兄ローガンと、絶対に変えてやると誓った悪政の数々……しかし、いざ王になってみるとローガンの政策を維持するのが精一杯で、国を動かすには大変な苦労がともなうことがわかる。国民が喜ぶことをしようとすると、100万ゴールド程度は一瞬で吹き飛ぶ。善王となるには個人資産を国庫にドバドバつぎこまなくてはならず、国政が進むにつれてどんどん複雑な心境になってしまった。正義を貫くのも楽じゃないのである。ローガン以上の悪政に徹すれば金の悩みからは開放されるが、仲間はひとりまたひとりと去っていき、住民からの印象も最悪なものになる。だが、本作にはある大儀が存在し、悪政を敷いたほうが圧倒的に楽に達成できるのだ。この大儀こそが、最終的なアルビオンの平和につながる要素となっている。国政での決断はその場限りの単純なものではないため、これまでのシリーズよりも苦悩する場面が圧倒的に多くなっている。

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▲国政パートの決断は、フィールドの姿にも大きな影響を与える。一方を選んだ場合にしか行けないダンジョンなどもある。

●プレイ感覚はそのままに、斬新さも併せ持つ新システム

 メインクエストの節目には、主人公はテレサに導かれて“統治の道”を訪れる。統治の道は、英雄が革命を成して世界を救うまでの道のりを示した異空間。ストーリーを進めるとゲートがひとつずつ開き、最終目的に近づいていることが視覚的にわかる仕組みだ。ゲートとゲートのあいだにはたくさんの宝箱があり、その中には交流アクションや魔法、攻撃力アップなど主人公の成長につながるギミックが詰め込まれている。ただし、宝箱を開けるにはそれぞれに設定された“ギルドの紋章”が必要となる。紋章は人々との交流やサブクエストの達成で手に入るが、すべてを開けるためには膨大な数の紋章がいる。少なくとも、ふつうに進めるだけではすべてを開けるのは困難なため、取捨選択が重要になってくる。

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▲初代『Fable(フェイブル)』から登場しているテレサが、統治の道の番人。宝箱の中身は徐々に強力になるが、必要な紋章も増えていく。この道の先にあるのは、光か闇か……。

 また、従来のメニュー画面が廃止され、ビジュアルメニューの“聖なる間”として生まれ変わっている。“聖なる間”へはいつでも一瞬で移動可能で、武器や魔法の装備、衣装の着替え、マップ移動、クエストの確認、不動産の管理、ギフトの受け取りなど、さまざまなことが行える。ここから統治の道へ行くことも可能だ。

 そのほか、特定の条件を満たすと武器が強化される“アップグレード”、ふたつの魔法を組み合わせた合成魔法“コンボススペル”、NPC(ノンプレイヤーキャラクター)の手を引いて移動できる“タッチ”、統治の道の宝箱による成長システムなど、細かいものを含めれば数多くの新システムが搭載されている。これらは奇抜さだけを求めたものではなく、より快適で直感的に遊ぶための工夫であることが、プレイを重ねればおのずとわかってくるはず。混乱するようなことはほとんどなく、プレイ感覚はまぎれもない『Fable(フェイブル)』なので安心してほしい。

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▲聖なる間はリアルタイムで進行する要素を除く、ほぼすべてのシステムをつかさどる。全体マップから不動産の売買を行えるので非常に便利。貸し家は老朽化するため、今回はこまめに修理しなくてはならない。

●いざ、アルビオンの世界へ

 今作では全般的にかつて煩雑だった部分が簡略化されて遊びやすくなり、物語の展開もとてもドラマチックだ。オンラインマルチプレイは残念ながら体験できなかったが、ゲスト側の行動制限がなくなり、個別に行動できるというから格段に楽しくなっていると期待できる。

 本作の行動選択肢の幅は非常に広いものの、ひとつひとつが必ずしも深いわけではなく、いかようにプレイしてもストーリーラインがブレることはない。そのため、“自由度が高い”という表現は適切ではないかもしれないが、“自分の好き勝手に行動している”感覚は間違いなく得られる。冒頭で述べた『Fable(フェイブル)』ならではの要素については、筆者の場合は初代『Fable(フェイブル)』のときがもっとも感動が大きかった。だから今作に限ったことではないのだが、シリーズ未体験の人にこそ『Fable(フェイブル)』シリーズをぜひ遊んいただき、アルビオンの世界が放つ魅力をひとりでも多くの人に知ってほしいと願っている。


■筆者紹介 まさーる男爵
自由が丘に事務所を構える編集プロダクション・トリスター所属。アルカディア誌やファミ通Xbox 360誌などで執筆中。アーケード上がりなので、アクションや2Dシューティングを中心に担当させていただいてます。初代『Fable(フェイブル)』は初めて遊んだ箱庭RPGだったこともあり、強烈なインパクトを残した作品。Xboxクラシックスでダウンロード可能なので、興味のある方はぜひお試しを。

Fable III(フェイブルIII)
メーカー マイクロソフト
対応機種 Xbox 360
発売日 2010年10月28日
価格 7,140円[税込]
ジャンル アクションRPG
備考 『Fable III(フェイブルIII) リミテッド エディション』(初回生産限定)が8190円[税込]で発売
(C) 2010 Microsoft Corporation. All Rights Reserved.

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