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『サイレントヒル 2』リメイク版開発秘話も。ゲーム開発急成長国家ポーランドの大阪・関西万博出展をレポート【フロストパンク/ダイイングライトなど】

『サイレントヒル 2』リメイク版開発秘話も。ゲーム開発急成長国家ポーランドの大阪・関西万博出展をレポート【フロストパンク/ダイイングライトなど】
 『The Witcher(ウィッチャー)』シリーズや『サイバーパンク2077』のCD Projekt Red、『Frostpunk(フロストパンク)』シリーズや『This War of Mine(ディスウォーオブマイン)』の11 bit studios、『Dying Light(ダイイングライト)』シリーズのTechland、『SILENT HILL 2(サイレントヒル 2)』のリメイク版を開発したBloober Team。

 これらの人気タイトルを開発したゲーム会社は、実はすべてポーランドのゲーム会社です。近年、ポーランドはゲーム開発分野における急成長をしており、そのクリエイティブ産業を支援するCreative Industries Institute(CII、クリエイティブ産業研究所)は、“EXPO2025”大阪・関西万博でのイベントを実施しました。
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 クリエイターによるセッション、ゲーム試遊、ワークショップ、コスプレイベントなど、さまざまな催しが行われた“デジタルドリーマーズ:ポーランドのゲーム(Digital Dreamers: Games from Poland)”をレポートします。
※本記事はCreative Industries Instituteの提供でお送りします。

ポーランドのBloober Teamがホラーゲーム『サイレントヒル 2』(リメイク版)を世界に届けるまでの軌跡

 デジタルドリーマーズではさまざまなクリエイターによるセッションが行われました。

【主なセッション】
  • 『Dying Light』10周年記念(10 years of Dying Light, discussion)
  • アジアにおけるスラブ中世ゲーム(Slavic medieval game in Asia, discussion)
  • This War of Mine、Frostpunk、Altersの日本での活動(This War of Mine, Frostpunk and Alters in Japan, discussion)
 そのなかから、10月3日に行われた“サイレントヒル 2とポーランドのホラーゲームに関するディスカッション(Silent Hill 2 and Polish horror games, discussion)”をレポートします。
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 このセッションではPiotr Mańkowskiさん(Creative Industries Institute)がホストをつとめ、『サイレントヒル 2』(リメイク)を手掛けたBloober TeamのMateusz Lenartさんと40分に及ぶトークを実施。
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 Bloober Teamがどのようにして伝説的ホラーゲーム『サイレントヒル 2』のリメイクを手がけることになったのか、そしてスタジオの歴史的発展について語られました。

Bloober Teamの起源と初期の挑戦。『Layers of Fear』で手ごたえを感じた瞬間

 Lenartさんは2015年にBloober Teamに入社した当初から、『Layers of Fear(レイヤーズ・オブ・フィアー)』という重要な作品に携わりました。
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▲『Layers of Fear』。
 「このプロジェクトは私にとって特別な思い入れがあります。最初はチームを統合するための小さなプロジェクトとして始まったものでした」とLenartさんは振り返ります。

 「当初は完全なゲームを作る予定ではなく、単にホラーゲームの作り方を学ぶための簡単なプロジェクトでした。なぜなら、我々はそれまでホラーゲームを作ったことがなかったからです」

 『
Layers of Fear』はプロトタイプの時点で、環境が変化する廊下のシーンといったユニークな要素が生まれ、特別なゲームになる手ごたえを感じたそうです。そこで、もっと深いバックストーリーを考えていくなかで画家というアイデアが生まれたとのこと。

 その際は、『
ドリアン・グレイの肖像』といった有名な物語からもインスピレーションを得たそうです。

 『Layers of Fear』で行った制作方針は、後のスタジオの成功につながる第一歩となっていきました。

『Observer』から『The Medium』へ。最高の人材を複数のプロジェクトに分散させることへの課題とメリット

 最初の成功を収めた後、Bloober Teamは野心的なプロジェクトへと進みました。『Observer(オブザーバー)』の成功後、スタジオはチームを分割して同時に複数のプロジェクトを進行させる決断をします。
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▲『Observer: System Redux』。
 『Layers of Fear 2』、CEOのPiotr Babienoさんの長年の夢であった『The Medium』、そしてハリウッドIPを使った初めての挑戦となるプロジェクトの3つを同時に進めることになりました。『The Medium』では、プレイヤーが現実と霊界を同時に2つの画面でプレイする“二重現実”という独自のアイデアが実現されました。
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▲『The Medium』。
 Lenartさんは「当時は会社の規模が大きくなっていたので、複数のプロジェクトを同時に展開したかったのです。しかし、最高の人材を複数のプロジェクトに分散させることで課題も生まれました」とも語りました。

 ただ、それぞれのプロジェクトで異なるアプローチを試みることで、様々な視点から開発技術を磨くことができたのは大きなメリットになったそうです。

Bloober Teamならではの独自性とは?

 『The Medium』の制作においては、Bloober Teamの拠点があるクラクフ市周辺の自然環境をゲーム内に取り入れるという新しい試みも行われました。

 『
Observer』でも見られたように、自分たちの身近な環境やポーランドスタイルの森林を創造的に活用することで、より深みのある世界観を構築していったそうです。

 また、セッションではBloober Teamがホラーゲームに取り入れている映画的要素についても話題が及びました。

 Lenartさんによると、多くの映画業界の人々と出会うなか、ホラーゲームは映画とは完全に異なるものを作りたいと考えるようになり、ポーランド映画だけでなく、世界的に見ても珍しい詩的な表現を取り入れていったとのこと。

 その結果、『Observer』のようにサイバーパンクとポーランドホラーを融合させたような特殊な魅力を持つ世界観・シナリオができていったそうです。

 Bloober Teamには『
ブレードランナー』の大ファンが多く、特にロイ・バッティというキャラクターに影響を受けたとのこと。

 そのため、『
Observer: System Redux』のメインキャラクターの役者を探す際、最初に思い浮かんだのはキアヌ・リーブスやハリソン・フォードではなく、ロイ・バッティを演じたルトガー・ハウアーだったそうです。

 Lenartさんは、Bloober Teamならではの特徴について、こう語りました。

「私たちのゲームの独自性は、様々な要素を融合させている点です。ホラー映画であると同時にSFゲームでもあり、『
セブン』のようなスリラー要素も取り入れています。

 また、ポーランドを舞台にレトロフューチャリズム的なデザインを施しているのも特徴です。これまで誰も見たことがないようなポーランドの未来像を創造しています」

 その言葉は、Bloober Teamのゲームを遊んだ方には納得がいきやすいものではないでしょうか。

コナミとの出会いと『サイレントヒル 2』リメイク版への道

 Bloober Teamの大きな転機となったのが、伝説的なホラーゲーム『サイレントヒル』シリーズを生んだコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)との協業でした。

 Lenartさんは『Observer』の制作中にすでに『サイレントヒル』に関するピッチ(プレゼン資料など)をつくり、KONAMIへのアプローチを試みていたと言います。

 残念ながらその当時はいい返事をもらえなかったそうですが、そこでの接触はBloober Teamというゲームスタジオを認知してもらうきっかけになったはずだと、Lenartさんは振り返りました。

 その後、東京ゲームショウにブース出展を行った際、小さなブースにKONAMIから10人以上の方が挨拶に来てくれて、そこで『サイレントヒル 2』リメイク版の相談があったそうです。

 Lenartさんによると、『The Medium』の成功でBloober Teamならではのサイコロジカルホラーへの独自のアプローチが評価されたことも、自分たちに声がかかった理由の1つだろうと振り返っていました。

 『サイレントヒル 2』を2作目からリメイクすることはKONAMIの意向でしたが、Lenartさんも『サイレントヒル 2』はBloober TeamのDNAに最も近く、個人的にも最も好きな作品であり、2作目から扱うことに異論はなかったそうです。

“見えないものへの恐怖”を実現しているからこそ『サイレントヒル 2』はホラーゲームとしての完成度が高い

 『サイレントヒル 2』という作品の魅力について聞かれたLenartさんは、「サイコロジカルホラーの本質は“見えないものへの恐怖”」だと答えました。
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▲『サイレントヒル 2』。
 また、ホラーゲーム制作において、「時に少ないことが多いこともある」という教訓にも触れました。これは、特定の雰囲気を作り出せば、何が起こるかのヒントを与えるだけで、実際には見えない部分まで想像で恐怖がふくらんでいき、真のホラーが生まれるという考え方です。

 『サイレントヒル 2』においては、もっとも作品を象徴する“霧”をはじめ、“見えないものへの恐怖”を表現するための要素が多く用いられていると語っていました。

 また、Lenartさんは『サイレントヒル 2』はストーリーも素晴らしく、長い年月を経てもなお独創的だと絶賛していました。

 ヒッチコック映画的な心理的要素が散りばめられている部分に言及しつつ、基本的には苦痛、拘束、そして選択の物語だと語り、「(『サイレントヒル 2』の主人公である)ジェームズ・サンダーランドは、非常に複雑な人物です。彼の旅は、多くの人が様々なレベルで共感できるものだと思います」と感想を締めくくりました。

ゲーム制作は世界で最高の仕事のひとつ~クリエイティブな情熱を保つ秘訣とは?

 最後に、クリエイティブな情熱を何年も維持し続ける方法に関する質問に対し、Lenartさんは「おそらくあらゆる種類のクリエイティブな仕事において、常に浮き沈みがあります。誰もが上り坂と下り坂を経験することでしょう」と率直に答えていました。

 そのうえで、「私が最も重要だと感じるのは、情熱を持ったチームと一緒に働くことです。100人全員がやっていることに対して情熱を持っていれば、その情熱が自分を正しい場所に連れ戻してくれます」と続けます。

 そして、「誰にでも落ち込む瞬間はありますが、健全な環境で明確な目標を持つことが大きな助けになります。また、誰かが私たちのゲームをプレイして良い反応を示してくれた時の小さな成功体験が、前に進む原動力になります」と締めくくりました。

 最後にゲーム開発者としての心構えを聞かれたLenartさんは、こう答えました。

 「ゲーム制作は世界で最高の仕事のひとつだと思っています。自分が作ったものを楽しんでくれているのを見るのは、とても幸せなことです。常に大きなプロジェクトが前にあり、ゲーム業界でまだ実現できる夢がたくさんありますから。

 自分はBloober Teamの一員であることを誇りに思いますし、これからも挑戦を続けていきたいです」

 このトークセッションを通じて、ホラーゲーム制作の裏話や、ポーランドのゲームスタジオBloober Teamが『サイレントヒル 2』という名作のリメイクを担当するまでの道のりなどが明かされました。

 独創的なアイデアや熱量をもってゲーム開発を行うBloober Teamの次なるホラーゲームも楽しみですね。

 このほか、11 bit studiosのGabriela Siemienkowiczさんによる『
This War of Mine』などに関するトークセッションも行われました。ホスト役はGame EnjoyerのJ-monさん(池之上ジェームス博さん)。
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 Gabrielaさんは同志社大学に在籍していたこともあり、日本語が上手! “難しい選択”と“心を揺さぶる物語”で、遊んだ後に心に残るゲームが多いと高く評価されている11 bit studiosですが、最近はゲームのパブリッシングにも積極的です。

 『
INDIKA』(開発:Odd Meter)は日本ゲーム大賞 2025のゲームデザイナーズ大賞に選ばれ、大きな話題となりました。
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▲『INDIKA』。一部パートはピクセルアートで展開することも印象に残ります。
 19世紀末を舞台に修道女のインディカの旅を描くアクションアドベンチャーで、心のうちの悪魔のささやきを表現する心象風景や独特の宗教観など、プレイ後にさまざまな感情が残る作品となっているので、未プレイの方はこの機会に遊んでみてはいかが?
 ちなみに、セッションの合間には、賞品付きのクイズが行われることもあり、多くの人が参加していました。

 主にポーランドにまつわる問題となり、『
ウィッチャー』などゲームに関する問題もちらほら見受けられました。
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メダルづくりや特殊メイクに関するワークショップが大盛況。まるで本物な傷跡に大人も子どもも大喜び!


 無料のワークショップとして、狼を模した自分だけのメダルをつくって持ち帰る“メダリオン作成”コーナーが展開。万博を訪れた記念になることもあり、小さなお子さんを含めた家族連れの方々にも好評だったそうです。
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 また、コスプレイヤー向けの無料ワークショップとして、腕に傷跡をつける特殊メイクも行われました。こちらは主に大人向けとして展開されましたが、あまりにリアルな傷跡にびっくりしてしまうお子さんもいたとか。
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 この特殊メイクは実際に映画などでも使われているクオリティが高いもので、かなり近くで見ても本物の傷跡にしか見えないレベルのもの。

 ちなみに、リアルな表現のために肌をギュっと寄せてメイクを行うため、実際に体験した方にお話を聞いたところ、軽くつねられているような痛みもあったそうです。
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 とても楽しそうに体験を語っており、万博やポーランドのゲームと紐づいた、ユニークな思い出になったのではないでしょうか。

ポーランドがテーマのコスプレコンテストを実施。『サイバーパンク2077』のエヴリン・パーカーの姿も

 10月1日にはポーランドがテーマのコスプレコンテストが開催されました。人型のキャラだけでなく、牛や壺など、バラエティに富んだ参加者もいて、大いに盛り上がっていました。
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 優勝したのは『サイバーパンク2077』でコスプレを行ったアデリーさんとウマドモさんでした。
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 なお、ブースでは公式コスプレイヤーによるフォト撮影タイムも。『サイバーパンク2077』のエヴリン・パーカー、『ウィッチャー』のダンディリオン、トリス・メリゴールドに扮した3人との記念撮影も楽しめました。
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そもそも“デジタルドリーマーズ:ポーランドのゲーム”の内容は?

 Creative Industries Instituteによる本イベントは10月1日~5日の期間“EXPO2025”大阪・関西万博(ギャラリーWEST)で開催されました。

室内ショールーム①
  • 7歳以上向けゲームゾーン:大人をターゲットとしたポーランドのコンピュータゲーム12作品を紹介。
  • 教育ゾーン:ポーランドのビデオゲームの歴史に関する展示。
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室内ショールーム②
  • ファミリーゲームゾーン:子ども向けスペースで、ポーランドのファミリー向けゲーム8作品を紹介。
  • インタラクティブゲームセクション:プレイヤー向けのエリアで、人気の教育ゲーム『Scottie Go!』も体験可能。
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▲ゲームを遊ぶと、『ウィッチャー』や『フロストパンク』など、ポーランドのゲームの割引クーポンコード付きカードがもらえました。
屋外エキシビションスペース - セントラルゾーン
  • フェスティバル中心会場:ワークショップ、ミーティング、ステージアクティビティを実施。
  • コスプレイヤー向けワークショップ:メインイベントはポーランドがテーマのコスプレコンテスト開催。
  • ポーランドのゲーム開発者とのミーティング:英語および日本語で実施。
  • 子ども・ティーン向けワークショップ:『Scottie Go!』でのプログラミング体験や、コスプレ愛好者向けのワークショップ。
  • 毎日のアクティビティやテーマ別コンテスト:素敵な賞品付き。

Creative Industries Instituteとポーランドのコンピュータゲーム産業について

 Creative Industries Institute(CII、クリエイティブ産業研究所)は2022年に設立された国立の文化機関で、その運営および実務活動は、国の予算からの直接的な資金と、独自に調達した外部資金によって賄われています。

 本研究所の使命は、知識の収集、ネットワーキング、内容面および財政面での支援、専門性の向上、プロモーション、業界のニーズに応じた実践的なツールの作成、そして他の開発・イノベーション分野との相乗効果の促進を通じて、クリエイティブ産業を支援することです。

 本研究所は、文化・クリエイティブ分野を支援するエコシステムの重要な一翼を担い、他の国立機関と連携し、ポーランドにおける経済・技術・イノベーション・起業家精神の発展を推進する組織ネットワークの一員として機能しています。

ポーランドのコンピュータゲーム産業について

 近年、ポーランドのゲーム産業は世界的に大きな注目を集めています。特に、コンピュータゲームでは国際的なヒット作品も数多く見受けられ、高いクオリティと独自の世界観が広く認知されるようになりました。

 独立系スタジオの活躍も目立ち、RPGやオープンワールド、戦略ゲームなどジャンルも多様化。独創的なストーリーテリングやリアルなグラフィック表現が評価され、欧米やアジア市場で人気を博しています。加えて、ポーランド政府や各種団体がゲーム産業を支援しており、国際展開の基盤が整いつつある点も特徴です。

【主なポーランドのゲーム開発会社】
  • CD Projekt Red
  • Techland
  • 11 bit studios
  • Bloober Team
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