ナツノカナタ beyond(Nintendo Switch)のレビュー・評価・感想情報
パンデミック後の日本を巡る少女との冒険が、セリフを主体として展開。選択肢分岐型だが、プレイヤーが彼女に“話しかける”スタイルが新鮮で、相手との距離を特別なものに変える。廃墟の探索、感染者との戦闘が文字ベースで進むことで、逆に想像力が刺激され、世界へ没入していく。総当たり勢の自分は後ろ髪引かれることも多いですが、取捨選択の判断を求められる探索スタイルが崩壊世界にマッチ。
週刊ファミ通1863号より
ストーリーに没入させる設定とシステムが秀逸。コンピューター越しに会話の受け答えを行い、任意のタイミングで少女に話しかけて探索を誘導する仕組みが、自分が登場人物のひとりとして物語に介入している感覚を強めてくれます。終末世界が舞台なのに切なくも気持ちが安らぐような不思議なムードと、心地よい音楽もステキ。サバイバルを行う探索パートをスキップできるモードもあるのは親切。
週刊ファミ通1863号より
全編に漂う寂しさや虚無感が、陰鬱な気分を誘いますが、同時に、このなんでもない“生”を肯定されている感覚も覚えます。物語や運命の正体、宇宙の成り立ち、自分の存在といった、哲学的かつ身近で普遍的でもあるテーマが、ヒロインの語りに浮かんでは消え、消えては浮かび……。いまとなっては容易に取り出せない記録とともにしまい込んだ、古いコンピューターを思い出して、胸が苦しくなりました。
週刊ファミ通1863号より
画面レイアウトを含めたUI全般は、状況の把握のしやすさが優先されたものではありませんが、物語世界の透明感を高める要素になっています。探索パートはチャレンジというより、ポスト・アポカリプスの日常体験。ペナルティーを気にせず、物資集めやクラフトを気楽に実行できるのがいいですね。登場人物の会話のテンポなど、場面の切り取りかたの美学に共感できれば、物語の本質がスッと入ってくるはず。
週刊ファミ通1863号より
ファミ通公式レビューアーイラスト:荒井清和
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