なので、世に出ているレビューや評価は基本的にソウルライクが好きな人の目線であり、“よくできたソウルライク”として結論付けられていることがほとんどだ。

だがちょっと待ってほしい。たしかに『Lies of P』はソウルライクとして良ゲーだが、それだけで語るのはもったいないくらい、世界観や美術設計、そして物語が作り込まれているのだ。
誤解を恐れずに言えば、ゲーマーとかオタクってこういうの好きでしょ的な要素がこれでもかと詰め込まれている。ゲーマーでありオタクである筆者は「好き……」と、トゥンクした。
以前のレビュー記事では“ソウルライクの奥に秘めたテーマ”をフィーチャーしているが、今回は物語方面をもう少し深掘り。少しでも多くの方、とくにアクションが苦手な人に本作の魔力を届けたい。
多種多様な姿を魅せるクラットの街並み



しかしあるとき、自動人形たちが一斉に謎の暴走を始め、人間を虐殺。人間も人形を恐れて反撃を行った結果、街は崩壊し、血と油まみれの廃墟になってしまったところで主人公が目覚める……というのが物語の始まり。





あちこちを奔走していると、自動的に街並みが目に入る。これが本当にすばらしいのだ。かつての栄華を思わせる造形美や、ブリキと歯車に満ちた蒸気はないけれどスチームパンク的な雰囲気(蒸気機関はエルゴに置き換わっているイメージ)は、ゾクゾクするほどの美しさを放っている。



光と影による演出、TIPSアイテムを見つけたときの「何かあったんだろうな」と思わせる匂わせ、そして癖のある登場人物たちと、これでもかと世界観にグイグイと引き込もうとしてくる。ものすごい引力を感じるはずなので、もう身を任せてしまおう。退廃的なビジュアルに魅了された瞬間があなたのスタート地点だ。


真実を求めて突き進むうち、引力はさらに力を増す。人間の身体が硬化して死に至る謎の“石化病”と、それを治そうと非道な実験をくり返す“錬金術師”、そして明らかに感情を持った人形などが登場し、ますます混迷を極める『Lies of P』の物語。戦いの舞台はクラットの各地へ広がり、まったく違う様相を見せ始める。




あえて別のゲームにたとえるならば、『バイオショック』のような雰囲気であった街に、次第に『バイオハザード4』を彷彿とさせる空気が流れ込み、最後は『エルデンリング』だなぁと感じた。
過去に掲載された開発スタッフインタビューでは『ダークソウル』や『ブラッドボーン』に影響を受けていると明言していることもあり、この辺りの雰囲気が好きな人にはビンビン来るものがあると思う。






ちなみにゴシックホラーな雰囲気が担当編集者の心の柔らかい部分を刺激したらしく、「ゴスロリ好き、とくにアリスアウアア(※)やモワ・メーム・モワティエ(※)に憧れた人に遊んでほしい。ミホマツダ(※)の王子系ファッションが好きな人にもおすすめ。ゲームだったら『アリス イン ナイトメア』や『第五人格』が好きな人」と熱弁をふるっていた。





言葉だけで説明すると、いろいろな要素のごった煮に見えるかもしれない。だが心配は不要だ。実際は没入感を高める演出と世界観の落とし込みによって、じわじわ心にしみ込んでいく。清流が流れるように少しずつクラットの裏の顔が明らかになり、人形への恐怖から人間への恐怖に移り変わっていく。
本来なら嫌悪されるはずの“恐怖”でプレイヤーを魅了する手法はじつに見事。だからこそ、似ているようで似ていない、オリジナルのゲームとしてしっかり確立されているのだ。




メインのストーリーだけだとすべてを知ることはできないが、サブクエストやTIPS集め、2週目のプレイによってたいていの謎は解ける。プレイ後にモヤモヤすることなくスッキリできるのもおすすめポイントのひとつだ。



ちなみに、プレイ後に原作小説の『ピノッキオの冒険』やディズニー映画の『ピノキオ』に触れると、「コレがモチーフになっていたのか!」と直接的なものからさりげないものまでたくさんのオマージュに驚くのでぜひ。
人形が嘘をつく。そこに込められた意味と本家“ソウルライク”との対比
『Lies of P』に登場する自動人形たちはアシモフのロボット三原則のような「嘘をついてはいけない」、「人を傷つけてはいけない」などの絶対のルールを持っている。それにも関わらずなぜ人間を虐殺してしまったのか……というのも大きな謎のひとつなのだが、そんな暴走した人形たちですら嘘をつくことはできない。

ところが、ゼペットじいさん最高傑作の主人公は、なぜかこの縛りから逃れ、嘘をつくこともできれば、人を殴ることもできてしまう。これを逆手に取って、人形を排除しようとする人間たち相手に嘘をつくことで「自分は人形じゃない」と証明しながら進んでいくことになる。初めて嘘をついたシーンがこちら。

「ぜんまいが反応する。」
そんなメッセージとともに、歯車が動く音が響き、さらに赤黒いエフェクトがピノキオから噴出。「え、これ嘘ついたら何かヤバい?」と思わせる演出だ。そして現れる『Lies of P』のロゴ。
嘘の重要性をスムーズに伝え、同時にプレイヤーの不安をあおる。オープニングの演出として完璧である。正直に言って、めちゃくちゃワクワクした。

タイトル通り、嘘(Lie)が重要な作品であることは間違いない。では、嘘をついてもいいのかどうか、そして「嘘をつき続けたらどうなっちゃうの!?」という不安が「早く続きをプレイさせろ!」に形を変えたのだ。
“『ピノッキオの冒険』を下敷きにしている”ことは知っている。ということは、嘘はよくない方向に作用するのでは……と手探りで進める。人形でありながら人間のような行動を取り続ける主人公を、周囲の人間や敵までもが人間のように扱ってくる。



主人公以外にも暴走していない人形は登場し、彼らもまた明らかに人としての心に目覚めている。さらに、サブエピソードでは人形と結婚した人も登場。人間は人形を愛しており、人形もまた明らかに主人を愛しているように描写されている。「人間と意思を持った人形(ロボット)は何が違うのか」というテーマをがっつり投げかけてくるようだ。

ソウルライクのもととなった『ソウル』シリーズでは人間性を捧げることで進んでいく。本作はソウルライクでありながら人形たちが人になっていく=人間性を得ていくことで物語が進むという対比はオマージュとして見事である。
どんどん人に近づいていく主人公が嘘をつき続けた結果、どうなるのか。それをこの記事で語ることはできない。筆者もまた人間だ。この驚きと真実にたどり着いたときの喜びをみなさんと分かち合いたい。
物語を楽しむのに最適なイージーモードが来る!
しかし安心してほしい。2段階のイージーモード実装が発表されたから。実力に合わせて歯ごたえのある戦闘とスリルを楽しみながら、自然と物語に没入できるようになる。
『Lies of P: Overture』ではクラットが壊滅する前夜が描かれるという。崩落する前の美しく優雅なクラットの街並みが見られるんじゃないかと筆者も楽しみにしている。




もしこれまで『Lies of P』気になってたんだよな、という人やおもしろそうだけどソウルライクということで一歩引いてしまった人たちこそ、この美しくも物悲しい、耽美な物語に酔いしれてほしい。
















