宮本貴志 氏(みやもと たかし)
コロプラ社 代表取締役社長 上席執行役員 CEO。2020年に入社し、2021年12月に異例の早さで社長に就任。
- コロプラという大きな船の力を最大限発揮するための施策
- 新作スマホクイズアクションRPG『ウィズジェネレーション』
- 生成AIを学ばないという選択肢はない。とにかくまずは知ることが大事
- “移動の楽しさ”をグローバルへ――位置情報ゲームとグループシナジー
- ファミ通をずっと見ていた――40年間のゲームの想い出
コロプラという大きな船の力を最大限発揮するための施策
――変革の成果が見え始めてきたといった感じでしょうか? 具体的にはどのようなことをされてきたのでしょうか?
――勝つためにはどうすればいいか、難しい問いですよね。
しかしヒットしていた当時のメカニズムを現代市場にアジャストしていくのは、意外と難しいんです。とくに組織という面では、以前ヒットしていたという経験や自信があるぶん、変革は簡単ではありません。コロプラは、そういった面もちゃんと変え、ようやく体制ができてきて、2030年に向かって走っていこうという状態ができあがりました。
――『白猫プロジェクト NEW WORLD'S』(以下、『白猫』)が12周年、『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』(以下、『黒ウィズ』)が13周年を迎えました。スマートフォンゲーム市場が変化する中で、10数年運営を続けてこられた背景には、どんな強みがあると思いますか?

『白猫』も『白猫プロジェクト INFINITY』(Nintendo Switch 2/Nintendo Switch向け、2027年発売予定)という形で、家庭用ゲーム市場に挑戦します。今後もこうして、さまざまな楽しみかたを提供し、長い時間をかけて『白猫』というIPを広げていきたいですね。
――『白猫プロジェクト INFINITY』はIPの拡大を目指してとのことですが、『KAZUMA KANEKO'S ツクヨミ』もNintendo Switch/Steam向けにリリースされており、これは運営年数的に考えるとIP拡大とは違う動きにも見えます。これまではスマートフォンゲーム市場を主戦場としてきたコロプラが家庭用ゲーム機市場に挑戦する背景はもっとさまざまな思惑があるように思えるのですが、その点を詳しくお聞かせいただけますか?
プレイから得られる楽しさも異なっていて、スマートフォン版はローグライクやカードゲーム、デッキ構築の醍醐味を味わえ、家庭用ゲーム機版はもう少しライトに物語を楽しめる作りになっています。
そんな『ツクヨミ』を家庭用ゲーム機にも展開させた最大の理由は「キャラクターデザイナーの金子一馬氏が作る世界観を、もっと多くの人に届けたい」という想いからですね。カードゲームはそのシステム上、早い段階で挫折する方も多くいらっしゃって、せっかくの魅力的な物語をそこまで多くの方に届けられなかったんです。しかし、それはもったいない。そこで、家庭用ゲーム機でも展開することになりました。
個人的に『ツクヨミ』の物語のファンということもありますが(笑)。許されるなら、アニメ化、映画化までしたいですね。

新作スマホクイズアクションRPG『ウィズジェネレーション』
またオープンワールドゲームのように、プレイヤーがマップを自由に選んで好きなところに行ける仕様になっているのも、『黒ウィズ』と大きく変わっている点です。みんなでクイズを遊ぶモードもありますし、メインストーリーを追いながらクエストをこなしていくモードもあります。新たな試みとして、リアルタイムでユーザーが集まり、オンラインでクイズに答え合う、クイズ大会のようなモードも入れようと思っています。月に1回ぐらいの頻度でオンラインクイズ大会を開けるといいですね。
――企画の発端は、やはり『黒ウィズ』というIPの発展を目指してのことなのでしょうか?
生成AIを学ばないという選択肢はない。とにかくまずは知ることが大事
動画自体は生成AIで作っています。キャラクターや背景、世界観がよくできていますし、映像のクオリティも高いので“映画を自分で動かしている”という感覚に近い体験もできます。
ただ実験的な試みでもあるので、ガチャをたくさん引いてシキガミ(キャラクター)を集めなければ勝てないというバランスにはしていません。ある程度スキルがついてくれば無課金でも進められます。デッキ構築が好きな方はもちろん、ゲームとしての遊びがなくても話自体がおもしろいので、ストーリーを楽しむ感覚で入ってきてもらえればと思います。
――動画部分はAIが生成しているとのことですが、詳細をお聞かせください。
――なぜこうした作品を作ろうと思ったのでしょうか。

批判が多く集まる市場、技術であっても、やってみないことにはわからない。私たちがすべきことは、どんな状況が来ても選択肢を多く持てるよう、自分たちの技術力を維持・強化しておくことです。技術がないと選択肢を失い、何かやりたいことができた際に、外部に頼らざるをえなくなる状況も生まれてしまいます。自分たちの強みは技術力だと思っているので、そこに対する挑戦は、現在も、そしてこれからもくり返していきます。
――生成AIは、著作権侵害への懸念もあり、ユーザーによって受け止めかたが違う技術かと思いますが、コロプラでは生成AIについてどのようなお考えをお持ちですか?
ただ、AIを使えば売れるとは思っていませんし、AIについて批判的な声があることも承知しています。ただ、AIという技術に向き合うかどうかでいえば、向き合わないという選択肢はありません。問題があるとされていたとしても、まずは向き合って、きちんと対応していこうというのが我々のスタンスです。
いま、「世間からの反感があるから……」と触れずにいたら、AIを研究し、AIでチャレンジをしている他社に追い抜かれてしまいます。それこそ、見て見ぬふりをしていたら、技術力に大きな差が生まれてしまう可能性もあります。だからこそいま、向き合っておくことが大事なんです。
たとえば『ツクヨミ』では、金子一馬さんの許可を得たうえで、クローズドなAIに金子一馬さんのイラストを学習させました。この際、第三者の絵はいっさい使っていません。その結果、生成AIにより出力されたものが本人のイラストに近づき、それを金子一馬さんご本人が高く評価するというアクションも生まれています。
ブロックチェーン(※)のときもそうでした。問題があることはわかっていたので、監査法人のチェックを経てコインチェック社と組み、自社でトークン発行まで行って正面から挑んでいます。相当な監査費用はかかりましたが、それだけきちんと向き合って実現しています。結果として、事業として大成功したわけではありませんが、ブロックチェーンやWeb3の時代が来たときに、その財産はすぐにでも運用できる土台はある状態です。

具体的なエピソードでは、Slack上に存在する独自のAIエージェント“William(ウィリアム)”というものがあります。経営戦略について私とAIが話している内容を、経営企画のメンバーにも見えるようにしたいとCIO(Chief Information Officer。チーフ・インフォメーション・オフィサー。最高情報責任者)に相談したところ、開発・導入されたものです。これにより自身の考えの整理や共有がスムーズになり、経営戦略をまとめるのがスピーディーになりました。
このように、ゲームに入れるだけでなく、ゲームを作る過程にもAIが深く関わってきています。10年後にはさらに浸透しているのではないでしょうか。
“移動の楽しさ”をグローバルへ――位置情報ゲームとグループシナジー
それらを踏まえて、国内と海外のプレイヤーが共通して遊べるものにすべく、企画・開発を進めております。“移動することの楽しさ”、“移動によって得られるものがある”、という体験を皆さんにお届けすることに変わりはありません。ただ、ほかにはない体験をお届けしたいので、遊びかたは従来の位置情報ゲームとは違うと思っていただければと。他社の大型IPと組んで北米を目指すような大きいプロジェクトもあれば、国内で位置情報を使って生活に役立つアプリやゲームを作るというプロジェクトもあるので、楽しみにしていてください。
コロプラ社としてのミッションは“エンターテインメントで日常をより楽しく、より素晴らしく”というものなので、電車や飛行機、クルマなどのモビリティと組んで移動をエンタメ化していく、ということも考えています。
――グループ企業のMAGES.やエイティングとのシナジーはいかがでしょうか。
グループ全体の技術的なハブとなるべく、CDO(Chief Digital Officer。チーフ・デジタル・オフィサー。最高開発責任者)の池田がエイティングとMAGES.の監修役員も兼任していて、家庭用ゲームの作りかたを統括して見てくれていますし、グループ間での人材の行き来もあります。
MAGES.とAIの相性についていえば、めちゃくちゃいいと思っていますよ。新しいアドベンチャーゲームのジャンルが生まれてきそうで、そこはよく「技術協力してほしい」という話を役員レベルでしています。
また子会社の360Channelが作った、『360maps』という、AR/XRを使ったナビゲーションサービスもおもしろいですよ。前を見たまま案内を確認できるような形で矢印が出て、目的地まで連れていってくれるサービスです。これとゲームを組み合わせる可能性も十分にあり得る話ですね。個人的には、新宿の地下街や梅田の地下街で使いたいのですが、権利関係がたいへんなので実現するかはちょっとわからないですね(笑)。
ファミ通をずっと見ていた――40年間のゲームの想い出
ファミ通もずっと読んでいました。デジキューブに所属していたときにはファミ通に見開きのコーナーを作っていただいて、今週のおすすめタイトルを宣伝するという仕事もしていたので、想い出はいっぱいあります。“ガバス”もゲーマーの中では共通言語になっていて、ふつうに会話の中に出てきたのを思い出しますね。

今後も、これまでと変わらず私たちが作り出したゲームを世に広め続けてほしいですね。ゲームは生活を豊かにするものだと思いますし、昔からの想い出もたくさんあるので、これからも二人三脚でゲーム業界を盛り上げていただけるとうれしいです。そのためのお手伝いはしますし、いろいろなことをファミ通さんを通じて伝えていただきたいです。これからもよろしくお願いします。















