現実世界で聞き込みや調査を行う“捜査パート”、重要参考人の夢の世界に入り捜査する“ソムニウムパート”というふたつのパートに加え、密室に仕掛けられたギミックを解いていく“脱出パート”が新たに登場。これらを突破しながら、物語を進めていくのだ。本記事では、そのレビューをお届けする。
ファンディスクであり入門編
もっとも、"正規の”とわざわざつけたからには"正規ではない”、つまりアナザーエンドのようなものもあるわけで、そういったものを全部見つけたり、そのほかの収集要素や実績解除をすべてこなしていくと、ナンバリングタイトルほどではないがさらに長い時間楽しめるようになっている。
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また、ディレクターも務めている新鋭スタッフ・山田和也氏らがシナリオ担当に入ったこともあってか、ギャグの守備範囲(カバーしている年代など)が広がっており、より伊達の魅力が増しているように感じた。おかげでアイボゥの舌鋒もより鋭さを増しているようで、ふたりのやり取りは見どころだらけである。
緻密に構成されたストーリー
そしてそのことが、システムだけでなく事件の真相にも大いに関わってくる。完全なネタバレになるので詳しくどころか匂わせさえもできないのだが、“3”がとにかく重要なのだ。脱出パートといいストーリーといい、じつに緻密に計算された構成になっていると感心した。
なお、本作の時代設定は第1作『AI:ソムニウムファイル』の直後、第2作『AI:ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』の6年前。シリーズをプレイしてきたファンは第2作の登場人物を知っているので、怪しい人物は誰と誰で……と推測しやすい。
ただ、本作では真相を当てることよりも、おなじみのキャラクターたちそれぞれに用意された“見せ場”を楽しむことがメインになっているようだ。伊達、アイボゥはもちろん、イリス、応太、猛馬にボス、龍木&タマ、そして○○○○……。『AI:ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』からのキャラクターもけっこう出てくるので、ファンとしては満足度が高かった。
多彩なギミックの脱出パートとカジュアルになったソムニウムパート
『AI』の前2作でディレクターを務め、本作では監修を担当する打越鋼太郎氏が過去に手掛けた『ZERO ESCAPE』シリーズでもおなじみの、本格派の脱出ゲームが楽しめるパートだ。
入魂の新要素だけあって、もっともボリュームを割かれているだけでなく、作りもかなりていねい。全体的な難易度は控えめだが、パズルを解いたり、ロジックを考えたり、手掛かりを組み合わせたりと、さまざまなギミックが用意されている。とくに印象に残ったのは、ゲーム=仮想空間ならではの大掛かりなギミック。現実世界にはない大仕掛けばかりで、その意味でも新鮮だった。
演出面では、パートのクライマックスに“第3の選択肢”を考えさせる場面が挿入される形に。前作における“真相再現パート”を少し難しくしたようなもので、時間制限もある(難易度によってリミットは異なる)。難易度を下げれば答えに近いヒントをくれたりもするが、一度は自分の力で挑んでみてほしい。
一方で、従来からある捜査パートとソムニウムパートは、ナンバリングタイトルと比べるとだいぶシンプルにまとめられている。これまで捜査パートに挿入されていた謎解き要素が、脱出パートに集約されているから、というのがその理由かもしれない。
ボーナスコンテンツは“ノベルシナリオ”がイチオシ!
ノベルシナリオはひとつひとつのボリュームがけっこうあって、しかも本編ではやや抑え目であったギャグ&下ネタ要素も大いに解放されている。イリスの母・瞳など、本編では出番にあまり恵まれていないキャラクターが活躍してくれているのもうれしい。なお、瞳は本編でも出てきて、伊達の行動次第では意外な一面を見せてくれたりもする。
あとはシリーズ作品でおなじみの“FILE”のデキがすばらしい。下ネタやオカルトネタもきっちり収録されている。本編ではだいぶクレイジー度が控えられているぶん、ここで回収する形になっているのだろうか。
全体的なボリュームやシナリオの分岐、クレイジー成分など、シリーズファンには少し物足りない部分もあるかもしれないが、本作で「シリーズはこれからも続く」とわかったことで、次回作を待てばいいとわかったのは大きい。まだまだ続く夢の世界が楽しみだ。














