東京ゲームショウ2024に合わせて、THQ NordicのトップであるCEOのクレメンス・クラウザー氏が来日。ファミ通への取材に応じてくれた。
THQ Nordicが東京ゲームショウに出展するのは2022年以来2年ぶり。ブースでは『ディズニー エピックミッキー:Rebrushed』や『REANIMAL』(リアニマル)、『Gothic 1 Remake』(ゴシック1リメイク)、『Titan Quest II』(タイタンクエスト2)、『The Eternal Life of Goldman』(ジ エターナル ライフ オブ ゴールドマン)の5タイトルを出展し、注目を集めていた。
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ファミ通がクレメンス・クラウザー氏にインタビューをするのは、前回の東京ゲームショウ2022で来日して以来なので、こちらも2年ぶり。この2年間の変化や今後の展望など、飾らない率直な口ぶりで答えてくれた。
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――前回お話をうかがったのは、東京ゲームショウ2022のときでした。あれからいくつかのタイトルがリリースされましたが、この2年間での手応えをお教えください。この2年間の展開は、少し控えめだったような気もしますが……。
クレメンス
2022~2023年は、2020~2021年を経て、通常の状態に戻ってきました。2023年は親会社レベルでのリストラがあったため、多少痛みが伴いました。また2020~2021年のコロナ禍後の市場はいまだきびしい状態にありました。
リリースタイトルが控えめだったというのは、おもにPCタイトルをメインで展開していたからだと思います。そしてそれらのタイトルは、北米やヨーロッパのユーザーの嗜好に合ったものが中心で、日本市場向けではありませんでした。
――北米やヨーロッパは想定通りの結果だったのですか?
クレメンス
いえ、これらのテリトリーでも一般的に市場の状況はきびしく、予想通りにはいきませんでした。また、2023年には複数のパブリッシャーから素晴らしいAAAタイトルが多くリリースされました。これほど質の高いタイトルが出揃ったことはあまりないと思います。これは私たちにとってはきびしい状況でした。
――2022年のインタビューでは、「現在傘下に33社を擁していて、そのうちの22社が開発会社。それだけ開発力が充実してきた」とおっしゃっていましたが、その後いかがでしょうか。
クレメンス
現在は26社を擁し、そのうち17社が開発スタジオです。2023年に戦略を変更しまして、コア戦略として、利益率、キャッシュフォローにフォーカスするのではなく、KPI(Key Performance Indicator ・重要業績評価指標)をより重要視するようになりました。これまでより投資を絞り、CAPEX(Capital Expenditure・資本的支出)を減らし、少数に集中して行うということです。
――2019年に日本法人を設立しましたが、現状の日本市場に対する手応えはいかがでしょうか?
クレメンス
はい、手応えは感じていますし、日本の市場を楽しんでいます。日本の素晴らしいチームが日本市場に合致するベストなタイトルを提供したいと努力していますが、まだ日が浅く、日本という市場について学ぶことがたくさんあります。ゲームのスタイル、消費者行動、IP、フランチャイズなどが欧米とは大きく異なります。
日本は欧米とは異なる独自のゲーミング文化を築いてきましたので、日本のIP、フランチャイズは欧米ではあまり知られていないかもしれません。その中で私たちが日本でIPを確立するのはとても難しいことです。プレイヤーのテイストも違いますし、ゲームのコンセプトやジャンルもヨーロッパ、アメリカとは違いますね。
――2021年にリリースされた『バイオミュータント』は日本でもかなり受け入れられたかと思います。
クレメンス
『バイオミュータント』は素晴らしかったですし、日本の市場にマッチしていました。ゲームの設定、スタイルなどが好まれたようです。当初から手応えがありましたし、コミュニティもできました。
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『バイオミュータント』
――それでも日本市場で受け入れられるゲームを出していくのは難しいのですね?
クレメンス
はい。欧米のパブリッシャーにとっては難しいところがありますね。
――前回お話をうかがったときは、THQ Nordicの世界でのデジタル版の販売状況は、北米、イギリス、ドイツ、フランス、中国についで、日本市場が6位とのことでしたが、現時点ではいかがでしょうか。
クレメンス
この4月の段階では7位です。昨年度(2023年)は、アメリカ、ドイツ、イギリス、カナダ、オーストラリア、フランス、中国、ポーランドについで9位でした。タイトルのリリースの時期も影響しています。たとえば『Gothic』はドイツやロシア、ポーランドではよく知られていますが、日本ではあまり知られていません。
――IPを展開するうえで心掛けている点を教えてください。
クレメンス
ひとつにはバランスを取ることです。IPは当社独自のものと、ライセンスを受けたもののふたつに分かれていますが、3分の2、あるいは4分の3は自社IP、残りをライセンスIPというバランスを保って注力しています。リリースされたばかりの『ディズニー エピックミッキー:Rebrushed』はライセンスIPですね。
そしてふたつめは、将来的にはより少数のIPにフォーカスすることです。
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『ディズニー エピックミッキー:Rebrushed』
――魅力的なIPを作るというのは、誰にとっても大きなテーマだと思いますが、このために心掛けている点は?
クレメンス
まずほかのIPとは一線を画すこと。ユニークであることですね。独自のユニバース、キャラクター、スタイル、ゲームプレイ・メカニクスを持ち、少なくとも優れたレベルにあることだと思います。
当社で言えば、『ダークサイダーズ』や『レムナント』、『レックフェスト』『Titan Quest』、『Gothic』などがそれにあたります。
これらのIPはいずれも優れたゲームプレイやユニバースを提供してくれます。たとえば『レックフェスト』はクルマどうしが激突し、リアルタイムに破壊されるのが特徴のゲームですが、物理演算が好評です。
また『Gothic』はヨーロッパではもっとも壮大なRPGのひとつで、2001年にデビューしたゲームです。このタイトルは独自のスタイルを持っています。とてもダークで汚い言葉遣いも見られるのですが、それが人気のひとつで、ほかの主流IPとは異なります。
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『Gothic 1 Remake』
――今年2年ぶりに東京ゲームショウに出展を決めたのは、日本の市場に合ったタイトルが揃ったからということもある?
クレメンス
はい。それが最初の理由です。今回のラインアップは素晴らしいと思っています。また、昨年はリストラを行なっていましたので、コストを削減する必要があり、マーケティングの出費は抑えることになりました。
――東京ゲームショウでは、注目作が多数出展されているとのことですが、とくに期待しているタイトルを教えてください。
クレメンス
『REANIMAL』です! このゲームはホラー的なところもあり、ユニークなスタイルを持ち、ダークですが、怖いもの好きの日本の皆さんに好まれるのではないかと思います。日本の優れたIPである『サイレントヒル』に近しい要素を含んでいます。日本は『リトルナイトメア』や『リトルナイトメア 2』が人気だと聞きますが、両作を開発したTarsier Studiosによる最新作である『REANIMAL』は、きっと日本のゲームファンに受け入れられると思います。
――さきほど挙げていたTHQ Nordicが誇るIPに連なるポテンシャルを持っていると判断しているのですか?
クレメンス
はい。
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『REANIMAL』
――ちなみに、今年の東京ゲームショウに参加してみていかがですか?
クレメンス
2022年同様素晴らしいショウだと思います。ラインアップも素晴らしいです。朝早くから『モンスターハンターワイルズ』のファンが押しかけていて驚きました(笑)。KONAMI、カプコン、セガといった日本の優れたメーカーのブースも印象的です。
――2022年に今後の戦略に関してお聞きしたときは、「開発スタジオの買収や資金援助への注力に加えて、いまは並行して営業にも力を入れようと思っている」、「IPのオリジナル続編に力を入れる」とおっしゃっていましが、この2年での手応えを教えてください。
クレメンス
変わらずIPにフォーカスしていますが、親会社のリストラの関係で現在は新しい開発スタジオの買収はせずに、既存スタジオのIPに力を入れています。2022年のTHQ Nordicグループ従業員数は1150人でしたが、現在は880人になりました。
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『The Eternal Life of Goldman』
――今後、力を入れていきたい領域がありましたら、教えてください。
クレメンス
私たち独自のIPを開発し、寿命の長い商品を出してアップデートしていくことです。
――既存のIPの中にも、長く展開したいと思うものはあるのですか?
クレメンス
『Titan Quest』は長期計画があります。『レックフェスト』、『ウェイ オブ ザ ハンター』、『Gothic』もそうです。ほかにもありますが、いまはまだお話できません。
いずれにせよ、私たちが努力しているのは、投資を絞り、もっともポテンシャルのある、もっとも重要なIPに注力することです。これは業界全体に言えることだと思います。
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『Titan Quest II』
――プラットフォーム戦略についてはいかがですか? プラットフォームも絞るのですか?
クレメンス
プラットフォームを絞ることはしません。私たちはコンテンツを作っていますので、プラットフォームがあればそこに出せるようにベストを尽くします。もちろんプラットフォームによって違いはあり、成功しているもの、そうでないものがありますが……。
――2022年のインタビューでは、「現在開発進行中のプロジェクトが全部で43あって、そのうちの27についてはまだ公開していない」とのことでしたが、最新の進捗をお教えください。
クレメンス
開発中のプロジェクトは23あり、そのうち13は未公開です。本数を絞ったのは、そのIPの開発スタジオのチームの能力や市場におけるポテンシャルを検討した結果です。
――最後に、日本のTHQ Nordicファンにメッセージをお願いします。
クレメンス
皆さんはとても素晴らしい! そのまま変わらずにいてください。
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