
2024年5月31日から映画『マッドマックス:フュリオサ』(以降『フュリオサ』)のロードショーが全国の劇場で開始された。
本作は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(以降『怒りのデスロード』)に登場した最強の戦士フュリオサの怒りの“原点”が描かれる作品で、フュリオサをアニャ・テイラー=ジョイさん、ディメンタス将軍をクリス・ヘムズワースさんが演じている。本稿では『フュリオサ』の監督ジョージ・ミラー氏へインタビューした模様をお伝えする。
本作は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(以降『怒りのデスロード』)に登場した最強の戦士フュリオサの怒りの“原点”が描かれる作品で、フュリオサをアニャ・テイラー=ジョイさん、ディメンタス将軍をクリス・ヘムズワースさんが演じている。本稿では『フュリオサ』の監督ジョージ・ミラー氏へインタビューした模様をお伝えする。
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以降の内容には本編のネタバレも多少含まれている。ネタバレが気になるかたは、まず劇場に足を運ばれてからご一読いただきたい。
ジョージ・ミラー
映画監督・プロデューサー。『マッドマックス』シリーズの監督を務め、プロデューサー・脚本家として『ベイブ』などの映画作品にも携わる。2016年の第69回カンヌ国際映画祭では審査委員長を務めた。
女戦士フュリオサの復讐劇
――『怒りのデスロード』は3日間のマックスたちの行動を描く物語でした。今回は15年という長い期間の物語ですが、『怒りのデスロード』に引けを取らない”テンションの維持”と、”勢い”がありました。この点で気をつけた演出があれば聞かせていただきたいです。
ジョージ
映画というものはビジュアルなミュージックだと私は思っています。音楽はいろんな楽器を持ち寄って、シーンによってリズムやコード進行を変えて展開します。
映画の場合はブロッキングやキャラクターがさらに加わるわけです。映画のなかには1秒にも満たないシーンもあれば、2分半も超える長いカットもあります。つねにそのシーンでの正しいやり方はどうなのかと考えることが大事だと思っています。
――本作の主人公であるフュリオサというキャラクターはどのようにして生まれたのでしょうか?
映画の場合はブロッキングやキャラクターがさらに加わるわけです。映画のなかには1秒にも満たないシーンもあれば、2分半も超える長いカットもあります。つねにそのシーンでの正しいやり方はどうなのかと考えることが大事だと思っています。
――本作の主人公であるフュリオサというキャラクターはどのようにして生まれたのでしょうか?
ジョージ
まず『怒りのデスロード』では、「つねに追われる追跡が続くというシーンで丸ごと作品にできないか?」というコンセプトで製作されました。
過酷な環境下での物語なので人間を奪い合うという状況も発生していました。歴史の中でもそれに似たかたちで側室みたいなことがあったわけです。そこからインスピレーションを受けて独裁的リーダーであるイモータンには5人の妻がいます。彼女たちを助け出す人がいなければいけない。そう考えたときにやはり、女性の戦士でなければならないと思いフュリオサが生まれました。
過酷な環境下での物語なので人間を奪い合うという状況も発生していました。歴史の中でもそれに似たかたちで側室みたいなことがあったわけです。そこからインスピレーションを受けて独裁的リーダーであるイモータンには5人の妻がいます。彼女たちを助け出す人がいなければいけない。そう考えたときにやはり、女性の戦士でなければならないと思いフュリオサが生まれました。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/6613/435456426d29ba62392b6aaf8125142d.jpeg?x=767)
――『フュリオサ』を見て、復讐劇ということで1作目の『マッドマックス』に似ていると思いました。『怒りのデスロード』が『マッドマックス2』、『マッドマックス/サンダードーム』だとしたら、今回の『フュリオサ』で1作目に戻ったなと思えました。これは、神話から原点に戻るみたいなことを意識されたのでしょうか?
ジョージ
それは正しいと思います。ただ、自覚はしていませんでした。言われていまのつながりに気づきました。1作目はまだサーガではなく、当然流れる時間は短かったです。
今回の『フュリオサ』は長い物語でしたが、究極的にリベンジの物語であるというところは共通しているでしょう。
似たような気づきでこのあいだ観た人に「『ベン・ハー』みたいだ」とも言われました。これも復讐が最後に果たされる物語です。
1959年のウィリアム・ワイラー監督の作品で、御者のレースシーンは映画アクション史においても重要なターニングポイントとなりました。そういうことを含めてなにかくるものがあったみたいですね。『怒りのデスロード』でもインスピレーションを受けた作品ですから。
今回の『フュリオサ』は長い物語でしたが、究極的にリベンジの物語であるというところは共通しているでしょう。
似たような気づきでこのあいだ観た人に「『ベン・ハー』みたいだ」とも言われました。これも復讐が最後に果たされる物語です。
1959年のウィリアム・ワイラー監督の作品で、御者のレースシーンは映画アクション史においても重要なターニングポイントとなりました。そういうことを含めてなにかくるものがあったみたいですね。『怒りのデスロード』でもインスピレーションを受けた作品ですから。
力を得ると乗るマシンもパワフルに
――『フュリオサ』では魅力的なマシンがたくさん登場しました。監督が思う作品とマシンの関係についてお聞かせください。
ジョージ
車両や衣装や髪型、武器はそれぞれのキャラクターの延長にあると思って作成しています。たとえば、『怒りのデス・ロード』ではマックスのV8インターセプターが早々にぶっ壊されて、マシン同様彼もあまり活躍できないキャラクターになるところからはじまりました。
今回のディメンタスは最初はバイクに乗っていましたが、チャリオット型のバイクに乗り換えます。荒れ果てたウエストランドでみんなを率いているという、自分が皇帝のような気持ちになっているんですよね。さらに、ガスタウンを掌握してからはパワフルなシックス・フットに乗り換えるわけです。
今回のディメンタスは最初はバイクに乗っていましたが、チャリオット型のバイクに乗り換えます。荒れ果てたウエストランドでみんなを率いているという、自分が皇帝のような気持ちになっているんですよね。さらに、ガスタウンを掌握してからはパワフルなシックス・フットに乗り換えるわけです。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/6613/6fd9acc2795549098a7f89370f1ac121.jpg?x=767)
ディメンタスのチャリオット(運転手:ディメンタス)
中央のバイク部分は、Rotecの7気筒R2800航空用エンジンを横向きにしたものをベースに作
られている。
- 馬力:2450rpmで89 kW
- トルク:1200rpmで217 Nm
馬となる両側のバイクにはBMWのR18を使用。
- 馬力: 4500rpmで59 kW
- トルク: 3000rpmで148 Nm
シックス・フット(運転手:ディメンタス)
より大きな支配力を手に入れ、より多くの燃料や人員を使えるようになったディメンタスは、けん引トラックと組み合わされた6輪の“いかついモンスタートラック”に乗り換える。レイジーアクスル方式を採用しており、基本的に物を積んだ状態でどんな場所でもオフロード走行が可能となっている。Chevroletの454ビッグブロックエンジンを搭載しており、荒れ果てた地で出くわすあらゆるものを引っぱることができる。
- 馬力:6500rpmで750 kW
- トルク:5000rpmで1356 Nm
――作中ではウォー・タンクの作成過程もみることができました。
ジョージ
まずウォー・タンクを作る手助けをフュリオサがしていて、それが警護隊長ジャックの車両となります。完成後フュリオサはタンクに隠れているわけですが、仲間として乗り込み、フュリオサとジャックのふたりで運転することになります。すると、はじめはひとつだったタンクがふたつのタンクになっています。これもまた、キャラクターの延長上としてのマシンの描きかたなわけです。
ウォー・タンク(運転手:警護隊長ジャック)
Kenworthの900シリーズのヘビーデューティーキャブトラックを改造。外装は光沢のあるステンレススチールとクローム仕様となっており、イモータン・ジョーの伝説の物語が浅浮き彫りで施されている。『怒りのデス・ロード』で登場するウォー・タンクよりも大きく、圧倒的、かつ洗練されている。
ウォー・タンク(運転手:警護隊長ジャック)
Kenworthの900シリーズのヘビーデューティーキャブトラックを改造。外装は光沢のあるステンレススチールとクローム仕様となっており、イモータン・ジョーの伝説の物語が浅浮き彫りで施されている。『怒りのデス・ロード』で登場するウォー・タンクよりも大きく、圧倒的、かつ洗練されている。
- 馬力:1800rpmで460kW
- トルク:1200rpmで2780Nm
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/6613/3eb337b78330e982c93a78d9b5204d63.jpg?x=767)
――クライマックスでフュリオサが乗ったクランキー・ブラックでのチェイスは強烈な印象でした。この車両に対する思い入れなどがあればコメントを頂きたいです。
ジョージ
クランキー・ブラックに乗るときの彼女には「緑の地を見つけよう」という気持ちの糸が切れています。心には復讐しかない訳です。なのでクランキー・ブラックには装飾や役に立つようなものは搭載されていません。すべてが削ぎ落とされています。ただ怒りに燃えている感情の延長線上にあるマシンだから、アグレッシブですごくパワフルなのです。
クランキー・ブラック(運転手:フュリオサ)
フュリオサはイモータン・ジョーの息子のひとりからこの車両を奪う。デザインプロセスの途中でジョージ・ミラー氏から「クランキー・ブラックは砂丘を走行できるようにしてほしい」との要求があり、フロントに取り付けられていたエンジンはリアに移された。クランキー・ブラックは、いくつかのパーツをそぎ落とし、リアにターボ給気式V8エンジンを搭載したホットロッドとなっている。
クランキー・ブラック(運転手:フュリオサ)
フュリオサはイモータン・ジョーの息子のひとりからこの車両を奪う。デザインプロセスの途中でジョージ・ミラー氏から「クランキー・ブラックは砂丘を走行できるようにしてほしい」との要求があり、フロントに取り付けられていたエンジンはリアに移された。クランキー・ブラックは、いくつかのパーツをそぎ落とし、リアにターボ給気式V8エンジンを搭載したホットロッドとなっている。
- 馬力:5200rpmで171kW
- トルク:3000rpmで375Nm
最後の対峙は想像以上のシーンに
――監督は直感でキャスティングをされるとお聞きしました。今回アニャさん、クリスさんを選んだ理由や実際に撮影をして「予想以上によかった、こんな意外な面があったんだ」みたいなことがあれば教えてください。
ジョージ
この映画は10年以上と結構長い時間が流れます。そのなかでふたりは何度か出会います。その度に主体性や持つ力のレベルなどがお互い違ってきますが、最後には等しくなるような関係性です。
最後に対峙するシーンでは、思ってもないものを彼らはもたらしてくれました。こういったシーンは監督から俳優に方向性を強いたり、操って引き出せるものではないんですよね。それぞれが重ねてきた役に対する本能から生まれてくるものだと思います。そうして役作りをしたのちに彼らはキャラクターとなる訳です。
「お前は自分に見合うだけの人間なのかと?」とお互いに問うようなやりとりは、それぞれのキャラクターにとってすごく有機的なものとなりました。そのシーンに必要なものをふたりがもたらしてくれたから、自分が思っていたよりもよいシーンになってすごくハッピーだったし感動しました。
最後に対峙するシーンでは、思ってもないものを彼らはもたらしてくれました。こういったシーンは監督から俳優に方向性を強いたり、操って引き出せるものではないんですよね。それぞれが重ねてきた役に対する本能から生まれてくるものだと思います。そうして役作りをしたのちに彼らはキャラクターとなる訳です。
「お前は自分に見合うだけの人間なのかと?」とお互いに問うようなやりとりは、それぞれのキャラクターにとってすごく有機的なものとなりました。そのシーンに必要なものをふたりがもたらしてくれたから、自分が思っていたよりもよいシーンになってすごくハッピーだったし感動しました。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/6613/d11addf20335b68a5eb6b67db547709a.jpg?x=767)
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/6613/a8c8b24f18d5553683cba92ca3c91101.jpg?x=767)
『マッドマックス:フュリオサ』情報
- ストーリー:世界崩壊から45年。バイカー軍団に連れ去られ、故郷や家族、人生のすべてを奪われた若きフュリオサ。改造バイクで絶叫するディメンタス将軍と、鉄壁の要塞を牛耳るイモータン・ジョーが覇権を争う”MADな世界(マッドワールド)”と対峙する! 怒りの戦士フュリオサよ、復讐のエンジンを鳴らせ!
- 監督:ジョージ・ミラー
- 出演:アニャ・テイラー=ジョイ、クリス・ヘムズワース
- 配給:ワーナー・ブラザース映画